ナザリック宝物殿。全10階層からなるナザリック地下大墳墓において、どの階層からも足で赴くことが叶わない場所。その内部はギルド“アインズ・ウール・ゴウン”が溜め込んだ財宝が収められている。天高く積み上げられた燦然と煌めく金貨・宝石・宝剣の山々を保管する第一の部屋。
そこを抜けた先に、談話室があり、アインズはモモンの形となり、アインズに化けたパンドラズ・アクターと会話をしていた。
「……と、以上が本日エ・ランテルを見回り耳にした民たちからの要望と、魔導国に対する印象に御座います。アインズ様。」
「ふむ、大変にご苦労様……ご苦労、モモン。アンデッドに対する忌避感は最早時間が解決する問題と考えていいだろう。それにしてもよく民たちをケアしたもので……だ、いずれ褒美を以てこちらも返すとしようモモン……さ……モモンよ。」
パンドラズ・アクターの様子を見てモモンとなっているアインズは呆れたため息の真似事をして臣下の儀を解き首を横に振った。
「ダメだな、まだわたしでさえわかるほどぎこちない。勘が鋭い者ならばそのぎこちなさから正体を看破されかねん。」
「申し訳ございません!父上!わたくしの不徳が致す齟齬から御身のご計画が破綻などあってはならないことです!」
「だからわたしの姿でそういう態度が良くないと言っているのだが……。まぁよい。早くわたしの真似に戻れ、報告を継続するぞ。」
「畏ま……わかった。では報告の続きを聞こう。」
「では、続きましてエ・ランテルで起こった事象にございますが……」
「……ふむ、モモンやナーベに対する死亡説はほぼ都市伝説と同じ程度まで落ち着いたと見て問題ないか。それは喜ばしい。」
レベル100のドッペルゲンガーであり、誰のどのような演技であろうと容易にこなすパンドラズ・アクターであるが、唯一苦手としているのがアインズに対し敬語や尊敬を排し尊大に振る舞うことだ。
影武者の立場である彼は様々な使い方をされなければならない。アインズがモモンとして振る舞い、アインズに化けたパンドラズ・アクターと話す機会もいずれあるだろう。此度はその練習であった。
もちろん至高の御方……それも自らの創造主に対し尊大な対応を求められるなど、NPCにとっては何よりも恐れ多いことであり、どのような拷問よりも苦痛極まるもの。それでもパンドラズ・アクターはこの苦痛はアインズ様が己に課した試練であると、自らの創造主へ尊大な態度を試みていた。