東方被常識 あべこべなこの世界で俺は   作:自律他律

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 いきなりお詫びと言いますかお知らせを
 あべこべ要素は数話先になりそうです



序章 とある青年の幻想入り
暗闇の森、そして鬼ごっこ


 

 走る、走る。

 

 真夜中の雑木林。光源は頭上から僅かに差し込む月明かりのみ。

 平時であれば幻想的な風景だなぁと呑気に眺めるところではあるが、こんな差し迫った状況下でそんな悠長なことをする余裕なんてあるわけがない。

 前を見据えて、目を凝らし、うっかり木の根なんかに足を引っ掛けないように注意しながらも全力で逃げる。

 

 逃げる、逃げる。

 

 いつまで? どこまで?

 そんなの決まっている、『アイツ』が諦めるまでだ。

 その後のことはまたその時になってから考えればいい。まずは、身の安全を確保せねば。

 

 みっともなく酸素を求め、忙しなく喘ぐ自分の呼吸音が鬱陶しい。

 むせかえるような腐葉土の匂いもこの苛立ちに一役買っていた。

 ぬかるんだ地面、積もった落ち葉が足に余計な負担を強いている。

 

……何だ? 心なしか先程から周囲がますます暗くなっていくような──ああ、チクショウ!

 

 恐らくは、通りがかりの雲が月光を遮った所為だろう。急速にあたり一面が暗くなり、一寸先も見えなくなってしまった。

 

 真夜中の森の暗さがここまで恐怖を駆り立てるものだったとは知りたくなかった。

 足元の覚束無いままにこのまま走って樹木に激突してはたまらない。その場で身を低くし息を潜める。

 

 

 

 そうすること数分、呼吸を整えながら周囲を見渡してみる。

 だが、こんな真っ暗な状況では視覚的な情報はあまりにも頼りにならなかった。

 今度は、聴覚を頼って耳を澄ませる。

 

 …………。

 

 聞こえてくるのは木々が互いに擦れ合う音と虫の鳴き声のみだ。

 

 ここまで苦労して逃げ回ったのだ、きっと『アイツ』は俺を見失ったのだろう。

 そう思い、安心してほっと息をついた。

 

 

 

──しかし、

 

 

 

 

「あら、鬼ごっこはもうおわり?」

 

 

 頭上から、声をかけられた。

 

 目を向けるとそこには、宙に浮かびこちらを見下ろす少女の姿があった。

 闇夜を凝縮したかのような、黒のワンピース。アニメやゲームや映画で見るような、ともすれば作り物と見紛う程の鮮やかなブロンドヘア、そこに赤いリボンを付けていた。

 そしてなによりも印象的なのは、妖しい光を湛える赤の双眼だった。

 無邪気で無垢なその瞳。初めはそれを、見た目相応の幼さの現れだと感じていたのだが。

 今こうして見合っているとあながちその感想も間違いではなかった、となんとなく理解することが出来た。

 

──アレは、腹ペコな子供がご馳走を目の前にした時にする面持ちだ。

 

 『これは全て私のモノなのだ』、と。

 

 そういう目を、あの可憐な少女が、この俺に向けている。

 この事実を前に、ただただ恐怖することしかできなかった。

 

 

 

 そもそも、此処は一体どこなのか。何故あの少女は宙を浮いているのか。何故俺に襲いかかってくるのか。先程から訳の分からない事ばかりだった。

 

 どうしてこんな状況になってしまったのだろうか。

 

 半ば自棄になって、この突発的な逃走劇が始まるより以前のことを。

 真っ暗闇の森の中で、俺が人喰い少女に追い詰められるまでに至ったこれまでの経緯を思い返す。

 

 

 

 

 

 ••••••

 

 

 

 

 

 

「あ?」

 

 ふと気がつくといつの間にか薄暗い雑木林で立ち尽くしていた。辺りを見渡しても当然木々が立ち並ぶのみで何も変わったものはない。

 服装はいつも通りシンプルなもの、普段から外出時に持ち歩くトートバッグ、その中にはいつも持ち歩いているスマホと財布が入っていた。

 

 いつもと同じ格好であることに安堵し、そしていつもと違う場所にいることに違和感を覚えた。

 

 どうして、俺はこんな森の只中で突っ立っているんだ?

 

 記憶を整理してみる。

 確か、大学の長期休暇の合間を利用して趣味の心霊スポット巡りを計画して──そして実際に県を跨いで数カ所巡って──そうそう、『神隠しの森』という、オカルト掲示板で取り上げられていた場所目掛けて移動していたんだった。

 

 そして──そして。

 その後の俺は、一体何をしていたのだろう?

 

 懸命にその後の記憶を掘り起こそうと試みたのだが、残念な事にそれ以上は思い出せそうになかった。……ただ、一瞬だけ刺すような痛みが脳を襲ってきただけだった。

 

 

 

 

 

 どうやら考え込んでも、事態は良い方向へと進みはしないようだ。

 

 こういう非常時に頼れるものは、とスマホを起動させたが圏外、GPSもワールドワイドに旅行でもしているのか各地を転々としているのを確認して、文明の利器が役に立たないことを悟った。通報や知人との連絡を試みても当然何処にも繋がる事はなく。

 

「あれ、もしかして本格的にやばい?」

 

 それから森を当てもなく彷徨うことしばらく、すっかり日が沈んでしまった。

 俺はスマホのライト機能と仄かな月明かりを頼りにして、ひたすらに進む事しか出来なかった。

 

 

 

 無言で、当てもなく薄暗い森の中を彷徨う。電力節約のため、気晴らしにでもと陽気な音楽すら流せない。このままずっと歩き続けないといけないのか?

 

 不安が加速度的に膨らんでいる。

 心細くなる一方だった。

 

 

 

 問題の少女と接触したのは、しばらくそうして進んで行った後のことだ。

 

 当初、童話から抜け出してきたかのような風貌の少女を見かけた時は、肉体、精神共に疲弊したせいで幻覚でも見ているのかと勘違いしてしまった。

 そして、会話ができること、自分の頬をつねることで今見ているものは本物で夢幻の類ではないと確信し、俺は歓喜した。

 

 やっとここを脱出できる手がかりを見つけた!

 

 一気に不安が解消され、気が緩んでしまったせいか。

 

 

 

 俺は──

 

 どうして子どもがこんな遅い時間に一人森を歩いているのかを疑問に思わなかった。

 明らかに浮世離れした髪、目の色、装いなどから異常さを感じ取れなかった。

 子どもが使用するにはまだ早いであろう、真っ赤な口紅の不自然さに気づかなかった。

 そして、出会った当初から少女が後ろ手に隠していたモノに対して、意識を向けなかった。

 

 俺は、知らなかった。

 その少女が幻覚や夢幻の類であった方が、ずっとマシであったことを。

 

 

 

 

 

 少女は出し抜けにこう質問してきた。

 

「ねえ、あなたは食べていい人間?」

 

 彼女の手は欠損した人の腕を掴んでおり──それは赤い水滴を垂らしながら、だらしなく揺れていた。

 

 

 

 

 

 そこからは、ただあの人喰い少女から逃れたい思い一心で、真っ暗な森を駆け抜けた。

 スマホもバッグもどこかに落としてしまった。あるのは自分の身一つ。ポケットにも何も入っていない。

 

 全力で逃げ続けていたのだが、唯一の光源である月明かりがなくなってしまい、こうして追い詰められてしまった。

 

 

 

──たった今、逃走劇の幕が降りようとしている。

 

 

 

 俺は人喰い少女を見上げながら思案する。

 何とか息が整ってきたが、

 

……駄目だ、この暗闇じゃこの場を凌げてもろくに逃げられない。

 

 アイツはそれを理解しているのか、上からゆっくりと近づいて来る。

 これまで非凡な人生を送って来た自覚はあるが、ここまで明確に命の危機を感じ取ったことは初めてだ。

 

 危機的状況に陥った時。

 今まではどうやって切り抜けてきたんだっけ?

 

 そう思うと、唐突に思い出される事があった。

 

 

 

──そうだ、なんで今まで逃げる事しかしてなかったんだ。恐ろしさのあまり、自分が反撃の手段を持っている事を忘れていたのか。

 

 『恐怖! 真夜中の森に現れる人喰い少女』などというある種“オカルト”な手合いには、過去俺は何度も半強制的に立ち会わされてきた。

 

 そう考えると、あの少女はむしろ俺の得意分野だ。

 

 

 

 ふう、と息を吐き。

 自身に流れる“力”を、右手の人差し指へと凝縮させる。

 イメージするのは一発の弾丸だ。

 

 

 

 何故、心霊スポット巡りなどという場合によっては本当に危険な目に遭いかねないものを趣味に出来るのか。

 それはこの“霊力”を幼少の頃から認識し、超常的な存在に対する自衛の手段として活用できるのではと思いついていたからだ。

 

 

 指先を、降りてくる少女へと向ける。

 

 少女は、そんな俺の行動を見て可愛らしく小首を傾げた。

 

 

 正直、子どもの顔を吹き飛ばすのは本当に気が引けるのだが……これは身を守る為だ。仕方ない、か。

 生命の危機を察知しアドレナリンが脳内で放出されているのか、これまでにない“力”の高まりを感じる。

 

 

──霊力の弾丸を、放つ。

 

 

「喰らいやがれ!」

 

 

 それは、自分の放てる最大火力の弾丸だった。

 それは狙いを過たず少女の額に吸い込むように命中した。

 そして──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いったーい!」

 

 そしてその少女は赤く腫れたおでこを抑えながら、森の暗闇へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

──や、やったか?

 

 

 しばらく、彼女が去って行った方向に指先を向けて、照準を絞っていた。

 

 戻ってくる気配はない。

 負わせた怪我が想定よりも遥かに軽微で、再び襲ってくるのではと不安になるが、どうやら撃退には成功したみたいだ。

 

「…………はぁ」

 

 窮地を脱したのだと理解すると一気に張り詰めていた緊張がほぐれていき、遂には腰が抜けてしまった。

 

 そのまま近くの樹木へずるずる体を預けると、自然、夜空を見上げる形になった。美しい光景を前に一息つく。

 雲一つない満天の星空には、綺麗な月が浮かんでいる──あれ? ()()()()()

 

「なんだ、全然明るいじゃないか」

 

 逃走中、急に辺りが真っ暗になったのは分厚い雲が月を遮ったからだと思っていたのだが、どうやら違ったらしい。

 

 じゃあ先程の真っ暗闇の原因は何だったんだ…? なんて疑問に思っていると、途端に先程の決死のやり取りが思い返された。

 

 さっきの一撃は紛れもなく自分の人生で最高の威力を秘めていた。

 俺の全力の攻撃をもろにくらって涙目程度で済ませるとは。あの少女はさぞ、強力無比な化け物だったに違いない。

 もし、こちらの攻撃でむしろ激昂して襲い掛かられていたら──

 

 今頃、彼女に美味しく戴かれていたに違いない。

 

 そう考えると逃げている際に感じていた恐怖が再び蘇ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 脅威を退けて万々歳だと思っていたが、結局何一つとして事態が進展していないことに気がついた。

 

 ひとまずこの森から脱出しなければ。

 

 何の装備も無しに野宿など正気の沙汰では無いし、このまままごついていては復帰してきた人喰い少女にまた捕捉されてしまうかもしれない。

 

──あの少女が持っていた人の腕って本物だったのかなあ。

 もしかしたら精巧な贋作だったかもなあ。いや現実から目を逸らすな、アレは確かに本物だったぞ。などと、ぼんやり考えながら歩いていると。

 

「……!」

 

 前方から、木陰を貫くようにして一筋の灯りがチラリと差し込んで来た。

 自然と駆け足になりながら更に近づいてみると、いつの間にやら俺は鬱蒼とした雑木林から抜け出せていて。

 

「あれは、村か?」

 

 広々とした田畑の先で、何やら前時代的な木造建築が立ち並んでいた。

 時代劇のセットか何かと思ったがどうやら違ったようだ。近付いてみて分かったがそこには確かに、人の営みの賑々しい気配が感じられる。

 実際に、着物を着用する人たちの往来も遠目からではあるが確認できた。

 

 もしかすると、俺は日本の山奥にある超のつく田舎の村に来てしまったのかもしれない。

 そんな予感を抱きながらも、村の外で先程からこちらに視線を向けてくる門番らしき人に声をかける。

 

「こんばんは、夜分遅くにすみません。変な質問かもしれないですけど、ここは何県の何市でしょうか。どうやら道に迷ってしまったみたいで──」

 





 このオリ主の最大火力について補足説明
 まずどの作品でも良いので東方を起動します 体験版でも可
 自機は誰でもいいです 早速ゲームスタートしましょう
 ショットボタンありますよね、それを一瞬だけ押します
 ちょろっとだけ弾が出ますよね
 それがオリ主の全開火力です 凡人なのでそんなもんです

 以下 ちゃんとした後書き
 オリ主の名前を出せなかったことに驚き
 つい出来心で読み専から転向しましたが、小説って表現するのが大変でぶっちゃけ後悔しています 見ると書くでこんなに差があるとは、やってみないと分からんもんですね(東方でルナノーコン動画見て楽勝そうだと手を出して火傷するイージーシューター並感)

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