五等分の花嫁~イベントでも五月のお団子が美味しい御話~   作:鈴木ヒロ

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5月5日
中野一花、中野二乃、中野三玖、中野四葉、中野五月の誕生日



5月5日
5つのケーキと1つのイチゴ


白いドレスに身を包み丸みを帯びたラインが誘惑してくる。赤い突起物が背徳的な魅力を醸し出し、思わず手で触れたい欲求に駆られる。

触れてはいけない。欲望に反する理性が働くが、目の前のそれを見ると主張も弱くなる。

ついに本能のまま、ゆっくりと手を伸ばして―――

「おい、何つまみ食いしようとしてんだ五月」

「ひゃぁ!?」

意識外からの急な刺激を受けて変な声が出てしまう。その声に恐る恐る振り返ると腕を組みながら仁王立ちしている上杉君がいた。

「そのケーキは主役全員が揃って食べるものだ。人がせっかく買って来たのに台無しにする気か」

「わ、私も主役の一人だし、ちょっとだけなら―――」

「ダメだ我慢しろ」

そう言うや否や私の襟を掴んでケーキから引きはがす。想い人との別れのような喪失感を味わいながら抵抗なく上杉君に引っ張られる。

しかし別れは新たな出会いとはよく言うもの。連れられた先からお肉の良い匂いは流れてきて私の喪失感は一瞬で埋められた。

「あ、フー君丁度良か・・・・・・って、何してんのよ・・・・・・」

「あぁ、ネズミがケーキに穴を開けそうだったから捕縛してきた」

「ね、ネズミとは流石に酷くない!?」

「はいはいネズミちゃんは私が預かるから、フータロー君はこの料理持って行って」

「もう、一花まで!」

「あいよ。これで料理は全部か?」

「えぇ・・・・・・ったく、なんで私の誕生日でもあるのに私が作るのよ」

その言葉に思わずビクッと肩を揺らしてしまう。なにせ二乃に料理をお願いしたのは私だ。

「もしかして二乃、怒ってる・・・・・・?」

申し訳ない気持ちで訊ねると二乃が慌てた様子になって詰め寄ってきた。

「ち、ちが、怒ってるわけじゃないのよ!ただちょっと思っただけというか、いや全然思ってたわけじゃなくて」

慌てふためく二乃。不思議そうにその様子を見ていると、洗い物をしていた三玖が笑顔で補足してくれる。

「二乃、喜んでたよ。『お店の料理より私が作った方が美味しいだって。三玖、気合入れて作るわよ』って昨日言ってた」

三玖お得意の姉妹真似で昨晩のやり取りを再現すると、別の理由で慌て始めた二乃が三玖に組みかかった。そのまま一方的な喧嘩が始まったが、三玖がハンドサインで「先に行ってて」と手を振るのでその場は三玖に任せて、料理が並ぶテーブルへと移動した。

三玖も成長したなぁ、と些細な姉妹の成長を感じていると、店の扉が開いて四葉が荷物を持って入ってきた。

「ただいまー、飲み物買って来たよー」

テーブルの空いたスペースに買い物袋を下ろすと、テキパキと中から飲み物を取り出す。いまだに噛みつく二乃を連れて戻ってきた三玖が「抹茶ソーダがない」と悲しむのを「ごめんね、何店舗も探したんだけどなくて」と謝る。

「数店舗回ったのか・・・・・・一緒に行かなくて正解だったぜ」

貴方は彼氏として行くべきだったのでは、と言葉にするのをグッとこらえる。それを突っ込めば、言い合いになるのは容易に予想でき、ご飯を食べる時間が遅くなってしまう。

テーブルの上の料理をジーッと見つめていると、それに気づいた一花が両手をパンッと叩き「そろそろ始めようか」と促してくれる。

各々が席に座りグラスを手に取る。視線は自然と上杉君へと向かい、それは他の姉妹も同様だった。

その視線をむず痒い表情で受け取った彼は、わざとらしい咳を一つ入れてグラスを掲げる。

「あー、お前ら誕生日おめでとう。乾杯!」

その合図で6つのグラスが中央に集まってカンッと小気味よい音を立てた。その後は開始の音頭がつまらないとか、もっと言葉が欲しかったとか、彼に関する文句が飛び交うが、私は黙々と目の前の料理に手を付ける。

「そうだ。五月ちゃんがお腹いっぱいで食べられなくなる前にケーキ分けようか」

「いえ一花、そんな心配しなくても大丈夫だよ」

「あんたがSNSにアップしたいだけでしょ」

バレたかぁ、と笑う一花に呆れる二乃。「飯食いながら甘いもの食うのかよ」と少し引き気味の上杉君に「うちはいつもこんな感じです」と説明する四葉。

「ケーキナイフ、持ってきたよ」

三玖が奥から長いナイフを持ってきた。どのご家庭にはなさそうな調理師ならではの専門道具だ。持ってきたそれの柄を無言で上杉君へ向けると挑発的な笑みを浮かべた。

「ケーキ六等分、先生ならできるでしょ?」

その挑発に初めはポカンとしていた上杉君だったが、すぐに挑戦的な表情に変わり「当然だ」と意気揚々にその柄を受け取った。

その後、結果的に言えば六等分ができた。しかし理論的に六等分できても手先の器用さがそれに追いつかなかったようで、均等な六等分にはならなかった。

「しかもイチゴが7個ってなんでよ。1つ余るじゃない」

「仕方がねぇだろ。それしか売ってなかったんだから」

各々の席にケーキが配られたがケーキがあった容器の上にはイチゴが一つ残ることに、上杉君へ非難する二乃を「まぁまぁ」と四葉がなだめる。

そのイチゴに苦笑いする一花はナイフを持って色んな角度から観察していた。

「まさかこれも六等分とか言わないよねぇ・・・・・・」

「流石に、無理だと思う」

「六等分したら食べた気がしないよ」

「五月、お前はぶれないな・・・・・・」

上杉君から温かいような冷たいような視線を感じたけど気にしない。かくなる上はジャンケンを進言して―――

「これはフータロー君からの特別なイチゴです」

ひょい、とイチゴの乗った皿を急に持ち上げて一花が宣言した。その行動にみんなの視線が集まり、注目したことを確認してから言葉を続ける。

「私たちの誕生日にケチなフータロー君が買ってくれた特別なものです」

「ケチは余計だ」

「ということは、このイチゴは誰にふさわしいでしょうか」

一花は宣言を終えると視線をとある一人に向けた。釣られて私も視線を向けると、既に他のみんなの視線も集まっていた。

「え、え、えぇ!?」

5人分の視線を一身に浴びた四葉は今日一番の声を上げて動揺した。「いや、流石にそれは」としどろもどろに口を動かすが、それを二乃が一蹴した。

「癪だけど異議はないわ。むしろ話がこじれる前に決まって良かったわ」

自身の髪を払ってそっぽを向く二乃を見てクスクス笑うのは三玖。そして手を挙げて自分の意見を述べた。

「私も賛成。四葉が適任だと思う。でも問題は・・・・・・」

「そうだね。五月ちゃんが納得するかどうか・・・・・・」

「2人とも!流石の私も自重するから!」

その一言にドッと笑いが起きたが私だけ頬が膨れる。笑いが収まると一花がイチゴの乗った皿を四葉に渡してみんなの視線は再び四葉に集まった。

「うぅ、じ、じゃあお言葉に甘えて・・・・・・」

恥ずかしそうな申し訳なさそうな様子でイチゴを口に運ぶ四葉と、それを見守る4人と1人。

「えぇっと、美味しい、ですよ?」

「そ、それは良かった」

上杉君は一花が言ったことを気にしてか頬を赤らめて顔を擦らす。こういうところは相変わらずのようだ。

そのことを一花に指摘されて戸惑う上杉君。その様子を見て恥ずかしそうな、でもどこか嬉しそうな表情になる四葉。そんな2人を見て私は―――

『これはフータロー君からの特別なイチゴです』

そのイチゴは自分が食べたイチゴよりずっと、他のみんなが食べたイチゴずっと、赤く美味しそうに見えて、ふとそのイチゴを食べる自分が脳裏に浮かんでしまう。

そんな考えを振り払うように視線を逸らすと、店のカウンター上にある写真立てが目に入った。それは黄、紫、青、緑、赤のカラフルな五色で彩られており、中には卒業式で撮った私たちの集合写真が入っている。

上杉君から姉妹全員への誕生日プレゼントとしてもらった写真立て、その写真立てを彩る五色の内の一つ赤色。イチゴのような赤色を少しだけ見つめて、私は自分の皿に乗った赤いイチゴを頬張った。

 




物凄く出遅れて申し訳ありません。

本当は当日に挙げたかったのですが、GW前後は忙しく間に合いませんでした。
本編も仕上がってませんでしたが、一度書き始めていたので中途半端にできず、先にこちらを投稿した次第です。

しばらくはイベント事がないはずなので、本編を書き進めたいと思います。
・・・・・・ないですよね?

一花、二乃、三玖、四葉、五月、誕生日おめでとう(ございました)
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