ゼルダの伝説:リフトツリーフォーク   作:滝翔

5 / 40
五話 闇夜を照らす小麦

外へ出ると 辺りは既に夜の帳に包まれ

近くの池に住むカエルの音楽家〝ゲッコー聖歌隊〟が寝静まる住民達の夢を心地良くしていた

それとは別に 丘の上では一人の少女がオカリナを吹いて月の光に照らされていた

 

リンクは近づいてみると それがカユだと気付く

 

「おはようリンク…… 随分夜中に目覚めたのね」

 

祭に参加できなかったリンクが申し訳なさそうに隣に座ると

丘の上から見える世界の全てを一望する

 

「凄いよねぇこの世界 私達が知らない場所が広がっているんだもん」

 

「……うん」

 

「上層の王都にも行ってみたいけどさ…… この世界樹から出たら何があるんだろうって思うよね

私達は小さい頃からリトを知ってるからだけど この樹の下にはまだ見たことの無い種族がいるんだよね」

 

下層にも音色が届くように カユはオカリナを吹き始めた

その曲を不思議に思うリンクはカユに尋ねてみると

 

「遠い昔に聴いたことがあるのよね…… 曲名は覚えてないんだけどね」

 

リンクはその曲がゼルダの子守唄だということを伝えると

 

「へぇ~~ 〝ゼルダ〟って言ったらハイラル王家のお姫様じゃない!! 一度は会ってみたいよね~」

 

「…………うん」

 

「何故かは分からないけど いつか会えると思うんだよね」

 

カユが自分の胸元を撫でると リンクは不安の表情を浮かべる

 

「うぅん…… 大丈夫 ここ最近不思議でね

布団で寝ていると下から小さな声が聞こえてくるんだ

おそらく女性の声……かな 何かを訴えているんだけど全然聞こえないんだよね」

 

「っ……」

 

「そうそう!! 唯一聞き取れたのは〝時の勇者〟って言葉だけ

……何を意味しているのかは分からないけど いつか下層に行けたら声の主を探しに行こうよ!!」

 

「うん……」

 

二人で指切りの約束を交わすと 急にカユが照れ始める

 

「それとさ…… このオカリナ…… 〝妖精のオカリナ〟って言うんだけどさ

リンクに上げるわ!!」

 

「……」

 

「迷いの森の先にある【トアル村】って場所で聞いた噂なんだけど……

遙か昔のコキリ族がハイリア人の子供に友情の証としてオカリナを贈ったんだよね

そのおとぎ話がその村で大事にされててね 大切な人に妖精のオカリナをプレゼントすると……

その…… 一緒になれるんだってさ!!」

 

「??」

 

恋呪(こいまじな)いなんだけど……!! 別にそういう意味じゃなくてね……!!」

 

リンクは別にカユと離れ離れになる予定が無いので

オカリナの必要性を感じていないことを伝えると

 

「いやそうなんだよね…… あれだ!! 儀式を無事通過したからお祝いだよ!!」

 

「っ……!!」

 

リンクは慌てて下の金麦畑へと転げ落ちる

急な行動にカユも目をまん丸にしながら心配していると

数分経ってリンクが戻ってきた

 

「これって……」

 

それは麦畑の稲を少し拝借して作った まるで黄金に輝く花の王冠

 

「わざわざ私の分のを用意しなくても…… それに私は金髪だから似合わないかもよ?」

 

と遠慮がちに拒んでいても頭に乗せて喜んでいるカユは

隣でオカリナを吹こうとしていたリンクを全力で止めようとする

 

「ちょっとリンク!! ……ダメ!!」

 

リンクは夢で聴いたゼルダの子守唄を再現しようと吹いてみただけだった

一通りの演奏を終えてカユを見ると 彼女の顔は真っ赤に染まっていて

 

「さっきまで私が吹いてたんだよリンク……」

 

「……??」

 

「その…… えと…… 間接キス……」

 

「…………!!!!?」

 

何故かリンクはオカリナを後ろに隠して何度も謝っていた

 

「別に気にしてないんだけどさ……」

 

目を逸らすカユは後ろを向いたまま両手をいじりながら質問を投げかける

 

「リンクってさ…… 好きな人とか いる??」

 

「……」

 

リンクの返答は村の皆だと答えると カユはただただ溜息を吐いて

 

「そう…… 私もよ そろそろ夜風も冷えてきたし家に帰ろっか!!」

 

「うん!」

 

二人は起ち上がって同じ方向へと歩いて行く 不意にカユはリンクの手を握っていた

 

「リンクはもう~~…… スケベな癖に鈍感なんだから……」

 

「……?!!!」

 

「シシシシッ!! 何でもありません!!」

 

 

ーーまだいっか…… 私もコーチンもまだ……

いずれ来る大事な決断をしなければいけないその時まで…… まだ……

 

 

同じ家の別々の部屋で分かれる二人

リンクは何の迷いもなく二度寝を カユはちょっぴりモヤモヤを抱いて各自安眠に就くのであった

 

翌朝からはいつもと変わらない毎日が始まる

寝ぼすけのリンクを窓の外へ放り投げるカユは 昨日の事はあっという間に吹っ切れていた

リンクはリンクで何食わぬ顔で農機具に手を付ける

 

稲穂の収穫が終われば次は麦穂 この地方では田畑の次に金麦畑が拝める土地なのだ

他と違って金麦の収穫時期が遅い理由は土と気候が特殊だという理由以外謎である

 

同じ季節に違う景色を見せるイナ村は〝勇者と女神がすれ違う場所〟としても有名だ

そんな恋煩いを思わせる名スポットに暮らすリンクは興味も抱かず

大人という自覚を少しは感じながら 麦の収穫をカユと一緒に行っていた

 

「ビール♪ ビール♪」

 

「フーン♪ フンフ~ン♪ フフ フーン♪ フンフ~ン♪」

 

カユは金麦から作られるであろうビールの歌

リンクは昨晩から耳に残るゼルダの子守唄を口ずさみながらご機嫌に作業を進めていると

 

「ここがイナ村だな?」

 

一頭の馬に乗って甲冑を身につけた一人の男が村に入ってきた

 

「もし? 私はハイラル王女の使いで参られたハイラル衛士です ここの長老は何処にいますかな??」

 

「リトの居住区【テバノス】の一番高いところにいると思います」

 

教えてあげるカユに一礼すると すぐに馬を走らせて行ってしまった

顔を合わせて首を傾げるリンクとカユは 気にせず作業に戻るのであった

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。