ゼルダの伝説:リフトツリーフォーク   作:滝翔

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十二話 悠久の時代を経て

入り組んだ城下の裏路地に休憩を入れる三人

リンクとカユを担いで逃げてきたウルボザは近くに置かれてある樽に座って息を切らしていた

 

「ハァ… ハァ… ここまで来れば一先ずは……」

 

そう言えたのも束の間 ウルボザが雷雲を見上げた瞬間

辺り一面に槍でも降らせるのかという勢いで 巨大な稲妻が雨のように近隣の家々を襲い始めた

 

「無差別かよチキショー……」

 

その稲妻がリンク達の近くにも落下すると同時に ウルボザは表通りに顔を出した

 

「俺はここにいるぞ!!」

 

遙か上空で佇むゼルダは満面の笑みを浮かべて錫杖を構えた

 

「観念したのかしら? ……嬉しいですわ 大人しく死に腐って下さい」

 

女神の様な声色で悪魔の様な台詞を吐くゼルダは容赦なくウルボザに畳みかけた

ウルボザは逃げる際にリンクにウインクで合図を送る

 

〝ナゴとカユを連れて逃げろ〟と

 

リンクは立ち上がろうとするが足に力が入らなかった

カユの身体を見れば 足は茶色に焦げていて 目が覚めても歩けそうにない

自分で背負って逃げることも出来ないのかと青年は目に涙を浮かべていた

 

「リンク……」

 

カユを背負いながら腕で地道に前に進んでいたリンクの目の前に現れたのは ナゴだった

 

「情け…… ねぇな…… そんなんじゃ…… カユは…… 任せられ…… ねぇな」

 

余裕な台詞を吐くナゴの姿を見たリンクは絶句した

翼の羽根はほとんど焼け落ち 左目は見えておらず 右目も曇っていた

 

「ハァハァ……!! うぅ……!!」

 

「泣くんじゃねぇ馬鹿野郎が……!! カユはまだ生きてんだろうが……」

 

しかしナゴもまたその場に座り込んでしまった 無理もない

そんな姿を見てしまったリンクは最後の踏ん張りを見せる

 

「お前……」

 

「うん!」

 

彼はナゴに頼み事をした カユを連れてコーチンのところに逃げてくれと

ゆっくりとカユのおでこに自分の額を押し当てて 優しく彼女を抱きしめてあげる

 

「なっ…… それはお前が……」

 

「……」

 

リンクの顔は既に決意を固めていたものだった

そして近くの木の棒を取り出し 天に向けて棒を掲げる

 

「……お前は何か決心するときは不思議と剣を上に(かざ)してたな」

 

一呼吸置いて木の棒を懐に差す

ナゴに 行ってきますの挨拶を残して彼は飛び出して行った

 

「リンクぅ!!!! ……うぅクソぉぉぉぉおおおおお!!!!」

 

ナゴはカユを背負い その場を離れてロンロン牧場へと足を使って走って行った

鼻から垂れる血と目から流れる涙が混じり入る口から吐き出しながら

ナゴは一心不乱に そして振り返れなかった

 

ゴミ捨て場に倒れるウルボザ さすがに体力も限界でアピールとしてゼルダに手を挙げる

 

「もう逃げられませんね…… ん?」

 

「でやぁあああああああ!!!!」

 

付近の高い塔を見つけるなり 一気に登るリンク

天辺にて飛び出す彼の先にはゼルダが

渾身の〝ジャンプ斬り〟をお見舞いした が所詮は木の棒

剣の筋が良くても ゼルダの錫杖の前に簡単に砕け散ってしまった

 

睨み合うリンクとゼルダ それは歴史を追っても前例が無い敵意を向け合う者同士の絵図

 

「まとめて灰にしてあげるわぁ!!!」

 

地に足を着ける暇も無く 空から落ちる落雷を一身に受けてしまった

そこから生じる土煙に乗じて ウルボザはリンクを担いで再び逃亡を図る

ゼルダもさすがに舌打ち混じりに 宙を移動する速度が勢いを増していた

 

ハイラル城には水路があり その先は排出物のゴミなどを下に投棄する滝があった

運悪くその大穴の手前の崖に追い込まれたウルボザはゼルダを睨む

 

「ここはただのゴミ捨て場では無くてよ

大昔からゲルドの一族が利用してきた流刑の入り口としても有名なんですの」

 

「へぇ…… 偶然か必然か…… 〝俺〟にはお誂え向きの場所ってことか」

 

「そういう事になるわね ……其方は産まれてきたのが罪ですもの」

 

「……てことは やっぱり俺達をここに追い込んだ訳だ」

 

「其方も…… 其方にそのような〝名前〟を付けた母親も立派なゲルドの恥さらし」

 

ゼルダは錫杖を上に向け 特大の魔力を溜めていた

ウルボザはリンクに聞こえる様に小言で語りかける

 

「よく聞けリンク…… これから俺がすることに身を委ねてくれ

この先は俺ですらとお別れになるかもしれねぇが なるべく合流するよう頑張るからさ」

 

「……」

 

リンクの身体を抱え直すウルボザはフードを取ってその素顔を晒す

微かに目を開けるリンクの眼に映ったのは 赤毛で褐色肌の〝男性〟だった

 

「俺の本当の名前は〝ガノンドロフ〟

……名前くらいは有名だよな? ちゃんと俺を覚えててくれよな!」

 

そう言うとガノンドロフは 滝壺に向かって勢いよく跳び込んだ

だがゼルダは攻撃を止めようとはしない

 

「これで終わ…… っ……! 何だ?!!」

 

突如 錫杖から無数のイバラが腕に巻き付いてゼルダを放さない

 

「フッ…… フフフ…… 私も所詮は王家の血が流れている

貴方とは〝厄災復活〟まで手を取り合える仲だと思うておったのだが……」

 

ゼルダは錫杖を振りかぶり ガノンドロフとリンクが落ちていく遙か下層に目掛けて投げ飛ばす

下は濃い滝霧に覆われていて状況が掴めない 故に生死の判別は出来なかった

 

「かつては魔族の主に仕えていたとか ……魔族長も務めていて賢い精霊だと思っていたが

所詮は知能が乏しい低俗共を まとめていただけというだけの無能か……

時の勇者に倒され 主と共に葬られた末路は 形を変えて暗い地下で眠るだけの生涯

 

なのに〝荊の聖槍(ツリーフォーク)〟などという……

 

その土地の民族に大層な名前で崇められていたところを見ると かなりの自己主張が強いとも見える

だがもう用無しだ…… 厄災は私だけで復活させるとしよう」

 

ゼルダは高笑いながらその場を後に城へと戻った

錫杖は霧に穴を開けて飛び続け 落下を続けるリンク達の姿を見つけるなり

先端は形を変え 三つ叉の鋭い刃に精錬を施し

余分な部位となる不純物は空の彼方へ飛んでいってしまった

 

ツリーフォークは再び棘の無いイバラを生み出しては リンク達を球体を作るように丸め込み

そのまま世界樹の根元まで共に落ちていった

 

 

〝 ンフフ♡ お久しぶりですね♡ 〟

 

 

ナゴやカユと離れ離れになってしまった 村の少年リンク

時の支配者の名を受け継ぐ男ガノンドロフと共に 新たな冒険が始まる

そして不気味な笑みで囁いてくる ツリーフォークは一体なんなのか

 

 

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