五等分の花嫁~イベントでも五月のお団子が美味しい御話~   作:鈴木ヒロ

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4月15日
上杉風太郎の誕生日

同日午後12時過ぎ、大学近くのスーパーにて

※多分原作だと各キャラクターの居住地はかなり離れている気がしますが、それに気づいたのは執筆後なので今回はご都合解釈させてください。


それは上杉風太郎のバースデイ~人差し指の戸惑い~

2限目の講義の終わりを告げる鐘が鳴る。俺が受講した分の講義は終了したため、昼食を学食で済ませるか家で食べるか迷ってしまう。

午後の講義がないのにわざわざ食堂で食べることもないか、という考えに至り、帰り道のスーパーで買って帰ることにした。

馴染みある店内BGMが流れる中、目的の総菜コーナーを探していると。

「あれ?フー君?」

高く張りのある声で呼ばれる。俺をその呼び方をする人物は周囲で一人しかおらず、振り向くと予想通りの人物が買い物カートを押していた。

「二乃か。久しぶりだな」

華やかな服装のイメージを持つ二乃だったが、今日の服装は落ち着いた色合いの家庭的な色だった。

「久しぶり、じゃないわよ!なんで遊びに来てくれないのよ!」

強い口調は相変わらずのようだ。初対面だと勘違いしそうな態度も、付き合いの長い人間が見れば全く別なものに見える。つくづく損な性格だと思うが、本人曰く「大切な人が知っているならそれでいい」とのこと。

「そんな頻繁に外食するほどの金はない」

「フー君相手にお金取るはずないでしょ。それに、来てくれるとあの子も喜ぶしね」

姉妹を気遣うその想いも変わらずのようだ。

「もちろん、私もね」

この素直さも相変わらずのようだ。あざとい角度で覗き込んでくる二乃の視線を正面から受け止められず、咄嗟に近くの食品棚へ目を逃がした。

「お前は相変わらずだな」

「フー君も照れると前髪弄りながら目線を逸らす癖、相変わらずね」

指摘されてから右手が前髪に触れていることに気づく。何となく居心地悪くなりゆっくりと手を下ろす。

「あー、お前は今夜の買い物か?」

「そうよ。今夜は腕によりをかけて作るから楽しみにしててね。フー君は何か食べたいとかあるかしら?」

「何でもいいぞ。俺は作ってもらえるだけで十分ありがたい」

「何でもって、それが一番困るのよね―――あ」

「ん?どうした」

会話の続きを促すが返事はこない。気になって振り向くとそこにはニンマリと笑顔を浮かべた二乃がいた。

「今の会話、新婚夫婦みたいね、ア・ナ・タ」

「っ!」

こいつは、油断したタイミングで爆弾を投げてくる。そう言われると変に意識してしまい、今日の家庭的な服装も相まって新妻に見えてきた。

「変なからかいをするな」

注意をしても二乃の笑顔は変わらず、軽い足取りで調味料コーナーへと向かった。

目的の品が見つかったが高い位置にある様子。調味料を取ろうと背伸びをしていた爆弾魔の隣に立ち、頑張って身体を伸ばす二乃の代わりに目的の調味料をとってやる。

「っと、ほらこれか」

探していた調味料は何に使うのか俺には分からない香辛料だった。それを二乃に渡してやるとびっくりした顔で固まっていた。「おい」と喝を入れるとようやく動き出し、こっちが照れるくらいの笑顔になる。

「ありがとう、頼りになるわね旦那様は」

まだふざけ続ける二乃の頭に香辛料を乗せるように押し付けて距離を離す。

その行為すら嬉しいのか、「キャッ」と言いながらも嬉しそうに香辛料を受け取った。

このまま夫婦ごっこに付き合い続ければ俺の精神が持たない。

まだ調味料コーナーを見ている二乃を置いて弁当コーナーへ向かうことにした。

(弁当1つ300円前後・・・・・・高くはないがやはり自炊の方が安いな・・・・・・)

一番安いのり弁を手に取って思案する。200円で総菜を買って帰れば家にある白米で十分な昼食となる。いやしかし米を炊いていないから時間がかかる。

「費用をとるか、時間をとるか」

「市販のお弁当は栄養バランスが偏って良くないわよ」

いつの間にか隣に来ていた二乃が弁当を見て「これなんか野菜少なすぎ」と文句を言う。

「いくら栄養を売りにしていても所詮は市販だ。そんなものだろ」

今から炊いたら1時間はかかるだろう。時間をお金で買うことにし、一番安いのり弁当を手に取る。

「はい、回収します」

しかし手に取った弁当を買い物かごに入れる前に二乃に奪われて戻された。

「おい、何しやがる」

「どうせ日頃から適当な食生活しているんでしょ。たまには栄養のあるご飯食べなさいよね」

そう言うと俺に買い物カートを預けてどこか行ってしまう。言っている意味が分からないが、買い物カートを押し付けられた以上追わずにはいられない。

迷いない足取りで二乃が向かった先は野菜売り場だった。春野菜コーナーで野菜を吟味している。

「おい、どういうつもりだよ」

「さっきも言ったでしょ。フー君からお金を取るつもりはないって」

アスパラを手に取っては戻し、慣れた手つきで春野菜を俺の押すカートに入れる。

「あんな弁当より美味しいランチを作ってあげるわ。栄養も愛情もたっぷりのね」

軽くウインクしてくる二乃に、不覚にも見惚れてしまった。近くを通ったカップルの男性が振り向き、隣にいる女性に怒られる。

(相変わらずアイドルみたいなやつだな)

一花とはまた違うタイプの魅力で周りを惹きつけてしまう罪な女性に苦笑する。

「あー・・・・・・じゃあ世話になる」

「えぇ。何なら毎日三食作ってあげてもいいのよ」

「そこまで世話になってたまるか」

作って貰う立場なのだから、せめて荷物持ちをしようと引き続きカートを押しながら二乃の後ろを歩く。

それに気づいた二乃は振り返って戻り、わざわざ俺の隣を歩き始めた。

絶対に口には出さないが、こんな素敵な女性に好かれる俺はかなりの幸せ者なんだろう。

幸せそうに歩く次女を見ると同じタイミングで見てきた。その無垢な笑顔を見て反射的に前髪を触りそうになるが、先ほど指摘された自分の癖を思い出す。

行き場のない手を空中で右往左往したが、人差し指で頬を掻いて誤魔化した。




二乃の強気な態度は自信というより防衛みたいなものかなって思います。
だからこそ、その防衛をしなくて済む姉妹や風太郎には大きな愛を注げるんでしょうか。

風二はツン二乃とデレ二乃の2パターンありますが、俺はデレ二乃が好きです。
恥ずかしがることなく暴走列車となった二乃、風太郎に対して強気な愛情表現する反面、優しくされた時のチョロ顔が乙女過ぎて尊死です。

次回の更新予定は4月17日です。
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