恋歌   作:孤独なバカ

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再会

入学してから一ヶ月がたち学校生活が始まった後

 

「ヤッホー。ハルいる?」

「ん。ってナツねぇかよ」

 

ショートカットの少女が俺に飛び乗ってくる

この少女は速水夏樹。monaという名前でユニットを組んでいる相手であり、一個上の姉貴だ

 

「どうしたの。最近元気ないじゃん」

「ん。前に話しただろ?ほら再会できたって」

「ん?ってあぁ。小学生の頃約束した少女のこと?」

「あぁ。んでずっと話す機会を探していたんだけど……」

「まだ話せてないんだ」

「……まぁそうなる」

 

実際俺はレコーディングや週二回の歌ってみたの配信で忙しく、さらにファンサービスやイベントに参加など多くのことをこなしていたので帰宅後もそんな時間なかったのだ

 

「それに、あっちもあっちで忙しそうだからな。剣道で全国大会常連らしくて放課後は義妹集団に囲まれている日々だしな」

「…あ〜ってことは八重樫さん?」

「まぁ流石にわかるか」

 

八重樫雫。俺と約束した少女の名前であり既に有名な少女の名前だ

剣道で負けなし、実家が剣道場で師範をしていることからだしな

 

「…八重樫さんのファンクラブもいるからね〜」

「ナツねぇのファンクラブほどではないけどな」

「それを言うならハルほどではないと思うけど」

「俺は基本的に歌手とか歌い手だからだろ。天之河の人気は素であれほどだしな」

 

実際俺は有名人だ。テレビにでることがあれば、雑誌の取材やドラマにだってでることがある

歌い手としても人気であり、動画を出したら100万再生は堅いのだ

 

「そうかな?私としては歌ってる時のハルはカッコいいと思うけど?」

「……ん?」

「だって歌っている時のハルって後ろから見てると物凄く不安になるんだよ?私なんかとユニット組んでよかったのかなって思っているくらいに」

「……ナツねぇと組まなかったなここまで来てないだろ」

 

俺とナツは学生ということを活かし恋愛ソングをよく歌っている

俺は歌には自身があるが舞台パフォーマンスではナツねぇには叶わない

 

「もっと自信持てよ。俺みたいにヘタレじゃないんだから」

「なんでそこで自虐を挟むかな?」

 

苦笑するナツねぇに俺は時間を見る

 

「ナツねぇ。そろそろ戻らないとまずいんじゃ」

「えっ?ってあっ!ごめん。それじゃあ」

「あぁ」

 

と急いで教室に戻っていくナツねぇに俺を見送った後俺は机に伏せる

 

…バカ。そんな簡単にかっこいいとか言うなよ

 

そう呟くと顔に熱がこもる

未だに憧れている姉貴に褒められることに慣れてはいなかった

 

 

 

「ん」

「あら。起きたかしら?有名人さん」

 

起きると既に長くなりつつある日も暮れかけているころ

俺がぼんやり目を開けるとそこには夕暮れに一人の影が見える

 

「…シズちゃん?」

「……やっぱり。ハルくんなのよね?」

 

俺は寝ぼけ眼をこする。俺は軽く頷く

 

「覚えてたんだな」

「えぇ。ハルくんも」

 

すると久しぶりに顔を見合わせると俺たちは軽く笑ってしまう

 

「ナシナシ。堅苦しいのは似合わんだろ」

「えぇ。でも大きくなったわね」

「あの時シズちゃんより小さかったもんな。俺中学で40cm近く伸びてるし」

 

実際小学生までは小柄だったが、中学生で俺は急激に伸びた

小学生は一番前が当たり前だったのに今では184cmもあるのだ

 

「てかシズちゃんも綺麗になったじゃん」

「そ、そうかしら」

「だって前剣道があるから髪伸ばさないって俺に言ってたのに」

「……そういえば、そうだったわね」

「絶対に似合うって言ってたのに」

 

少しだけむくれてしまう。するとそこから思い出話に移行する

小学生一年の思い出から始まりその後お互いに何があったのかを話していく

懐かしい話からデビューになったきっかけ、いろいろな話が自然と出てくるのだ

 

「……あれ?誰かいるの?もう閉門時間よ」

「ありゃ?」

「あら」

 

とその言葉はかき消される

担任の愛ちゃんこと畑山愛子先生だ

 

「えっとそれじゃあ帰るか」

「えぇ」

「お前って確か一駅離れていたよな?送ってくぞ」

「えっ?」

「女子を一人で帰らせるわけないだろ?もう暗くなってきてるしな」

「いいわよ別に。あなた配信もあるでしょ?」

「今日は喉を休めるために休養日なんだよ……それにお前な少しは危機感持て。いいから送ってく」

「ちょ、ちょっと」

 

俺はため息を吐く。キョトンとしてるが別に関係ない

危機感も足りないし何よりももう少し話したいんだよ

そんな子供っぽいことを思ってるってばれたくない

 

「迷惑か?」

「い、いえ。そんなことないけど……」

「なら帰ろう」

 

鼻歌混じりで俺は手を引く

結局この後シズちゃんの家でご飯をご馳走になり、結局帰った時間が補導ギリギリの時間になりナツねぇに怒られたのはまた別の話


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