永い後日談のヒーローアカデミア~黒絢を添えて~ 作:アルテリア
「…はぁ、やっと荒廃してない世界に来たと思ったら訳が分からない世界に来ちゃった。ゲテモノのいない普通な世界が良かったんだけどなぁ。」
落ち込んだ状態から抜け出す事は出来たが、それでもぼやいてしまう。
そもそも存在がゲテモノな私達が真っ当な世界に行けると思うなというツッコミは言わないで。
「しょうがない、起こった事は起こった事!過去は取り戻せないし、切り替えて情報収集しよう!」
自分の頬を軽く叩いて気合を入れる。
ネクロマンサーである以上過去に囚われ過ぎても退屈するだけだもの。この世界を楽しむ為に最大限の努力をしよう。
お姉さまに連絡してネットワークの方向から調べてもらいつつ、私は足で周辺を見て回って街行く人にインタビューしてこの世界についての情報を集めよう。
*****
情報収集を始めてから1か月。外はまあまあ暑くなってきたし、最近まで雨が良く振っていたから七月の中頃くらいだろうか?
まあまあ情報が集まって来たので整理しながらまとめていこう。
・この世界の人類は人口の8割以上が「個性」と呼ばれる超常の力を有している。
・「個性」とは私のESPのような物から体そのものに全く別の機能が付加されてるものまで千差万別。
・その為、見た目が明らかにヒトじゃない人までいる。でも分類上は人間らしい。
・個性を使って犯罪をする者は「
・この世界では私はまだ何もやっていないけど、やってきた所業的に私はヴィランだと思われる。ていうかこの施設自体
・現在のNo.1ヒーローは「オールマイト」。超強い。拳一発で天候変えるとか歩く気象兵器じゃん。人間やめてない?
・お姉さまがダークウェブに潜ってたらしいけど、それによるとオールマイトは6年前にオールフォーワンという巨悪と戦って内臓が幾つか壊滅的な打撃を受けて弱体化したらしい。恐らく世間にはオフレコ。
・オールフォーワンの消息は現在不明。しかも世間にその名前の存在は知られてない。
「…まとめると大体こんな感じかな、お姉さま?ほかに何か有力な情報はなかった?」
『ダークウェブでも浅い層じゃこの程度が限界ね。もっと深いところに潜らないとこれ以上の情報は見つからないわ。
ちなみにネットワークはアヴァンドナーの「オールドネットワーク接続」で問題なく接続できたわ。この世界のネットワークは旧式なものみたいね。』
ジアド粒子とかいうのが一番の違いなんだろうな。ちなみにお試しでジアド粒子による通信を世界中にばら撒いてみたところ、受信したような反応はなかったらしい。
さらっととんでもない事してるね。
『私はこの後でもう少し深層に行ってみるわ。まだ外で行動する為の義体もほとんど出来てないしね。』
「率直に言ってお姉さまは多才過ぎると思います。なんで
外を出歩く為に設計から始めないでください。。」
『だって
私が言うのもあれだけど、お姉さまも大概ネジが外れてる。
一緒に旅をしてた時から突然体から変な物を生やしたり機械の腕とかライトセーバーを急に持ち出したりと突拍子の無い事をしまくってたし目覚めた時点で既に知識は豊富だったけど、管理AIになってからはそれに更に磨きがかかった。
だからと言ってパーツその物を作るのは聞いてないよ。
「まぁ、好きにしていいって言ったのは私だから特に咎めはしないけど、ちゃんと環境に配慮してね。」
『わかってるわ~』と、本当にわかっているか怪しい感じで答えるお姉さまに背を向けて223号の部屋に向かう。流石に一度も外に出さないのは可哀想だけど、あんな姿じゃ…
…あれ、あんなゲテモノ種族がヒトとして認められてるって事はもしかして223号もこの世界なら普通に出歩けるんじゃないか?
*****
「223号~。外に出てみない?」
気軽な一言にその場で飛び跳ねて私に抱き着いてくるくらい喜んだ彼女は貫頭衣に身を包んでいた。二つの頭はあえて出したままで、足元も微妙に見える。
異形である事を隠しもしない服装で私は223号を連れ出す。
当然町の皆の中にも223号を見て二度見をする人は何人かいたが、奇異な目で見る人はいなかった。
うちの異形の子たちはこの世界なら平和に過ごせそうだなぁ、とぼんやり思いながら町を散歩した。
行く当てもないので223号に何処か行ってみたい場所はないか聞いてみた。
「ますたー!わたし、うみにいってみたい!きれいなうみ!」
「海かぁ、懐かしいね。行ってみようか。少し歩いた先には一応砂浜もあるみたいだし。」
生前の思い出を回想しつつ223号の二つの頭を撫で、海へと足を向ける。時間はお昼を過ぎているし朝から何も食べてないが、アンデッドの私達に食事は必要ないので気にせず歩いて行く。
食事にかかる費用が0なのはいいよね。アヴァンドナーも食事はジアド粒子で済む上、そのジアド粒子は自前で生産してるし。
そうして砂浜に着いたのはいいものの。
「…」
ゴミだらけやん。不法投棄にもほどがあるわ。流石にこの山は色々とダメでしょ。どうしようかな…223号はどう思うんだろ。
「ますたー、おたからのやまだよ!!みにいってもいい?」
そうだった。外の常識を殆ど持ってないし不法投棄の概念を教えてなかったから好意的に受け取ってる。そして意外とあの足走破性能高いな。
言うが早いか飛び出していった223号の後ろをついて行く。彼女にはもう少し慎みを覚えさせた方が良いだろうか。
「わぁ…!ますたー!みて、うみだよ!きれーだなぁ…!」
ゴミ山の上で立っている223号の隣に立ってみれば、彼女の感嘆もわかる。
私の知っている青くて綺麗な海。油で汚染された気味の悪い色をしていない、記憶の中にある輝きと全く同じ物だった。
「そうだね。とても綺麗。私達のいたあそこも、どうにかして除染できたら良かったのに。」
少しだけ感傷的になってしまうのは、潮風が死体に沁みて痛みを感じさせてしまうからだろうか。
「223号、先に帰ってもらってもいい?
…私、もう少しここにいるよ。」
「…わかった、ますたー。わたし、ちゃんとみちをおぼえてるからだいじょうぶだよ。
ますたーも、おそくならないでね。」
手を振って223号は離れていく。
私はゴミ山の上に腰を下ろして座る。
海の風と匂いに触れていると、懐かしい顔ばかり思い出す。ずっと昔、家族旅行に行った思い出。
もう戻ってこない思い出だ。
「…あの、どうかしたんですか?」
後ろから少年の声が聞こえた。振り返ればゴミ山の下に黒っぽい緑色の癖っ毛の少年がいて、こちらを見上げていた。
ダフネ、原作主人公と出会いました。
どうやって両陣営のパワーバランスを整えるかを一応思いつきました。少し無理がある展開になるかもしれませんがご了承ください。
オリジナルの場所の名前の元ネタ
ブレインファーム「ファタ・モルガーナ・ラネズ」
元ネタはグリーンランド近辺にあるとされた幻島。
モルガナ曰く「自分の名前と関連付けたかったからこうした」らしい。