白き翼の物語~Trail of klose ~   作:サンクタス

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はじめまして。サンクタスといいます。

いきなりですが、私は『空の軌跡』が、そしてクローディア殿下が大好きです!それが興じて、小説まで作ってしまいました。要は自己満足のための作品です。そこのところをご了承ください。

また、断っておきますが、この話には残酷描写はありません。(追記 もしかしたら今後あるかも………)オリ主でもないです。まず小説初心者の私はそんなレベルの高いものは書けません。

それを許してくれる方、そして『空の軌跡』が大好きな方、そしてクローゼがお気に入りキャラだった方(例えばFC登場時からパーティーメンバーに入れっぱなしにしていた等)に読んでいただけたら嬉しいなあと思っています。

また、作者はそこそこ忙しいので、投稿スピードは遅いです。(じゃあなんで小説なんて書いてるんだ!)もしかしたら突然投稿が一ヶ月くらい止まることもあるかもしれません。それに予定ではこの話はかなり長編になりそうです。だから、ぜひ長い目で見ていてください。お願いします。

最後に、私は、自分の作品が多くの人に読んでもらい、たくさん評価(良悪含め)していただけるなら、こんな嬉しいことはありません。私の作品が少しでも多くの人に楽しんでもらえることを、願おうと思います。

二月二日、改良しました。


序章
第一話~エテルナ号沈没事件~


~リベール王国・王都グランセル城内~

 

 

 

七耀暦1187年某日、その日、王都(グランセル)の中央、ヴァレリア湖に浮かぶグランセル城内は、かなり緊迫した空気に包まれていた。もう真夜中だというのに人影が慌ただしく行き交い、あちこちで怒号も飛んでいる。そんな中、城の東部に位置する王家直属の軍隊、王室親衛隊の本部から、この物語は始まる。

 

 

 

 

 

~リベール王室親衛隊詰所~

 

 

 

青色の軍服に身を包んだ親衛隊隊士達が、ここでもまたキリキリと走り回っていた。

 

「エテルナ号の現在位置は!?」

 

「カルバード海上と思われます!」

 

「軍に応援を頼むのだ!急げ!!」

そしてその中に、ひときわ厳しい声で命令を出す初老の男性の姿があった。その人こそ、王室親衛隊の鬼の大隊長と仇名され、後に『剣孤』とも呼ばれる事となる、フィリップ・ルナール大佐の姿があった。彼は何かの情報収集に努める親衛隊員達に次々と指示を出していく。

 

「導力通信は通じたか?」

 

「………だめです!応答ありません!」

 

「むう…………。」

フィリップは細身の目をつむり低く唸った。彼は座っていた椅子からすっくと立ち上がり、せわしなく動く親衛隊隊士達に号令を改めてかけた。

 

「諸君!今の我らには時がない。なんとしてでも両陛下を救い出すのだ!」

 

「イエス・サー!!」

 

 

 

 

それは誰もが予測不能な出来事だった。隣国カルバード共和国の視察から戻るところだったリベール王国王太子・ユーディス夫妻が乗った豪華客船エテルナ号が、突如発生した嵐に巻き込まれ、連絡が取れなくなったのだった。

フィリップは焦っていた。嵐、連絡の不通、それは現在の状況が最悪である事を意味していた。

 

(しかし現場から何万アージュも離れたこの場所で一体何が出来るのだろう。ユーディス陛下、どうかこの無力なフィリップを、そして陛下の無事をお祈り申すことしか出来ないことをお許し下され…)

一人、呟いた。そう、彼には何もできないのだった。それが判っているだけに、彼は特別悔しさで満たされていた。

 

 

 

 

 

~謁見の間~

 

 

王宮のほぼ中央に位置するこの場所に、一人の女性がいた。この人こそが、小国リベールをエレボニア帝国やカルバード共和国からの政治的・軍事的圧力から守り、そして慈愛をもって国政を行うことから全王国民から慕われている、リベール王国第二十六代女王、アリシア・フォン・アウスレーゼである。御年四十五になるが、その政治手腕は衰えるどころが、ますます強かなものになっていた。

しかし冷静な彼女には珍しく、そわそわと何かを待っていた。そこに一人の軍服姿の男が現れた。緑色の軍服。リベール正規軍の人間だった。

 

「申し上げます!」

彼はアリシア女王の前に足早に近づき跪く。

 

「ご苦労様です。何か進展があったのですか?」

今王国軍若手のホープで、同じく若手のリシャールに並ぶとも言われる、マクシミリアン・シードは言った。

 

「ハッ。現在ユーディス両陛下が乗船中のエテルナ号が、カルバード領海内で発見されました。そして先ほど王国軍がレイストン要塞から先遣救助部隊を向かわせたようです。しかし現在カルバード領海上は暴風が吹いており、飛行艇での接近は非常に困難な状態ということです。」

 

「…そうですか…わかりました。」

シードが滞りなく状況を報告すると、アリシア女王は少し顔をうなだれた。

 

「ご心境、お察します。」

シードは落ち込むアリシア女王を見かねて言った。

 

「先ほど王室親衛隊も独自に救助部隊を派遣したそうです。臣下一同、全精力を注いで両陛下の救助に当たっておりますので、どうかご安心を。」

 

アリシア女王が気が気でない状況なのは、シード、いや、城中の主な人間はほとんど感づいていた。彼は気を利かせて言ったつもりだったが、アリシア女王はただいつものように微笑むだけだった。

「気を使ってくれてありがとう。下がって結構ですよ。」

 

「ハッ。失礼致します。」

 

 

 

 

 

一見強かそうなアリシア女王だったものの、シードが危惧していた通り、彼女の胸中は不安と恐怖しかなかった。シードが退出するのを見届けると、彼女は額の汗を素早く拭き取った。

 

「(皆が心より気がかりに思っているのは判っています。しかし………私が本当に気が気でない状況であることは、皆に見せるわけには……………。)」

北の軍事大国エレボニア帝国、東のカルバード共和国に囲まれたリベールは、図らずとも二大国の思惑に左右されがちだった。そのしがらみから独立し、国を繁栄させたアリシア女王は正に王国の屋台骨のような存在。その彼女が、このような些細な事で動揺し民達に心配の種を蒔く事だけは、絶対に避けなければならない……………非情だが、それが彼女の責務であった。

 

彼女は、海上の船に漂っているのであろう自分の一人息子、そしていつか自らの跡を次ぎ、次期リベール王になるはずのユーディスに、想いを寄せた。

 

「(ユーディス………あなたには王太子としてまだ多くのやるべきことが残っています。かわいいあの子もあなたの帰りを待っているのですよ。)」

彼女は先日一歳になったばかりの孫の事を思った。考えたくもない話だが、もしユーディスらが戻れなかったら……彼女に、二十年前の自分と同じ試練を与えてしまうかもしれぬ……それは、それだけは、絶対に避けたかった。

 

「(どうか無事に帰ってきて、そしてまた可愛いあの子と一緒に顔を見せておくれ…)」

ふと立ち上がって、この世の全てを司ると伝えられる『空の女神』(エイドス)に祈りを捧げる女王。

 

「女神よ………どうかあの子達に七曜のご加護を……………」

リベール王国の最高権力者である彼女でさえも、自然の脅威の前にはただ祈ることしか出来なかったのだった。

 

 

 

 

 

~翌日・謁見の間~

 

 

「申し上げます!」

謁見の間に、凛々しい声が響いた。

その日、謁見の間にはリベール王国軍の事実上最高責任者モルガン中将や、カシウス少佐などの重臣達がアリシア女王と共に連絡を待っていた。そこに小走りの軍用靴の音が響く。カシウスの部隊に配属された超有能新人、アラン・リシャールだった。彼は軍の救出部隊の現地監督者としてカルバードの海上に向かっていた。

 

「待っていたぞ。リシャール。」

カシウス少佐は自分の直属の部下であるリシャールの到着に安堵した。何しろ一歩間違えれば救出部隊も遭難するかもしれない状況だと聞かされており、将来有望な部下を死なせるわけにはいかないと、気を揉んで待っていたのだった。

 

「状況は?」

モルガンが少々声を落として聞く。『武神』と称され、その豪傑ぶりは広く知れ渡っていたが、全く怯まず答えるリシャール。

 

「ハッ。たった今レイストン要塞から出発した部隊から連絡がありました。」

彼は口早に報告した。誰もが僅かも身動きせず、静けさが耳を突いた。

 

「それで、どうだったのですか?」

アリシア女王は静かな声でリシャール尋ねると、

 

「ハッ、それが………。」

彼は言いにくそうに口ごもった。

 

「どうした?続けるが良い。」

カシウスが促すと、一瞬間を置いてから、リシャールは顔を伏せ、告げた。

 

「嵐が収まった所を見計らって接近して見たところ、エテルナ号はカルバード領海上の岩礁に接触し大破しているのを確認したとのことです。…………乗客の姿は確認されなかったとの事でした。」

 

「…………………。」「……………………。」「……………………。」

 

謁見の間に再び静寂が広まった。それはすなわち、彼、ユーディス王太子の死亡を何よりも意味していた。

沈黙を破ったのはカシウス大佐だった。

 

「現在の救助活動の状況は?」

 

「…ハッ。現在王国軍と王室親衛隊が共同で救助活動を行っておりますが、未だ生存者は発見されていないとの事です。」

 

「わかった。ご苦労、下がって良いぞ。」

 

「ハッ。失礼致します。」

 

 

 

 

カシウスはリシャールが謁見の間から出るのを見届けてからアリシア女王に話し掛けた。

 

「陛下……この度は心からお悔やみ申し上げます。」

彼が深々と頭を下げると、アリシア女王は首を振る。

 

「いや、良いのです。この様な結果になる事は初めに報告を聞いてから既に覚悟していました……。」

その時、傍で聞いていたモルガンはアリシア女王の前に立ち、深々と頭を垂れた。

 

「モルガン中将?」

アリシア王女は驚いて尋ねると、

 

「この度は私めの力が及ばずに、両陛下を守る事が出来なかった事、深くお詫び申し上げます……。」

 

「なぜ、あなたが謝られるのですか?今回の事態は言ってみれば自然の気まぐれによる出来事。あなたに責任はありませんよ。」

アリシア女王はあくまで静かに言った。

 

「それよりも私は、あの子、クローディアの事が気掛かりなのです。あの子は両親のいない中、そしてリ

ベールの次期の王・第一候補という重圧を若くして背負って生きていかなければならないでしょう。私はそれが不憫でならないのです。」

 

「陛下……。」

 

「(そう言えば陛下も二十歳という若さで即位なされたのだったな……。その重圧をよくご存じなのだろう……。)」

封建的な制度はほとんど取り払われていたリベールでも、若かったアリシア女王の即位に反対する者は多かった。政策の妨害や女王暗殺計画などが囁かれる中、女王自身や軍の人間が心休める事ができたのは、即位から十年後だったのだ。モルガンもその時の事が嫌でも頭に浮かび、渦中にいた女王の辛さを思うのだった。

 

 

 

 

「失礼致します。女王陛下。」

その声と同時に、突然一人の初老の男が入ってきた。親衛隊の青い服に身を包んだ彼はまっすぐ女王の前に進み出た。

 

「あ、貴方は……!」

 

「フィリップ殿!?」

カシウス達が驚いているのも気にせず、フィリップはアリシア女王の前に立ち、その場に跪いた。

 

「突然の参上、無礼と存じ上げておりますが、女王陛下にぜひ伝えたいことがある故、参上致しまし

た。」

フィリップはそう言うと、その場に膝をついて土下座した。

 

「フィ、フィリップ殿!?いったい何を………?」

カシウスが驚くのも気にせず、彼は続けて叫ぶ様に言った。

 

「女王陛下、誠に申し訳ございません!」

彼はもう頭を床に擦り付けんばかりだった。

 

「フィリップ殿、あなたまでそんな事を……今回の事態は………」

 

「いや、何もおっしゃらないで下され。私ども王室親衛隊の責務は王族の方々をお守り申す事、そのためには命も惜しまぬ覚悟で臨まなくてはなりませぬ。」

 

「………………。」

 

「しかし私共は陛下を守れませんでした。王室の方々を守れない王室親衛隊など、そんな物には価値などありませぬ。」

 

「フィリップ殿!」

フィリップの自虐的な発言をモルガンは咎めた。しかし彼は左手でモルガンを押しとどめるように突き出して発言を遮る。

 

「お待ち下さい、モルガン殿。確かに今回の事故は自然の気まぐれであり、直接的な責任は誰にもないかもしれません。しかし、それでは私の気が済まないのです。そこで女王陛下に一つお頼み申し上げたい事があるのです。」

フィリップは少し顔を上げ、アリシア女王に視線を向けた。

 

「どうか私に、王室親衛隊大隊長の任を、辞させて頂きたいのです!」

 

「!!」

 

「フィリップ殿、本気なのですか?」

 

「これはけじめでございます。王室親衛隊に入隊して私ももう数十年、私はただ王室の方々を守る事だけを生きがいにしておりました。しかし、今回私は陛下を守れなんだ。それは事実でございます。私は、王室親衛隊大隊長として、そして私自身にけじめをつけたいのです。」

悲痛な声で訴えるフィリップを、今度は誰も遮らなかった。

 

「それに、私ももう随分年を取り申しました。もうそろそろ私も次の世代にこの座を譲ろうと考えております。その代りと言っては難でございますが、他の親衛隊員には今回の事故の責任を問わないで頂きたいのです。」

フィリップは半ば懇願する様に言った。女王の返答は早かった。

 

「……そこまで考えていらっしゃったのですね。わかりました。認めましょう。」

 

「陛下、よろしいのですか?フィリップ殿程の人材を………」

モルガンはあっけなく認めた女王に尋ねる。

 

「良いのです。モルガン中将。これはフィリップ殿本人が望んでいること、私は国民や家臣の望んでいる事にはできるだけ答えてきたつもりです。どうしてここでその節を曲げる事が出来ましょう。」

 

「……そこまでおっしゃるなら私どもも何も言いますまい。カシウスもそれでいいか?」

 

「女王陛下が決められた事です。私も異存はありません。」

カシウスは眼を閉じながら答えた。

 

「それでは……フィリップ・ルナール、あなたを親衛隊大隊長の任から解かせていただきます。長い間、ご苦労様でした。」

アリシア女王は立ち上がってフィリップに告げた。途端に彼の表情が綻び、翠の眼が潤んで輝いた。

 

「陛下……ありがとうございます………。」

 

「その代り、」

とアリシア女王は続ける。

 

「あなたには王室直属の執事としてこれからは働いてもらいます。これからもリベールのために尽くしてくれる事を楽しみにしていますよ。」

 

「ありがたき幸せ………。私の最後の最後でのわがままをお聞き入れ下さり誠に光栄至極でございます。」

改めて立ち上がり、深々と頭を下げるフィリップ。

 

「あなたは本当に長く王室に尽くしてくれましたからね、そのご褒美の様な物だと思って下さい。」

 

「女王陛下、本当にありがとうございます……。」

彼はしばらく頭を上げず、ひたすら感謝の言葉を述べ続けていた。

 

 

 

 

 

~王都グランセル、北区画~

 

 

カシウスとモルガンは、ツァイス地方の軍事要塞、レイストン要塞に帰還するため飛行場へ向かった。開発されてまだ一年と経たない導力飛行船だったが、既にリベール王国では実用化され、五つの地方を結ぶ路線が完成している。

 

「全く、女王陛下は気丈なお方だ。ご自分の一人息子を亡くされたと言うのに……。」

最後まで、涙どころが感情の僅かな昂ぶりさえ見せなかったアリシア女王。その強靭な精神力には慰めの言葉など無用の物なのだろうか……………そんな事を思いながらモルガンは言う。

 

「それがこのリベールという国の王たる所以なのでしょう。それくらい豪胆でないと帝国との交渉など出

来ないのかもしれませんね。」

 

「ふっ、その通りかもしれぬな。しかし、ユーディス陛下が遺してくださったクローディア殿下は………どうなるのだろうか。ユーディス陛下が亡くなられた以上、殿下が王位継承順位では一位になるはずだが……………」

 

「そうですね、陛下も顔には出してはおられませんでしたが、内心はずっと気にかかっておられたのでしょうな。」

カシウスも件の姫と同じ年頃の娘がある事もあり、軍人である事以上に、人事とは思えなかった。

 

「リベールの将来に関わる事だからな。その時はわしらのバックアップが大事になってくるだろうな。」

 

「やれやれ、お役目とは言え、忙しくなりそうですな。」

冗談混じりに言ったカシウスだったが、この時リベール王国の危機が既に目前に迫っている事には、さすがの彼も知る由もなかった…………。




カシウスやモルガンの階級が違うのは仕様です。さすがに五年間階級が変わらないのも変だと思ったので。

感想があると書く方のモチベーションも違うのでぜひたくさん書いてください!お願いします!
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