音柱の継子は音が聞こえない   作:月宮塚帖

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ハーメルン、そして二次創作の初投稿作品です!

ギャグとシリアス半々くらいで書いていきたいですが、多分シリアス多めになるかもしれません……(汗)

第一話は原作の数年前です。

ではお楽しみください!!!

追記:感想など、反応を下さると嬉しいです!




第一話

 ーーー暮方。

 

 それはこの世界で一番危険な時間である。誰もが足早に自宅へ帰ろうとしている中、少女は1人ふらふらと歩いていた。時々人に当たり、怒られながらも何処かを目指して歩いていた。彼女にとってその何処かはどこでも良かった。落ち着ける場所であればどこでも良かったのだ。

 

 そして彼女は街の端にある大きな屋敷のあるところまで来た。屋敷のすぐ裏が山で誰が見ても金持ちだと答えるであろうその土地の広さは目視だけでは把握出来ない。

 

 彼女は屋敷を一瞥すると少しだけ立ち止まってまた歩き出す。

 

 すると突然彼女の背後に大きな音を立てて異形が落ちてきた。

 

「クソッ! なんなんだあいつは! 俺様の血鬼術が、毒の血鬼術が効かないだと⁉ ……!? おおっ! こんな街の人が集まらねぇところに年頃の女がいるじゃねぇか! これで強くなれるぜ! 俺様ってば運がいい!」

 

 異形は少女の体を掴み勢いよくその肩口に噛み付く。少女は声にならない悲鳴をあげた。普通ならその後も声をあげ続けるか、声を上げて泣くかのどちらかであるが、少女はそのまま苦しそうな顔をして自身の肩に手を置く。彼女はその肩に置いた手の感触から先程まではなかったものが肩にあると感じ、何かを確認するためにそちらを向く。

 

 彼女は異形と目があった。すぐさま怯えて逃げようとする彼女を見て異形は不気味に微笑み、肩を噛む力を強める。あまりの痛さに彼女は暴れだした。ただ、彼女は大声をあげなかった。うぅっ、という苦しそうな声を静かに出すだけで大きな声は決して出さなかったのだ。

 

「……おかしい。味は人間だと言うのに、こいつはいつもの人間みたく叫ばねぇ。俺様の毒を入れたら味が落ちるから入れはしないが……、叫んでくれねぇとつまんねぇなぁ? ただの人間がよく耐える。俺様直々に叫びたくなるほど辛い毒を入れてあげよう!」

 

 じたばたと暴れる彼女はさらに肩に異形の鬼の鋭くとがった歯を刺し込まれたことでボロボロと大きな涙を流しながらさらに暴れる。だが、暴れたことで歯がさらに食い込み、彼女の白い肌と薄く古びてところどころ解れている着物に血が広がる。その血を上手そうに吸った鬼はようやく口を彼女の肩から放したと思えば、その注射器のようにも見えなくもない腕を彼女の腰に刺す。彼女はついに痛みに耐えきれず失神してしまった。

 

「……ふうん。気絶したか。まあ、いい。どうせこの俺様の血鬼術を吸収すれば跳ね起きて体中を引っ掻いて大声で泣きわめくだけだ。起きていても寝ていても関係ねぇ。さてと……、血鬼術―――」

 

 そんな気絶して彼女を見て圧倒的強者として自己陶酔していた異形は警戒を怠っていた。誰から自分は逃げていたのか、なぜ彼女を襲うことにしたのか。対して時間は経っていないのだが、すっかり頭から抜け落ちていたようだった。

 

 確認しよう。

 

 異形は誰から逃げていたのか。

 ―――自身の毒の血鬼術が聞かない強敵から逃げていた。

 

 異形はなぜ彼女を襲うことにしたのか。

 ―――自身を強くするため。

 

 ならばわかるはず。近くにはまだ異形の及ばぬ強敵が潜んでいることに。

 

「……なッ⁉」

 

 異形の少女に突き刺していた方の腕が切られた。断面は綺麗でおそらく刃物で切られたものだ。信じられないとでもいうように異形は腕の断面を見つめ、そして腕を切ったと思われる人物がいる方へ顔を向けるが、すでに遅かった。

 

 ぼとっと異形の頭が落ちる。これは異形の死を意味していた。首の断面から灰のようにはらはらと消えていく様はどこか儚い。異形の顔は歪んでいた。そして完全に消える寸前に涙を零す。何故に涙を零したのかは残された者にはわからない。

 

「……よかった。血鬼術は発動される前だったようですよ。ただ、肩の噛み傷は想像以上に深いですね。一旦止血をしてすぐそこの姉の屋敷で治療しましょう。宇髄さん、貴方も一応来てくださいね」

 

「俺は派手に毒が効かねぇ。お前を庇って血鬼術を食らったけど派手に俺は無事だ。俺のことなんぞ、ちび助に地味に心配されることはねぇよ」

 

「……あらまあ。そうなんですね。あの毒は鬼の反応を見るに、即死薬だったのでしょうが、貴方は毒の耐性があるから微熱で済んでいると。まあまあ! この後風邪をこじらせて死んでしまうのでしょうね! 可哀想なこと……。即死薬にはもしものために免疫力低下の毒も混ぜられていたようですよ。さすがに忍といえど、免疫不全にする薬への耐性はつけることはないですよね? だって体の中の白血球を破壊するのですから、耐性など付けられませんし。あ、これはわずかに宇髄さんの肌についていた毒を検体として宇随さんが鬼を倒す時に調べたのですが……。あの鬼は策士ですね。自分で倒せなくとも人は殺せると。絶対に人間の頃は素晴らしい薬師でしたよ。……それはそうと、ようやく音柱になれたというのにその柱が免疫不全で死亡するなど前代未聞ですよ。しかも鬼の毒の治療をしなかったという理由で。過去の柱は鬼との戦いで殉職しているのにも関わらず、貴方は布団の上で自分の不注意を呪いながら死んでいくのですね……。可哀想です……。よよよ……」

 

「わかったから一回黙れ! 長々ということじゃねぇだろ! 地味にうぜぇ!」

 

「では……」

 

「……俺も行くわ。この女のことで派手に気になることもあるしな。俺が担いでいく」

 

「ありがとうございます」

 

 どうやら異形―――改め鬼はこの大柄な男、宇髄に殺されたようだった。その横には宇髄とは対照的に同じ女性の中でも小柄の部類に入るであろう少女。彼女の名は胡蝶しのぶという。

 

 しのぶは怪我をした少女を自身の姉の屋敷に連れて治療するといった。無論、彼女のいう屋敷とは先程少女が少し見つめたあの広い屋敷のことである。しのぶの姉がこの屋敷を所有しているのには理由があるのだが、それはここで話さなくてもいいだろう。

 

「では、彼女はこちらへ連れてください」

 

 宇髄が案内されたのは風呂場だった。

 

「とりあえず、その方をここに寝かせてください。傷を洗うので。宇髄さんは一旦部屋から出てください。服を脱がしますので」

 

「……おう」

 

 宇髄はそのまま風呂場から退出し、屋敷にいる看護師を集めてくる。しのぶにはそんなこと指示出されていないが、少し不安だったのだろう。しばらくして服を着替えた肩をかまれた少女としのぶと住み込みであろう幼い看護師が中から出てきた。

 

「宇髄さん。彼女を横抱きで治療室までお願いします」

 

「わかった」

 

 宇髄はひょいと彼女を持ち上げ治療室へと彼女を運んでいく。そして治療室の寝床へ彼女を横たわらせ、しのぶのほうを向いた。

 

「俺はもういいか」

 

「はい。ですが、逃げないでくださいよ? 免疫不全さん?」

 

「派手に嫁たちのところに戻りたいんだが」

 

「残念でした。先程も言いましたが、もう一度言いましょうか?」

 

「チッ」

 

 宇髄は治療室から退出する。やはり女性だけの空間は居心地が悪いのだろう。嫁たちにも申し訳ないのかもしれない。嫁たちにも。

 

 宇髄が治療室から出ていったのを確認したしのぶはゆったりとした口調で少女に話しかける。

 

「では。治療を開始しますね。お名前は?」

 

「……」

 

 しかし、彼女は一言も発さず、しのぶを笑顔で見上げるだけだ。先程までは気絶していたが、彼女の身の回りで色々としていたのと、朝が来て騒がしくて起きたのだろう。そのため、彼女にしのぶは質問したのだ。

 

「私の質問に答えることができますか?」

 

「……」

 

 しのぶは何度も彼女へ声をかける。笑いながらこちらへ視線を送る姿は何年か前に保護した義妹を彷彿とさせる。

 

「……私の質問に肯定か否定でお答えください。あなたはこの街に住んでいますか、いませんか?」

 

「……?」

 

 どんなに工夫しても彼女は笑うばかり。さすがにしのぶも疲れてきた。今、遠くの地域に鬼の遠征討伐に行っている姉を呼びたい。―――私は上手く人と話せないのかもしれません。そんなことを思うほどに。

 

 すると、少女はハッとしたように肩を怪我していない方の手を動かす。それは何かの動作を表しているようだった。

 

「……あ」

 

 その様子を見てしのぶは気づいた。彼女は無視をしているのではない。もしかしたら話せないのかもしれないのだと。

 

「……アオイ。紙と筆、もしくは万年筆を急いで持ってきてください。その間、私は治療をします。この状況で治療の許可をもらうのは不可能でしょう。まずはこの方を私は救います」

 

 先程の幼い看護師―――改めアオイはしのぶのその言葉にうろたえる。まだしのぶよりも若いであろう彼女が看護師として働くこの環境は傍から見れば可笑しいかもしれないが、決して児童労働ではなく、アオイ自身の決意であった。だから彼女も怪我をしている彼女を助けたかったのかもしれない。

 

「ならば私も……」

 

「いいですから早く。紙と筆を」

 

「は、はい!」

 

 結局しのぶに再び頼まれ、これ以上駄々をこねては患者の迷惑になると判断したのだろう、アオイは治療室から出ていく。それを見ながらしのぶは止血をした傷口を消毒をし、清潔な布を肩に置いて包帯を手際よく巻いていく。一通り治療が終わった後、先程部屋から出ていったアオイが十枚ほどの紙と万年筆を持ってきた。

 

 それを見た、治療をしているしのぶをじっと見ていた少女が紙と万年筆を欲しそうに手を伸ばす。

 

「動かないでください。今、お渡ししますから」

 

 アオイから紙と万年筆を受け取ったしのぶはゆっくりと少女の体を起こし、寝床につく食事用の机を用意する。そして紙と万年筆を彼女に渡した。それを受け取った彼女はせっせと紙に文字を書いていく。そして文字を書き終わると万年筆を置き、しのぶにその紙を見せる。

 

『私は生まれつき耳が聞こえません。そのため話すことができません』

 

 紙には綺麗な文字でそう書かれていた。それを見たしのぶはやはりそうだったか、というような顔をして万年筆を彼女から受けとり伝えたいことを書こうとした。しかし、彼女は万年筆を渡さず、また文字を書き始める。

 

『お腹がすきました。ご飯をください』

 

 彼女は意味が分からないことを書いた。この状況で。入院着を着用し、肩に包帯を巻かれたこの状態で、怪我のことを書かずにお腹すいた、と。

 

「……お粥を持ってきてください。後は私が対応します。ついでに宇髄さんも呼んできてください。どうせ、暇してますから」

 

「……わかりました」

 

 しのぶはアオイにそう指示を出し、彼女から万年筆を受け取る。無理やり抜き取ったというような感じではあるが。

 

『ご飯は今から用意します。それと、貴方の名前を教えてくれませんか。傷は痛みませんか』

 

 しのぶは紙にそう書き込んだ。それを見て万年筆をしのぶから渡された彼女は目を見開く。何か問題でもあったのだろうか。

 

『名前はありません。名無しの娘とでもお呼びください。傷は、昨夜の肩のことですよね。痛くないので大丈夫です』

 

 彼女から渡された紙を見て次はしのぶが目を見開く番だった。名前がないこと、そして傷が痛まないというのだ。

 

『そうですか。それならばよかったです。では、いくつか質問をさせてください。生まれつき耳が聞こえないというのならばどのように言葉などを学んだのでしょう』

 

 後天的に耳が悪くなったのならば、読み書きができるのはわかるが彼女は先天的。言葉を学ぶのには一苦労であるし、引き取り先、と書いてあることからおそらく多くの地を転々とする生活だったのかもしれない。さすれば、さらに言葉を学ぶことなど難しいだろう。

 

『説明するために長い文を書きます。することがありましたら私のことは大丈夫ですからそちらを』

 

 すると彼女は紙に悩みながらそう書いて新しい紙を下ろして黙々と文を書き連ねる。その様子を一目見たしのぶはお粥はまだか、宇髄はまだか、と覗きに来ていたアオイよりも幼く見える少女に質問する。その少女はその質問には答えなかった。時折、烏が飛んできてしゃべりだしたりしたが名無しの娘はそんなことを気に留めない。

 

 そして、宇髄がお粥を持って治療室に現れたその時、彼女はようやく書き終わったとしのぶの白い羽織をくいくいっと引っ張る。

 

 しのぶは先程まで会話に使っていた紙の端にお粥をどうぞ、と書いてその新しく彼女が書いた紙を見る。

 

「なんだそれ?」

 

「彼女は先天的に耳が聞こえず、音が分からないそうなので話すこともできないようなのです。ですから筆談をしていて。しかし、そのような方が言葉を学ぶことなど、この世の中ではかなり難しいはずですので、私は気になってどのように? と質問したのですよ。これはその答えです。宇髄さんも読まれますか?」

 

 彼女が黙々とお粥を食べている最中、宇髄はしのぶに話しかける。しのぶの持つ紙は何かと質問をすればこのように返ってきたので、一瞬混乱仕掛けたが、彼の頭は弱くない。すぐに理解をする。耳が聞こえなかったから昨夜、自分の声の大きさがわからずに静かに鬼に噛まれているだけだったのだろうと。

 

「おう。見せてくれ」

 

「一緒に読みましょう」

 

 そして宇髄としのぶは一緒に名無しの娘から渡された紙を見る。

 

『私は生まれてからしばらくして、耳が聞こえないとわかったので親から捨てられたのでしょう。実の親の顔も私は知りません』

 

 そのように書き始められていたその文章はまとめると以下のようなことが書いてあった。

 

 捨て子だったために様々な人の間で売り買いされた。その中で何回か藤の家紋の家は居心地が良かった。言葉は藤の家紋の家に売られた時に学んだ。他にも売られた家の中でも対応が良かったところで植物や医療などの専門知識を学んできた。昨夜は彼女のことを良く思っていなかった家主に追い出されてしまい、行く当てもなく彷徨っていた。

 

 ―――すべて読み終わって。

 

 二人はどうしようもない感覚に襲われていた。藤の家紋の家など、周知の事実や、その他の彼女へのひどい対応など。今、もきゅもきゅとお粥を頬張っている彼女は自分たちが想像をはるかに超えた経験を積んでいたのだ。ただ、心優しい両親が人喰い鬼に食われたとか、いじめられた末に昨夜追い出されたとかだと思っていたが、何件も売買されるのはもはや奴隷。彼女は壮絶な奴隷人生を送ってきたのだと気付く。

 

 それは家族を鬼に殺されたしのぶよりも、親の押し付けがひどいあまりに逃げだしてきた宇髄よりも捉え方によってはひどいものだ。

 

「……宇髄さん。私のところでは姉の許可がないと人を預かることはできません。おそらく姉は許可するでしょうが、医療知識の集約は効率的ですが、そこを攻撃されては大変なことになるでしょう。ですから……」

 

「……ああ」

 

 二人は紙を見たまま、彼女へ視線を向ける。その視線に気づいた彼女は匙を口に入れたまま、こてんと首をかしげる。

 

「……俺が預かろう」

 

「……よろしくお願いします」

 

 紙通りなら彼女に才能はあるはずだ。読むだけで植物や医療の専門知識を身に着けることができていて、紙に書かれた通りであればそれを活用する能力もある。それを踏まえても過去を踏まえても彼女をこのままにしておくことはいけないことだと二人は思ったのだ。

 

『俺の名前は宇髄天元。お前は俺の家に来い。派手に養ってやる』

 

 新しく紙を手に取った宇髄は万年筆でそのように書き記し、お粥を食べている彼女にそれを見せつける。

 

 彼女はお粥を吹き出した。

 

「……!? ごほッごほッ」

 

 彼女は咳き込む。そして急いで匙を置き、万年筆を宇髄から受け取って紙に文字を書く。

 

『意味が分かりません。こんな私を養うなど』

 

『俺は祭りの神だ。なんでもできる』

 

『どういうことですか』

 

『とりあえず、お前は俺について来いってことだ。地味な返事はいらねぇ。無理矢理連れていく』

 

『ありがとうございます、でいいのでしょうか』

 

 文字上では会話のようで会話じゃないようなやり取りが行われていた。それを覗いたしのぶは思わずため息をつく。

 

「宇髄さん。彼女に名前を。名無しの娘さんなどひどすぎますから」

 

「そうだな」

 

 会話が続かないなら会話の種をまけばいい。そうすれば会話は自然と方向性を戻すであろうから。そんなしのぶの考えは目の前の紙に破壊されるのであった。

 

『お前の名前は、ぬい。よくも悪くも人と人を縫い合わせたからな。人との関係を縫い合わせるってすごいことだしよ。今日からお前は宇髄ぬいだ。 四人目の俺の嫁だということを覚えておけ』

 

「はぁ?」

 

「……⁉」

 

 どちらにしろ会話は繋がらなかった。

 






やはり難しい……。

とりあえず、こんな感じで書いていきますので、これからよろしくお願いしますm(_ _)m

カナエ

  • 五体満足で生きててくれ
  • 戦えない体で生存ルートだよなあ
  • 原作通りに
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