龍の恩返し   作:ジャーマンポテトin納豆

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ノクターン版ですが、取り敢えず執筆完了次第投稿、と言う事にします。
投稿に関しては本作後書き、若しくは活動報告にてお知らせ致します。

時間掛かりますが、気長にお待ち頂けると幸いです。










8話

 

 

 

航海二ヶ月目。

漸く、新大陸が見えてきた。

 

未だゲームの中での丘珊瑚の台地、瘴気の谷を囲む険しく高い山々が遠目に見える程度ではあるが、着実に近付いている。

 

このままの速度ならば三日で到着するであろう。

それに伴い、各船上では上陸の準備が進められていた。

 

とは言えそう直ぐに上陸出来るものでは無い。

何故なら上陸出来そうな場所を探すところから始めなければならないからだ。

 

モガの村の様に崖に、とはいかない。

船着場が整備されている訳では無いし、そもそも暮らすための拠点があるのと、何も無い場所への上陸は全くの別物だからだ。

 

欲を言えば入江であり、広範囲に砂浜が広がっている場所が望ましい。

前世での泊地などに相当するような場所が良いのだ。

入江と言うのは、大抵の場合波や潮の流れが穏やかで、船の出入り、停泊に向いている。

 

その入江に砂浜があれば、桟橋を一本通してしまうだけでもう拠点の完成である。荷物の積み下ろしなどありとあらゆる行動が簡単に行えるし、入江の外と比べると、遥かに安全だからだ。

それにもしなんらかの護岸工事で大なり小なり港を整備すると言うのなら砂浜の方がやりやすい。

 

もし嵐が心配ならば少しばかり内陸部の高台を見つけてそちらに本格的な拠点を作るでもいい。

高波に襲われる心配も無いし、遠くまで見渡せる。

大抵の場合、入江に拠点を置くならばある程度整備、護岸工事や灯台建設などと言った凡そ港としての最低限の整備がされていなければならないのだが、今は間違いなく無理であるから確実な安全を考えるなら内陸部の高台が望ましいだろう。

高台ならば安易に遠くを見渡せるし、安全の確保もしやすい。

 

ただ、問題はそう言った入江やその近辺には間違い無く竜達も住み着いている事だ。

なんなら縄張りにしているだろう。

 

もしそうならば、別の場所を見つけるか、竜との生存競争である。

 

 

 

そもそも、何故上陸を急いでいるのか?

それにはのっぴきならない幾つかの理由がある。

まず第一に天候の問題だ。

新大陸近海は、今のところは凪いでいて静かだが何時荒れるか分からない。

一応海が凪いでいる季節とは言え常にと言うわけではない。

岸の近くを海が荒れた状態で航行していると、波に攫われたり流されたりして座礁したり岸壁に叩き付けられたりして船が沈む恐れがある。

 

第二に食料と水の問題。

確かに釣りや海水蒸留法で幾らかの食料や水を得られているとは言え、足りない。

この世界の船は前世の中世ガレオン船に似た形状であり、船の大きさにもよるが多いと四百人前後が乗り込む巨大な船であり、調査団が使用する船も百人ほどが乗り込んでいる。

本来ならば規模的には四百人ぐらいは余裕で乗り込めるのだが、そこまでの人数は戦闘を目的とした戦闘艦だけだから、調査団を乗せて海を渡るだけならば、そこまで多く無くとも良い。

更にはこの世界特有の、竜がいる事も人数が少ない要因の一つだ。

 

なんせ大砲を何十門も搭載しても当てられないし、載せていても意味がない。

だから戦闘に関わる乗組員が極端に少ないのだ。

 

とは言え百人ともなれば必要となる食料水の量は多い。

一日辺り一隻で通常通りならば三百食必要となる。

水は一日二リットル計算で二百リットル。

 

既に食料を確保する事が難しく、現時点で一日一食、それもかなり少ない量だ。

必要カロリー量を到底満たしているとは言い難い。

あちらこちらから空腹であろう事が簡単に分かる、腹の音が四六時中鳴っているのだ。

皆も随分と痩せたものである。

 

俺とディアは、龍特有の食い溜めが出来るからさしたる問題では無い。

自然界に生きる龍や竜は、時として獲物を狩る事が出来ずに食事にあり付ける事が出来ない事が多々ある。それは竜に限らずこの世界の生態系の頂点たるディア達も同じだ。

理由は様々だが、縄張り争いに敗れた、とか狩りがまだ上手くない若い竜である、とか冬眠するだとか色々な理由がある。

だから、龍や竜はそう言った事に備えて普段から食い溜めをしているのだ。

 

どうやっているのか、と言うとだ。

龍や竜には、実は胃袋が二つある。

いや、言い方が分からないのだが、取り敢えず胃袋と、胃袋に似た器官がある。

この胃袋に似た器官は、胃と同じく途中で分岐した食道と繋がっており胃に向かう食物の幾らかをこちらに回して溜めておくのだ。

 

場所は龍や竜によって違うが、大体龍であれば胃袋の隣、竜であれば腹側にある。

場所がある理由は単純に竜の腹は背中に比べ鱗に覆われていないから急所である胃袋を守る為だろう。

 

龍は例え鱗が無くとも皮膚そのものが強靭であり、早々貫けるものではないから特に何処にあろうと問題は無い。

 

獲物が得られず、食事にあり付けなかったら、この器官に溜めておいたものを消化し栄養とする。

胃袋のように積極的に消化を行う器官ではない。

基本的には胃袋が消化を行なっているのだが、胃袋の中身がある一定以下の量にまで減った場合にこの器官が消化活動を行い始めるのだ。

 

早い話が補助エンジンみたいなものだろうか。

 

定期的にこの胃に似た器官はそう言った、食事が食えなく、胃袋の中身が一定以下に減らなかった場合勝手に中身を入れ替える。

だから月に一度ほど、やたらと栄養状況が良かったり体重が増えたり減ったりする。

 

だから今は、俺とディアはその胃袋に似た器官の中身で栄養を得ている状態だ。

 

 

 

水は空樽を全てフル活用して海水から得ているからなんとかなっている。

 

しかしやはり食事が無いと言うのは、如何ともし難いほどに皆を精神的に追い込んで、追い詰めている。

人間にとって食事とは単純に生きる為というだけでは無く、ある種の娯楽的な意味合いもあるからな。

 

確かにハンター業も食事を摂れない事も依頼に出ていればある。

しかしあくまでも一日二日の話だし、そこまで長期間に及ぶ事はない。

最悪、海の上とは違い食料調達には困らないからな。

 

今は二週間に渡り一食、それも物凄く少ない量しか食べられないと言う逆に食わない方が楽と言う状況だから、余計に辛かろう。

 

 

 

俺とディアも荷物を纏めて何時でも下船出来る準備をしていた。

船室で、これまた周りの雰囲気やらと比べると場違いとも言える様な感じではあるが、のんびりと二人で過ごしていると扉を叩く音が。

 

「どうした?」

 

「失礼します」

 

一声掛けて、部屋に招き入れると何やら神妙な、と言うより切羽詰まった様な表情で、そして食事量が減った事により随分と痩せ痩けた顔になってしまった、ハロルドとエドガーが。

 

凡その要件の検討は付く。

 

直ぐに話は始まった。

 

 

「……なるほど、俺とディアが先に新大陸に赴いて、上陸可能地点と拠点設営地を選定してほしい、と」

 

「はい、正直に申し上げて現状のままでは明らかに調査そのものに支障を来たします。いえ、既に支障を来たしていると言ってよいでしょう。そこから更に上陸までに日数を掛けてしまうと、どうなるか分かりません。そこでお二人のお力をお貸し頂ければ、と」

 

「それならば、行ってくるとしよう」

 

これに関しては手を貸しても問題ないだろう。

寧ろ貸さないと餓死者などが出かねないし、今のままでは新大陸調査どころでは無くなる。

 

確かに必要時以外に手は貸さないとしているが、それでも、俺は調査団に属するハンターである。

ディアも先ほどから知らない土地に行けるとあって、顔などには出ていないが長年一緒に過ごして来たから分かる、テンション高めだ。

ウキウキワクワク、と言った感じだ。

 

そもそも断る理由が無いからな。

自分で言うのもあれだが、快諾して良かろう。

 

「有難うございます!それでは準備の方を……」

 

「食料や水は向こうで調達するから要らん。なんなら向こうで幾らか獲って来て持ってきてやろう」

 

ディアはなんとも頼もしい感じで言う。

 

「まぁ、そう言う訳で自分達の荷物だけ持っていくから、場所の選定が終了次第迎えに来る」

 

「分かりました。出発は何時頃になされますか?」

 

「今すぐにでも出ようと思う。荷物も元々纏めてあったから十分もあれば出発できよう」

 

「分かりました。それでは失礼します」

 

二人は揃って頭を下げ、出て行く。

 

 

 

 

「さて、それじゃぁ行こうか、ディア」

 

「あぁ、楽しみだな、フェイ」

 

荷物を詰めた鞄を二つ、俺が持つ。

ディアは龍の姿になるから持っていられないのだ。

 

甲板に出る。

すると、エドガーが少しばかり大きめの袋を渡してくる。

 

「簡易テントと気持ちばかりの食料と水が入っております。お二人には要らぬ心配かもしれませんが、念の為持って行って下さい」

 

「ありがとう、有り難く貰い受けよう」

 

「それでは、お願いします」

 

「あぁ」

 

軽く挨拶を済ませ、いざ。

 

「ディア、頼む」

 

「任せろ」

 

一言頷いたディアは、甲板の一番広い場所に立つ。

瞬間、辺りを光が包む。

 

船がぐん、と沈み込み大きな軋み音を立てる。

 

船の上に、龍の姿になったディアが佇んでいる。

人の姿も確かに美しいが、龍の姿の時もやはり、間違い無く美しい。

 

しかし、船の上では狭かったのだろう、マストを一本圧し折ってしまった。

まぁ船の上で龍の姿になると言うのが土台無茶苦茶な話だったのだ。

慌てて怪我人などの有無を確かめたが、幸いにも居ない。

 

取り敢えずその事に安堵しつつ、この船は他の船に引っ張って貰いながら新大陸に向かい、上陸場所が決まったなら急いで上陸する他無い。

 

 

 

 

龍の姿となったディアを見て絶句と言うのだろうか、驚き過ぎて皆揃って口を開けたまま固まってしまっている。

 

伝説、いや御伽噺でしか聞いた事のない存在が目の前に居ると言うのだから誰だってそうだろう。

御伽噺の龍が実在し、御伽噺のように人と夫婦なのだ。

竜人族はよく訪ねてくるから割と信じている者が多いのだが人間はそうでもない。

ハンターの間で有名な我が夫婦は、確かに話だけは聞いたことがあると言う人間は数多いが実在する、だとはやはり現実離れしていて信じていない者も少なくない。

 

そりゃぁ、御伽噺の龍が実在して、しかも人間と夫婦になって暮らしているだなんて龍が実在する以上の御伽噺が本当の事だとは俄かには信じ難いのも確かだ。

 

しかし今自分達の、目の前に居る。

それも、同じ船に乗っていたのだ。

その驚きたるや、語るべくも無いだろう。

 

「マストが折れてしまった、すまない」

 

「い、いえ、確かに空を飛ぶのであれば龍のお姿になるのも当然、それを念頭に入れていなかった我々の責任です」

 

「出来るだけ早く見つけてくるから、それまで耐えてくれ。そう時間は掛からないと思うが」

 

「はい、吉報をお待ちしております」

 

ハロルドとエドガーの二人に軽く挨拶をしてディアの元へ。

 

「それじゃぁ、行こうか」

 

『うむ』

 

ひょい、と人外になった脚力でもってディアの背中に飛び乗る。

首から背中、尾の先端にかけてはふわふわと柔らかく手触りの良い長い毛が生えており、その下に鱗がある。

 

この毛、侮る事なかれ並みの攻撃では決して断ち切ることができないほどのものだ。

この首から尾にかけての何処かに所謂逆鱗、と呼ばれるものがあるのだが同種の龍や他の龍によってある場所が違う。

所謂個体差、と言うわけだ。

 

ディアの場合、背中に生えた右翼の根本辺りにある。

それを他人に触られると、なんとも言えない不快感が襲うのだとか。

猫が毛の流れと違う方向に撫でられると嫌がるのと似ているらしい。

 

まぁともかく、それに触らぬよう首の根本辺りに腰を下ろし、首に腕を回し抱きつく。

いや実は何度かこうして飛んだことがあるのだが、一度調子に乗って滑り落ちたことがあってだな……。

 

幸いにも無傷で済んだのだが装備が全部御釈迦になってしまった。

どうしたものかとぼりぼり頭を掻いていたらディアに死ぬほど怒られた。

 

これでも身体は龍になったのだから平気ではないか、と言ったが運の尽き号泣しながら怒られたのである。

確かに軽率であった。

必死に謝り倒し、死んだかと思ったと言われた時はそれはもう心臓を締め上げられるような罪悪感が襲ってきたものである。

 

結局丸一日怒られ、俺が悪いから反論の余地も無く、夜になったらその反動故かディアが凄かった。

 

 

「次に飛ぶ時はしっかりと掴まって、私が地面に足を付けるまで絶対に離すな」

 

そう龍の瞳になったディアに顔をがしっ、と掴まれ間近にまで近付けられて念を押されたものだ。

それがあるから首にしっかりと抱きついているのだ。

 

 

ディアが大きく白い翼を広げる。

一度羽ばたくとぶわり、と浮き上がる。首に掴まっている俺にも前世の飛行機や、この世界の飛行船とはまた違った独特の浮遊感が襲ってくる。

 

そのまま何度か羽ばたき、高度を上げていく。

 

『そら、行くぞ』

 

その声と共に、グンッ!と前に進んで飛び始めた。

身体を少しだけ起こしてちらりと後ろを見てみると船団はすぐに遥か後ろになっていく。

 

『こら、しっかり掴まっていろ』

 

「すまない」

 

叱られた。

 

羽ばたく音と風を切る音を心地良く聞きながら、ふわふわとした毛に包まれながら三十分ほど。

 

再び身体を起こして下を見てみると眼下には俺達が渡って来た西竜洋と、そして緑豊かな大地が広がっている。

船だと何日も掛かる距離をディアに掛かれば一っ飛びである。

 

『だからしっかりと掴まっていろと言っているだろう。景色を見たくなるのも分かるが落ちられたら堪らん』

 

「悪かった、悪かったから少しだけ見させてくれ」

 

『仕方無いな、少しだけだぞ。その代わり、しっかりと掴まっていること』

 

「あぁ、勿論だとも」

 

ディアの許しを得て身体を起こす。

 

眼下には旧大陸とはまた違った大自然が広がっている。

緑生い茂る地の真ん中辺りには大きな大きな、龍の姿であるディアですら遥か上を見上げなければならない程に巨大な木が聳え立っている。

枝葉が大きく広く茂っており青々と、ただ遠くから目に見ても分かるほど生命力に溢れている。

あれが古代樹と呼ばれるもので、その周りに広がるのが古代樹の森だろう。

想像し難いかもしれないが、前世の東京タワーよりも明らかに大きい。

下手をすればスカイツリーに迫るのではなかろうか。

 

それを中心に古代樹の森が龍結晶の地辺りまで伸びている。

 

 

古代樹の森と明確な境界線を示したかのように広大な砂の大地が広がっている。

やはり真ん中ほどに乾いた土色の巨大な構造物が見えるから、あれが大蟻塚の荒地であろう。

古代樹の半分ほどの大きさであろうが、それでも高く聳え立っている。

 

その二つが隣接し、新大陸中央を囲む様に険しい山々が連なっている。

その内側には様々な色が輝いている場所がある。

空には何やら大小の生物が飛んでいるのが見える。

なるほど、あれは陸珊瑚の台地だな。

 

山を隔てた更に向こうには巨大な水晶のようなものがあり、あのあたりは龍結晶の地であろう事は容易に推察出来る。

その奥にも広い大地が広がっているが、高度が足りないのか見えない。

兎に角、ゲームでの舞台たる新大陸を遥か高みから見下ろしている。

 

それぞれの全く違う環境の大地が隣り合い共存している。

 

この世界に生まれ落ちて早五百年と幾ばくか。

なんとも感慨深いものだ。

 

 

「とりあえずこの辺りをぐるっと回って良さそうな場所を見つけよう」

 

『分かった』

 

身体を傾け、旋回を始める。

暫く見ていると、良さそうな場所があった。

 

「ディア、あそこはどうだろう」

 

『砂浜か。少し狭そうだが、良さそうだな』

 

指差し、降りる。

そこは巨大樹の森にある、砂浜だった。

確かに入江では無いが、ここ以外に無さそうである。

 

ケストドン、とゲームでは呼ばれていた草食竜が砂浜を闊歩していたが、ディアが降り立つ時に怯えて逃げていってしまった。

 

なるほど、何処となく見覚えがある。

ゲームのフィールドで見たことがあるような気がする。

 

ともかく、ここならばディアが身体を下ろして余りある広さであるし、桟橋一つぐらいならば余裕であろう。

 

さて、上陸地点は決まった。

あとは拠点を置く場所だけである。だけであるのだが……。

 

 

 

 

 

「森の中に拠点を置くのは難しそうだなぁ……」

 

「まぁ、そんなものだろう。一応岸壁の方に良さそうな場所があるにはあったがあそこに拠点を一から作るのは大変だぞ」

 

人の姿になったディアと共に古代樹の森を歩き回ったが何処もかしこも拠点作りにはまるで向いていない。

古代樹近辺では、龍の姿であるディアの倍は余裕であろうかと言う太く逞しい根があちらこちらに走っており、離れた場所でも古代樹の子達が芽吹き成長しており、到底数十人が生活する拠点を作り上げるのには無理がある場所しかない。

 

しかも古代樹の森は生態系に富んでおり、下手に拠点を作ろうものなら住処にしている竜達から総スカンを食らう事間違いなしである。

そうなったら新大陸調査どころの話ではなくなる。

 

砂浜はどうやっても無理だろう。

ざっと見て回った感じだが、海竜種があの辺りを縄張りにしている可能性が高い。

それも、かなりデカいのが。

 

尾を引き摺っていることからガノトトスなどではないことは確かである。

考えられるのは、ラギアクルスなどだが引き摺っている尾の大きさや形からして違うだろう。

 

ディアに心当たりがあるのかどうかを聞いてみたところ、どうやら示威行動をしてきた例の古龍の可能性が高いのだ。

陸珊瑚の台地ではないのか?と思ったがそもそもあの龍は水辺があれば何処でも生きて行けるとの事らしいから縄張りであっても特に違和感は無い。

 

となれば、幾ら好んで争いをしない龍とは言え、あそこに拠点など作ろうものなら人間を見慣れていない筈の龍からしたら快くは思わないのは、確かなことだ。

まぁ、少しばかり足を踏み入れるぐらいならば問題無かろうが、自分の家の敷地に他人が無断で建物を建てたら、と想像すれば分かりやすいかもしれない。

 

「取り敢えず、上陸地点は砂浜にしよう。件の龍に関しては俺達で話を付ける他あるまい」

 

「まぁ、妥当なところだな。あそこ以外に上陸出来そうな場所は無いし、砂地も見てきたがあれは上陸したところで拠点どころの話では無かろう。他の場所もどうやったって上陸でき無さそうだ」

 

一応新大陸全体をぐるっと回って見てみたのだが、どうにも砂浜というのが余り多くない。

確かに河口などはあるのだが、大抵の場合河口は強力な竜が縄張りとしているし生存競争もその分熾烈だ。

 

古代樹の森には船が通れる幅のある川が二つある。

正確には一つの川であり、途中で別れて巨大な三角州を作っているのだ。

調べてみたが片方は深さはあるものの河口付近には小島の様な岩礁が多く、流れが速く複雑で通れない事はないが危険極まりない。

 

もう片方に関しては上陸出来そうではあったが、遠浅で座礁間違い無し、それに何種かの海竜種が住処にしていることが分かった。

船が通れる深さの場所は大抵竜も使っているから下手に入ろうものなら船ごと海の藻屑である。

 

 

大蟻塚の荒地は、新大陸そのものとそれの沖合にある大きな島で構成されている。

どちらとも砂の雪原が延々と続いており比較的広範囲に渡って砂浜が広がっていたのだが、確かに上陸は出来そうなのだがそこに拠点を作ることができない。

この世界の輸送事情を考えれば上陸地点と拠点構築地点が離れているのは好ましくない。

仮に大蟻塚の荒地に上陸したとして、そこに拠点が作れないから古代樹の森に作るとしよう。

一番近い場所でも軽く二、三百kmは離れているから物資の移動だけで数ヶ月は掛かる。

 

龍結晶の地は海に面する場所は高く険しい岸壁に囲まれておりあれでは無理である。

 

となれば、古代樹の森しか無いわけだ。

砂浜を少しの間使わせてもらえるよう、件の龍に頼み、その間に岸壁に見つけた良さそうな場所に早急に拠点を構築し船の停泊も出来るようにしなければならない。

 

 

三日ほど掛けて調べた結果がこれである。

となれば先ずは交渉だ。

 

「件の龍が何処にいるか、分かるか?」

 

「ふぅむ、そうだな……」

 

ディアは暫く目を閉じて、何やら探っている。

と言うのも、どうやら龍と言うのは自然の中に自身の気配を溶け込ませるのだが、やはり龍同士であると感じる違和感の様なものがあるのだとか。

竜では感知できない、なんだろうか、周波数の違う波長と言えば分かりやすいかもしれないが、五感の鋭い龍は、龍の発する生命エネルギーみたいなものを感じることができるらしい。

 

それを探って、他の同族を探したりするのだとか。

 

「うん、見つけた。海の底に居るな」

 

「海の底、か」

 

「まぁ浅いところにいるし問題無い。普通に潜って行ける」

 

「潜るのか」

 

「それしかないだろう」

 

「まさかとは思うが、水の中で息が出来たりなんてしないだろう?」

 

「当たり前だろう、私達は万能では無いのだぞ、水の中で息が出来るなら困らん。普通に息を止めて潜っていくのだ」

 

どうやら海の底にいるらしく、交渉するには潜っていくしか無さそうである。

流石の黒龍一族といえども水中は論外らしく、普通に潜って行く事になった。

 

「龍の姿か?」

 

「いや、あれだと水の中は動き辛い。人の姿の方が泳ぎ易いからこのまま行く」

 

「なるほど?」

 

「空は私達の独壇場なんだが、水中だと適応していないから背中の毛に水が染み込んだり、翼が重くて動かし辛かったりと色々と面倒でな。下手したら龍の姿だと溺れ死ぬ」

 

「そうなのか。それは嫌だな」

 

「だから、人の姿で潜る」

 

ディアに死なれたら、俺は気が狂ってしまうだろうな、間違い無く。

後追い自殺するんじゃなかろうか。と言うかするな、うん、間違いなくする。

 

「深さはどれぐらいだ?」

 

「まぁ、ざっと二百と言うところだな」

 

「……死なないか、それ」

 

「大丈夫だ、それぐらいの深さなら全く問題無い」

 

ディア曰く、二百m程の深さなら潜れるんだとか。

ふぅむ、流石龍、適応していない水中でも多少なら問題無いとは、身体の耐久性が桁違いだ。

 

……あ、俺もそうだった。

 

時々、特に初めての事となると人間感覚で話をしてしまうことがあるのだ。

それで失敗したことが何度もあると言うのに学ばない愚か者だ、俺は。

 

「んんっ、よっ、と」

 

「……何故服を脱ぐ?」

 

「フェイに貰ったものだ、汚したく無い。それに服を着ていたら泳ぎ辛いだろう」

 

何を当たり前のことを、と不思議そうに首を傾げて言う。

絶対に泳ぎ辛いは後付けだな。

 

「なんだ、フェイはそのまま泳ぐのか?」

 

「いやまぁ、万が一があるからな」

 

「まぁ、構わないが、ネックレスとかを無くしたら許さんぞ」

 

「あぁ」

 

ディアは来ていた服を畳んで砂浜の端っこに建てたテントの中にしまう。

……俺もネックレスと指輪は置いて行こう。無くしたら嫌だし、何よりディアが恐ろしい。

 

ディア、老山龍との一件でお揃いのネックレスを買った後からどうやら、ペアルックにガッツリと嵌ったらしく、貴金属などをとにかく同じものにしたがる様になったのだ。

 

それがどうにも、話には聞いていたらしいのだが、実際にやってみると龍の中での独占欲と言うか、そう言うのを刺激して堪らないらしい。

 

今や我が夫婦に限らず龍の間ではペアルックが常識になったのである。

図らずしも、龍の生活様式を変えてしまった。

 

まぁ、とは言え龍は普通はディアのように何か貴金属を身につけるとかしないらしく、では何をペアルックにしているのだろう?と首を捻らなくもないがまぁ置いておこう。

 

 

俺もネックレスと指輪をテントに置き、装備を点検した後に二人で海に入る。

俺は装備でゴリゴリ、ディアは全裸となんとも無茶苦茶である。

 

何はともあれ、二人で海に潜る。

これが普通の夫婦旅行ならばロマンチックだったりするのだろうが俺がこんなナリでは無理がある。

 

まぁ、後々落ち着いたら二人でゆっくりと満喫するとしよう。

 

 

 

 

装備を身に付けたまま、ディアの先導の下泳ぐ。

砂浜から暫く十〜二十mほどの水深が一kmほど続き、そこから水深が深くなり始める。

 

「ここから潜るぞ」

 

「分かった」

 

息を吸い込み、ザブンと一気に潜る。

時間との勝負だ。

 

この辺りの海は綺麗で澄んでおり、生物が豊富だ。

その中をディアは産まれたままの姿で泳ぐ。

 

しかし、随分と綺麗に泳ぐものだ。

どうにもそれが、やけに幻想的に見えてしまう。

水の中特有の光の反射に加え、ディアの髪の毛が更にキラキラと光り輝く。

人間には人間の美しさがあるが、ディアはやはり人ならざる美しさがある。

 

なんと言うべきか、言葉が出てこない。

 

 

 

暫く潜る。

段々と光が遮られてきて、海水が冷たくなってくる。

 

それを感じながら、さらに深く潜る。

 

 

既に深海、と呼ばれる深さにまで来た。

龍になっていなかったら全く辺りが見えないほどに真っ暗闇だ。

 

時折、見たことのない生物が通り過ぎる。

この世界の人間は誰も知らない未知の生物なのであろうか。

 

それを横目にディアと共に泳いでいくと、何やら岩壁に大きな横穴が出来ている。

 

ディアを見ると、ジェスチャーでこの穴の先にいる、と示している。

 

それを見て頷き、行こうと合図をするとなんの臆面も無く横穴に入っていく。

 

少し進むと横穴が縦穴になり、登っていく。

すると空気溜まりになっている空洞に出た。

 

二人で岸に上がると、奥の方に何やらゆらゆらと妖しい光が蠢いている。

 

『人間が何故此処にいるのだ?』

 

先に声を掛けたのは向こうだった。

割と若い声で、ディアとはまた違った、こう、凛とした声である。

 

どうやら既に俺達の接近に勘付いていたらしい。

歩いて近寄り、頭を下げる。

 

「手土産も無く突然の訪問、申し訳無い。しかし少しばかり話がしたくて此処に来たのだ」

 

『話とな?私は話すことなど少しも無いが』

 

「此方にはある」

 

少しばかり問答を繰り返すと、龍がディアをジッと見る。

首を傾げ、何やら既視感を感じているようだ。

 

『……んん?よく見ればお主、龍ではないか』

 

「お初にお目に掛かる、黒龍一族族長が娘、ディアードホス。此度は少々話がしたくて参った次第だ。どうか聞いては貰えないだろうか」

 

『黒龍一族?では何故隣に人間が……、あぁいや、なんとなく分かったぞ』

 

「人と番になった、と言えば分かるな?」

 

『ははぁ、なるほどお主達が噂の番だな?どおりで人間のようで人間ではない感じがした訳だ』

 

「それで、話を聞いてはくれないか」

 

『あぁ、いいとも。此方としても黒龍一族のやんちゃ姫の機嫌を損なうのは勘弁願いたいことだ』

 

なるほど、ディアはやんちゃ姫と他の龍達から呼ばれているのか。

まぁ、確かにその節はあると言えばあるな。

 

老山龍の翁もやんちゃだ、と言っていたしな。

 

「余計なことを夫の前で言うな」

 

『おぉ、怖い怖い。して、用件とは何か?』

 

「貴方が縄張りにしている砂浜を少しばかり使わせて頂きたい」

 

『砂浜?あぁ、別に構わぬぞ。あそこはよく日光浴に行くでな、それを邪魔さえしなければ何も言わんよ』

 

「人間達が多数でも構わないか?」

 

『構わん。元より縄張りではあるが、あくまでも皆のものだ。まぁ、下手に荒らしたりしなければよい』

 

「ありがとう。それでは失礼する。もし何かあったならば俺達に言って欲しい」

 

『ん、ではな』

 

龍と別れ、再び海に潜る。

早めに戻り、砂浜に上がると辺りは夕暮れ時、太陽は既に水平線の向こうに沈もうとしていた。

 

夕日を遮るものが無いから、ディアの裸体を照らしている。

うーん、これはこれで良い……。

 

「うん?どうした?」

 

「あぁ、いや、ディアは綺麗だなと」

 

「んふふふ」

 

答えると、嬉しそうに顔を綻ばせる。

指を絡ませながら手を繋いで、テントに戻る。

 

川から汲んできておいた水を火に掛けて念のために煮沸消毒、それから石鹸を泡立て頭を洗う。

身体は洗った後に水を含ませたタオルで身体を拭う。

 

調査団の皆に知らせるのは明日だ。

早朝にここを出発し、船団を見つける。

 

必要ならば俺達が乗ってきた「未知への探求」号を引っ張ってこないとならない。

俺が泳いで引っ張ってもいいし、ディアが頷いてくれたならばディアが引っ張るでもいい。

 

色々と考えながら、床に着く。

 

「フェイ」

 

「ん?」

 

毛布を掛け、ディアを抱き締めると呼ばれる。

すると、キスをされた。

 

なるほど、どうやら一昨日、昨日とお預けを食らったからご所望らしい。

 

いつもと比べて随分と短めに事を終わらせた我が夫婦はディアが不満げではあったが早々に終いにし寝るのであった。

 

 

 

 

 

 

翌日。

陽が登って幾らかした頃に目を覚ました我が夫婦は、これまた川の水を煮沸消毒の上で頭を洗い、身体を拭い、そこらで採ってきた食える野草やキノコ、それと仕留めたアプトノスの肉で朝食を済ませる。

 

確かに調査団は食糧難であるし急ぐべきなのであろうが、下手に日々のルーティーンを崩すと何が起こるか分からない。

だからあくまで急ぎつつもそれ以外は何時も通り、と言う訳である。

 

テントを張ったまま、荷物も置きっぱなしにしておく。

ただし、アプトノスはディアに頼んで持って行ってもらう。

 

龍の姿になったディアの背に乗り、大空を共に駆ける。

三時間ほどだろうか、探していると船団を見つけた。

 

船はそれぞれ識別用の旗を掲げており、「未知への探求」号は五匹の龍の伝承を模した旗を掲げている。

肉眼でも、かなり遠くから確認出来るから迷いなく近づいて行く。

 

しかし、何か違和感が。

 

……あぁ、なるほど!

 

感じた違和感は俺達が折ってしまったはずのマストが修理され再び立っているからだ。

いやはや、この短期間で修理をしたのか。

 

流石と言うべきだろう。

 

「おぉーーい!!」

 

ティガレックスのバインドボイスも霞むような大きな声で呼ぶと、皆が手を振っている。

まぁ、ディアしか見えないであろうが一応手を振り返し、アプトノスを甲板に放る。

 

そして空中で人の姿になったディアを横抱きにして甲板に着地する。

 

本当は龍の姿のまま船に降りようと思ったのだが、マストをまた折るのも忍びないからな。

 

ハロルドとエドガーが駆け寄ってくる。

その顔はようやく希望を見つけた、とでも言うように輝いており此方を見ていた。

 

「ご帰還、心よりお待ちしておりました。早速で申し訳ないのですが、首尾の方は……」

 

「心配するな、ちゃんと上陸場所と拠点設営地を確保した。縄張りにしている龍へも話は通している」

 

「おぉっ!有難うございます!」

 

「上陸地点は此処からーーーー」

 

上陸地点の場所を指示する。

するとすぐに船団は進路をそちらに向けた。

 

次に拠点設営地の説明を行う。

 

「確かに拠点設営地を確保したのだが、申し訳ないが、あまり適しているとは言い難い」

 

「と言うと?」

 

「新大陸中を飛んでみて回ったのだが、何処もかしこもまるで向いていない。あそこを開拓しようとしたら数十年は掛かるほどにな」

 

「そこまでですか……、して、その見つけた設営地とはどこなのでしょうか」

 

「上陸地点の砂浜から少しばかり離れたところにある岸壁だ」

 

「岸壁、ですか」

 

「あぁ。とは言っても完全な壁というほどでも無い。岸壁の上に少しと岸壁の途中に幾らか開けた場所がある。他には良さそうな場所はどうしても見つけられなんだ」

 

「いえ、それだけでも見つけて頂けたのであれば感謝しかありません。元より新大陸調査は前途多難、困難極まりない事は誰もが覚悟の上です」

 

「そうか、そうしたならば俺達は向こうに戻ろうと思う」

 

「このまま共に行かれないのですか?」

 

「腹を空かせているのはこの船の者だけではあるまい。他の船の分も食料を確保して来ようと思っていたのだが」

 

「そうでしたか、申し訳ありません」

 

「いや、いい。そこは有難うと言ってほしい」

 

「有難うございます」

 

「ん。それでは残りの旅の無事、祈っているぞ」

 

「はい。御二人も要らぬ心配かとは存じますがどうかお気を付け下さい」

 

「あぁ」

 

二人と別れマストに登り、飛び上がりながらディアが龍の姿になる。

そのまま俺達は新大陸に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

到着するまでの間、彼らの為に食料を行ったり来たりで運んでいた。

 

四日後、船団が上陸地点に到着した。

まず最初に上陸したのは技術者達。

 

砂浜に簡易的な桟橋を作り、物資の揚陸を簡単にするためだ。

 

事前にここは龍の縄張りであるから下手なことはしないように、と言ってあるためにこの桟橋も拠点が完成しそちらの桟橋が完全に機能し始めたならば取り壊すことになっている。

 

二日ほどの工事で幅五mの桟橋が完成し、技術者達の工具などを最優先で揚陸、揚陸が完了すると皆でそれを拠点設営地に運び込んだ。

すぐに拠点設営工事が始まった。

 

まず最初に行われたのは岸壁の中ほどにある平地の整地作業。

これも誰彼問わず皆で行い、三日間掛けて岩を均し、そこに技術者達と工具類や物資、材料などを下ろした。

 

本来ならば古代樹の森から木材を切り出すところだったのだが、「未知への探求」号の他にあの嵐で損傷した船を分解して材料とすることになったために切り出す必要が無くなった。

此処までは保ち堪えていたが、旧大陸までは保ちそうに無いとのことだ。

 

四隻分にもなり、資材としては十分以上の量があるとのことだ。

 

すぐさま技術者達が分解した資材を使って海に張り出すように足場を作り、下へ下へと足場を移していった。

この辺りは岸壁が続いているものの、比較的水深が浅く、深いところでも三十mほどしかなく、防腐処置を施したマストを海の中にある岩に穴を開けて挿し込んで固定すれば柱は完成した。

 

それに梁を渡し、板を打ち込んで次々と足場を組んでいき、一ヶ月もすればゲームほどではないにせよ、一番最下層の拠点部分が完成した。

 

そして休む間も無くすぐに桟橋を作り、砂浜の桟橋は撤去された。

 

崖上の平地にも階段状の足場を作り往来を簡単に出来るようにし、そこに料理場が作られた。

今はまだ簡素であるが、ゲームでのキッチンである。

 

崖の中ほどにある平地にはまず最初に工房が作られた。

単純な話、道具類の手入れや作成が急務であるからだ。

長い間潮風に晒された武器防具は手入れしていたとは言え錆が浮き、とてもでは無いが命を預けて、命懸けの依頼に行ける状態では無いのは確かだ。

 

事実俺の武器防具もそんな状態だから早急に修理を行う必要があった。

まぁ武器防具が無くとも俺は問題無いのだが、他の皆が問題だった。

 

なんせ竜が世界で一番繁栄していると言っても過言では無いのだから、自然界に防具も武器も何も無しで出歩くのは、幾ら調査団に選抜された者たちとは言え、あの世への片道切符である。

 

更には俺達が住む住居などは宮大工の様に釘無しで建物を建てるわけでは無い。

正確には技術自体は存在するが、広く使われていない、である。

 

ユクモ村などは使っているが、一般的には釘などを使用して組み上げた木材同士を連結させる。

 

だから、工房は必要不可欠なのだ。

ハンター達の武器防具を修理し、鉱石採取、食料調達依頼を出して依頼に向かう。

 

でなければ鉱石などの資源を持ち込む余裕が無い我々は何も出来ない。

現地調達が基本である。

 

 

俺はと言うと、皆の武器防具が修理し終えるまでの間依頼をこなしていた。

ディアと共にツルハシを持って古代樹の森や大蟻塚の荒地を駆け回った。

まぁそれが楽しいこと楽しいこと。

 

鉱石集めは村でもよくやっていたから手慣れたものだが、採れる鉱石が既存のもの、未知のものと様々で、それはもう二人してきゃっきゃっとはしゃぎ回るのだ。

 

拠点はゲームほど人数も居なければ大きく無く、キッチンと工房、それと調査団の皆が住まう集合住宅の様なもの、それと海に迫り出した足場と桟橋があるだけだ。

 

それでも、ここにきた当初と比べれば遥かに進歩したものだ。

これにはディアも驚いていた。

 

 

 

三ヶ月もすると、工房を別の岸壁の平地に移し、本格的に稼働させ始めた。

元あった場所は研究者達が使用することとなり、動物学者と植物学者が半々で使っているのだが……。

 

 

 

「お前達散らかし過ぎだっ!片付けろ!」

 

なんと言うか、早速書物やら採取してきた植物やらを広げ足の踏み場も無い状態なのだ。

三爺達を始めとして研究者達は生き生きと自分の領域を広げているのだが、流石に見かねたエドガーが片付けろと怒っているところだ。

 

ハロルドやルーカス、オリヴィア、クォク達は既に古代樹の森に入って行ってしまったから拠点には居らず、なんなら暫く帰って来ていない。

フィロルを筆頭とした技術者達は拠点拡充の為に日々奔走していてとても忙しそうだ。

 

ウィリーはつい先日調査団の人間三十数人を残し船団を率いて旧大陸への帰路に。

 

やはり生まれ故郷で無く、不安はあるのだろうが、しかし、皆顔を輝かせて日々を過ごしている。

 

 

 

我が夫婦も、拠点での諸々をやり終えたから、明日から新大陸旅行と洒落込む予定だ。

あぁ、楽しみだ。

 

 

 

 

 

 











龍の恩返し ノクターン版
https://syosetu.org/novel/269547/






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