ライス、可愛いよライス。ファイナルズ優勝させられなくてごめんな。
再会は、彼女が俯いて泣いている所だった。
「ぐすっ、ふえぇ……うぇぇぇぇーん!!」
トレセン学園の名物の切り株の横に座り込んでいる小さな後ろ姿に、君は見覚えがあった。
『ライスシャワー』。祝福の名前を持つ、黒髪で、片目が隠れているのが特徴のウマ娘。
今日の選抜レースで、君は昨日の彼女の走るフォームを見て、彼女をスカウトしようとしていたのだが、肝心の彼女はレースをボイコット。
なにやら凄くバクシンバクシン言いそうな子がライスシャワーの姿を探していたが結局見つからず、彼女の資質に期待していたトレーナー達を失望させる結果となってしまった。
そんな君も、失望────でなないが、そんなライスシャワーを探して学園内を探していたが、気づけば夜になっていたのだ。
「ばかっ、ばかばか! ライスのばか! 頑張るって、頑張ろうって決めたのに……っ!」
彼女の悲痛な叫びが、一帯に響く。
「ぐすっ……! なんで……なんでライスは、こんなにダメなの子なの……?」
その姿があまりにも痛ましく感じた君は、気づけば彼女の傍に近寄っていた。
「……大丈夫?」
「ふぇっ!?」
君が声をかけると、ライスシャワーは驚くと同時に、耳と尻尾をピーン! と真っ直ぐにした。どうやら、相当驚いたらしい。
「あ、あなたは……っ、昨日の……」
当然、ライスシャワーにも君の姿には見覚えがある。自身の不幸に巻き込んでしまった。という印象が強いが。
「ぐすっ……うぅ、ご、ごめんなさい……それ以上、こっちに来ないで……?」
しかし、自身の体質のことを思い出したライスシャワーは、両手をめいいっぱい突き出して顔を背ける。
当然、その事に疑問を思った君はどうして? と聞き返してしまった。
「だって……ライスの傍にいたら、また不幸にしちゃう……また迷惑かけちゃうよ、ライスがダメな子のせいで……」
そう呟く彼女の目に、月のあかりに照らされてキラリと光る雫が溜まっていく。
そんな姿を見た君は、気づけばライスシャワーの頭に手を当て、優しく撫で始めていた。
「ライスシャワー、君はダメな子なんかじゃない」
「えっ……」
「俺は知っている、君が変わろうと頑張っていたこと。俺は知っている、君が努力をしていることを」
たった一日しか見たことは無いがな、とそのあと苦笑気味に君は笑ったが、たった一日、されど一日。ひと目でわかる程に、彼女の積み上げた物が分かるくらいに、その気迫は彼女に現れていた。
そして、君は今日────正確に言えば選抜レースが終わったあとに、真っ先にライスシャワーに言おうと思っていた言葉を口に出す。
「なぁライスシャワー。良ければ俺にスカウトされないか?」
「えっ……?」
その言葉に、更に目を丸くライスシャワー。
「スカウト、って……あなたが、ライスのトレーナーさんに?」
「あぁ……と言っても君が望んでくれるならなんだけどな」
と、そのままライスシャワーの頭を撫で続ける君。そんな彼女は、その言葉を聞いてあわあわと慌て始めていた。
「あわわ……ら、ライスはその、とっても嬉しいけど……でも、ライスは
ダメな子だよ? いっぱい迷惑かけるし、まともにレースにも出られなしい……それに、またあなたを不幸にさせちゃう……」
しゅん、とライスシャワーの耳がぺたんと潰れる。
「そんなことない」
しかし、君はそんなライスの言葉に力強く首を振る。
「迷惑なんていくらでもかけろ。レースだって、これからライスシャワーは変わるんだからたくさん出れる。それに────」
一旦言葉を区切り、君はライスシャワーの対面に移動して、同じようにしゃがみこんで視線を合わせた。
「俺は今、ライスシャワーに出会えて"幸せ"だぞ?」
「……っ!!」
彼女の瞳に、一度引っ込んだか涙がまたではじめる。しかし、それは悲しみからではなく、初めて言われた言葉による『嬉しい』という感情からだ。
「君はきっと、多くに人に幸せと祝福を与えられる。そんなウマ娘になれる。そうなれるように、俺が支えていってやる」
「……うんっ」
ライスシャワーから、堪えきれずに涙が溢れる。
「だって、君の名前はライスシャワーなんだから」
キリスト教式の結婚式の祝福にて、新郎新婦に米を振りかける『ライスシャワー』から取られた、まさに祝福の名を背負ったウマ娘。
「ふえっ…………」
彼女の軌跡は今、この瞬間から走り出す。
「ふぇぇぇぇぇ!!!」
その後、ライスシャワーの泣き声を聞いて駆けつけた人にめちゃくちゃ誤解された君だった。
続かない
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