永い後日談のヒーローアカデミア~黒絢を添えて~ 作:アルテリア
お姉さまがネクロニカの世界の感覚で盗聴しちゃうから…
「…やぁ、遅かったじゃないか?君がオールフォーワンであっているのかな?」
「僕がその質問に答える必要があると思うかい?それに、名前を聞くのなら自分から名乗るのが筋だと僕は思うけどね。」
盗聴から一週間でオールフォーワンが強襲を仕掛けてきた。
未来技術を相手に一週間で盗聴箇所を割り出せた事を褒めるべきか、逆探知にわざわざ一週間もかけた事を貶すべきか微妙なラインだ。
私は大量の武器を仕舞いこんだ鞄を背中に背負い、合金製のトランクを片手に立つ。
「それもそうだね。僕の名前はダフネ。どこにでもいるしがないネクロマンサーさ。」
「君みたいなネクロマンサーがそこら中に居る世界は世紀末だと僕は思うけどね。
さて、君が名乗ったのならば僕も自己紹介をしよう。僕がオールフォーワンその人さ。説明は今更必要ないだろう?」
説明を端折るのはあまり自己紹介として良くないと私は思うけど、ダークウェブを深層まで潜ればオールフォーワン関連の逸話はザクザク出て来る。
だけど、流石に私に失礼だと思うので拳銃を引き抜きざまに一発お見舞いする。え?私も同じじゃないかって?
「はは、これまた物騒な挨拶だね。君、案外暴力的な人間なのかい?」
「失礼は君の方が先だ。きっちり自分の事くらい自分の口で説明しろ。それにこの程度の一発、君にとっては児戯に等しいだろう?」
拳銃から硝煙が僅かに上る。見た目の齢12歳程度の娘が撃つには異様な大きさの大型拳銃を片手で向けるって相当な絵面だね。
アンデッドになるにあたってこの程度の銃を片手で撃てるくらいの筋力強化は受けている。しかも私はネクロマンサーになった後さらに色々やっている。
「…おいおい、その銃はその年齢の女の子が片手で撃てるものじゃないだろ。君、見た目にあわず相当筋力があるみたいだね。」
「だからどうしたんだい?先に言っておくと、僕は君を本気で殺しに行こうかと思っている。勧誘も排除も断らせてもらうよ。僕は君と違って大それた願望も野望も持っちゃいない。
僕を味方に付けたければ、少しは面白そうな物を見せてくれたまえ。」
「おやおや、随分嫌われてしまったみたいだ。全く、暴力はあまり好みじゃないんだけどな…っ!?」
最後まで聞かずにESPで合金トランクを高速で動かして入り口から外まで弾き飛ばし、それを追って外に飛び出す。
そのままESPを利用して周囲の木を引っこ抜いてオールフォーワンにぶつける。
「不意打ちとはいえ、こうも決まると首を傾げてしまうね。オールマイトの臓器に致命的打撃を与えられたんだろ?もっとやる気を出してくれよ?」
根がむき出しになった樹木の山の近くにふわりと着地する。
まだ戦闘力を計れていないが、伝聞通りならこの程度じゃ傷はつけられない。この程度の打撃ではせいぜい挨拶のようなものだろう。
「全くド派手な事をするね。いきなりこんな攻撃を出されてびっくりしたじゃないか。」
塊を内側から吹き飛ばしてオールフォーワンが現れる。
ただの拳圧であの樹木の塊を吹き飛ばせるとか本当にイカれてると思う。
「ド派手好きなのは姉譲りさ。僕は君を殺す気でやるから、初っ端は派手にしないと見栄えが悪いだろう?
まあ、これで仕留められるのが一番良かったんだけどね。何しろこれが一番環境に優しいから。」
出てきたオールフォーワンに向けてアンデッドガンをぶっ放し、続けてランチャーも撃ち込む。
弾薬切れまでアンデッドガンを撃ったら投げ捨てて間髪入れず対戦車ライフルに持ち替えてマガジン全発を撃ち切る。もう片方の手のロケットランチャーは装填が面倒なのでマシンガンに変えて撃ち続ける。
だけど、相手は普通だったら死んでもおかしくない弾幕を回避して接近してきた。いや、その動きおかしいだろ、なんであの弾幕抜けられるんですかね。
思いっきり殴って来た相手を合金トランクを囮にして回避する。
「本当に化物だな!あれを抜けるとは思ってなかった!」
「僕は帝王と呼ばれる男だぜ?この程度避けられなければ裏社会を統べる事は不可能だよ。」
日本刀を鞄から抜いて伸びきった腕を狙うが、斬るよりも先に引っ込められ、そして横っ腹から衝撃で吹き飛ばされる。
どんなに高望みしても体重の軽さはどうにもできない。枯葉みたいに転がされる。ESPで鞄は近くに引き寄せるのが間に合ったが、日本刀は手放してしまった。
「腹に穴を開けるつもりで殴ったんだけどなぁ。君、防御面も優れてるんだね。」
「…いたた、この服は気に入っていたんだけどな。全く、
殴られた部分の服が破れ、鱗の生えた腹部が露わになった。
自分の身体をド派手に弄らなければまず勝てないと踏んだが、ウロコを使ってもここまでダメージが入るのは想定してなかった。
「はぁ、面倒だからもう出し惜しみは少なくしていこうか。流石にこれじゃジリ貧で負ける。」
背中の服を突き破り「やぶれひまく」を外気に曝す。服の内側に隠していた状態では身体の背面に集中していたがそれを開放する事で全面カバーに変更する。
それだけで終わらず皮膜に絡みつく形で「ほとけかずら」を展開、その結果上半身は胸元と幅広な袖以外のほとんどが破れてしまった。サービスだよ喜べ(ただし異形)。
鞄から取り出した「空飛ぶギロチン」を片手で構えて歪に笑って見せる。
「第二ラウンドって奴だよ、オールフォーワン。少しやる気出していくからね。」
「…異形種を見た事はたくさんあるけど君みたいなタイプの個性を見るのは初めてだ。さしずめキメラとでもいったところかな?」
その質問には答えずにギロチンを振るって飛ばす。不可思議な軌道を描くソレを回避しながらオールフォーワンは私に接近してきた。
伸びきったギロチンを引いて背後から攻撃しつつ振るわれた拳を皮膜で防御する。
私の背後からの攻撃を回避した事で私が後ろに下がるだけの時間が稼げたので飛び退り、ざっと5m程離れた場所で向かい合う。
(一発受けただけで皮膜がそれなりにダメージを受けた。余り回数は受けられないな。)
一瞬互いに動きを止めた後、均衡を崩すように私は距離を詰めてギロチンをぶつけ、同時に意図的に皮膜で視野を奪いながらESPで鞄を動かし死角に少しずつ爆発物を落としていく。
数分間そのまま打ち合い、ついに皮膜が壊れた。粉々にされた皮膜に絡みついていたほとけかずらから花粉がばら撒かれて私の姿を隠す。
「目くらましのつもりかい?」
幾つの個性を使ったのか分からないが、隠された私の姿を露わにした。
その手には手榴弾と火のついたダイナマイト。そして、この辺り一帯にも爆発物を仕掛けてある。
「何を…」
「はい、ドーン!」
オールフォーワンが言葉を言い切る前に両方ともぶん投げて起爆する。
そして周囲に撒いた爆発物の誘爆も招き、ほぼ爆心地にいた私も含めて大爆発を起こす。ちなみに、この戦闘区域は人里から少し離れているから、聞こえても花火くらいの音に減衰されている。
私の施設は人道的にヤバい物が詰まってるから、人里が近場にない山奥にひっそりと転移させたのだ。
土煙が大量に舞う中、服を含めて無傷で佇む私は辺りを見回して人影を捜す。
「流石にこの程度の攻撃で死ぬほどオールフォーワンは弱くないと思うけど、どこに隠れたのやら。
速めに決めようとド派手に土煙をあげてしまったのは僕の失敗だね。」
少しだけ自分の浅慮な行動を反省したが、やってしまった事はしょうがないので見えないか土煙の向こう側を凝視する。
少しして、後方の遠くから踏み込む音がした。
反応して振り返るが、
「少し気付くのが遅かったね。」
いつの間に近付いたのか…いや、筋力を増強して一瞬で踏み込んだのか。複数の個性を同時に使用できるなんてバカげた個性だよ。
「あ」
防御を挟む隙も無く、オールフォーワンの拳が私の腹部を比喩無しで貫いた。
ネクロニカ祭り。
「大型拳銃」「対戦車ライフル(実際にこのパーツ名)」「アンデッドガン」「ランチャー」「やぶれひまく」「うろこ」「ほとけかずら」「空飛ぶギロチン」「ダイナマイト」「手榴弾」は全てネクロニカに登場します。
ちなみに本体が直接喰らったのは二発だけですが、実はこの二発は両方とも普通に受けたらダフネの腹を貫通します。
一発目を防げたのはネクロニカのサプリメントで追加されたクラス「サイケデリック」のスキル【運命歪曲】のお陰です。
原作では自身の狂気点を増やす事で支援を盛りまくった攻撃すら回避してしまう最強の回避スキルです。
使った直後「大量の爆発物を利用して一気にダメージを与える」という周囲の被害を考えない行動をしましたが、これは【運命歪曲】のデメリットの狂気がダフネを蝕んだ結果正常な思考判断が阻害されてしまった為の短絡的行動です。
そしてダフネちゃんは腹を貫かれてしまいました。
まあネクロニカ的には「はらわた」と「せぼね」が壊れたくらいなのでまだセーフです。
次回もオールフォーワン戦は続きます。