守衛一人一人の目を欺いて無音で近付くガノンドロフとクレシェンとコーチン
ガノンドロフが手際よく団員と兵士を気絶させられるのは 自分が屋敷を脱出する時に身に付けた技らしい
「あそこ……」
「あぁ任せろ……!」
今まさに斧が振り下ろされる瞬間 ガノンドロフの鉄拳が大きな斧を吹き飛ばした
「何をしたか分かっているのか…… このぉ…… 忌み子風情がぁ!!!!」
「エイミーを担いでここを離れろぉ!!!!」
首枷を壊し 三人が逃げやすいよう自分の魔法を黒い靄状に発生させて辺り一面を充満させる
イーガ団や兵士がクレシェン達に近付こうものなら充満している所を器用に移動させて行く手を阻む
しかし退路を作る事に意識してしまえば 当然ゼルダからの格好の的となり
「ケカカカカカァッ!!!! 無抵抗の男をいたぶるのも一興だぁ……!!」
両手を三人に集中しているので完全無防備で耐えるしかないガノンドロフ
身体の丈夫さは世界樹を落ちて生きながらえている自負を持っている為 根気でなんとか踏ん張っていた
だがそれも時間の問題と知っているゼルダは 彼の崩れ去る様をまだかまだかと攻撃魔法を連射させる
ーークソッ…… ここまでか……
後ろにいるクレシェン達の姿が完全に消失する それは遠くへ避難した証
一気に力が抜けるガノンドロフは十数分耐え抜いた末に足を地面に着けてしまう
「消してやる!! 邪魔する者は確実に一匹ずつ屠ってくれよう!!」
思い返せばコーガポリスに来てからというもの ギリギリの戦いの連発であった
ガノンドロフは意識が飛ぶ最中 俺達の旅は強運に恵まれていると悦に入っている
しかし幸福なことにその強運はまだ終わらない
「デヤァァァァ!!!!」
ほぼワンモーションでゼルダの魔法を弾くはデクレを背負って追いついたリンクだった
「お前…… すげぇな!!」
「うん……」
血管が浮き出るほどの怒りを表すゼルダは我を失ったかのように魔法を乱れ撃ちしてくる
しかしここでもまた 今まで何処に行ってたのやらと言わんばかりの連中が姿を現す
「チェッキー~~!!!! ご注目♪♪♪♪」
シーカー文明を駆使して作られたであろうバイクを乗り熟して現れたのはプルア
そして後ろに同乗するレジスタンスの一員がゼルダと残兵に向けて煙玉の雨をバラ撒いた
「どいつも…… こいつも……」
リンク達の前で停車するプルアはバイクを降りるとお決まりのポーズ
「後ろの黒い靄は君達のかな? だったら話が早い!! さっさと三層に行っちゃいな!!」
「ハァハァ…… アンタ達はどうすんだ……?」
「ゼルダや兵士達を妨害出来たら別のアジトを探しにここを離れるよ
大丈夫!! ここからは大人達に任せないな!」
煙に覆われてることなんかお構いなしに連投してくるゼルダに新たな追撃
よく見ればレジスタンスの総攻撃が始まっていた
ーー愚民が私に向かって攻撃を…… あぁ口惜しい口惜しい……!!
そもそもあの意識の無いゾーラの下等種族はイーガ団幹部に預けた奴ではないか?
ということはやられた? 死んだ? ……ならば好き放題出来るではないか
ゼルダが向かったのは遠くから催涙弾を放っているレジスタンスの者の前だった
鼻から水を垂らし 目を真っ赤に腫らした一国の姫が彼の前に現れ そして
「ギャァァァァァァ!!!!」
一員の胸に腕を貫かせるゼルダ しかし取り出したのは彼の心臓ではなく〝魂〟
「〝抜け殻のエナジー〟」
抜き取る半透明な球体は遠くへと飛ばされる 何かしたのは明らかだと身構える周囲の者達
プルアやリンク達もその光景を見守っていた中 その惨状は訪れた
「な…… 何だコイッ……」
「うわぁぁぁぁ!!!! 仲間がやられたぁ?!! 一体ナニガッ……」
次々と胴体を斬られて内蔵がぶちまけられる中
腕に覚えのある者が敵と相まみえた時 一瞬だが姿を視認した
「スッパ……?」
プルマの一言でリンク達もそちらに目が行く
リンクが倒して気絶した筈のスッパが立ち上がって襲っている
しかし当の本人の様子がおかしかった 仮面下から有り得ない量の血を垂らしながら戦っていたのだ
ーー……まさか
リンクはゼルダを見た 宙に浮くゼルダの表情は嘲笑いのそれ
こちらの視線に気付けば人差し指を口に当ててそのまま姿を消した
怒りを口にするだけでは収まらない彼の怒りは沸点をとうに超え
刀を抜くなりスッパに突進しようとしたその時
「……行け」
勢い任せのリンクの肩を掴み 彼をそのままグイッと後ろへ倒したのはデクレだ
「っ……??」
「その燃え盛る怒りは正しい奴へ向けろ スッパは俺が何とかする」
紙切れの様に斬り捨てて行くスッパの刃先は滔々こちらへ向けられるが
気圧される事なくデクレは二本の槍で迎え撃った
踏み込みが良かったのか それとも死人のスッパに生前の力は残っていないのか
かち合った結果はデクレによって身体を吹き飛ばされる
「ここは任せろ!! リンク!!」
「……っ!!」
「行くぞリンク!! スッパのヤバさは知ってるだろ?!!!」
ガノンドロフが肩を掴んでこちらを向けさせると その反動でリンクの身体は膝ごと地面に倒れた
彼の限界は既に身体中から悲鳴を上がるほどだったのだ
今のスッパはただの殺戮マシーンを化しているが
無差別に襲うようになっただけの彼の強ささえも今のリンクの体力では太刀打ち出来ない
一足先に上に向かったクレシェン達のことも心配なのでモタついている暇も無い
なので唇を噛み切りながらも ここをデクレに任せた
「それで良いんだ 妹を頼んだゾ」