春を導くは偉大な赤いアイツ   作:ヒヒーン

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偉大な赤いアイツ、指導を開始する

「キングちゃんただいま〜!!」

 

「お邪魔しまーす」

 

 熱発を起こしてから数日後の夜、ようやく体調が戻ったことで同室へと戻ることをフジキセキから許されたハルウララはすぐに荷物を纏めてセクレタリアトに運ぶのを手伝ってもらいながら自分の部屋へと戻ってきた。

 

「おかえりなさいウララさん。あと、今は夜なんだからあんまり騒いではダメよ?」

 

「そうだぞ。うるさすぎると他の奴らに迷惑をかけちまうからな」

 

「はーい!」

 

 分かったのか分かってないのか、とにかく明るく元気な挨拶を返すハルウララにセクレタリアトとキングヘイローは同時にため息を吐いた。

 

「全く、この子は……もっとしっかりしないと一流のウマ娘にはなれないわよ?」

 

「まぁそう言うなキング。これもウララの長所の一つだ」

 

「もう、セクさんってば些かウララさんに甘すぎじゃないかしら?」

 

「それは……あるかもしれん」

 

 まるでどこぞの夫婦のような会話をするキングヘイローとセクレタリアト。これが出会った初日で気絶した人物と気絶させた張本人とはとてもじゃないが思えないだろう。

 

 この数日間、見舞い目的でセクレタリアトが何度かハルウララに会いに来たこともあって、必然的にハルウララから頼まれて仕方なく世話を焼いていたキングヘイローとも面を合わせる機会が多くなり、最初の頃は何度か同じように固まったりしたものの、その度にセクレタリアトが持ち前のフレンドリーさとファン魂を発揮させてキングヘイローとの距離を詰めたのだ。

 

 そして、ハルウララの「キングちゃんキングちゃん! 師匠ってとっても優しいんだぁ〜!」の言葉と共に繰り出されるセクレタリアトとのエピソード語りという名のサポートによって、セクレタリアトの内面を知ったキングヘイローはこうして気さくな会話を出来るようになったのだ。

 

「セクさんがそうやって甘やかすからウララさんが怠けるのよ? 師匠と言うからには弟子に厳しくする必要があるのではなくて?」

 

「や、それはそうなんだが……厳しく叱ろうとするとすぐにウララが涙目になっちまうもんだから、ついつい甘くなっちまうんだよなぁ」

 

「甘くしすぎよ。叱る時はしっかり叱らないと、人はいつまで経っても成長しないわ。そこのところちゃんと理解してるかしら?」

 

「はい……すみません……」

 

 ……距離を詰めすぎた結果、キングヘイローの面倒見の良さがこうして自分への説教にまで繋がるとは微塵も思っていなかったセクレタリアトであった。

 

 アメリカの三冠ウマ娘を説教するデビュー前の新人ウマ娘という見る人によっては目が飛び出すぐらいに驚く光景を前に、ハルウララは二人が出会った頃と比べて格段に仲良くなっていると思い嬉しそうに笑った。

 

「ウララさんも、師匠だからと言ってあまりセクさんに迷惑をかけてはダメよ? 一流のウマ娘になりたいなら、自分のことはちゃんと自分でやれるようにならないと」

 

「うん? う〜ん……うん、分かった!」

 

「その反応は絶対に分かってないわね!?」

 

「いひゃいいひゃい! ひんぐちゃんいひゃいよ!」

 

「2人ともほんと仲良いな。よっこいっしょと」

 

 キングヘイローにほっぺを右へ左へみょいーんみょいーんと引っ張られてハルウララが涙目になっているのを微笑ましそうにしながらセクレタリアトはハルウララの荷物をテキパキと部屋の中へと運び入れた。

 

「う〜! ししょ〜!!」

 

「お〜よしよし、痛かったなぁ〜」

 

「こら、セクさん! そうやって甘やかさない!!」

 

「まぁまぁ、お茶でも飲んで落ち着こうぜ。近所迷惑になるからさ」

 

 泣き付いてきたハルウララを抱きしめて頭を優しく撫でるセクレタリアトを叱るキングヘイロー。

 

 この一連のやり取りを見た時、誰もがきっとこう思うだろう。どこからどう見ても家族の会話でしかないと。

 

「あ、それはそうとウララの体調も戻ったことだし、明日からトレーニング始める予定だけど、何だったらキングも一緒に来るか?」

 

「え、ご一緒してもいいのかしら? 私、部外者よ?」

 

「大丈夫大丈夫。最初は軽めのトレーニングから始めるつもりだし、本格的なトレーニングはまだまだ先の予定だから全然OKよ」

 

「そういうことなら是非とも参加させてもらうわ」

 

 セクレタリアトから突然振られた話にキングヘイローは少し驚きつつも二つ返事で参加を決める。

 

 あまりにも即断すぎる回答に逆にセクレタリアトの方が驚いてしまった。

 

「え、いいのか? トレーナーとかに相談しなくても」

 

「えぇ、構いませんわ。元々明日は休養日で1日ヒマしておりましたし」

 

 口ではそう言いつつも、キングヘイローは内心でガッツポーズをしていた。

 

 内面はどうであれ、セクレタリアトはアメリカの三冠ウマ娘。その称号は決して軽はずみに取れる物ではない。

 

 才能、運、そしてなにより並外れた努力によるトレーニング。それらが無ければ三冠という称号を手にすることは出来ないのだ。

 

 そんな三冠という称号を取った伝説のウマ娘直々によるトレーニング。それはウマ娘にとって1カラットのダイヤモンドよりも価値のある物だからこそ、キングヘイローはこのチャンスを逃すつもりは毛頭なかった。

 

「え!? 明日キングちゃんと一緒に練習できるの!?」

 

「えぇ、そういうことになるわね」

 

「やったー! キングちゃんと一緒だー!」

 

「きゃっ、もう! 急に抱きついてきたらビックリするでしょう!?」

 

 キングヘイローと一緒に練習出来ると分かった途端、ハルウララは喜びを露わにしてキングヘイローに抱き着き、キングヘイローは口では叱りつつも本人も無意識の内に嬉しそうに耳と尻尾をピコピコと動かしている。

 

 そんな光景を目にして、セクレタリアトの頬はさっきからずっと緩みっぱなしだった。

 

「んじゃ、とりあえず2人とも明日の朝5時にグラウンド集合な。遅れたら叩き起しに来てやるからよろしくな!」

 

「「……え?」」

 

 2人の返事も待たずにセクレタリアトはそう言い残して部屋を去って行った。

 

 後に残されたのは呆然としているキングヘイローとハルウララ。2人は無言のまま一度だけ顔を見合わせると、慌てて寝巻きへと着替え始め寝る準備へと移る。

 

 この後めちゃくちゃ早く寝た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 春になったとはいえまだまだ冬の冷たさは残り、日がようやく出始めたということもあってかなり寒い気温の中、キングヘイローとハルウララはジャージの上から防寒着を身に纏って薄い霧が張っているグラウンドに立っていた。

 

 校舎の大時計が指している現在時刻は4時50分。こんな時間帯に起きている生徒はそう居らず、ましてや大事なレースも特に無いこの時期だとグラウンドで朝練しているウマ娘も居ないため、グラウンドには彼女達しか居なかった。

 

「うぅ、寒いよぉ〜」

 

「ほら、ウララさん。カイロ貸してあげるからそれで温まりなさい」

 

「わぁ、いいの!? キングちゃんありがとう!」

 

 キングヘイローは持っていたカイロをハルウララへと渡すと、カイロを受け取ったハルウララは顔に当てたりしてカイロの温かさを感じ取り、気持ちよさそうな表情を浮かべた。

 

 しかしこの時、ハルウララは知らなかった。実はキングヘイローが防寒着の裏側に大量の貼るカイロを付けていることを。それによって彼女が全く寒がっていないことを。

 

 素知らぬ顔でぬくぬくとしている防寒着を着込んでいるキングヘイローとカイロを使って温まるハルウララが寒空の下で待つこと5分。2人の立つグラウンドに2つの人影が近寄ってきた。

 

「2人ともおはよう。5時集合とは言ったけど、5分前にはもう既に集まってるとか真面目だな」

 

「オハヨウゴザイマス」

 

 そう言いつつやって来たのはトレセン学園のジャージ服を身に纏い、その手に大きな黒い鞄を持ったセクレタリアトといつもと同じスーツ姿でいるクリストファーだ。

 

「師匠達おはよう! 今日とっても寒いね〜!」

 

「おはようございます。それと、一流のウマ娘は10分前行動が基本だと私は思うのだけど?」

 

「そりゃ間違ってるな。5分前行動でも充分一流になれるわっと」

 

 キングヘイローのちょっとした小言に軽くそう言い返しつつ、セクレタリアトは手に持っていた鞄を2人の前に降ろした。

 

「セクさん、その鞄は?」

 

「あぁ、この中には俺が現役時代にトレーニングで使ってた機材や器具が入ってるんだ。要らんとは思ってたけど念の為持ってきてて助かったわ」

 

「そ、そうなんですの……」

 

 微かに自慢気な顔をしながらグッドサインをするセクレタリアトにキングヘイローが少しばかり困惑していると、セクレタリアトはふとあることに気が付きクリストファーへと振り向く。

 

【あ、そういえばトレーナーはキングと初めて会うよな? 軽く自己紹介しといた方がいいか?】

 

【……あぁ、出来ればそうしてくれると助かる】

 

「あいよ。キング、この人は俺の専属トレーナーのクリストファー・チェネリー。ガキの頃からずっと世話になってる人で、現役時代もずっとトレーナーをしてもらってたんだ。これからは俺と一緒にウララのトレーナーにもなってもらうつもりだ」

 

「っ! この方が……」

 

 セクレタリアトからの紹介を聞き、クリストファーを見るキングヘイローの目が変わる。

 

 セクレタリアトを三冠にまで導いた立役者。ある意味で言えば、セクレタリアトという伝説を生み出した張本人と言っても過言ではない人物を前にして、キングヘイローは緊張で震えそうになる身体をグッと堪えて口を開く。

 

【初めまして、クリストファーさん。私の名前はキングヘイロー。いずれ一流のウマ娘として頂点に立つつもりだから覚えておいて損は無いわよ?】

 

【……ほう】

 

「え、キングって英語喋れるのか!?」

 

 傲岸不遜にそう自己紹介するキングヘイローにクリストファーは目を鋭く光らせ、セクレタリアトは英語で話し出したキングヘイローに驚愕した。

 

「えぇ、子供の頃からそういう勉強はしっかりさせられてきたもの。書き取りは苦手だけれど話すだけなら英語、ドイツ語、中国語、オランダ語はいけるわ」

 

「おー! キングちゃんすごーい!!」

 

「当然よ! 何せこの私はキングなのだから! おーほっほっほっほ!!」

 

「お、おう。そうか」

 

 ハルウララに煽てられたことでキングヘイローが突如として高笑いし出したのを若干引いた目で見つつセクレタリアトは鞄を開けると、中にあったノートパソコンやタブレットなどの機材を取り出しつつある物をキングヘイローとハルウララへ渡す。

 

「とりあえず練習始める前にキングとウララはこれを着けてくれ」

 

「師匠、それなにー?」

 

「これは……心拍計ですか?」

 

「お、正解だ」

 

 キングヘイローが言った通り、セクレタリアトが2人に渡したのはただの心拍計だ。ランニングをする時に付けるのと同じリストバンド型の物である。

 

「トレーニングを始める前に、まずは2人の今の現状を知っておきたい。軽くストレッチして身体を温めた後に800メートルのターフを走ってもらうぞ」

 

「いきなりですわね……ですが、キングに死角などありませんわ! 何時いかなる時であろうとも最高の走りを見せて差し上げますわ!」

 

「キングちゃんやる気いっぱいだね! よーし、ウララも頑張るよ〜!」

 

 着ていた防寒着を脱ぎ捨て、心拍計を着けて仲良くストレッチを始めた2人からセクレタリアトは脱ぎ捨てられた防寒着を回収してからクリストファーの方へと離れた。

 

【トレーナー、荷物頼むわ】

 

【……なぁ、セク。本当にアレ(・・)を教えるつもりなのか?】

 

【あぁ、勿論だ】

 

 セクレタリアトから荷物を受け取りつつクリストファーがそう問うと、彼女は強く頷いた。

 

【……アレはお前だからこそ出来ることだ。他のウマ娘ではとても真似出来ん】

 

【いや、案外やってみないと分からねぇよ。もしかしたら、出来るかもしれねぇじゃん?】

 

【……だといいがな】

 

 そんな不穏な会話をしているセクレタリアトとクリストファーに気付くことなく、ストレッチを終わらせたキングヘイローとハルウララはコースに立ち、セクレタリアト達も準備に取り掛かった。

 

「んじゃ、まずはターフからな。ゴールはトレーナーの立っている所までだ。タイムも計測してるから、なるべく全力で走るようにな」

 

「はい!」

 

「分かりましたわ」

 

「それじゃ、位置について! よーい、スタート!!」

 

 スタート役であるセクレタリアトが合図を出した瞬間、キングヘイローとハルウララは同時に飛び出した。

 

 自分を一流のウマ娘と豪語するだけあってキングヘイローのその走りはとても堅実な物で、自分の中にあるペースを守りながらスタミナをキープしつつ余力を残した状態でゴールラインを通過した。

 

 そして、ハルウララだが。

 

「はぁ……はぁ……ゴール!!」

 

 走るフォームは相変わらずの両手を前に出す謎走法であり、この前の選抜模擬レースと違って最後まで完走することは出来たが明らかにスタミナが切れる寸前といった様子でキングヘイローより10秒ほど遅れてゴールした。

 

【……お疲れ様。水分補給だ】

 

「ふぅ……私は大丈夫よ。これぐらいでバテるような体力はしてないわ。ただ……」

 

「ぜひゅー……ぜひゅー……」

 

 キングヘイローが軽く息を整えながらチラッと隣へ目を向ければ、そこには芝の上に寝転んで息を切らすハルウララの姿があった。

 

「ウララさん、意識ある? ほら、これでも飲んでゆっくりしなさい」

 

「あ、ありがとう、キングちゃん……」

 

「あ、こら。そんなに勢いよく飲んではダメよ。ゆっくり少しずつ飲まないと噎せちゃうわ」

 

 クリストファーが持っていた水筒を受け取るとそのままキングヘイローはハルウララへと渡し、受け取ったハルウララはすぐさま水筒に入っていたスポーツドリンクを飲み始めた。

 

「2人ともお疲れさん。いい走りだったぜ」

 

 ハルウララとキングヘイローが休憩し始めて暫くするとスタートラインに立っていたセクレタリアトがそう言いながら歩いてやって来た。

 

「キングはちゃんと自分のペースで走れてたな。あの調子ならデビュー戦も楽勝だな」

 

「えぇ、キングなんだから当然よ! おーほっほっほっほ!!」

 

「んで、ウララだが……うん、まぁ、最後まで完走出来て偉いぞ」

 

「えへへ、ありがとう師匠!」

 

 セクレタリアトに褒められてテンションが上がったキングヘイローは再び高笑いし、少しの休憩でスタミナを回復させたハルウララは嬉しそうに笑った。

 

「さて、んじゃタイムも測って2人の走行中の心拍数も測れたことだし、今から早速トレーニングを始めて行くぞー!」

 

「おー!!」

 

「よろしくお願いしますわ」

 

 セクレタリアトが右手を大きく上に突き上げると、ハルウララもそれに倣って右手を大きく突き上げ、キングヘイローはペコリと軽く頭を下げた。

 

「じゃあ早速だけどまずは2人に見てもらいたい映像がある。トレーナー、頼む」

 

「ウム」

 

 セクレタリアトの指示に従いクリストファーはノートパソコンを操作した後、キングヘイロー達へと画面を見せる。

 

 そこには2つのレースを見やすいように二分割化され比較しやすくされた動画がフルスクリーンで映っていた。

 

「今から比較化したとある2つのレースを2人には見てもらうが、最終直線に入った後の選手達の走るフォームを注目しながら見てくれ」

 

 セクレタリアトがそう言い終えると、クリストファーが再びパソコンを操作して動画が始まる。

 

「わ〜! みんなはやいね!」

 

「しっ! ウララさん静かに!」

 

 動画の中で走るウマ娘達を見てハルウララが興奮したように目を輝かせ、キングヘイローは食い入るように動画を見つめる。

 

 そして、動画の中のレースは進み続け両方とものレースでウマ娘達が第4コーナーを曲がって最後の直線に入った瞬間、明らかに走り方が変わった。

 

 左の画面のウマ娘達は足を大きく出して歩幅を広げているのに対し、右の画面のウマ娘達は歩幅を狭めて足を速く回転させている。

 

「2人とも知ってると思うが、ウマ娘には2つの走り方がある。脚を広く伸ばして歩幅を大きくとるストライド走法と、逆に歩幅を短くして足の回転を速くするピッチ走法だ」

 

 動画を一旦止め、セクレタリアトは解説を始めた。

 

「ストライド走法はトップスピードに乗るまで時間がかかる分、体力消費を少なく抑えてトップスピードを長く維持できることから長距離のロングスパート向けとされ、ピッチ走法は足の回転数を上げなきゃならないことから体力消費がかなり激しいが、すぐに加速してトップスピードになれる分、半径の小さい小回りのカーブや雨で濡れた不良馬場やダートコース向けとされている。この2つを使いこなせればどんなウマ娘でも格段と速く走れるんだ」

 

「あの、そんな分かりきったことを何故今更……?」

 

 分かりやすく動画に映っているウマ娘達の足元を拡大してセクレタリアトは解説するが、それを聞いてキングヘイローは少しばかり困惑した表情を浮かべる。

 

 ストライド走法とピッチ走法。この2つは学校の授業でも最初の方で習うことであり、ウマ娘にとっては知っていて当然の知識と言えた。

 

 それを何故わざわざ説明するのか、キングヘイローには理解出来なかったのだ。

 

「何故も何も、お前さん達の走り方が全然下手だからだけど?」

 

「な、なんですってェ!?」

 

「ほへ?」

 

 セクレタリアトが端的にそう言うと、キングヘイローは怒鳴り声を上げハルウララはキョトンと首を傾げた。

 

「ウララの走りはそもそも論外として、キングは一見フォームこそ良いものの走ってると体幹がたまにブレる時があるし、何よりストライドでも歩幅が狭すぎるしそもそも足の回転数が遅い。それじゃあ見ていて上手い走りは出来ても速い走りは出来ねぇよ」

 

「んな……!?」

 

 自分の走りは遅いと告げられ、キングヘイローは反論しようと口を開いたが自分でもそう思っていた節はあったため、口をパクパクとさせて何も言い返すことが出来なかった。

 

「キングは徹底的に体幹の強化と歩幅の拡張と足の回転数を上げろ。俺のトレーナーがトレーニング方法を教えてやるから、それをこなしてみせろ。そうすりゃ間違いなく今よりも格段と強くなれるぞ」

 

【……付いて来れるか? 未来のキング様とやら。まぁ、無理なら諦めても構わんがな】

 

「っ!! 上等じゃない……! このキングの辞書に無理や諦めなんて言葉は存在しないことを見せつけてあげるわ!!」

 

 クリストファーに煽られたことでプライドを刺激されたキングヘイローは自分をより高みへと至らせる為に、クリストファーの後を着いてセクレタリアト達から離れた。

 

「……んで、ウララ。お前にはまず走り方を変えてもらうつもりだが……正直に言う。お前に普通のストライド走法とピッチ走法は合わん」

 

「えぇー!!??」

 

 セクレタリアトから告げられたその言葉にハルウララは思わず驚愕の声を上げた。

 

 ウマ娘の基本とも言えるストライド走法とピッチ走法がダメだと言われれば誰だって驚くだろう。

 

「お前の体格的にストライド走法はまず難しいし、ピッチ走法だとスタミナを消費しすぎて今のままだとレースの完走さえ怪しくなる。ハッキリ言ってかなりお手上げだ」

 

「じゃあ、どうするの? ウララこのままだとレースで勝てないよ……」

 

「大丈夫! 心配すんな!」

 

「わ、わわっ!?」

 

 今のままではレースで勝てないことを悟り、ハルウララがしょんぼりと落ち込むと、そんな彼女の頭をセクレタリアトはガシガシと乱暴に掻き撫でた。

 

「普通の走り方じゃダメでも、普通じゃない走り方なら出来るかもしれねぇ。お前に教えるのはその普通じゃない走り方の方だ」

 

「普通じゃない走り方……?」

 

 それはいったい何なのか? と目で問いかけてくるハルウララを見つつ、セクレタリアトはイタズラを企てる悪ガキのようなニヤリとした笑みを浮かべた。

 

「お前に教えるのは俺のストライド───等速ストライドだ」

 

 この日を境にして、春はゆっくりと、だが確かに胎動を始めた。




友人から「おい、お前の小説Twitterで紹介されてるぞ」と言われ、まさか〜と思いつつ調べてみたらマジで何人かの方達に紹介されるとるやないかい……!?

ただの妄想小説ではありますが、沢山の方々からこうして応援を頂くことで本当に感謝で胸が一杯になる思いです……皆様ありがとうございます!

これからもマイペースではありますが頑張って執筆していきますので、応援よろしくお願いします!

……いい加減そろそろデビュー戦書かないと怒られそう(ボソッ
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