春を導くは偉大な赤いアイツ   作:ヒヒーン

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偉大な赤いアイツ、日本行きを決める

 俺は子供の頃から競馬が好きだった。

 

 爺さん、父さん、叔父さん、兄貴、そして俺。我が家に生まれた男児は遠い祖先を含めて何故か皆して競馬にハマるという謎現象が起きていた。

 

 1度不思議に思い爺さんに何でなのか尋ねてみたら、何でもうちの家系を辿っていくと1番最初の御先祖様が馬の調教師だったらしいので、御先祖様の馬好きが受け継がれているのだろうと笑いながら教えてくれた。

 

 それが本当であれ嘘であれ、俺は大人になってもずっと競馬のことが好きだった。

 

 可愛い馬が、凛々しい馬が、素敵な毛並みの馬が、カッコイイ馬が、俺達の夢を乗せてターフやダートを駆けていく姿はいつ見ても心を踊らされた。

 

 好きになった馬が何頭も居た。逆に嫌いになった馬も何頭も居た。けれど、彼ら彼女らが1度レースで走り出すと、そんな子供じみた好き嫌いなんてどっかに吹っ飛んで純粋に頑張れ! って気持ちでいっぱいになった。

 

 どの馬が1着になっても、最後には笑って祝福する。それがどれだけ大事なことで、幸せなことなのか。分かるのはきっと俺と同じ競馬バカぐらいだろう。

 

 出来ることならば死んでからもずっと競馬を楽しみたいと、ある意味で言えば競馬に魂を虜にされちまった俺はある日……交通事故に遭った。

 

 一瞬だった。信号無視した車に轢かれ、天地がひっくり返ったかと思えば次の瞬間には激しい痛みが全身を駆け巡り、地面が俺の血であっという間に染まっていくのが見えた。

 

 明らかに出血の量がヤバい。このままではすぐに失血死してしまうのが素人目から見ても理解出来た。

 

 ───こんな所で終わるのか。俺はまだまだ競馬を楽しみたいのに、こんな呆気なく人生が終わってしまうのか。

 

 そう思った途端、俺はふざけるな! と内心で激高する。こんな終わりなんて認めてたまるものかと思いの限り叫んだ。

 

 けれど、どれだけ嫌だと吼えた所で現実は非情。凍えるような寒気と共に俺の意識は徐々に闇の中へと落ちていく。

 

 もはや死は免れない。その事実を受け入れるしかなくて、俺は諦めきった心で瞳を閉じる。

 

 あぁ、願わくばまた競馬を楽しめる人生を送れますようにと。居るかも分からない神様にそう祈りながら俺は完全に意識を手放し、二度と目覚めはしない……筈だった。

 

「見て! 目を開けたわ!」

 

「おぉ! なんとも綺麗な目をしておる! この子は将来アメリカを背負って立つウマ娘になるぞ!」

 

 次に意識を取り戻した時、俺は赤子の姿になっており、ウマ娘という珍妙な生き物へと生まれ変わっていた。

 

 ……どうしてこうなった? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───セクレタリアトというウマ娘が居る。

 

 ウマ娘にしてはかなり大柄な体格に、炎が燃えているかのように赤みがかった長い栗毛というかなり特徴的なそのウマ娘はアメリカにおいてとても目立つ存在であった。

 

 デビュー当時はそこまで人気という訳ではなかったが、彼女が頭角を現し始めたのはその次のレースからだ。

 

 2着のウマ娘を6バ身差で千切って快勝すると、セクレタリアトは次々と圧倒的なバ身差で以てレースを勝利し始めた。

 

 時折アクシデントに見舞われたりして敗着することもあったが、ほとんどのレースで勝利を手にしてきた。

 

 だが、彼女が本当に畏怖されるようになり始めたのはクラシックになってからである。

 

 日本における皐月賞、日本ダービー、菊花賞の3つのレースを制したウマ娘を三冠ウマ娘と呼ぶのと同じように、アメリカではケンタッキーダービー、プリークネスS、ベルモントSの3つのレースを制したウマ娘を三冠ウマ娘と呼ぶのだが、セクレタリアトはこの3つのレースでとんでもないことをしでかした。

 

 なんと、彼女は栄えある三冠レース全てのレコードを塗り替えて勝利したのだ。

 

 しかも、ベルモントSにおいては2着のウマ娘から31バ身という圧倒的大差をつけてゴールし、従来の記録から2.6秒も縮めた2分24秒0で駆け抜けたことでダート12ハロンの世界レコードを大幅に更新している。

 

 普通のウマ娘ではどれだけ頑張っても26秒台が限界、運が良ければ25秒台のタイムを出せるかもしれないが、24秒というのはもはや次元が違いすぎていて、この記録は永久に更新不可能とさえ言われるぐらいにはずば抜けていた。

 

 勝ち時計を全てレースレコードにし、その実力を全米へと見せつけたセクレタリアトは紛うことなき怪物としてその名を広め、彼女を畏怖する者達からその容姿と圧倒的な強さからアメリカにおいて伝説とされるマンノウォーというウマ娘と同じ「Big Red」という異名を付けられた。

 

 彼女はその後も様々なレースに出続け、圧倒的なバ身差の勝利と共にレコードを容易く塗り替えまくった。

 

 唯一抜きん出て並ぶ者なし。ウマ娘達の祖先とも言えるエクリプスと同じように、レースに出ては1人勝ち続ける彼女は正に生きる伝説であり、それは引退する最後の時までずっとそのままであった。

 

 数々のレースを総ナメし、引退してからはあっという間に殿堂入りを果たしたもののその人気は衰えることなく、現在でもアメリカにおいて史上最も偉大なウマ娘として名高いセクレタリアト。

 

 そんな彼女は今───

 

「お、ようやくオグリキャップが引退したか」

 

 自分の部屋で呑気にパソコンをカタカタと打っていた。

 

「う〜ん、やっぱり時系列がおかしいな。オグリキャップが引退する頃にはもう亡くなってる馬も居たはずなのに、生きてるどころか元気に走りまくってる奴らも居るし……これもウマ娘になったことが影響してるのか?」

 

 パソコンの画面には日本のとあるネットニュースが映っており、そこには一面に大きく芦毛のウマ娘の写真と共に『オグリキャップ引退!』の文字が書かれている。

 

 マウスを操作して画面を動かし、違うネットニュースを開いてみるもほとんど似たり寄ったりな内容ばかりであり、いくつかの記事を読んでいたが暫くして興味を失ったセクレタリアトはパソコンの電源を落とした。

 

「ん〜……この世界に生まれ変わってからもう大分経つけど、相変わらずよく分からん世界だなぁ……」

 

 固くなった身体を解すため大きく背伸びをすると、彼女の胸に着いている豊満なソレもブルンと大きく揺れた。

 

「ちっ、邪魔くせぇなこれ。男だった頃は大好きだったけど、いざ自分に出来たら邪魔でしかねぇな。肩もこるし」

 

 そう言って恨みがましく自分の胸を睨むセクレタリアト。彼女は今聞く人によっては殺意の眼差しを向けられてもおかしくない発言をしたのだが、当の本人はそのことに気づいた様子は無かった。

 

「はぁ〜……ん?」

 

 気落ちしたセクレタリアトがため息を吐いていると、パソコンのすぐ横に置いていたスマホからピコンピコンという着信音が鳴った。

 

 何だ? と思い彼女がスマホを手に取って画面を確認してみれば、そこには【TS】という名前の下に【新着メッセージがあります】と書かれているトークアプリの通知が来ていた。

 

「お、タイキからじゃん」

 

 気落ちした様子から一転してどこかワクワクとした様子でセクレタリアトがスマホを操作してトークアプリを立ち上げると、そこには英文で【今日はオグリの引退パーティ! とっても大盛り上がりしてます!】という1文と共に大勢のウマ娘達がバーベキューをしている写真が載せられており、その写真の中には先程のネットニュースで一面を飾っていたオグリキャップの姿もあった。

 

「いいなぁ……」

 

 写真を眺めながらポツリと呟く。セクレタリアトが食い入るように写真を眺めていると、次々にメッセージと新たな写真が送られてくる。

 

【オグリとっても大食いです! お肉を焼いているタマが泣いちゃいそう】のメッセージと共にご飯大盛りどころかライスタワーとでも呼ぶべきぐらいに白飯をお椀に盛って、お腹を大きく膨らませていてもなお肉を食べているオグリキャップと、そのすぐ近くで涙目になりながらも沢山の肉を焼いている芦毛のウマ娘の写真。

 

【ウマアネゴがスズカに大食いタイマン勝負を仕掛けてます! スズカ頑張れー!】のメッセージと共に勝気な顔をした褐色肌のウマ娘が引き攣った笑みを浮かべるウマ娘に向けて箸を突きつけている写真。

 

【ルドルフ会長達は今日もとても凛々しくてカッコイイです! いったい何の話をしてるのかな〜?】のメッセージと共に三日月のような白い前髪がトレードマークのウマ娘が右目が隠れ気味なショートに目元の化粧が目立つウマ娘の背後に立って何かを囁いている写真。

 

 どれもこれも見ていて実に楽しそうだ。そのパーティに参加することが出来ればとても楽しいこと間違いなしだろう。

 

「いいなぁ……いいなぁ……!」

 

 送られてくる何枚もの写真を見て、セクレタリアトはワナワナと震え出す。

 

 遠い日本の地にて現在進行形で行われている楽しいパーティに、不躾とはいえ楽しそうであれば参加したくなる気持ちは誰にでもあるだろう。

 

 だからこそ、彼女は思う。

 

「いいなぁ! 俺もルドルフ達と会いてぇなぁ! 馬の方もリアルでもう一度会いたいけどウマ娘の方も直接会いてぇよちくしょー!!」

 

 パーティよりもそれに参加しているウマ娘達に会いたくて会いたくて仕方が無いと。ベッドの上に身を放り投げて、子供のように駄々を捏ねてジタバタと暴れる。

 

 何を隠そう、実は彼女は前世とも呼ぶべき世界にて日本の競走馬の中でも特にシンボリルドルフやオグリキャップといった有名馬の大ファンであった。

 

 彼らが現役だった頃はレースの度に仕事を休んでまで馬券を持って競馬場に赴いて応援していたし、引退してからは定期的に各地の牧場へ足を運んで元気かどうか様子を見に行くぐらいには大好きだったのだ。

 

 応援していた馬が美少女になってしまったものの、彼女達が成し遂げたその功績は紛れもなくセクレタリアトが愛してやまなかった名馬達と同じもの。ならば、前世からの1ファンとして実際に会ってみたいと思うのは自然だろう。

 

「あぁ〜俺も日本に行きてぇなぁ〜」

 

 足をバタバタと動かし、ゴロゴロと転がるその姿を他の者が見れば、彼女がアメリカにおいて史上最も偉大と謳われるウマ娘だとは到底思えないぐらいには威厳が無かった。

 

 むしろ、身体だけ大きくなった駄目な子供のようにしか見えないこと間違いなしだった。

 

「別にもう引退したから行っても問題ないだろうけど、それはそれとして仕事がなぁ……」

 

 煩わしそうに顔を歪めるセクレタリアト。彼女は既にレースから引退しているものの、その人気っぷりと抜群のプロポーションからテレビやモデルの仕事などで引っ張りだこなのだ。

 

「あ〜あ、俺もタイキみたいに日本へ行けたらなぁ……ん? 待てよ?」

 

 気ダルそうに願望を垂れ流していたセクレタリアトだが、ふと何かに気付いたようで頭の耳がピンと跳ね上がった。

 

「ほぼほぼ仕事のせいで通えてないとはいえ、一応俺もまだ在籍してたはずだ……理由もちゃんと筋が通るはず……」

 

 彼女の思考を表現するかのように、髪と同じ色の尻尾がグルグルと回っていたが暫くして急にスンと止まった。

 

 そして次の瞬間、セクレタリアトはガバリ! とベッドから身を起こす。その顔には先程までと打って変わって笑みが浮かんでいた。

 

 ……悪いことを思いついたと言わんばかりの、ニヤリとした笑みが。

 

「よし、日本へ行こう!」

 

 その決断が後にとあるウマ娘の運命を大きく歪ませることを、彼女はまだ知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ところ変わって日本のトレセン学園にて。オグリキャップの引退を盛大に祝うパーティの立役者の1人であるタイキシャトルは数時間経っても今なお大盛り上がりするパーティを目にしつつ自前のスマホで写真を撮っていた。

 

「タイキ、さっきから何してんだ?」

 

「Yeah! アメリカのフレンドにパーティの写真を送ってマス!」

 

 パシャパシャとパーティの会場の至る所を撮りまくっていると、パーティが始まってからずっと写真を撮り続けているタイキシャトルのことを不審がったヒシアマゾンが近付いてきた。

 

 ちなみにその遥か後ろには青い顔をして椅子に座っているサイレンススズカの姿があることから、大食い勝負はどうやら彼女が勝ったようだ。

 

「へーどれどれ……って、ほとんど変な写真ばっかじゃねぇか。こんなの送りまくってその友達は怒ったりしねぇのか?」

 

 ヒシアマゾンがタイキシャトルのスマホを横から覗くと、そこには人参ジュースの飲み比べをするマルゼンスキーとスーパークリークの写真や、肉を片手に水晶玉で占いをしているマチカネフクキタルの写真、変顔をしているゴールドシップの写真などなど……まともそうな写真が数枚ぐらいしかないぐらいには酷い写真ばかりだった。

 

「ノープロブレム! 彼女もパーティが大好きデス! 楽しい写真を送るといつも喜んでくれマース!」

 

「そうか……えらく優しい友達なんだな……」

 

「YES! 自慢のフレンドデース!」

 

 ヒシアマゾンとしてはもしも自分の友達がこんな変な写真ばかり送ってきたら何かの嫌がらせか? と思ってしまうが、タイキシャトルがそう言うのならばきっとそうなのだろう……ということにした。

 

 ヒシアマゾンとタイキシャトルがそんな風に話していると、タイキシャトルの持っていたスマホからピコンという音が鳴る。

 

 その音に釣られて2人がスマホの画面を見ると、そこには【ST】という名前と共に新着のメッセージが届いた通知が入っていた。

 

「Oh! アメリカのフレンドから早速メッセージが返ってきたヨ!」

 

「お、よかったな」

 

 無邪気に喜ぶタイキシャトルを少しばかり可愛いと思いつつ、流石にメッセージのやり取りを覗き見するのは不味いと思いヒシアマゾンはその場から離れようとした。

 

 だが、メッセージを確認した途端、タイキシャトルが目どころか口まで大きく開いて驚愕している姿を晒したことに野次馬根性を刺激されたヒシアマゾンは離れるのをやめて再びタイキシャトルへ話しかける。

 

「タイキ、どうした? めっちゃ驚いてるみてぇだけど」

 

「Wow……信じられないデース……」

 

 手を口に当て、スマホの画面をガン見するタイキシャトルの姿は常の彼女とはとてもかけ離れており、何やら只事ではないと確信したヒシアマゾンはマナー違反ではあるがタイキシャトルの持つスマホを覗き見する。

 

 そこには英語で【俺も日本に留学することにした。だいたい4月ら辺でお前の居る学園に行けると思うから、日本で会えることを楽しみにしていてくれ】という文章が書かれていた。

 

「留学って……タイキ、お前の友達が日本に来るのか!?」

 

「アンビリバボー……そうみたいデース」

 

 驚いたヒシアマゾンがタイキシャトルに確認すると、当の本人の方がよっぽど驚いているようで、今でも信じられないと言わんばかりの表情を浮かべていた。

 

「冗談……って訳じゃないのか?」

 

「それはNOデース! 彼女は嘘をつくのだけは絶対にしまセンッ!!」

 

「わ、悪い。なら、本当に留学するつもりなのか……?」

 

 急すぎる話にヒシアマゾンが驚いていると、タイキシャトルはようやく脳が現実を受け入れたようで、みるみると頬を緩ませる。

 

 そして────

 

「Yeahhhhhhhhhhhh!!」

 

 火山が噴火したかの如く、嬉しさを爆発させたタイキシャトルはその場で大きくジャンプして身体全体で喜びを表現した。

 

 突然のタイキシャトルの奇行に近くに居たウマ娘達がなんだなんだ? と視線を向ける最中、タイキシャトルは興奮冷めやらぬ様子でスマホをブンブンと振り回す。

 

「ヤッタヤッタヤッタ────!! フレンドがジャパンに来てくれマース!! WHOOOOOOOO!!」

 

「おい! 落ち着けタイキ! スマホぶん回すのは危ねぇって! 嬉しいのは分かるけど一旦落ち着け!!」

 

 テンションが天元突破したタイキシャトルがスマホを持ったまま踊り出し、すぐ傍に居たせいで危うく攻撃されかけたヒシアマゾンはタイキシャトルを落ち着かせるために声を掛けるがあまり効果は無いようだ。

 

「くっそ! 落ち着けってんだ!!」

 

「What!?」

 

 強行手段としてタイキシャトルを落ち着かせるためにヒシアマゾンはタイキシャトルの後ろから羽交い締めにし、腕に力を入れて絞めていく。

 

「いい加減にしろぉ!!」

 

「NOOOOOOO!! ギブ! ギブ!! 腕がミシミシいってマス!!」

 

 普通の人間よりも遥かに力のあるウマ娘による全力の拘束技を受けて、さしものタイキシャトルも音を上げるしかなかった。

 

 ……数分後、ようやくヒシアマゾンから解放された頃にはタイキシャトルは完全に気絶間近になっていた。

 

「おい、何か言うことは?」

 

「ソーリー……誠にすみませんでした……」

 

「おう、分かりゃいいんだ」

 

 さすがは寮長ということもあって、叱るのに慣れているヒシアマゾン。死にかけているタイキシャトルの謝罪の言葉を聞いて彼女は満足気に頷いた。

 

「それはそうと、お前のその友達の名前はなんていうんだ? この学園に来た時には、特別にこのヒシアマ姐さんが場所案内してやるぞ!」

 

「Oh! センキュー! やっぱりウマアネゴは優しいネ!」

 

「誰が『ウマアネゴ』だっ!!」

 

「Ouch!」

 

 タイキシャトルの脳天にヒシアマゾンのチョップが突き刺さった。

 

「んで、ソイツの名前は?」

 

「セクレタリアト、デース」

 

「……は?」

 

 一瞬、告げられた名前を聞いてヒシアマゾンは自分の耳を疑わざるを得なかった。今、タイキシャトルはなんと言った? 

 

「すまん、もう一度言ってくれ。なんて名前だって?」

 

「マイフレンドの名前はセクレタリアトと言いマース!」

 

 聞き間違いではなかった。確かにセクレタリアトと発言したタイキシャトルに、ヒシアマゾンは声を震わせて確認する。

 

「セクレタリアトって、あのセクレタリアトか? 全米で伝説的なあの?」

 

「そうデース! 昔ながらのフレンドデース!」

 

 ホラ! と、スマホを操作して1枚の写真を画面に出すタイキシャトル。

 

 ヒシアマゾンが見ると、そこにはタイキシャトルとセクレタリアトがツーショットで映っていた。

 

 あのセクレタリアトだ。見間違えるはずも無い、アメリカにおける偉大なウマ娘の姿を知らない者はこのトレセン学園にほとんど居ないだろう。

 

 無論、ヒシアマゾンも本人と会ったことは無いもののその姿は当然知っている。だからこそ、タイキシャトルのこの写真が偽物だとは到底思えなかった。

 

 つまり、セクレタリアトはタイキシャトルの友達であり、今度日本へ留学しにやって来るという訳だ。あのセクレタリアトが。

 

「……ハァァァァァァァァァ──────!?」

 

 全てを理解してしまった時、ヒシアマゾンは叫ばずにはいられなかった。

 




ハルウララに有馬記念を勝たせてやりたすぎて生み出してしまった妄想小説です。

スキルも欲しいけど、因子をくれるサポカとかあってもいいと思うの。

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