トレーナーさんは眠らない(ガチ)   作:HK416

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『飲水思源』

 

 

 

 

 

「じゃあ、お願いします」

「はい、任せてください」

「いい勝負服を作りましょうね!」

 

 

 トレセン学園には学び舎のみならず、数多くの施設があるのは周知の事実。

 

 その内の一つに“衣裳部屋”と呼ばれている一棟が存在する。

 服飾担当のデザイナー、スタイリストの仕事場であり、ウマ娘達の勝負服の作成、管理、補修を行う場所でもある。

 それだけでなく制服、トレーニングウェア、運動靴などのデザイン、選定も仕事の一つで、中には動き易さを追求するために生理学を学んでいる者もいる。

 酷く簡単に言ってしまえば、トレセン学園の衣類に関する事柄を一手に引き受ける場、というわけである。

 

 

「本当に勝負服を造ってしまうつもりなのですね……」

「い、いいのかな、私達も一緒で……」

 

 

 その棟の一室。

 普段は会議室として使われている部屋を間借りして、ルドルフを除いたチームの面々。

 そして、服飾担当二名が集まっていた。

 

 一人は主任スタイリスト。勝負服やライブ衣装の管理ばかりではなく、それぞれにあった髪型やら化粧も提案する妙齢の女性である。

 もう一人は新人デザイナー。まだ入ったばかりであるが、ウマ娘の要望を言葉として受け取りながら絵として出力する手腕に長けているそうだ。

 

 記憶を失っていて申し訳なかったのだが、主任にはルドルフの勝負服作りの時にも世話になったらしい。

 勝負服申請のついでにこの棟を訪れてみたのだが、彼女の方から声を掛けてくれた。

 タマちゃんの担当である小宮山さんと同じで大変気さくで会話がし易く、オレと面識のない新人を呼んでくれたのは気後れしないように気を遣って。

 

 思わず恐縮してしまいそうなほど、出来た女性だった。

 

 

「うぅむ、しかし勝負服と言っても……正直、思いつかないな。スズカは何かあるか?」

「私も特に考えがあるわけじゃ……」

「大抵の娘もそうなので、気構えなくても大丈夫ですよ! 好きな服や色があれば言って下さい! 必ず形にしてみせます!」

「は、はぃ……」

「凄いやる気だ」

 

 

 いきなりこんな場を用意されたとしても、何か思いつくわけではない。

 オグリは首を捻りながら、スズカは何の考えもなしに来てしまったことを恥じているのか、もじもじと委縮していた。

 

 しかし、そんな程度で困るトレセンスタッフではない。

 スケッチブックと色鉛筆を手にした新人さんがバチコーンとウインクして、親指を立ててサムズアップ。

 貴女達に最高の衣装を用意する、と断固とした強靭な意思と自信を見せつける。

 

 スズカは若干引き気味、オグリは感心したように頷いていた。

 トレセンスタッフのやる気は凄まじいものがある。ともすればウマ娘に直接関わるトレーナーよりも上なんて場合も珍しくない。

 輝かしい舞台を支える屋台骨たる自覚があるからだ。普段日の目が当たらなかったとしても、重要ではない仕事などない、と心から信じ切っていた。

 

 それは事実で、何ら恥じることのない働く大人の姿だろう。

 

 

「まずは採寸から始めましょうか。トレーナーさんは外で待っていて下さい」

「ほいほい。じゃあお任せします。君等も最高のもんを用意して貰えるからさ、遠慮なんかすんなよぉ」

 

 

 制服の上からでも採寸は出来るだろうが、より正確な方がいい。

 特にマックイーンは中等部で成長期真っ只中。成長分も見越す以上は服の上からではやや不安だ。

 

 下着姿を見て変態扱いなど御免被る。

 そもそも、そうした興味や欲求など向けたことなどないので、さっさと退散する。

 部屋を出る直前に皆の顔を見たが、既に困惑は消え去り隠し切れない期待の色で濡れていて、思わず微笑んでしまった。

 

 勝負服はそれだけレースに挑むウマ娘にとって大きな意味を持つのだ。

 GⅠレースでのみ着用を許される言葉通りの服。これを纏えるのは選ばれたトレセン生の中でも更に一握り。心躍らないわけもない。

 

 普段は走ること以外にはフラットな態度しか示さないオグリやスズカですら言うに及ばず。

 意図して大人びた態度を保っているマックイーンも、気弱そのもののライスでさえ目をキラッキラとさせていた。

 

 

「さてと……」

 

 

 会議室を後にし、廊下を歩んでいく。

 スズカはメイクデビュー、オグリは中央初戦も近く、表には出ていないがやや入れ込み気味だった。

 勝ちに拘るのは結構だが、拘り過ぎても周囲が見えなくなって足元を掬われるものだ。

 心持ちとして勝ちへの執念と普段のフラットな態度の間を入ったり来たりしているくらいが丁度いい。

 

 その点、勝負服作りは正解だったと言えよう。巧い具合にレースそのものから意識を逸らせた。

 適度に肩の力を抜いて、適度に勝ちへの執念を滾らせて、適度な緊張感で挑めるだろう。

 

 そして、オレはルドルフの下へと向かっていた。

 会議室にルドルフがいなかったのは、別の部屋で着替えているからだ。

 

 勝負服、と一口に言っても様々。

 ある日突然、どんな勝負服が欲しいと言われても困惑するのは目に見えていた。

 だから、既に勝負服を持っているルドルフの実際に着ている姿を見せ、インスピレーションを与えて貰おうという目的が一つ。

 

 尤も、そっちはおまけ。本命は勲章の方だ。

 依怙贔屓はいけない、とチームメンバーがGⅠレースで優勝したらたった一つの勲章を造ると決めたはいいが、それを聞いたルドルフは――――

 

 

『は??????』

『造るから』

『はぁ??????????????????』

『もう決めた。造るから』

 

 

 そら嫉妬リルドルフやヘソ曲ゲルドルフを超越したギャン切レルドルフ。

 もう追加戦士と言うよりも、闇落ちした離反戦士と言った有り様だった。

 

 耳を後ろに伏せ、地面を脚で掻く前掻きという動作を見せた。

 ウマ娘が何かを求めるに際して見せる本能的な動作。或いは、苛立ちを露わにするための動作だ。

 

 常人なら恐れから小さく悲鳴を上げるであろうが、その程度で恐れ戦いて引くオレではない。

 上手いこと殺されない程度の自信はあったし、万が一に対する備えもあり、全ての覚悟はトレーナーになった時点で決まっていた。

 何よりも、ルドルフへの信頼があった。記憶はなくとも短い間でそれだけのものを抱かせてくれるだけの献身を体験してきたのだから。

 

 とは言え、ルドルフもまた引く様子は見られない。

 そりゃそうである。ただ一人の担当だった頃の思い出を、贔屓は良くないという理由だけで分け合おうとすれば、激憤も致し方なし。

 

 このままでは一生平行線が続いていくだけ。

 なので、オレはあっさりと切り札を切ることにした。

 

 

『ほい、これ。見つけたよ』

『それ、は…………』

 

 

 マックイーンとの会話をヒントに、何とか見つけた手作りの勲章を見せてやった。

 

 卑怯な手ではあったが、開示する情報は順番を選ぶのは常套手段だ。

 先に印象を下げる情報を開示し、その後に印象を上げる情報を開示する。

 すると、逆の場合であったよりも、好感度が上がる。それは人物に対する評価だけでなく、行動に対しても同様だ。

 

 これを心理学ではゲインロス効果と呼ぶ。

 印象の良い優等生が子猫を虐待するのと、印象の悪い不良が子猫を助けるの、どちらがより大きく印象に影響を与えるのかを考えれば分かり易いか。

 

 実際、ルドルフの抱いていた怒りは見る間に萎えていき、逆に瞳が輝きが灯っていく。

 

 

『依怙贔屓は良くない。だがルドルフも納得してくれないなら、これもお蔵入りにするのも一つの手だよな?』

『なっ!? そ、それは、卑怯だ……!』

『だよな。だから別にいいだろ? ルドルフにとって大切ならオレにとっても同じだ。一番最初の担当で、大事な相棒であることに代わりはないよ』

『~~~~~~~~~~~~~~~っ!』

 

 

 してやったり。

 

 何かを言いたげに口を開きかけたルドルフであったが、平静さを保とうとして巧く言葉に出来ていなかった。

 何とかすまし顔を造ろうとするものの、頬が真っ赤になっていて全ては台無し。

 眉間に皺も寄っているし、上がろうとしているのか下がろうとしているのかよく分からない目尻は何とか平時と変わらない。

 口元も緩もうとしているのか引き結ぼうとしているのか定かではない。

 

 ともあれ、怒りの感情だけでないのだけは確かだった。

 

 

『はぁ。分かった、分かったとも。君の言い分にも一理ある。私が身勝手だったと認めよう。しかし、一つだけ頼みがある』

『頼み……?』

 

 

 何とか自らの感情と折り合いをつけたルドルフが口にしたのは、改まって頼むほどのことでもなかった。

 しかし、何処か拗ねるかのような、照れを隠すような表情は印象に残っている。

 

 今はその頼みを実行するために、向かっているのだった。

 

 

 

 

 

―――――

――――

―――

――

 

 

 

 

 

 落ち着かない。

 今の心境を表すならば、その一言で事足りた。

 

 私が居る場所は“衣裳部屋”にある一室。

 写真撮影も行える棟には当然、撮影所ばかりではなく髪を整え、化粧で飾るための控室も存在する。

 

 その部屋で勝負服に着替え終わった私は、忙しなく動き回っていた。

 スタッフの用意してくれた紅茶にも手を付けず、椅子にも座らずにその場を行き来する。

 耳は私の意思を離れてあちこちに向けられ、自覚できるほどに意識が散逸してしまっていた。

 無理やり立ち止まって見ても、両親に矯正されたはずの前掻きまでも再発してしまう始末。

 

 とても人には見せられない姿だ。

 ただ、あったのは苛立ちではない。心の内に生じているのは待ち切れないほどの期待だった。

 

 …………いや、苛立ちが全くないと言えば嘘になるか。

 

 全く。トレーナー君と来たら、チームの皆に勲章を造りたいなどと。

 その言葉を聞いた時には、()()()()()()()としての自覚があるのか、と問い詰めてやりたくなった。

 

 確かに、彼は自らの選択として、チームを造る道を選んだ。

 今や彼は私だけのトレーナーではなく、チームのトレーナーである。

 だが、それは単なる事実であって、私のトレーナーであるという前提があってこそ――――などと言うのは子供染みた我儘だろうか。

 

 ……我儘、なのだろう。

 

 彼がチームの皆と仲睦まじく話している光景は、私の望んだ光景であろうに、黒々とした感情を抑えきれなくなる時がある。

 

 何と醜い嫉妬か。

 全てのウマ娘が幸福を享受できる世界を作るという私の夢、私の目指す場所には相応しくない感情。

 不思議だが、愚かしい我が身に対する自嘲と同時に奇妙な安堵もあった。私もまた一人のウマ娘に過ぎないのだ、と。

 

 だから、こうして一段と彼への想いが募る。

 だから、あんな頼みを口にした。

 

 思わず口元がにやけそうになった瞬間、控室のドアが力強くノックされる。

 

 

「おーい、着替え終わった? 入ってもいいか?」

「あ、あぁ、どうぞ」

 

 

 …………期待の余りに声が裏返ってしまった。恥ずかしい。

 

 私の言葉をドア越しに聞いた彼は、何時ものように大きい身体を僅かに屈めながら扉を潜る。

 

 その顔には苦笑が刻まれていた。

 私の期待と落ち着きのなさなどお見通しなのだろう。

 見えなかったが、より一層頬が赤く染まっているのを確信するほど熱くなる。顔から火を噴いてしまいそうだ。

 

 私は気恥ずかしさを払うように咳払いをして、彼を真っすぐと見つめた。

 すると、彼は約束通りに内ポケットからケースを取り出し、一つの勲章を額から外す。

 

 

「では、頼む」

「仰せのままに」

 

 

 私が望んだのは二人きりの叙勲式。

 皆のために勲章を造るのはいい。彼の気質を考えれば、当然の帰結であったであろう。

 

 しかし、彼の手で勲章を身に着ける栄誉だけは譲れない。

 彼の最初の愛バとして、これに与れるのは私だけ。その優越で、何とか自らを納得させた。

 この瞬間だけは、私は彼のものになって、彼は私のものになったから。

 

 何か慈しむような視線を向けながら、彼は勲章を勝負服の左脇腹辺りに取り付ける。

 そして、何度となく親指で勲章を撫で、口元は笑みを模っていた。

 

 

「どうだ、似合っているか?」

「ああ、よく似合ってる――――じゃ、ただの自画自賛か?」

「そうなってしまうか。かもしれないな」

 

 

 彼が指を離すと、一歩下がって見せつけるように小さく手を広げる。

 私の問いに苦笑を漏らすだけであったが、確かな満足と納得を得ていることだけは受け取れた。

 

 控室にある大きな姿見に向き直り、私もまた勲章に与った身を眺める。

 蒼と銀を基調とした菱形の勲章は、有マ記念の優勝レイを参考にしてデザインしたらしい。

 拙い、と彼は言っていたが、贔屓目を抜きにしても素晴らしい出来だ。とても素人が自身で考え、造り上げたとは思えない。

 

 うん、よく映えている。

 深緑の勝負服に、私と彼で得た栄誉が輝いているようだ。

 

 

「気に入った?」

「ああ、とても。少し、面映ゆいほどだよ」

 

 

 そりゃよかった、と彼は腕を組んで優しく微笑んだ。

 

 ああ、やはり君にはその笑顔が似合っている。

 新たな記憶を失っていく不安と戦いながらも、他者の幸福と歓喜に共感して浮かべる笑みとも違う、何の影もない陽光を思わせる笑み。

 その笑みを見るだけで、どんな被害を被ったとしても、どんな苛立ちを抱えていたとしても、私は全てを許してしまった。

 

 これまでも。きっと、これからも。

 

 私達だけの叙勲式を思いついた時は、正直なところ、もっと昏い愉悦があるものだと思っていた。

 他の皆と私は彼にとっては“より特別(違うもの)”と言ってくれているようだから。

 

 しかし、胸に去来したのは、静かで純粋な歓びだけだった。

 

 

「…………っ」

 

 

 同時に、勲章の重みが増した。

 掌に収まるほどの大きさでは感じるはずのない重み。

 

 それは現実の重みだ。

 

 本音を明かしてしまえば、ずっと現実感がなかった。

 

 彼が身を挺して庇ってくれた時も。

 血塗れのまま救急車で運ばれていくのを見ているしかなかった時も。

 彼が私を置き去りにして全てを忘れたと悟った時も。

 無惨な心境でジャパンカップに挑み、敗北した挙句に尊敬に値する強敵から張り手と罵声を浴びた時も。

 辛うじて立て直せた精神(こころ)で、有マ記念で勝利した時も。

 

 ずっと質の悪い悪夢の中にいるようで。

 足元はふわふわとして接地感がなく、何もかもが色褪せていた気がする。

 

 彼が学園に戻ってきてからも、質が変わっただけで現実感が抜け落ちていた。

 

 マルゼンスキーに背中を押されて、元の鞘に収まった時も。

 彼の下で新たな友と仲間を得て、距離を縮めていく時も。

 新たな歓びと新たな苛立ちを得ていく時でさえ。 

 

 今度は逆に、幸福なだけの夢の中にいるようで。

 僅かにでも気を抜いてしまえば、残酷なだけの現実が突き付けられそうだった。

 

 それが、勲章を得た瞬間、突如として全てが確かな実感を伴って現実だと認識できた。

 

 胸の下から込み上げてくる、甘さと痛みを同時に帯びた熱。

 私はその熱を言葉にすることも出来ず、抑えておくことさえも出来ずに、ただ思うまま、望むがままに動く他はなかった。

 

 

「おぐぅっ! …………あー、ルドルフさん?」

「……済まない。少し、少しでいいんだ。少しだけ、このままにさせて欲しい」

「……泣いてる?」

「五月蠅い。君は……時々、デリカシーが……ない、ぞ」

 

 

 気が付けば、彼の胸に飛び込んでいた。

 彼のぬくもりを、彼の匂いを、彼の鼓動も、彼の身体を、確かに其処に居る歓びを満喫する。

 溢れる思いは止め処なく、発した声は情けないほど震えていた。

 

 相手の顔も見ないまま、私の顔を見せられないまま。

 ただ、存在を確かめるように、壊れてしまわぬように抱き締める。

 

 

「…………よくやった。頑張ったな、ルドルフ」

 

 

 暫くすると、彼は辛うじて立ち続けていた私を労うように頭を撫で始めた。

 

 私のものとも両親のものとも違う、感触だけで男のそれと分かる大きい手。

 髪をすかれ、耳を押し倒されるだけで、接触している部分から背骨を伝って全身に電流が走るかのようだ。

 腰砕けになってしまいそうな心地良さと確かに其処に彼がいる現実を思う存分に噛み締める。

 

 唯一の不満があるとするのなら、私が呼んで(思い出して)欲しい名で呼んでくれなかったことだけだ。

 

 ――――それから、どれだけの時間が経っただろう。

 

 

「……す、済まない。はしたなかったな」

「いや、別に構わないよ。でも、男に自分から引っ付くのはやめときなぁ?」

「…………ふんっ」

「痛ぁいッ! どうして脛蹴んのぉ?!」

 

 

 前言撤回。

 余韻も何もなく、ひたすらに不満しかない。

 

 この男と来たら、此方がどれだけアプローチしても気を揉んでも意味をなさない。

 そう言えば、彼の鼓動を聞いていても全く平常と言った次第で、まるで動揺していなかった。

 

 それだけ意識されていないということだ。

 マルゼンスキーが言っていたように、何とか彼の見る目と意識を変えてやらねばなるまい……!

 

 そ、その、どうしたらいいのか全く分からないのは問題なのだが……。

 と言うよりも、マルゼンスキーも私と似たようなものにも拘らず、あの余裕と自信はどうなっているんだ……!

 

 

 ようやく彼が戻ってきた実感を得ると共に、新たな問題と疑問が浮かんでは消えていき、不安は尽きない。

 

 しかし、一つ言える事がある。

 今の私は不安よりも希望が強く、苛立ちよりも歓びの方が遥かに大きかった。

 

 この想いが届くまで。

 それがどれだけ無意味であろうとも、続けていこう。

 全てを思い出す、その時まで。君が自らの意思で私の隣に立つと決める、その時まで。

 

 

 

 

 





会長「ところで、トレーナー君、いくら何でも鈍感過ぎないか?(不満気」
トレ「そう言われましても……」
マル「まあ、私達のことを女として認識してるけど、恋愛対象と見てないものねぇ」
フジ「恋愛対象として見てないってレベルじゃないよね」

南坂「では僕が説明しましょう」
トレ「南坂ちゃん!? 説明って何をぉ?!」

南坂「先輩にとって、この程度のスキンシップは恋人同士でするものではないんですよ」
会長「この程度!? アレで!?」
南坂「何故そんな認識になってしまったのか。それは、御両親が連れ添ってから20年近く経った今でも新婚気分でちゅっちゅしているからです!」

トレ「おいばかやめろ。ウチの家庭事情を明かすな。オレが多感な年頃にどれだけ恥ずかしかったか分かんのか? なあ……! おい、聞けよ……!」

南坂「そんなわけで先輩の中の恋愛観はもうそりゃあヤベぇです。無自覚に八方美人で距離感が近い自覚はあるらしく、付き合い始めれば自分から内に籠り始めます」
マル「それは安心ね。恋人として嫉妬に狂うなんてしたくないし。で、それからそれから?(ドキドキ」
南坂「毎日のように好き、愛してるって抱き締めながらいいます」
フジ「そ、そんなに!(ドキドキ」
南坂「もうちゅっちゅなんて当たり前ですよ当たり前。人前だろうが関係ねぇと言わんばかりで。見てるこっちが砂糖を吐きそうになるほどです」
会長「ちゅ、ちゅっちゅ……!
!(ドキドキ」

トレ「お前! そんなん流石にしてねぇよ! して、して……してない、してない、よ?」


三人「「「……ゴ、ゴクリ」」」


トレ「三人とも目がこわぁい!!」



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