永い後日談のヒーローアカデミア~黒絢を添えて~   作:アルテリア

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少女達は同じ一つの部屋で目覚めました。
自分の名前と、ほんの僅かな過去の世界の記憶を胸に抱いて。

自己紹介を終えた少女達は、一緒の場所で目覚めた姉妹として振舞う事にします。
内側から鍵の掛けられたドアを開け、目覚めた場所を探索しながら外に出る道を模索していきます。

やがて少女達は、ケースに入れられた胎児を抱えている、狂った黒い姑獲鳥の少女に出会いました。
少女達は、壊れてしまっている彼女に心を痛めましたが、彼女は意に介さず襲い掛かって来ます。

刀を握り前に立つ者、中心でいつでも前に出られるように待機する者、後ろから援護の準備をする者。
小さな差はあれど、どれも戦闘をする準備でした。
幼い少女は怖がりながらも、己が得物を握りしめて前に立ちます。それしか道が無い事を知っているから。


【破壊の爪痕】

 突如として広場で響いた轟音に驚いた私は、ビックリしながらもその方向に目を向けました。

 そこはさっきまでテーマパークのような風味を感じさせる綺麗な造りだったのですが、見る影もない無惨な姿になっていました。

 

「……何が起きたんだよ!?一瞬すげぇ音が響いたと思ったら、広場がクレーターになってんじゃねぇか!?」

 

 瀬呂君が余りの惨状に大声を上げて私達の心情を代弁します。

 それに、広場には相澤先生がいたはずです。爆発に巻き込まれてはいないでしょうか。

 

「……あ、待って!あそこ、クレーターの真ん中!人がいるんちゃう!?」

 

 麗日さんがクレーターの真ん中を指差します。クレーターの真ん中という事からアレが元凶なのでしょうか。

 なんだか変に表面が真っ赤っかな生々しい色をしています。身体が抉れてませんか、あれ。

 

「自爆したのか……?とにかく、相澤先生の無事を……」

 

 障子君が相澤先生を見つけようと個性によって索敵をしようとした時に、肉塊のようなものが微かに動きました。

【Re-DIASPORA】を鞄から取り出して不審な動きをしないか見張ります。

 少しずつ動きは大きくなり、次第に翼を広げるように解けました。それらは肉や内臓、骨で組み上げられた悍ましい外見をしていて、見ている人間を気持ち悪くさせます。原型を留めていない程にグチャグチャになった左手を外した義手であるかのように持った仮面の子供が内側から現れました。

 

『ああ、やはり【破壊の渦】はデメリットが大きいですね。

 漸くある程度飛ばさない角度を選べるレベルまで制御を可能にしたのですが、自分も巻き込まれるのが残念なところです』

 

 私達に顔を見せない様に器用に立ち位置を変えて、無造作にボロボロの左手に齧り付きました。

 数口程齧った辺りで、左手が盛り上がり再生していきます。余りの悍ましい光景に私達が戦慄し立ち止まっていると、少し離れた手だらけの青年のところに黒霧が現れて何事かを話し始めます。

 

「はぁ……エンブリオ。ゲームオーバーだ。

 生徒を一人逃した。このままじゃ他のプロヒーローもじきに来る」

 

『えぇ?黒霧さん、何をしくじっているのですか?

 まぁ、弔君の言う事には従いますけど……って、あら?』

 

 エンブリオの左手に捕縛布が巻き付きました。相澤先生がエンブリオの動きを止めようと放った物でしょう。

 

『おや、もう気絶してるか死んでるかと思ったのですが……しぶといですね』

 

「……エンブリオ、撤退するからさっさとその布切り落とせ。

 ……ああ、そうだ。せめて最後に、平和の象徴の矜持を地に落としてから帰ろう……!」

 

 そんな言葉と共に、彼がかなりの速度で水難ゾーンの方向に駆けていきます。

 誰かいるのかと思いそっちに目を向けると、顔を僅かに見せていた蛙吹さん、緑谷君、峰田君がいました。彼らを害するつもりのようです。

 構え方から恐らく触れる事が発動条件。発言から、触れられたらアウトなのだと何となく理解します。絶対に触れさせてはいけない、と引き金に指を掛けます。

 でも突然の動きだった故に慌ててしまい照準がブレ、引き金を引く事が出来ませんでした。その隙に蛙吹さんの顔を掌が覆います。

 ですが、何も起こりませんでした。

 

「……ハァ、ホントカッコいいぜ。イレイザーヘッド」

 

 手だらけの人間が話すその言葉から、瓦礫に遮られていてこちらからは確認できませんが、相澤先生が防いだのだろうと推測できました。

 ですが、捕縛布が大きく引っ張られ、相澤先生が仮面の子の方へと引き寄せられます。よく見れば、体を捻りながら右手で力強く捕縛布を引っ張っています。

 

『おや、他人の心配ですか?私がいる場所でそれは危険ですよ?』

 

 そして、左手に巻きつけられた捕縛布を外されると同時に相澤先生の顔面に掌底が打ち付けられ、吹き飛ばされた相澤先生は地面を二回バウンドして倒れ、仮面の子は追い打ちでその頭を無造作に踏みつけました。

 相澤先生への仕打ちに麗日さん達が声を上げました。

 

「「相澤先生!!」」

 

「くそっ!どうにかできねぇのかよ!」

 

『そこの貴方達、その無力感を忘れない事ですよ。無力感に打ちのめされ道を諦めるか、一層奮起し、更なる成長をするかは貴方達のその後の行動次第です』

 

「おい、エンブリオ。敵に塩を送ってどうすんだよ」

 

 私達に聞こえるように仮面の子が声を上げます。

 一種の激励とも取れるような言葉を手だらけの人が咎めるように言いました。

 

『ああ失礼、ですがこれは私の性分ですから。お人形遊びにも楽しみが必要でしょう?』

 

「チッ……」

 

「……っ!SMAAAAAAASH!!!」

 

 真面目な顔(多分)で回答するエンブリオに舌打ちしている間に緑谷君が不意打ちのような形で目の前の青年に殴り掛かりました。

 意表を突いたからこそ完全に入ったと思えたその一撃は、しかし全身黒タイツで脳みそを曝け出した筋骨隆々な変な奴に防がれていました。

 思わず緑谷君が声を困惑の声を上げます。

 

「なっ……」

 

「SMASHって……オールマイトのファンか?」

 

 変な奴が緑谷君の腕を握りしめて逃げられない様にして、もう片方の手で握り潰そうとしました。

 それと同時に、手だらけの彼は二人に個性を使おうと両手を使い触ろうとします。

 私達はそれに反応できず、見ている事しか出来ませんでした。

 緑谷君が焦った顔をした瞬間、緑谷君を掴んでいた脳無の腕が落とされ、高速で動いた影が緑谷君を救い出しました。序でに手だらけの人間の横っ腹にジュラルミンケースのようなものが突き刺さって体勢を崩し、峰田君と蛙吹さんの二人を狙った攻撃を妨害しました。

 

「おい……脳無の腕を切り落として俺に攻撃するなんてどういうつもりだ、エンブリオ」

 

 よく見れば、緑谷君を助けたのは先程まで相澤先生を踏みつけていた仮面の子でした。

 緑谷君を片手で抱えながら視線を(仮面で隠れているので恐らくですが)手だらけの人間に向けます。

 

『私がこの子を気に入っているから、では駄目ですか?誰だってお気に入りの物を傷つけられるのは嫌でしょう。

 だから助けた、それだけです』

 

 平然とエンブリオ、と呼ばれた仮面が答えます。

 いつの間にか空いている手には極細の繊維が握られていました。

 よくわかりませんがあの繊維で脳無とやらの腕を切り飛ばしたという事でしょうか。

 

「お、お気に入りって……」

 

 緑谷君が抱えられている状態から抜け出そうともがきます。

 抜け出そうとしているのに気付くと、エンブリオは割と素直に彼を開放しました。

 エンブリオの立ち位置が不明瞭すぎる、と思いました。手だらけの人の味方かと思えば、お気に入りの人が危なかったら一時的に敵対しても守る。

 

『まぁ一番近い言葉で言うなれば一目惚れ的なアレですよ、私だって選り好みはしますから。

 ……あ、米の品種じゃないですからね。ところで私の感覚で急加速してしまいましたが、どこか不調は無いですか?

 臓器がダメージ受けてたりしませんね?』

 

 エンブリオの緑谷君への心配と謎の補足で緑谷君の顔に一瞬弛緩した空気が流れた時、私達の後ろにあるドアが轟音を上げて吹き飛びました。

 振り返ってみたら、そこにはオールマイト先生がスーツのまま、怒りの表情で立っていました。笑顔とポンコツっぽさで授業中は気付きませんでしたけど、笑ってないとめっちゃ圧が怖いです!

 

「もう大丈夫……私が来た」

 

 手だらけの人はその声を聞いて、ゆるゆると私達のいる場所、入り口周辺へと顔を向けました。

 

「あぁ、コンテニューだ……っ!?」

 

 不吉な雰囲気を感じたので、淡々と左足首を手に持っていたのを構え直した実弾の【Re-DIASPORA】で撃ち抜きます。

 なんで襲撃して返り討ちにされかけてる側があんな余裕ぶっこいていられるんでしょうか。不思議ですね。

 

「クソッ!脳無!そこの俺を撃った奴を殺せ!」

 

 え、私にロックオンですか。急いで【Re-DIASPORA】を非殺傷弾のマガジンに入れ替えた後に近くにいた麗日さんに放って、鞄から近接武器3つを出して鞄を遠くに投げます。

 背中に【Balor】、手に【蜉蝣】と【秋茜】と言った風に装備します。

 って足速くないですか!?持ち替えてる間に間合いに入れるって、此処さっきまでの脳無の位置からかなり離れているはずですよね!?

 咄嗟に体を逸らしてパンチを避けてカウンターを狙いますが、パンチの余波でする事が出来ませんでした。すると、私を庇う様にオールマイトが割り込み脳無にパンチを食らわせ、そのまま力押しで広場まで押し戻しました。

 

「大丈夫かいダフネ少女!……ああいや、さっきのは躱していたか。

 だが下がっていてくれ!君が相手の行動を狭める為に止むを得ずに撃ったのはわかるが、免許を持っていない一学生が実弾を発砲するのは流石に問題だ!」

 

「えっ」

 

(((もう手遅れですオールマイト先生!!)))

 

 その発言に私は間抜けな声を上げて、【Lia Fail】を撃ったことを知っている周りの皆が心の中で総ツッコミをしました。




オールマイト先生から手遅れな制止を食らいました。

そしてエンブリオ、出久を気に入りました。
気に入られても困る人に気に入られてしまった出久の未来はどっちだ!?(激寒予告)

…はい、冗談です。
真面目に説明すると、エンブリオの立ち位置は「死柄木弔の言う事もある程度は聞くけど、根本はネクロマンサーなので自分の事を優先する自由人」です。

どちらかというと仲間ではないが一応の協力関係にあると言った感じです。
ですけど自分本位なので、優先したい人がいたら、直前までの仲間にも牙を剝きます。
エンブリオの中の優先度は高い順に
自分の計画>お気に入りの人>お気に入りの手駒>お気に入りの人の大事な人>オールフォーワンの命令>死柄木弔の命令>有象無象

「死柄木弔の命令」の優先度低くね?と思った人、有象無象の欄に入れられてないだけマシです。エンブリオは有象無象に対しては何の感情も抱きません。
その分優先度で別にされてる人達は程度の差こそあれど大事にします。
出久はかなり大事なので脳無の腕を容赦なく切り落として救出しました。
仮に出久とオールフォーワンが対峙した場合も出久側に付きます。
要約すれば優先度が高ければ高いほどエンブリオが守りに行く可能性が高まります。
つまるところ出久は自分の計画の問題にならない限り、ほぼ確実にエンブリオが守ろうとします。

次回、オールマイト対脳無。ぶっちゃけ原作と変更点がほとんどない。強いて言えば捕まった人達に関する話がカオスになって、ダフネが行動について怒られるくらいしかありません。
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