「このままじゃ夜明けになっちまう!! 体力的にこっちが不利になる一方だぞ!!」
「クッ……」
何も転じぬまま時が過ぎるかと思われた その時
「グアァ!!」
邪気を帯びた光のエネルギー弾が刺客の背後を襲った
リンクの周りにいる全員がそいつに注目し始める
「おい…… ここにいたのか こいつ……」
「っ…… カシラぁ!! 見つけました!! 例の脱走者です!!」
「なんだと?!!」
ゴーマンと刃を交える
「こんな場所まで逃げていたのか…… 死に損ないの悪魔め……」
「…………」
フードを深く被る謎の人物は謎の集団がよく知る者だった
しかし自分達に敵意が向けられていないと直感で判断したナゴは
「手を貸してくれ!!」
フード姿の彼は何も言わず ただただ頷いてリンク達に背中を預けた
相手が複数にも関わらず 慣れた動きで攻撃を躱しては相手を押し出して気絶させる
手に込められる邪悪な気配にリンク達が気付かない訳でもないが 今は触れずにいた
ゴーマンに夢中になっているカシラがふと後ろを振り向けば
今度こそ再起不能の部下達を見て お面の奥の表情は歪んでいた
「ちくしょう…… 同じ血が流れる同胞に手をかけるとは……」
「フハハ!! 殺そうとしてる癖によく言うよ」
「……チッ!!」
カシラは持っていた小剣を上空に投げ 意識の無い部下達の心臓に突き刺す
「なっ……!!」
残忍な行いに目を奪われるリンク達を出し抜いて 謎の集団は闇へと消えて行った
辺りに敵の気配を感じなくなり ゴーマンは既に亡くなっているであろう死人のお面を剥ぐ
「ゲルド公家の人間だ…… しかも音に聞いた
「そんな物騒なのがいるのか……? しかも何で俺達を……」
リンクはコーチンとマロンを家の中で落ち着かせている
ナゴとゴーマンが遺体から判ることを調べ回るが
カシラが殺そうとしてまで守らねばならぬような情報はやはり出て来なかった
残っているもので有力なネタを持っているのであるならば
「知ってることがあれば聞かせてもらおうか?」
フードを被った人物もまた ここに残っていたのであった
「名前は?」
「……〝ウルボザ〟だ」
「……それは英傑の名前だ 咄嗟に考えた割には高名な人物の名を借りるじゃないか」
「本名が嫌いなんだ ウルボザで通してくれ」
顔も見えないがソッポを向いてるであろう自称ウルボザに 溜息を交えつつ質問を変えるゴーマン
「分かった…… 人の名前で足を引っ張っている場合じゃないからな
それでまずは どうしてウルボザはここで大根を食べていたんだい?」
「ゲルド公家の屋敷から逃げてきたんだ……」
「それはさっきの子供を殺すとかいう物騒な一件と関わってるのかい?」
「いいやそれは初耳だった おそらく俺のは特別で別件だ」
「なるほどな……」
「俺からも質問いいか? お前達には何があったんだ?」
質問を返したのはナゴだった
「知らないからこうやって調べてるんだ
お城の中に招かれるだけの楽しいイベントだった筈が……
なんでいきなり命を狙われなきゃいけねぇんだろうなぁ??」
「城の中に……? ゼルダ姫と会ったか?」
「会ったぜ?」
「……誰か連れて行かれたか?」
「っ!! あぁ……」
ウルボザは暫く黙り込み その重い口を開いた時にはナゴの顔が青ざめていた
「そいつは殺される」
「「 え?!! 」」
ゴーマンも口を開けたまま驚きを隠せずにいた
「どうなってんだよゴーマン!! カユは勇者として城に招かれたんだろ?!」
「俺は何も聞かされていない……」
「じゃぁどうして……」
「今夜中にも処刑されるだろう」
ナゴはウルボザに何度も理由を聞くが 当の本人は首を横にしか振れない
「知ってる限りの事は道中で教えてやる 今はやることがあるんじゃねぇのか?」
「……」
「何か判ったの??」
「あぁ…… カユが殺される」
「……えっ?!!」
取り乱したのはコーチンよりもリンクだった
すぐに支度の準備をする彼をナゴが冷静に止める
「これから助けに行くがコーチン お前はここで留守番していてくれ」
「嫌!! 私も行く!!」
「頼むからここにいてくれ!!!!」
今までにない大声を上げるナゴにコーチンは放心状態になった
「お前は戦わなくてもいいんだ……
カユは俺がちゃんと助けてくるから おとなしく待っていてくれ」
「……うん」
「よし…… ゴーマン コーチンをよろしくお願いします」
「……?!! 何故だ? 私も行くぞ?」
ナゴはゴーマンに深く頭を下げる
「ここにまた追っ手が来ないという保証は無い
それにゴーマンはハイラル衛士だ さっきの奴らに顔がバレて動きにくいと思う
何かが本当に起こっているのだとすれば この先危険が伴うと思うんだ
だから…… 俺の妹と姪っ子さんを守ってくれ」
「……分かった」
今日は不穏にも赤き月が顔を出す日
納屋からピッチフォークを借りるリンクと マロンから綺麗な弓を貸して貰ったナゴ
木の上で赤い月に向けて唇を噛み締めているウルボザに声を掛ける一人と一羽は
「それではゴーマンとマロン!! ご馳走様でした」
「あぁ…… 気をつけてな」
「タロンにもよろしく言っといてくれ」
一晩の恩に感謝する一行
事の真相を確かめるべく そしてカユを助ける為 王都へと走った