トレーナー。
それはこのウマ娘がいる世界において、いなくてはならない存在。
トレセン学園でトレーナーとしてここにいる俺は、冷蔵庫の中に入れておいたお茶を飲みながら、今日もいつもと変わらず、ウマ娘たちのトレーニングメニューを考えていた。
「トレーナー!!おっっはよー!!!」
超ハイテンションで俺に抱きついてきたのは、俺が今一番愛でていると言っても過言ではないトウカイテイオーだった。
「テイオー、朝から元気だなぁ...」
「もちろんっ!! こうしてトレーナーとすぐ出会えるだもん!」
出会えるというよりかはテイオー自ら俺に向かってきた気がするのだが...
「トレーナー? 元気ないの??」
「あぁ、最近ちょっとウマ娘たちのことを考えてたら寝不足続きでな...」
トレーナーというのはウマ娘たちの面倒をみる大事な人物。寝る間も惜しんで色んな作業をするものである。
「トレーナーも大変だね... 手伝おっか?」
正直もの凄くありがたかったのでここは素直に承諾した。
「やったぁ〜! じゃあトレーナーの膝の上、お邪魔するね〜!」
そう言うとテイオーはいきなり俺の膝の上に座ってきた。
可愛すぎる。
「テイオーは、今日これがしたい!っていうトレーニングはあるか?」
「うーん...ボクはトレーナーが決めたやつならなんだってやるよ!」
「とてもそれは嬉しいんだがスタミナ切れとかには気を付けろよ?」
「分かってるよトレーナー! このボクをなんだと思ってるの? 目指すは無敵の三冠ウマ娘なんだよ?」
「いやまぁそれは分かってるけど...」
「それと.......トレーナーと.........」
「ん? なんか言ったか?」
「ううん! 何でもないよ! とにかく、早くトレーニングしよ!!」
そして俺は仕事も終わってないのに関わらず、朝の6時からテイオーに引っ張られるがまま、トレセン学園の大きなトラックに連れてこられた。
「見ててね、トレーナー...! えいっ!!」
時速55km程で走るテイオー、トレーニングであるため、もちろん本気ではないが、人間である俺から見るとめちゃくちゃ速い。
ウマ娘の視点が気になるなぁ...とつくづく思ってしまう。
「どうだった? トレーナー!」
テイオーの走りっぷりに見蕩れていたためかストップウオッチを止め忘れていた。
「あっ...速かったよ」
「そうでしょ〜?で、タイムは...?」
「すまん!もう1周!!」
「やっぱりトレーナーはいつもだね!」
テイオーはそう言いながら笑う。
こうしてテイオーとのトレーニングを続けているうちに時刻は7時を過ぎていた。
「あ、もうこんな時間か...急いで他のウマ娘たちのトレーニングも....テイオー!ちょっとそこで待ってろよー!!」
他のウマ娘たちを起こすため、トレセン学園に戻ろうとすると
「ねぇ、今なんて言ったの??」
テイオーは急に語気を強めて喋る。
「いや...そこで待ってろって...」
「そこじゃない!!! その前、なんて言った??」
「他のウマ娘たちもって...」
そう言うとテイオーはいきなり俺をトラックに連れてきたよりも強く引っ張ってきた。
さすがウマ娘だ、パワーが強すぎる...なんてこんなとこでそんなこと考えている場合ではないだろう...
そのまま俺はトレセン学園の敷地内であるにも関わらず、誰も入らないであろう小さな部屋に連れてこられた。
「テイオー!これはどういうことなんだ!!」
テイオーは無言だ。
こちら側が何度呼んでも応答してこない。
「テイオー!! テイオー!!!」
10回ほど呼んだ時だろうか、テイオーはこう言った。
「ねぇトレーナー、ボクが一番好きな人って誰か知ってるよね...??」
「もしかして...って言わずもがなだが...俺か?」
「ぴんぽーん! そう、ボクはこの学園に入って、トレーナーに初めて、その場で一目惚れしたの...」
「そうだったのか...」
もちろんテイオーは俺が好きなんだろうなということはなんとなく察していた。
しかし、一目惚れしたという事実には驚いた。
「ねぇトレーナー、じゃあもう1個。 どうしてトレーナーは最近寝不足続きなの?」
「それはさっきも説明したじゃないか...ウマ娘たちのことを考えt」
「うそ!!!」
「うそつき!!!!」
「他のウマ娘たちのこと...考えてるだけじゃないでしょ...?」
これには何も言い返せなかった。
「ねぇ、なんで平気で嘘をつくの? ボク、トレーナーは好きだけど嘘をつくトレーナーは好きじゃない。」
「じゃあどうすれば...」
「そんなの...ボクだけを見てればいいのっ!!!!」
一瞬にして目つきが変わった。
「トレーナーがいないとボク、なんでこうしてここにいるんだろうとか考えちゃうの。」
「いくらなんでもそれは言い過ぎじゃ...」
「言い過ぎなんかじゃないもん!!! ほんとのことだもん!!!」
テイオー様はお怒りのようだ。
正直、どんなテイオーも好きだからこの状況においてのテイオーも好きだった。しかし、今となっては逃げ出したいという気持ちも少しだけある。
しかし、いつの間にか俺は椅子に座っており、手首には手錠、それにほとんど全身に縄が縛られており、椅子と固定されていた。
「んっ.....これは...」
「トレーナー、朝からお茶飲んでたでしょ? それに睡眠薬を昨日の夜のうちに混ぜておいたの!」
確かにここに連れてこられるまでの道中...猛烈な眠気に襲われ寝てしまった、それが原因だったのか...
「けど俺は部屋に鍵を掛けたはずだぞ? どういうことだ??」
「そんなことも分かんないの? トレーナー」
そう言うとテイオーは俺に鍵を見せてきた。
「これはトレーナーの部屋の鍵。作ってもらったの! それにこれも見て!」
そう言うとテイオーはスマホを取り出し、操作をする。
そして俺にとある画面を見せてきた。
「こ...これは...!?」
間違いない。俺の部屋だった。
「監視カメラをいくつか置いてスマホから見てたの。 トレーナー、あの部屋に何人かウマ娘を連れてきてるよね?」
「あれは単純に...トレーニングについて教えてただけだ!!」
「また嘘ついた。 分かりやすいね、トレーナーって。 キスしてたくせに。」
「な、何を言うんだ!!そんなこと...し、してるわけないだろう...??」
「そこまで言うなら...この映像...見る? スペちゃんだけじゃなくてスズカにマックイーン、スカーレット、タイキ先輩とも...」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!!! 許してくれ!!!頼む.....」
「仕方ないなぁ... けどここにはボクとトレーナーの2人だけ...あとはもう...分かるよね...??」
なんとなく分かっていた。きっとテイオーのことだ、解放なんて甘ったるいことはしてくれないと。
「あぁ、分かってるよ。」
「ほんとっ!? じゃあ遠慮なく!」
こうして俺はテイオーとこういった形で生涯を過ごしていくことなった。
テイオーは一番愛でていた分、もっと良い形で歩めたらいいなって思っていたのに。
まさか、睡眠薬に監視カメラ。ここまでして俺を独占したいという欲が強いとは思わなかった。
トレーナー失格かもしれんな..........
天才はいる。悔しいが。