オーバーロード単発短編集   作:セパさん

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・稚作【滅国の魔女、御身の前に。】より〝クライムとラナー様の心理戦〟のラナー様視点です。

・重複する部分が多いのでこちらに投稿することにしました。

・ラナー様が題材という時点でお察しと思いますが、倒錯的かつ官能的な描写がございます。その手の話が苦手な方はお気を付けください。

・クライム君視点はあとがきに貼っておきます。


クライムとラナー様の心理戦 side:ラナー様

「どうしたのクライム?ゆっくり焦らず選んでいいのよ。」

 

「はい!申し訳ございません、しばしお待たせ致します!」

 

 全身から滝の様な汗を流しているクライムを微笑ましく眺めつつ、ラナーは2枚の手札に目を落とす。片方はスペードの8、片方は【ジョーカー】と呼ばれる嘲笑する道化師のカード。

 

 ラナーとクライムはお互いテーブルの対面に座り、【交互に相手の手札から1枚選び絵札を合わせていき、最後にジョーカーを持っている人が負け】というゲームで遊んでいた。

 

 可愛い子犬は自分の一挙手一投足を様々な視点から読み取ろうとしている。しかしラナーからすれば、任意のカードを選ばせるなど赤子の手を捻るよりも容易いことだ。

 

「これにします!」

 

 クライムはラナーが持つ2枚のカードの内、1枚を選んで目を伏せながら恐る恐る内心祈りを捧げ、選んだカードを見た。……当然クライムが選択したのはスペードの8、何の変哲もないトランプの絵柄が、クライムには嘲笑する道化師のカードよりも不吉に見えている事だろう。何しろこのゲームの勝者は敗者に対し……

 

「そ、揃ってしま……揃いました。ラナー様。」

 

「あら、またジョーカーがわたしに残ってしまったわ。わたしが【罰ゲーム】ね。」

 

 ……【罰ゲーム】という名目で、本来のクライムならば絶対にしないであろう行為の数々を行わせているのだから。

 

「いけませんラナー様!もう3度目になってしまいます!次はわたくしが!」

 

 クライムは限界とばかりに声を張り上げる。慌てふためくクライムの姿というのも実に愛おしい。

 

「ダ~メ。〝勝負で決まったこと〟なんだから結果は絶対よ。あーあ、次は勝てると思ったのに。」

 

 もちろんラナーが負けたのはわざとだ。1度目の敗北ではいつも頑張っているクライムに慰労も兼ねて肩のマッサージをし、2度目の勝利では〝10分間椅子に座っている勝者を敗者が床に座り団扇で扇ぐ〟という従者と主があべこべになり倒錯感に混乱するクライムの瞳を堪能した。

 

 可愛いクライムは次こそは絶対に負けなければならないと、健気にもそれこそ戦闘を行う心持でラナーとの〝勝負〟に挑んだのだろう。だが、結果は勝利と言う名の大敗。まるで生殺与奪を懸けた実戦で敗北を喫したかのような瞳を浮かべるクライムの様子にゾクゾクと快感を覚える。

 

「また負けちゃったわ。次はどんな【罰ゲーム】かしら。」

 

 ラナー様は少し拗ねた演技をしながらも、楽し気な笑顔を浮かべ【罰ゲーム】の内容が記されたカードの入っている白い箱に手を伸ばす。……これもランダムに混ぜているが、ラナーの頭脳ならばどのカードがどの場所に動いたかの計算など、3つの数字を暗記し逆唱するようなものだ。

 

 クライムはラナーの負担にならない【カード】が引かれるよう祈りを捧げる様子。……残念ながらこれから選ぶカードはその真逆だが。

 

「えっと……。【負けた人が勝った人に10分間ベッドの上でくすぐられる】ですって。」

 

 クライムはあまりの恐れ多さに卒倒しそうになっている。この愛しい犬は何度自分と逢瀬を重ねようが、その純粋さに一切陰りが見られない。脳内はさぞ大混乱に陥っていることだろう。

 

「【罰ゲーム】なら仕方ないわね。じゃあクライム。遠慮せずに……。」

 

 そう言ってラナーはベッドに移動し、休日故いつもよりも簡素なドレスをはだけさせ、はしたなくならなない程度に、それでいて扇情的に身体の〝最低限〟だけを隠す姿となる。

 

「は、はい。ラナー様!!」

 

 全身を真っ赤に染めた可愛い犬は脳内で様々な言い訳をしていることだろう。クライムもベッドに移動し、ラナーの身体に指を這わせる。

 

「ん、ぁあ。」

 

 筆舌に尽くしがたい快感がラナーの全身に巡る。くすぐるというよりも、優しい優しい羽のような指使いは畏れ多さが先行したためだろうか。我慢できず小さく嬌声をあげてしまう。【罰ゲーム】の紙には丁寧に〝何処をくすぐるか〟の指南も記したはずだ。

 

 首筋から脇、横腹、大腿の付け根、太もも……。クライムは【カード】に指南された通りに指をすべらせる。〝人をくすぐる〟なんてしたことのないクライムはそのままフェザータッチの要領でラナーの身体に指を這わせていく。

 

 自分で考えておいてなんだが、これは思った以上に破壊力がある。ラナーは予想を超える快感に身体を大きくくねらせ、嬌声はどんどんと増していき、自らの指を噛み声を抑えようとしてしまう。

 

 そんな自分の姿にクライムの脳内も倒錯感と獣欲に溢れているのか、自然と息が荒くなっていく。その様子がラナーの快感に拍車をかける。

 

 これほど早い10分は初めてかもしれない。ラナーは10分なんて言わず1時間とでも記しておけばよかったと後悔する……。

 

 ジリリリリという刻み時計の音が鳴り響く。クライムは息も絶え絶えに、慌てふためきラナーの身体から指を離した。ラナーはその様子を残念に思いながらも、未だ乱れている呼吸を整える。一通り頭を冷やし、ベッドの上で大きく深呼吸を行い……。

 

「次こそは負けないわよ!さぁクライム。テーブルに戻りましょう。」

 

 〝まだこのゲームは終わらせない〟と内心決意を新たにしながら、〝次こそ絶対に負けなければならい!!〟と切迫しているクライムの瞳を眺める。……安心していい〝次はちゃんと負けさせてあげる〟つもりだ。そしてゲームが始まり……

 

「やっと勝てたわ!じゃあクライムが罰ゲームね!」

 

 ラナーは無邪気に勝利を喜ぶ。クライムはようやく負けられた安堵からか、肩を大きく落とした。……これからが本番だとも知らずに。そしてルールに従って【罰ゲーム】のカードが入った箱から一枚を引き……クライムは顔面から血の気を失った様子で無言のまま、〝ラナーが選ばせた〟カードを見せる。

 

【負けた人が勝った人に10分間ベッドの上でくすぐられる】

 

 先ほどカードを戻す際、クライムがこのカードを引くよう計算をしておいた。まさか先ほど自分が行った行為のお返しを食らうとは思っていなかっただろう。ラナーは内心クスクスと笑う。

 

「あら、じゃあクライムにはさっきの仕返しをしなくちゃ。」

 

 無邪気に笑う演技を行い、ラナーは白魚のようにきめ細かな美しい十指を(うごめ)かせる。さて、どこからくすぐってあげようか。最初は焦らそうか?それともいきなり〝粗相〟をしでかすような刺激を与えてやろうか?ああ、なんて贅沢で幸せな悩みなのだろう。

 

「さぁクライム。ベッドに寝て頂戴。」

 

 クライムは拷問官にこれからの顛末を告げられたような絶望的な表情を見せている。そうしてラナーにとってはこれ以上ない愛しい愛しい犬の【躾】が、クライムにとっては地獄のような……枚挙に暇の無い失態の数々に、後に思い出すことも(はばか)られる10分間が始まろうとしていた。




・クライム君視点です【https://syosetu.org/novel/261376/19.html
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