μ'sのメンバーが全員ヤンデレだったなら   作:コルセット

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第五話

意識が、少しずつ覚醒していく。窓から日が射しこんでいる。

鳥の声と共に、目を開けていく。同時に体に感じる重さに気付く。体が動かないと言うよりは、何かが乗っているみたいだ。

あたりを見渡すと、ことりねぇが僕の胸の上で寝息を立てていた。両手は穂乃果ねぇと海未ねぇにホールドされていて動かせなかった。

どうにかして動かしたかったが、寝顔を見てしまうとそんな気も起きなくなってしまう。

はぁ、と息を吐き、時計を見る。もう少しで7時をまわる。今日と明日は休みだからいいが、もしこれが続くのならば、僕はこの家から出られるのだろうか。

不安がよぎる。だけども打開策なんて思いつかず、時間が過ぎていく。

30分ほど過ぎたところで、もぞもぞと僕の上でことりねぇが動く。どうやら起きたみたいだ。

 

「おはよう」

「あー、みーくんだー。寝ても起きても一緒にいるなんて、幸せだよー」

 

抱きしめられる。動けない為、されるがままだ。手が僕の脇腹から、首筋に行き。そのまま唇を撫でられる。

ゆっくりと線をなぞるようなその手つきは、とても厭らしくて。僕は、その事を悟られないように表情を我慢する。

その表情を見て、ことりねぇは楽しそうに笑った。

さらに顔を近づけてくる。何だか嫌な予感がする。ごそりと、両隣が動く。

耳たぶを優しく、唇で挟まれる。生暖かいその感覚にぞくりと震える。

 

「ふふふっ、湊は可愛いですね……。ここはどうですか?」

 

海未ねぇが笑った。耳たぶを一度離すと、優しく噛み。耳輪の部分を唇で撫でられる。

耳の間近で聞こえる水音と息遣いに鼓動が早くなる。その間にもことりねぇは抱きしめることをやめてくれず。

ただ耐えるのを待つだけとなった。ただ、それだけ。

 

「皆ずるい!穂乃果だって!」

 

耳の中を舌でなぞられる。耳の縁を確かめるかのように。吐息が耳にかかる。

耳たぶを唇で挟んだり、遊ばれたりしている。両方からされる感覚はどちらも違くて。

穂乃果ねぇのはたどたどしいと言うのか、何というか慣れていなくて。逆に言ったら海未ねぇのは恥じらいがなくなったと言えばいいのだろうか。

大事なものを扱うかのように、ゆっくりと丁寧だ。

僕はその快感の波に乗りこまれない為にも、目を閉じた。

 

「だーめ。目を開けて?」

「ことりねぇ、勘弁してよ。無理、だって」

 

瞬間、アラームが鳴る。自分でかけた覚えはない。すると、両隣にいた彼女たちは残念そうな顔をして離れた。

ことり姉ぇは、少し寂しそうな顔をした。

 

「あーあ、残念。ここからだったのにぃー」

「しょうがないですよ穂乃果。決めたのはこちらなんですから」

「ううう……。そうだよねぇ」

「へ?何のこと?」

 

何の事を言ってるのだろうか?僕の中で疑問が走り回っている。

昨日からこんな調子だ。あまりの展開の速さについていけない。

 

「すぐに分かるよ。さぁ、みーくん。起きて?」

 

ことりねぇが立ち上がって僕の手を引く。

されるがままに立ち上がる。こうして、僕の朝は始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「成程ね。こういう事かぁ」

 

目の前には凛ちゃん、かよちん、真姫ちゃんと、僕と同じ1年組がそろっている。

ことりねぇ達と入れ替わりに来ている。あっという間に入れ替わっていた。

朝ご飯もそこそこにあわただしかった。

 

「まぁ、いいや。多分泊まり、だよね?」

「そういう事にゃ」

「ご、ごめんねぇ……」

「まあ、当然よね」

 

そう三者三様の反応を見せる。

はぁと息を吐く。とりあえず、買い物に行かなければいけない。

予想通りならば明日も来るはずだ。

 

「じゃあ、買い物に行ってくるよ。冷蔵庫に何も残ってないからねぇ」

「ううん。行かなくていいにゃ」

「え?」

 

凛ちゃんを見る。得意げな表情で僕にスーパーの袋を掲げていた。

中には肉や野菜などの食料品がそろっていた。

どうやらここに来るまでに買い物をしてきてくれたらしい。僕は感謝しつつその袋を受け取った。

 

「ありがと。お金は後で払うね」

「いいのよ、別に。私達が押し掛けたんだもの。それくらいはこっちで持つわよ」

「それでもだよ。女の子に養ってもらうヒモみたいなことは、嫌だからね」

「……そう。じゃあ一人分を払ってもらおうかしら。これならどう?」

 

目線でこれ以上は譲渡しないという意思を感じた。

了解とうなずくと、袋の中身を冷蔵庫に入れていく。

 

「凛達も手伝うにゃ!」

「お、ありがと。とりあえず掃除しなくちゃね。昨日穂乃果ねぇ達が泊まってそのままだし」

「み、みーくん。じゃあ、私お掃除するね?」

「うん。じゃあお願いしようかな。えーと、真姫ちゃんはお布団干してもらっていいかな?」

「しょうがないわね。干すところは2階でいいの?」

「そうだよ。かよちん、掃除するのは僕の部屋だけでいいよ。掃除機はそこの中に……ってあれ?」

 

いつの間にか掃除機を持っている。場所など言っていないのに。勘で開いたのだろうか。

まぁ、いいか。どっちにしろ言う手間が省けた。

 

「じゃあ、凛ちゃん。お風呂掃除をお願いしていいかな?」

「まかせるにゃー!」

「じゃあ、お願い。終わったらかよちんか真姫ちゃんを手伝ってあげて!」

 

全員がそれぞれの持ち場へと移る。少しバタバタしてしまうが中々こんな生活も悪くない。

すべての物を冷蔵庫にしまい込み、次に進む。次は洗濯をしなくてはいけない。

凛ちゃんが掃除しているであろう風呂場が隣接している洗面所へと向かう。

中に入ると、洗面所で屈みながら、何かをしている凛ちゃんの姿があった。手にはメモリーカードのような物を持っていた。

 

 

「凛ちゃん?何それ?」

「にゃ!び、びっくりしたー」

 

飛び上がるように体を硬直させている。かたんと音を立てて何かを落とす。レンズがこちらを向く。

デジカメだ。しかも、どこかで見たことのあるものだった。何でこんな物がここにあるのか。

 

「これ、デジカメ、だよね。なんでこれが――」

「あちゃー、ばれちゃったかぁー。まあ、しょうがないにゃ」

 

舌を出して愛想笑いをする。デジカメを拾い上げ、中のメモリーカードを抜く。

なんだかとても慣れている手つきだった。

 

「みーくんが聞きたいことは分かるにゃー。きっと誰が設置したのかだよね?」

「あ、うん。そうだね」

 

いろいろ聞きたいけれど、頭の中で整理できなかった。言われるがままに頷く。

凜ちゃんは無邪気に笑うと、デジカメを僕の手に乗せる。

 

「これね、さっきことりちゃんが忘れたーって言って凜にお願いされたの」

 

ああ。さっきから感じていたこのデジカメの既視感は、ことりねぇのだからか。

少し前に遊びに行ったとき、新しく買ったと言っていた。確かにそうだ。

 

「いつからとか、知ってるかな。何だか最近だと思うんだけど」

「うーん。凛はみーくんの昔の姿もみたことあるし、結構前からじゃないかにゃー」

「え」

「少し前から皆で見てたけど、ことりちゃんと穂乃果ちゃんと海未ちゃんはもっと前から見てたと思うにゃ」

 

頭痛がする。僕は前から穂乃果ねぇ達から盗撮されていたのか?それを皆で見ていた?

どういうことなんだろう。僕の意識が揺れる。でも良いのだろうか。僕に話したら今度から注意して生活するのに。

 

「そこまで話していいの?皆から怒られるんじゃ――」

「もう必要ないにゃ。みんなそう言ってるよ?」

「そう、なの?」

 

もしかして、飽きたのだろうか。それともその事自体におかしいと気付いたのか。

少し気分がよくなる。いくら好きな彼女達であったとしても勘弁してほしいものである。

すると、凛ちゃんが僕の胸に収まるように抱き着いてくる。

ふわりと、僕の鼻腔に柔らかなお日様の匂いがした。僕の顔を見上げるようにしてにっこりと笑った。

 

「だって、凛達はもうずーっと見ることが出来るにゃ!もう離さないにゃー!」

 

僕を抱き締める腕の力が強くなる。それがまるで首輪のように感じた。僕はどうしたらいいだろう。

凛ちゃんを見る。無邪気に笑う。まるで太陽のように僕を照り付けていた。

そのまま、僕に甘く囁く。

 

 

 

 

 

 

 

 

「好きだにゃ。みーくん。他の誰よりも」

 

その太陽に身を焦がされそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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