早速エイミーはシーカーアイテムを作動させた
選んだのはアイスメーカー
複雑な有刺鉄線の如く 氷の荊が辺りに張り巡らされた
「氷を武器にして攻撃か…… もしくは視界を遮るだけの防壁の役割か……」
正解は後者 アイスメーカーは造形後の操作は不可能
それを知っていたエイミーが次に取る手段は武器の奪取だった
「マグネキャッチ!!」
アサシン共の武器を一箇所に集めて次なる攻撃へと移る
しかしさすがアサシンを名乗る人達なだけあって避ける様は軽やかだ
「左右にバラけろ 所詮一人の人間に出来る事は限られている」
ホルンの指示にエイミーは口角を上げた
「コーチンちゃん!!」
空を緩やかに飛んで戦況を見守っていたコーチンに出番が回ってきた
携えていた矢には雷が宿っている それを一気に何本も弓で打ち上げて雨の様に散らした
「何を狙って…… え?」
ホルンの目の前にいたエイミーもが宙へと移動 いや避難していたのだった
「アイスメーカー解除!!」
それは荊の氷上地帯を一気に水へと換える合図でもある
そしてそれが何を意味するのか 雷の矢が着地した一瞬でアサシン達を感電させたのだ
「満遍なく氷の周りに集まってくれてありがとね!!」
「クソがっ!!!!」
ホルンはナイフを一つエイミーに向けて投げつける
咄嗟の速い攻撃を回避出来る彼女ではなかったが
雷が消えた水上をそのナイフよりも速い動きでエイミーを助けるのがクレシェンだ
「ゾーラの遊泳速度ナメないでよね!! そして私の偉大さに戦慄きなさい!!」
水上に音を立てて着地するクレシェンにエイミーはすぐに次の指示を出した
「残っているのはあのお頭と呼ばれる奴一人だけ
ここは私とコーチンちゃんに任せて 回復役はデクレ達の所へ回って!!」
「……分かったわ!!」
クレシェンが戦線を離脱
自分相手に一人減らされてた事に怒りを隠しきれないホルン
実際の戦闘力で言えばこちらが上なので尚更だ
「久し振りねホルン」
「エイミー…… 前公族の末子か」
「えぇ! あの女の所為で本来公家を継ぐ筈だったメグお姉様の心中は察するにあまりあるわ」
「内輪揉めを避ける為の苦肉の策であろう ゼルダ様の行いは今となっては全てを肯定する所存だ」
「何が苦肉よ 流刑の滝壺に落す間際のあの女の嘲笑 死んでも忘れないわ!!!!」
マグネキャッチで一度地に落ちた武器達を拾い上げ ビタロックでホルンを止めた
「潰れろ!! ハイラルの偽の姫と共に!!」
鉄の塊は敵の頭上を捕らえた
当たり前だ 相手の時は止められて身動き一つ取れないのだから
しかしホルンの顔は歪みを見せた 動けない事が前提なので不気味さに拍車が掛かる
「何で?」
「……私の〝肉体〟がここに無いからだよ」
鉄の塊を軽々と避けるホルンは笑っていた
「どうやらビタロックはゼルダ様の〝魂を操る力〟の前では無力らしいな
今ここに居る私はただの〝幻影〟 シーカー族風に言えば分身って奴だ」
ナイフ一つでエイミーに斬り掛かるホルンの攻撃を
弓でガードしつつ足で掴んで空に逃げるコーチン
彼女の周りを距離を取って飛行するコーチンはエイミーを心配する
「分身って事は攻撃は効かないの?」
「いいえコーチンちゃん…… もし無敵ならもっと捨て身で襲って来てもよかった筈
なのに私のアイスメーカーを部下を使って様子見していた
カラクリは未だ解っていないけど 倒すべき対象なのは変わらないわ」
試しにリモコンバクダンを複数生成してホルンのもとへ投下した
彼女の行動次第で対策を練れるのだが 予期していた最悪のケース
ホルンは微動だにせず真っ向から受けに入った
しかも土煙から現れた奴は無傷でそこにおり 二人に絶望を与える
「これじゃ攻撃のしようが無いわね」
「一か八か再度電流を浴びせてみる?」
「何かトリックがある筈……
王国で踏ん反り返っているあの女が人知を超えた魔法が使えるとは到底思えないのよ」
周囲を飛び回ることでホルンの注意を自分達に向けさせる二人
実態が無ければ時間稼ぎも無意味なのだが 今出来る最善の戦法
ーー何故実態の無い無敵状態なら突っ込んで来なかった?
カシラとして部下を纏める使命感があるとは思えない
水で感電させて全滅させたのだからコイツに部下思いの情は無いと考えるべきだ
そもそもホルンは何しにここへ来た リンク達の抹殺??
イーガ団が襲って来たなら目的は奴等と一緒
命令があの女発信なら何としても完遂しなければならない筈
なのに実態の無い分身だけでここに来たと 本体は王国にでもいるのかしら……
姫の命令を部下だけに任せるほど肝の据わった奴とも思えない……
エイミーの視点はイーガ団に向けれた
ーーそもそも奴等側は総員で向こう側に現れたが 自分達が街中に逃げ帰る心配はしないのだろうか
そこまでこのアサシン共を信頼しているのかだが こいつらはおそらく初対面だろう
ゲルド公家の人間が態々下層に来ること自体 元公族の人間として有り得ないとまで断言出来る
簡単な話 近衛騎士だろうが 暗部だろうが 主から離れて遠出など
本丸から兵力を削って不利な状況を作ること自体 間違っている悪手
「多分あれは本人が言っている通りただの影」
「……じゃぁどうすれば」
「目を凝らせば分かり易い安直なトリックだった
本体は偽物 だけど武器は本物ってだけの話よ」
「実体が無いのに武器なんて触れるの?」
「私も使える浮遊魔法で武器を浮かし 恰も分身が持っている様に見せていたのよ」
ーーそこまでするまどろっこしい行為が新たな謎を呼んでいる
まるで時間稼ぎを彼女らはしていたかの様 それくらい謎が解けた後に襲ってくる気持ち悪さ
奴等は…… ホルン達は何かを待っている……?