μ'sのメンバーが全員ヤンデレだったなら   作:コルセット

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お久しぶりでございます。
約一か月ぶりとなりましたが、投稿いたします。


外伝、短編集
μ'sから見たお話 高坂 穂乃果の場合


変わりゆく季節に、変わりゆく環境。

全てが変わっていって、新しくなっていく。でも、変わらないものもあって。

それは、友情とか生活とかもそうだけど、それよりも大事なこと。きっと、自分の中にある気持ち。

ずっと一緒にいたいって気持ちなんだ。それは、思っているだけじゃなくて。そうじゃなくちゃ嫌なんだ。

これは、そんなことを思っている私、高坂 穂乃果のお話。

 

放課後。μ'sの練習が終わって着替えをしている。今日もいっぱい踊って歌って、どんどんと上達していくのが嬉しい。

きっと、その嬉しいはその事だけじゃないんだけど。携帯を取り出して、画面を見る。新着メールが一つあった。

みーくんだ。どうやら向こうも学校が終わったらしい。きっと、みーくんのことだから迎えに来てくれるんだろうか。

なんだか、穂乃果の顔は赤くなってしまう。これじゃあ恋人みたいだなんて――。きっと向こうはそんなこと思ってないんだろうけど。

にやにやしてると、それに気づいた絵里ちゃんが話しかけてくる。

 

「あら?何だか、嬉しそうね。何かあったのかしら」

「うん!今日みーくんが家に来るんだ!久しぶりだから穂乃果嬉しくて」

「え、二人っきりなのかしら?」

「いえ、打ち合わせなので私とことりも行きますが」

「もーばらさないでよ、海未ちゃん!」

 

 

そう、打ち合わせのために来ることになっていて。いつもの四人で話すことにしたんだ。

といってもその内容は後で皆とスカイプを使って内容を話すんだけど。それならみーくんも自分一人でいいよなんて言いそうだから、無理矢理家が近いってことで穂乃果の家に集合ってことにしたんだ。

でもとっても楽しみで。今日一日楽しくてハッピーな気分なんだ!着替え終わって、皆で校門まで行く。ふと、校門に目を向けると携帯を手に持ちながら待っているみーくんが見えた。

やっぱり待ってくれていることが嬉しくて。急いで走って行った。

 

「みーくん!」

「お、来た。結構速かったんだね、もうちょっとかかるかなって思ってたよ」

 

携帯をしまってこっちを向いて笑う。そして、後から来た皆に挨拶をしていた。

言葉を交わし終えると校門で別れる。海未ちゃんとことりちゃんは一回家に帰ってから来るらしくて。

帰り道は自然と穂乃果とみーくんの二人っきりになった。嬉しくなって顔が綻んでしまう。

不思議に顔をこちらに向けてくるみーくんが可愛くて。何だかいつまでも見てしまいたくなるほどに。

そうして穂乃果がニコニコしてたらみーくんが喋りかけてくる。

 

「どうかしたの?何か嬉しい事でもあった?」

「うん!久しぶりに喋りながら一緒に帰るなぁって思って!」

「あー、そっか。確かに久しぶりだよね。最近忙しかったし、μ'sの練習とかもあったから」

「最近一緒に帰ることなくて、寂しかったんだよ?」

「……。そう、だよね。ごめん、僕のほうも忙しくて」

 

ぎこちなく、頭を撫でられる。やっぱり違和感を感じる。昔ならもっと自然に優しく撫でてくれた。昔、と言っても数か月前だけど。

それでも小さいころから撫でられることを強請ってきた穂乃果からしたら、とても不自然に思えて。それでも今は気にしないことにするんだ!

だって、みーくんが家に来るなんてほんとに久しぶりだし、こっちの楽しみのほうが勝っちゃうからしょうがないよね!

撫でられていた手を両手でとって手をつなぐ。一緒に、離さない様に。

 

「ううん、知ってるよ。みーくんが頑張ってくれてるの。穂乃果わかるから、無理しないでね?」

「あ……はは、うん。ありがと穂乃果ねぇ。体を壊すような無理はしてないから大丈夫だよ」

「そっか!じゃ、早く穂乃果の家に行こ!」

 

手を引っ張っていく。苦笑しながらもついてきてくれているみーくんがとっても愛しくて。

このまま一緒に居れればなぁ……なんて。冗談だけど本音も交じってしまう。

誰にも渡したくない気持ちがあるんだけど、でもみーくんの事が好きな子はいっぱいいて。

きっと穂乃果じゃなくて誰かを選んだならきっと耐え切れないから。ううん、穂乃果だけじゃなくて皆だけど。

だから皆が幸せになるような方法なんて一つしかなかったんだ。

きっと。これが幸せだから。

 

家に着くと、穂むらの扉を開ける。店番をしているお母さんがいた。

 

「ただいまー!」

「あら、お帰りなさい穂乃果」

「お邪魔します」

「あら、みーくんいらっしゃい。なんだか久しぶりねぇ」

「そうですか?あんまり感じないんですけれど」

 

と言って、みーくんは苦笑する。どこか気恥ずかしそうにしていた。

自分でも思う所があったからなのかな、なんて。

少し勘ぐってしまう。きっとこれも最近一緒に帰ってないからだ。うん、多分。

 

「そうよ。ここの所全然来なかったじゃない」

「あはは……忙しかったものですから」

「まあ、そうよね。みーくんも高校生になったのよね」

 

お母さんが昔を懐かしむようにして、目線を上にあげる。

どれ程遡ってるのかは分からないけれど――きっと、穂乃果も覚えてないような昔のことには違いないはず。

すこし、と言うかほんの数秒ほどでその時間は終わってしまったけれど。

 

「あ、どうぞ上がって。穂乃果、おまんじゅう持っていきなさい」

「ええー!もう餡子飽きたよぅー」

「ああ、そんな大丈夫ですよ」

「こら!この間も言ったけれど、和菓子屋の娘なんだから飽きたとか言わないの。みーくんも遠慮しないで」

 

お母さんに怒られる。そうは言っても飽きたものは飽きたんだからしょうがない。

ぷくーっと膨れる。たまには他の物だって食べたい。

 

「じゃあ、お言葉に甘えて。すみません」

「いいのよ、そんな事。息子のように思ってるんだから、ね?」

「あはは……ありがとう、ございます」

「それと、穂乃果。ちょっと頼まれごとしてくれないかしら」

「う」

 

なんだか嫌な予感がする。お母さんがこういう言い方をするときは大体決まって――

 

「お店のことなんだけど」

 

的中した。多分だけど店番、かな。

少しすまなそうな顔をしながらお母さんが言う。

 

「店番、頼んでもいいかしら。ちょっと用事が出来ちゃったの」

「うぅ、分かったよぅ」

 

渋々ながら了承する。お母さん以外に店番をできるのは穂乃果しかいないから。

雪穂はまだ中学生だし……、ちょっと不満だけど。

折角、みーくんが来てくれたのに。これじゃあ意味ないじゃん。でも、しょうがないかぁ……。

 

「えっと、じゃあ。みーくん先に穂乃果の部屋に行ってて?穂乃果も後ですぐ行くから」

「あ、うん。りょーかい。じゃあお邪魔するね」

 

と言ってみーくんが奥に消えていく。すぐに割烹着を取り出して着る。

着替えている時に、お母さんがにやにやしながらこっちを見ていることが分かった。

何か、用なのかな。

 

「ね、穂乃果。みーくんとはどこまでいったのかしら」

「うぇえええ!?」

 

なんだか真姫ちゃんみたいな驚き方をしてしまった。

なんてことを言うんだろうか。まだ進んでもいないのに。

いや、そのまだって言うのは言葉の綾であって。好きだけど、どうしたらいいか分かんなくて。

ことりちゃんや、海未ちゃんとか皆と相談しているというか。

色々と考えてしまう。あたふたと言葉に詰まる。そんな姿を見てお母さんが笑った。

 

「その様子じゃまだまだみたいね」

「もう!びっくりさせないでよ」

「そうかしら。穂乃果だってみーくんのこと、好きなんでしょう?」

「それは、そうだけど」

 

好き。ううん、大好き。きっとみーくんがいないなんてことありえないくらいに。

だけど、この思いは伝えたらきっと壊れてしまうような――そんな思いなんだ。

伝えきれないことにもどかしさを感じてしまうけど。きゅっと胸のあたりを握りしめる。

 

「伝えられないことだってあるんだよ」

「……そう」

「だから、きっと」

 

今は、ただ。この瞬間を感じていたいから。

伝えることはまだ、やめておこう。苦しくて切ないこの思いを閉じ込めるために。

 

穂乃果は、穂乃果であるために笑うんだ。


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