カユを蜘蛛の糸から解放してあげると
ナゴはさっそくリンクをジロジロ見て鼻で笑う
「フン…… 俺が来てなかったらどうなってたか…… 少しは感謝して欲しいもんだね」
「っ……」
「ほらありがとうは?? お礼も言えないんじゃぁ…… 大人になれないよぉ??」
「まぁ良いじゃん良いじゃん!! 皆無事だったんだし!!
……ナゴだってそうやって話しているのがやっとなんでしょ??」
「フン!!」
素直じゃないナゴは一人歩いて先に帰る
カユも背伸びして 帰ろうとリンクに話しかけようと振り向けば
当のリンクは疲れ果ててその場に倒れてしまっていた
「全く…… ときめかせる時間も与えてくれないんだからあなたは……」
やれやれとカユはリンクを背負ってナゴのもとまで走って行った
出口の手前付近でようやく村の大人達と合流したカユとナゴは皆に何があったのかを話す
「……まさかお前達だけで倒したのか?!!」
「信じられないな…… ゴーマと言えば大人数人が出張ってやっと倒せる怪物だろう?」
「ホントだって!! ナゴがリンクを乗せてすごかったんだから~!!」
大人達が洞窟からの帰還者達を囲んでいると 人混みを掻き分けてコーチンがやってくる
「皆大丈夫だったの??」
「うん! 助けを呼んで来てくれてありがとうねコーチン」
「私は何も出来なかった…… 本当にゴメンね」
「何言ってるの!! コーチンだってボロボロの身体で村に助けを呼びに行ってくれたんでしょ?」
カユがコーチンを擁護していると ナゴも近寄って一声掛ける
「お前の行動は正しかった 女を戦場に連れて行くなんて野郎はクズだからな
あの時は俺の言うことに従ってくれて助かったよ」
「うん…… なんかお兄ちゃん逞しくなった??」
「なっ……!!? 俺はいつだって勇ましいだろ?!!」
「はいはい…… じゃぁリンクは私が介抱するからね」
カユがおぶっているリンクをコーチンに手渡し 彼女は宿屋まで飛んでいった
「我が妹ながら 先が心配だ……」
「へぇ…… ナゴも乙女が分かるんだぁ!」
「っうるさい!! ……まぁ俺としては得なんだがな」
「……??」
ナゴがそっぽを向いている 一足遅れてナゴとコーチンの父親がやって来た
「さすが我が息子ぉ!!!! ハッハッハ!!!!」
「だぁ~!! 引っ付くな親父!!」
「話は聞いてるぞ!! リンクを背中に乗せたんだってなぁ!!
あんなに昔からあの子だけはと嫌がっていたくせに~~
結局は最高の〝
「なっ!! ……断じて違う!!」
「どうだぁ? 背後を任せられる奴を乗せて飛ぶ誇らしさは?!」
「そんなんじゃない!! ゴーマを倒せたのも九割くらいは俺がいてのもんだよ!!」
「でも助けてもらった場面も一割あるってことだろう?? ……こいつで良かったって思わなかったか??」
「っ……」
「それが生涯の友だ 幼馴染みが心強い仲間なんて幸運はそう無いぞ~~?」
「俺はまだ認めてない!!」
「ハッハッハ!! まぁいい せっかく祝宴が開かれている 今日は飛べなくなるまで飲むぞぉ!!」
「ハァ…… カユはどうするんだ?」
「勿論参加するわよ!! ……やっとお酒飲めるし ……私達を祝う場なのに四人中三人も抜けちゃ締まらないでしょ」
大人達に出迎えられて広場へと向かうカユ
その後ろ姿を見て安堵するナゴは 親父に腕を掛けられながら後に続いた
場所は賑やかな宴会場から離れて静かな宿屋 もといナゴとコーチンの自宅へ
店番していた母親には話を通して一個室を貸して貰い 羽毛布団にリンクを寝かせるコーチン
「本当にゴメンねリンク…… 私は役に立てなかった」
「zzz……」
「ママと一緒に広場に向かうね 私も一応…… 大人として認められたから主役なんだ」
コーチンは部屋を出て行こうとしたが 何を思い詰め その場に踏みとどまる
「……自分の気持ちを秘め続けて 無邪気に子供のままでいられる時間は短いよね」
リトの少女もまた リンクの寝床に戻り その頬にクチバシを近づける
そして頬を擦り付け 感情を抑えきれない甘い吐息を漏らす
「好きだよ…… リンク……」
片翼で少し小さい彼の身体を抱きしめるコーチンは 僅かな時の中でその身を引いた
「でも駄目よね…… 私だって乙女だもの カユちゃんの気持ちも無視出来ない」
そう言い捨てて部屋を後にしてしまった
準備を終えている母親のもとへ何食わぬ顔を作り 何事も無かったかのように宴会の場へと合流する
一方でリンクは夢を見ていた
身に覚えのない庭園にて 金色に光る髪を帽子で隠している姫とその子の乳母との会話
〝 この唄は〝王家の証〟です 〟
〝 王家の使者である貴方にとって 旅の道中にて必ず助けなるでしょう 〟
〝 リンク…… これはあなたしか果たせない役目
〝黒い砂漠の民〟は着々と陰謀を企てております 〟
〝 その者の名は〝ガノンドロフ〟 いずれ貴方を苦しめる厄災となりましょう 〟
姫は自分の手を握ると悲しそうな顔で頼み事をお願いする
〝 リンク…… 三つの精霊石を集めてきて 〟
そう言って姫は中庭の窓から動こうとはしなかった
幼い彼女に代わって 乳母がリンクを見送ってくれる
〝 外までは私が案内しましょう 〟
懐から取り出したデクの実を地に叩きつけると 軽い頭痛と共にリンクは目を覚ます
「…………?!」
何の夢だったのか というよりは誰の夢だったのかと疑問に思っていると
外から綺麗なオカリナの音が聞こえてきた
その音色は夢で聴いた唄に似ていたことから
より鮮明に夢の映像を思い出し 彼は〝ゼルダの子守唄〟を覚えた