一話 ゾーラの里
リンクはまた 夢を見ていた
混沌とする大地に ずぶ濡れで立っている自分
青い光に包まれる影が 強く囁いてくる
〝 目覚めの時です 大いなる運命は既に迫っています 私のもとへ 〟
目が覚めると いつもと違う景色が待っていた
イナ村のように端へ進めば崖があるわけでなく
雄大に広がる青い湖が
「……うわ!! 起きた!?」
「……」
視界に割り込む 魚よりも人に近い 唯一童話に出ていた半魚人の少女が
リンクが起き上がると同時に岩陰に隠れてしまった
「上から落ちてきたよね君?」
「……」
思い出そうとすると頭痛が走る
今まで起きた全てが鮮明になる頃には 少女も距離を縮めていた
「私はクレシェン!! ……もしかして〝ゾーラ族〟を見るのは初めて?」
「……」
軽く頷くリンクに クレシェンは呆れた表情で頬をむくませた
「如何にも賢そうって感じね もしかして態々大樹から降りて私達を見下しに来たの?」
「……!!」
風が吹くくらい首を横に振るリンク
意地悪し過ぎたかと クレシェンは態度を戻す
「私は寛大なる心を受け継いでいるから そこに私の偉大さを感じて頂戴!!
これでもゾーラの姫だからね!!」
そう言ってリンクの身体を突っつく彼女はドヤ顔だ
「偉大なる治癒の祈りも受け継いでいるの あなたがピンピンしてるのは私のおかげ!」
クレシェンはリンクを里に案内した
垂れ枝を掻い潜って湿地を抜けるとゾーラ族が住む【ゾーラの里】が
歩行から流れる様に川に潜ってスイスイ泳ぐ姿は美しかった
階段を登って玉座へと案内されるリンクの前には
大勢の大柄な者達に囲まれて椅子に座る 小柄な人物と対面する
「クレシェン? その方は誰ですか?」
「湖の畔で倒れていたんです高祖母様!!」
「ここでは長老でお願いね」
「あっはい! 名前はリンクだそうです!!」
「…………リンク?」
度々流れる沈黙に リンクは戸惑っていたが
「旅人さんなら ちゃんともてなして上げなさい」
「はい分かりました!!」
そう返事してクレシェンは リンクを引っ張って次の場所を目指す
玉座の扉が閉められる瞬間に 長老が目を開いてリンクを見ていた事も気付かせずに
宿屋に案内される道中
クレシェンはこの里の事を話してくれる
「この里は他種族が滅多に寄りつかない 故に穏やかな里だった……」
「……」
「だけど〝奴等〟が来てから……」
「……?」
下流の傍にある洞窟にて個室を用意して貰っていた
リンクは身につけていた手軽な荷物を置いて一息吐いていると
一緒に居たクレシェンに声を掛ける男性のゾーラが
「ここに居たかクレシェン……」
「どうしたのデクレお兄様? そんなに息を荒げて……
まさかまた行方不明者が?!!」
「あぁ…… ここ最近を合わせてこれで四人目だ……」
額から汗を垂れ流し 眼が気張っているデクレはリンクを見やる
「例の旅人か…… すまないが今日の外出は控えてくれ」
「……?」
「〝奴等〟の仲間と疑う訳ではないが…… 不審な行動は慎んでくれ」
そう言って彼はまた 何処かへ颯爽と消える
クレシェンはリンクを連れ歩いて事の粗方を説明して上げた
「ここ数日に起こってる事件なんだけどね……
ゾーラの若い子達が謎の失踪に遭ってるの
原因は判っているんだ 里から離れた廃墟の館に住む〝彼女達〟」
クレシェンは警備が強化された見張り達にリンクを紹介しながら
見晴らしの良い上流の崖上までやって来て
「あそこ…… あの場所は四人の魔女達が住んでいるって話なの」
濃い霧に包まれる日の当たらない森林
クレシェンは〝近付いてはいけない 絶対何か恐ろしい物がある〟
と言って 会って間もないリンクにも注意を促してくれた
「何かしようとしている眼だよね リンクの目ってさ……」
「……」
クレシェンの目が光る間は リンクは何もせず
ただ帰り際に彼女にある質問をする
「〝精霊石〟??」
リンクの口から出たのは 何時ぞやの夢で見た少女の台詞
〝 リンク 三つの精霊石を集めてきて 〟
この言葉が頭から離れないでいた
大切な事なのか 何一つの根拠は無いのだが
「長老の〝高祖母様〟なら知ってるかな……
あっ高祖母様っていうのは私の曾曾曾曾曾曾曾曾曾曾婆ちゃんってこと
ゾーラは長命って聞いたことあると思うんだけど ちなみに私は〝雲孫〟よりも下
本来 高祖母は自分の四親等の親族を指すんだけど
長老はゾーラでも稀の長生きでね ゾーラ王家でも一番上を示すよう皆が高祖母様と言ってるの」
「ん~……」
気が遠くなる続柄の話をされたリンクは思わず後ろに倒れそうになる
里が寝静まるその晩 リンクは自分のこれからを整理していた
カユやナゴの心配もしているが ここ地上から再び第二層に戻るのは簡単じゃない
そして気になるのは不思議な夢の数々
・身に覚えが無いのに懐かしい少女との外壁に囲まれた庭での会話
・導かれる謎の声
さらに無視してはならないゼルダ姫の豹変
一体ハイラルで何が起ころうとしているのだろうか
夜明けを待ってしまったリンクは一睡も出来なかった
この世界樹にて 注目の人物に目を付けられている中
これからの行動を慎重に 地続きを踏んで一つ一つ見て考えて行こうと決心し
朝食を済ました後 再び里の玉座へと赴いた