永い後日談のヒーローアカデミア~黒絢を添えて~ 作:アルテリア
「いや、僕は特にどうもしてないよ。ちょっと昔を思い出していただけさ。
君はなんでここに来たんだい?僕みたいに散歩がてら海を眺めに来たわけじゃないだろう?」
けろりと私は人好きのいい仮面を被って笑う。
少年はなぜここに来たのだろうか。このゴミ山じゃ遊ぶにも遊びづらいだろう。かといって服装から散歩という感じでもなさそうだ。
「あ、入試までに特訓を兼ねてここ一帯を掃除しろって言われて。結構な頻度で来てるんだけど、中々片付かなくて。」
「ここを全部?いや、冷蔵庫とか何キログラムあると思ってるの、果たして人間がやる事なのそれは。」
真面目に謎だ。流石にこのゴミ山を一人で掃除しろってどんな鬼がこのメニューを組んだんだ。
「オールマイトがせっかく組んでくれたプランだから、やるしかないよ。それに色々な形をしているから全身に万遍なく筋肉もつくし。これ以外にも色々筋トレもしてるんだ。」
オールマイトかぁ。No.1に目をかけてもらえてるってこの子意外と凄い子なのかな?
でも私が見たところそこまで強く見えない。だけど鍛え始めたばかりなのかもしれないし、個性とかいうチートもありな世界だと見た目が判断基準にならないんだよね。
「…入試っていつ?期間によってはかなりの苦行じゃない?」
「まだ半年くらいあるから、きっちり鍛えて行けば間に合うよ。」
頑張り屋だな、と思う。自分に与えられた事をきっちり熟そうとする努力を怠らない。
この子の第一印象は「
「さて、僕もそろそろ帰らなければいけない時間だ。僕はダフネ、君の名前を聞いても良い?」
「あ、僕は
「へえ、じゃあもしも次会ったらよろしくね、緑谷君。」
ゴミ山の上に立ち上がろうとしたら思ったより長く座っていたのか力が上手く入らなくて足が滑ってしまった。
不意の出来事だったので、アンデッドだからこの程度で死なないと思ってもヒヤッとしてしまう。序でに言うと足を滑らせたせいでゴミ山が少し崩れてしまった。
しかも運悪くこのままだと私が潰れる感じで。
(…っとと、なんとかESPが間に合った。少なくとも物体は問題なく止められたね。だけど、流石に時間をかけ過ぎた。ESPを利用した姿勢制御も間に合わないな。まあ頭を強くぶつけるだけで済むだろう。)
そう思って受け身だけで済ませようとしたら。
「…間に、合ったっ!」
緑谷が私に向かって突っ込んできて、ギリギリで私を抱きかかえて衝撃から守ってくれた。
御姫様抱っこ(掬い上げる感じだったせいでどちらかというと掲げられたビーチフラッグみたいな感じだが)なので少しだけ恥ずかしくなった。
「あ、ありがとう。長く座りすぎてしまっていたみたいだ。
思いっきり頭から突っ込んで来たが、体は大丈夫かい?少し見せてくれ。」
言うが早いかESPでゴミを元の場所に戻しながら緑谷の身体を調べる。
大きな怪我はしていないし、特に目立つ傷もないようなので簡単な処置だけで終わらせる。
「これでよし。特に大変な物もないし、これ以上の怪我に気を付ければ問題なく今日のトレーニングも大丈夫だろう。」
「あ、ありがとう。ダフネちゃん、応急処置に慣れてるんだね。」
「そういう仕事をしていた人が親だからね。絆創膏は持って来ていたが、まさか連れて来ていた友達じゃなくて他人に使う事になるとは思わなかった。
僕の不手際だ。申し訳ない。」
謝りながら処置で出たごみを自分の荷物に入れる。
緑谷はそんな事はないと私を慰めてくれたが、こればかりは私の感性の問題だ。
「さて、今度こそさようならだ、緑谷君。また次会う事が会ったらのんびり話でもしようか?」
そういって手を振って砂浜を後にする。
入れ違いでガリガリで金髪の骸骨みたいな顔をした男が入っていった事に私は気付かなかった。
*****
「お姉さま、帰ったよ~。223号は?」
『あら、おかえりなさい。223号は今はお風呂よ。初めて海を見たってはしゃいでたわぁ。子供ってやっぱりかわいいわね。』
帰宅途中に連絡を受けた私は、施設内に入ったら手洗いをしてすぐにモルガナお姉さまの下に直行した。
世間話もほどほどにして本題に入る。
「で、どうしたの?重大な事実を発見したって聞いたけど。」
『それがねぇ、ちょっと色々不法な事してみたら「オールフォーワン」の生存可能性が高くなってきたのよねぇ。』
…お姉さまは一体何をしたんだろうか。何をどうしたら消息不明で用意周到な巨悪の手がかりが見つかるんだろう。
少なくとも「ちょっと」で済むような事じゃないのはわかっているが。
『簡単よぉ。ちょっと世界中のコンピューターをハッキングして盗聴しただけよ。インターネット関連は私達の方がウン百年先を行ってるからねぇ。簡単に入り込めたわ。』
「やっぱりちょっとなんてレベルじゃないじゃん!?」
全力でツッコミを入れる。やる事のスケールをでかくしないと死ぬ病気にでも罹っているのだろうか。はっきり言って御せる気がしない。
そして、その後更に爆弾を落とされた。
『あ、後もしかしたら場所を逆探知されてるかもしれないから備えておきなさいよぉ。』
「なんで!?今から防衛策を練らなきゃいけないの!?」
お姉さま曰くアヴァンドナーの「オールドネットワーク」に逆探知を阻害する機能はあるものの、ある程度腕のある奴ならそれを突破して逆探知できるらしい。
恐らくオールフォーワンなら時間はかかるが逆探知が出来ると踏んだのだろう。
「ああもう、お姉さまは自由奔放なんだから!お姉さまの身体は出来たんだよね?
最優先で私のスペア製作!パーツは重量二脚よりの中量機でハンガー持ちで作って!」
大急ぎで防衛策を練る。最低限この施設の表部分、壊れても支障のない部分を戦闘用の区域にする。
そうして全力で防衛策を練って作成してちょうど1週間後、一夜にして一つの山が一日で荒れ山と化す事となった。
夜が明けたらいきなり山一つが荒れ山になったら皆はどういう反応をしますか?
私は二度見した後「土が見えてるなぁ、まあいいか」で素通りする自信があります。