永い後日談のヒーローアカデミア~黒絢を添えて~ 作:アルテリア
チーム分けが終わって、いよいよ初戦が始まります。
初戦はヒーロー側が緑谷君と麗日さん、ヴィラン側が飯田君と爆豪君です。
私達は訓練場所のカメラの映像が見られる場所に移動して観戦です。見た感じだと現状ではヒーロー側の方が意思疎通ができていそうです。っていうかヴィラン側は爆豪君が独断専行しようとしてますね。
準備時間が終わり、ヒーロー側がビルの内部に入りました。カメラから見える映像では二人で即席のハンドサインを作り会話なしでの意思疎通をしています。
初めてのはずですが、二人の間での連携はそれなりに出来ていそうです。
(これはまだ最初だからどんな戦法が良いか互いにまだ把握しきれていないです。だからこそ、この初戦は流れを取った方が勝利に近付く、と言ったところでしょうか。)
静かに訓練を観戦しながら分析をしていましたら、爆豪君が綺麗な奇襲を決めました。あの派手な個性でよくあんな上手く奇襲できますね。それを回避した緑谷君も凄いですけど。
爆豪君が緑谷君に右の大振りで攻撃を仕掛けましたが、それを読んでいた緑谷君は綺麗に投げを決めてました。
カメラにマイクが無いのでなんて言ってたのかは分からないですけど、表情からして爆豪君に何か啖呵を切ったみたいです。
その後は麗日さんが核爆弾の場所に到達した物の飯田君の迫真のヴィランなりきりに笑ってしまって居場所がバレてました。気付いた飯田君の「君の個性への対策でこの部屋を綺麗にした」発言で堪え切れず私も笑ってしまいました。飯田君は真面目過ぎるけどそれが一周回ってユーモアになってます。
爆豪君と緑谷君の方に目を移すと、爆豪君が色々探し回ってやっと緑谷君を見つけました。
右手の手榴弾の籠手を何やら弄って緑谷君に向けます。個性の原理が分からないから良くわかりませんが、私はアレが気安く人に向けていい物じゃない事は何となくわかりました。
直後、カメラの画面が爆炎に包まれ、思わず私は眼をつぶって身を縮めてしまいました。
何とか緑谷君は無事だったものの、ビルの正面に派手に穴が開いていました。チートですか。
私も武装を使えばアレくらいはできますけど、それをホイホイ生身で出さないで欲しいです。あ、いやあれは籠手に何かしら蓄積してたから生身ではないと判断していいのでしょうか?
その後は爆豪君が類まれな戦闘への才能を見せつけたり、麗日さんが自分を無重力にしたり、飯田君が核を抱えて麗日さんを躱し続けたり(今の飯田君の言動を見ると思い出し笑いしてしまいます)してヴィラン側が優勢に進めてました。
ですが、最後に緑谷君が個性を利用し片手を犠牲にして拳で五階までの風穴を開ける事で強引に麗日さんが使える武器を作成し飯田君に隙を作り、麗日さんが核にタッチしました。その時の飯田君の動きがコミカルでまた笑っちゃいました。
緑谷君が保健室に運ばれた後、オールマイトが私達の方を向きました。
「さて、緑谷君以外は戻ってきた事だし訓練の講評をしようか!
ちなみに今回のMVPは飯田少年だ!なんでかわかるかな?」
飯田君はびっくりしていましたが、私は妥当だと思いました。
その後、八百万さんがその理由をきっちりと説明した。分かりやすかったので私は説明の仕方が参考になるな、と思って覚えておくことにしました。
オールマイトがちょっと焦ってた気がしますがどうしたんでしょう。
次は轟君と障子君(両方とも名前しか知らないですね)がヒーロー側で、ヴィラン側は尾白君と葉隠さん(服は透明にならないって事はアレほぼ全裸って事なんじゃ?)ペアの訓練で、結果は轟君が氷で瞬殺して終わりだった。話す事がない戦いでした。
*****
その後もう一組を挟んで私達の出番が来ました。私達はヴィラン側で、相手は砂藤君と口田君。どっちも見た目から個性が把握できない。
「芦戸さんは二人の個性わかりますか?」
「んー、砂藤は何となくパワー型な感じがするけど、正確なところはわかんないや。口田もよくわかんないなぁ。」
つまり事前情報はほぼなし。核の場所はバレると仮定して…
「とりあえず一番上の階段から一番遠い部屋に核を配置してもらってもいいですか。後、芦戸さんはそれ持ち運べそうですか?」
「オッケー。持ち運べなくはなさそうだけど、なんで?」
芦戸さんと核を設置しながら作戦を少しずつ立てます。芦戸さんの「酸」は応用幅が広い個性なので、うまく使えば化けると思います。
「非常時に酸で地面を溶かして下の階に降りれるようにする為です。火種があったら
「死なば諸共作戦!?」
「いえ、私は核爆発程度なら防壁を張った上で爆発の衝撃をうまく回避すれば一応生き残れますので、実質勝ちです。」
「アタシの命は!?」
「私達は核を持って逃げ出す命知らずのヴィランですよ?そういうの考えても今更では?」
色々と酷い!?とショックを受ける芦戸さんを尻目に私は部屋の外に出ます。
「基本的に芦戸さんは核爆弾の周辺に居てください。此処は好きに使っても構いませんので。あ、芦戸さんの事ボスって呼びますね?そうしたらヴィランっぽさ増しそうですし。」
「おー!ヴィランのボス芦戸さんだよ!でも、ダフネちゃんはどうするの?」
「私は最善で二人、最低でも砂藤君を足止めします。ここのビルの図面は割れてますから、5階から1階までの階段をぶっ壊して通行止めにしつつ1階で迎え撃ちます。」
後は通信機越しで、と言って部屋を後にします。残り時間は3分、妨害を作るのには十分な時間ですね。
残り30秒というところで1階から5階までの階段を塞ぎ切れました。結構ギリギリでしたね。あとは1階で待ちます。
ヒーロー側の二人はスタートの合図から1分も経たずに私のところまで来ました。やっぱり核の場所がバレてましたかね。
「…悪いですが、此処から先は通行止めです。此処を超えたければ私の屍を超えてゆきなさい。」
「同じく悪いが、本気で行かせてもらう!」
ほぼ全身黄色タイツの砂藤君が白い何かを口に入れて本気で攻撃してきました。
壁に拳が当たってl拳にダメージが行く様に立ち位置を調整したが、逆にその威力を目にする事になりました。
何ですかあの壁のクレーター。どんな威力で殴ったんですかね。
「口田、行け!」
口田君に先を行くように促しましたが、口田君が首を振ります。どうやら道が塞がれてる事に気付いたみたいです。
「えへへ、階段を塞がせてもらいました。外からよじ登るもよし、私を倒して地道に掘るのも良しですよ?」
「チィッ!派手にやるなぁ!」
拳をいなしつつ懐からバールを取り出し組み上げて右手に構えて懐からジアドカードリッジを腕に叩き込み、【打撃形態】を発動し右手が変形、バールの横薙ぎの一撃が脇腹に思いっきりぶち当たりました。【打撃形態】による追加攻撃も合わせて思いっきり壁に叩き付けました。空になったカードリッジを排出し、元の右手に戻します。
砂藤君は一度置いておいて口田君にバールを向けて告げます。
「降伏しますか?痛い思いはしたく無いですよね?私も暴力はあまり好きじゃないんですよ。」
「…!!」
首を振って拒否されました。やっぱりダメですか。後遺症が残らない様に細心の注意を払いながらバールで頭を叩きつつ後ろに回って確保テープを口田の手に巻き付けた。
「これでひと…きゃっ!?」
手に巻き付け終わって安心したところで横からパンチを思いっきり喰らう。凄い威力で殴られたせいで階段から一気に廊下まで弾き飛ばされる。その後の轟音から妨害が突破された事を悟り、連絡を取ります。
「
『わかった。二度の失敗は許さないぞ。』
「凄くブラックなヴィランだった!」
芦戸さんの謎に低い声(多分ヴィランのボスをイメージした物)を聞いて突っ込みつつ窓から外に出て脚部アンカーを悪用して壁を駆け上がって4階に上がっていく。
ギリギリで追いつき、ちょうど四階まで上がって来た砂藤君と対峙する。
「おいおい、早すぎるだろ!」
「頑張ったので!」
かなり雑な答えで返しつつ、再び対峙する。バールを振りかぶって攻撃しに行ったが片手で掴まれてバールを投げ捨てられた。
「これがかなり威力高いからな!」
「あーっ!お姉さまのバールが!」
砂藤君、微妙な顔をしないでください。実際「お姉さまの(デザインした)バール」だから良いじゃないですか。
ともかく、砂藤君のパンチのラッシュを躱して時間稼ぎに徹する。
1分も躱していると段々砂藤君の動きが落ちてきた。
「だ、だるい…ねむい…」
「えっ」
今度は私が微妙な顔をする羽目になった。
一定時間過ぎると脳機能が低下するけど、それまで全身を強制的に活性化させる個性なんですかね?ピーキーな個性だなぁ。
パンチの切れが目に見えて落ちて行ったところで左手から「アサシンブレード」を展開して首元に着ける。
「降参しますか?」
「…す、する…」
『ヴィランチーム、WIIIIIIIN!!』
オールマイトのアナウンスが終了を告げた。
微妙ですが文字数的にこの辺りで切ります。
対戦相手はアニメから予測される組み合わせにしました。
この戦闘訓練でヴィラン側になったらベルカ式国防術がしたくなるのは多分私だけです。
次回は戦闘の講評とダフネが希乃子ちゃんに会いにB組に訪問するお話にしようと思います。