城郭の天辺
鎖で繋がれたデクレを置いて待ち構えるスッパの眼前に現れたのは
〝風斬り刀〟というイーガ団の幹部クラスが携える武器を背負ってリンクが現れた
「ころころ持ってる得物が替る奴だな」
「…………」
刀を抜くリンクは刃先を後ろへ振り切り
再びスッパ目掛けて振り返せば 風の刃が宙を駆けていった
勿論スッパは風斬りの刀を知っているので 怖れる事無く横に逃げる
瞬時にリンクはデクレの居る場所へ駆け 重い鎖を剣で斬ってみせた
「リンク……」
大分痛めつけられたのか デクレが発する声は弱々しい
スッパと刃を交えるのは今回が三回目
故に悟る 自分が刻んだ恥の上塗りをそろそろ返上しなければならないと
「…………」
彼は目を閉じる 右手に剣 左手に握られているのはゴロンの仮面
返事などしないダルイナに頼み事をする 無茶をするが力を貸してくれと
「何だそれは……?」
リンクの姿はゴロンの姿へ そして身体を丸めるとスッパの頭上まで急速で転がる
そして空中へと浮けば地にヒビが入るプレス攻撃を炸裂させた
受け取めるか躱すか 迎撃に転じるかで迷っていたスッパの行動は正解だった
後ろへ退き そんなスッパの額には汗が生じている
「剣術では其に敵わぬと悟ったのは潔し!!」
「っ……」
実際に彼の言葉は胸に突き刺さりまくるリンク
二度に渡る死合いに於いて 言えば二度も命が助かっているという屈辱を忘れはしない
なのでリンクもリンクで〝猛省〟という選択を無視出来なかった
戦術を変えなければならない 戦略の道を作らなければならない
プライドを捨てて仲間を守る行為を取るリンクの本来の実力は ある意味では枷を外す物であった
煙が晴れると同時にゴロンの渾身のパンチを 見切ったスッパは迂回して飛び降り一つ下の階へ
後を追ってくるだろうと死角で待ち伏せするスッパはゴロンリンクの分析を行う
ーーゴロンだけあって破壊力はある だが相変わらずノロい
前にデスマウンテンに住むゴロンの山賊とやり合ったが 動きが遅いだけに劣勢でもリカバリーが利く
二刀を鞘に納め 姿勢を低くして居合いの構えをする待ちの技
息を潜めて相手の豪胆な足音に聴力を集中させていると
居る筈の無い背後より〝人〟の姿に戻っていたリンクの一太刀をもろに食らってしまった
「不覚……」
実物の刃は避けられたのだが その刃先より生じる飛ぶ斬撃は至近距離にて回避不能
前方へ飛ぶも スッパの背中には痛々しい斬り傷が残ってしまった
この不意打ちにリンクは卑怯とは思わず 逆に手応えも感じていない
しかし自分より強敵を倒す上で〝何でも使う〟に於いて彼の使い手としてのボキャブラリーは群を抜く
弓を取り出し コーチンから貰っていた光の弓矢を一本放つ
ゼルダの物とは違い 閃光という目眩ましだけの役割を果たすこの矢を
当然スッパは馬鹿正直に受け止めたりはしない
顔を手で覆って光を背後になるよう位置取る彼は地面を蹴り 前方のリンクへと跳んだ
本来の実力差ならば一太刀本気で相手の肉体を裂けば瞬殺可能だスッパの一番の失態は
二度もリンクに再戦のチャンスを与えてしまったことにある
もはや修行をつけてやったと言っても良い程だ
攻撃に迷いの無いスッパに迎え撃って出ているリンクが装備したのはミラーシールド
壁に突き刺さる矢から発光し続けていのでミラーシールドはそのまま反射させてスッパの目を襲った
「ぐあぁ!!!!」
透かさず間合いを詰めるリンクはスッパの胴体にもう一太刀を刻んだ
床に倒れるスッパ 見上げた先には自分を見下すリンクの姿が
「ハァハァ…… 何故最初から本気を出さなかった……?」
「…………」
リンクは話した かつて師匠インパに言われたこと
一つの武術に於いて自分より圧倒的に上回る強敵が現れた場合
例え近くに仲間がいて危険に晒そうとも同じ武術で相まみえて敗北し研鑽しろと
「……態と同じ土俵で闘っただと?」
〝直向きに一つの事を極めた使い手ほど厄介な敵はいない
そういう輩が現れれば自分と仲間の生存率が著しく低下すると思え
自分が学んでリファインしなければ誰も救えないんだ
それに同じ相手の動きは何回も見てれば慣れる〟というのが教えだとリンクは語り終えた
「なるほど…… お前の師匠は余程経験を積んでるとみれる」
因みにリンクの師匠がシーカー族だと伝えるとと
「……なら尚更 お前は先の旅でも強くなっていくのだろうな
負け惜しみだ…… 完全に舐め腐っていた…… まさか無眼も使わず敗れるとは……」
スッパは開いた傷を塞ぐことも出来ず その場に倒れ込んでしまった
意識の無い相手にリンクは追い打ちをせずデクレのもとへ上がる
こちらも重症故に リンクは一回りデカい身体を背負って仲間のところへと合流を図る
一方で場所は出口付近の砦
晒し首は咎を背負わせ 周りに納得させる恒例の処刑方針だ
簡易的に作られた台の上で目隠しされているエイミーと両手に斧を持っているゼルダ
この場合はただゼルダが納得したいばかりに執り行っているに過ぎない
「反乱因子はやはり自らの手で完璧に根絶やさなければ……!!
公家の血が絶える事に関してはご心配なく……!!
私の血筋が唯一無二のハイラル王家として栄えてゆきますから……」
「っ……!」
振り上げられる斧 ちょっと蹌踉けながらも
そこには私怨が淀んでいると
周りで警備しているイーガ団員達も少なからず感じていながら唾を飲んだ
そんな緊張した空気を生んでしまったが為に ガノンドロフ達が近付いていることなど知りもしない