「その名前の元の持ち主の生まれ変わりだと?」
「あぁそうだ…… なんなら前世の記憶だってあるんだぜ?」
「厄災が復活する兆候があるのに 別人の線の払拭を余儀なくしろと?」
「そういうことだ…… 大昔にあった話をしてみようか?」
「いいだろう 聞いてやる」
「…………」
ガノンドロフは一呼吸置いてスラスラと言葉を並べ始めた
「かつてハイラル王国が大地に存在していた時代
三つの精霊石をとある神殿に納めれば聖地への扉が開かれた
百年に一度生まれると言われた俺はそこへ足を踏み入れ
力のトライフォースを手中に世界を暗黒に染めたんだ
悪の力に抗える〝退魔の剣〟を扱えるまで眠らされた時の勇者は
勇気のトライフォースを携えて見事その魔王を封印にまで持ち込んだ
精霊石は再び三種族のもとへ返還されたが
魔王である俺は変わり目の時代には復活を遂げ その都度勇者によって封印された」
「ほぉ…… 俺が知ってる範囲でもちゃんと照合されてる正史だな」
勿論彼が言い放ったのは 前にダルタニャンが言ってた事の復唱だった
しかし突飛な思いつきの割には 然も思い出を語る生き字引のオーラに疑う余地は無い
「本当ならば我が本丸に招き入れて丁重にもてなさなければなりませんね
コーガ様もお喜びになられる ついでにハイラル王国のゼルダ姫も」
人知れず安堵の溜息を吐くガノンドロフ
二人を置いてスッパの後ろを付いて行こうとしたとき
「そんな嘘に誰が騙される?」
「はっ??」
前にいるスッパの脇の下から伸びる一本の刀身
その刃先は自分の胸を貫いてた
「何で?」
「下層の人間は学も教養も無いと踏んでいたか?
その程度の歴史はどこの童でも履修していることなど知っているわぁ!!」
「ウグゥ……!!」
完全に不意を突かれたガノンドロフもその場に倒れてしまう
全員が瀕死状態という最悪のシナリオを辿ってしまった三人に為す術はない
「チキショウ……」
「安直だったな 其を愚弄して手を緩めると思うなぁ!!」
重い一振りに誰も止める術を持たない
諦め掛けたその時 遠くから飛んできた矢をスッパは掴んだ
「……?」
その矢には導火線とその線を辿って飛散する火花が そして
そこそこダメージが入る爆発が起きた
「っ……!!」
スッパはそのまま屋根から下へ吹き飛んだ
間一髪だったガノンドロフは生きている事を実感出来ず呼吸を整える
大きな翼を羽ばたかせながら舞い降りてくる人物にガノンドロフは目だけで追った
「アンタは一体……」
「私の名前はコーチン!! リンクと同じ故郷の出身よ」
「……ハハ 助かったぜ」
「あの程度の爆発で勝てたとは思っていないよ
すぐにこの場から離れましょう?」
リンクは夢を見ていた 悪夢にも近いあの日の出来事
カユは磔にされ 皮膚が爛れているナゴが必死にこちらに助けを求めている
当然リンクは二人を助けて上げたかった だけど伸ばす手が前に出るほど二人は遠ざかっていく
そして真っ暗闇で独り蹲るリンクはまさに後悔を味わっていた
それでも光は差し込む 彼はけして独りではないのだから
〝 リンク…… リンク……!! 〟
後ろを振り向けば目が覚める
一番に視界に映ったのはコーチンだった
「リンク!? ……良かったぁ 痛いところはない?!」
「……?!」
起き上がって意識をハッキリさせると
改めてコーチンがここに居る事実に驚きを隠せない
そして周囲を見渡せば一安心 仲間達+プルアが自分を見守ってくれていた
「ここは我々レジスタンスの支部だよ
イーガ団が本気で私達を潰そうと今も探し回っているから
見つかるのも時間の問題なんだけどねぇ」
「…………」
リンクがベッドの下に置かれた槍を持ち出すとその場の全員に止められる
しかしその持ち上げた槍はなんと 真っ二つに折られていた
リンク達を安全なこの支部に連れて来た後にプルアの仲間達が回収してきたのだが
おそらくスッパによって武器をお釈迦にされたのだろう
ゾーラの長老に頂いた折角の贈り物を壊されてしまい
リンクは取り敢えずクレシェンとデクレに深く頭を下げた
「別にリンクが壊したわけじゃ無いし謝らなくても大丈夫だよ!! だよねデクレ!?」
「あぁ…… それに俺がもっと強ければ折れることはなかった……」
再び床に槍を置くリンクはコーチンに目を向ける
どうしてここにいるのか質問に入った
「……リンクが滝底に落ちたのを知ったのは
カユを背負ってロンロン牧場に帰ってきた瀕死のナゴお兄ちゃんを介抱して数日後だった
追手から逃れる為にゴーマンさんやタロンさん そしてマロンも一緒にイナ村に向かったの
その道中で流れて来た噂でね 国家反逆罪で少年二人がゲルドの流刑場
つまり滝壺から落されたって耳に入ってきたのよ
悲しんでる私にゴーマンさんが 〝もしかすればリンク達は生きてるかもしれない〟
そう言ってくれたの」
「……?」
「ほとんどハイラル王国の都市伝説なんだけどね
滝壺の先は当然水が溜っている場所だから
もしかしたら落された人間が何らかの拍子に生きているかもしれないって
まぁあの高さから落ちたら大地も湖も変わらないんだけどね
だけど世界樹の根元には魔女四人が廃れた館で暮らしてるなんて話も昔に聞いてたからさ」
「あっそれ私達姉妹のことでぇ~~す!」