あとEXの弾幕がエグ過ぎて禿げそう
今回あまり話が進みません 反省してます
ここまで案内してくれた妹紅に礼を言って、飛び去っていく彼女へ向けて手を振る。
『永遠亭の薬の調達』、上手く達成しないとな。
迷いの竹林の奥に存在するこの屋敷を見ただけで、ここが噂に聞く化け物が巣食う場所だと察知出来る者はいないだろう。
あんまり詫びとか寂びとかを普段から嗜んではいないので、あくまでふんわりとそう思った程度であるのだが、純和風の雅なお屋敷、といった感じだった。
そこの玄関口にある引き戸をノックして呼びかける。
「すみません、どなたかいらっしゃいませんかー?」
そう声を張り上げて反応を窺う。が、すぐに返事はやってこない。静謐なその雰囲気から、そもそも人の気がないような印象を受けた。
チラリと庭先に目を向けると数匹、いや数羽か。
数羽のウサギが呑気に草を食んでいる。
そうか。
ここに来るまでの飛行中に時々見えた、白い塊のようなもの。その正体はウサギだったようである。
迷いの竹林にはウサギが生息しているのか。何回も妹紅のところに足を運んでおきながら初めて知った事柄だ。
来訪者に気がついたのか、そのうちの一羽がぴょんぴょこと跳ねてこちらへ向かってくる。
きっと人懐っこい性格の持ち主なのだろう、と当たりを付けて、腰を低くして両手を広げウサギを抱き止める体勢を取る。
ウサギはそんな俺に一瞥もくれずに、すぐ横を通り過ぎて竹林の中へ消えていった。
……なんか悲しい。
聞こえる音が竹林のさざめき程度なので、その悲しさに拍車がかかる。今の無様を見て、笑ってくれる人すらいないとは寂しいもんだ。
残ったウサギたちを眺めながら時間を潰しても、誰も出てこない。
再度呼びかけて、もう少し待ってみる。
……うーむ、今日は出直した方がいいかもな。
全然人が来る気配がしない。
もしかすると、このお屋敷は俺のような来客を想定していないのではなかろうか?
なんとなく考えた事なのであるが、あながち間違ってないような気がする。というか大正解なのでは、という気がしてならない。
まず、竹の成長速度が凄まじく、数日前と全く違った表情を見せる迷いの竹林という立地。徒歩での移動だと、かなりの確率でその名の通りに迷ってしまうだろう。
そして、幻想郷において空を飛べる人間という存在は思いの外希少である。俺の知り合いに飛べる者たちが多くて錯覚しそうになるが、人間の里に限定すれば宙に浮けますよというやつは滅多に居ない。
永遠亭の詳細な位置、それの特定も困難を極める。単に『迷いの竹林にあるらしい』というふんわりとしたヒントしか存在せず、そこへ辿り着く為には場所の特定に莫大な時間を消費するだろう。あまり現実的ではない。
そうするよりも、最初から位置を知っている人に頼る方が賢いだろう。
つまり、空を飛べる事と、妹紅のような永遠亭の場所を把握している人と知り合っている事。この二つの条件を満たさないと、ここへと辿り着く事は非常に難しいと推測できるわけだ。
それらの条件全てを満たしている者の数は、かなり絞られるだろう。
さらに、そこへ『永遠亭には化け物が住む』という悪評までついてくると考えると。
……うん。間違いなく不意の来客なんて想定してないよ、ここ。
想像は確信へと変貌する。
そうすると、俺がここでいくら待っていても誰も出てこないという事になる。もしかすると居留守をしていて、自分の事を
その可能性は、否定出来ない。
ちょっぴり虚しく思ってしまう。
ああ、あの薬売りの少女と接触出来ないとは。ガッポリ稼ぐつもりだった心算が狂って残念である。
また明日試してみるか、と気持ちを切り替えていると──
「おや、こんな辺境に来客とはホントに珍しいウサ」
背後から、そんな可愛らしい声がする。
振り返るとそこには、一羽のウサギを抱えた女の子がいた。
黒い癖っ毛に、白いウサギの耳。ピンクのふわふわした半袖のワンピースに、小さな人参のネックレスを首にかけている。どういう訳か、外から来た様子であるのに、靴の類を履いていない。裸足だ。
……というか、何だ?『ウサ』って。妙な語尾の付け方だ。
まじまじと観察してしまう。
彼女の抱えているウサギ、確証は無いがさっき俺に気付いて迷いの竹林へ向かっていたウサギではないだろうか。
そして、彼女の愛嬌ある顔に浮かべているその表情。見た目相応の幼さは全くなく、寧ろ大人び過ぎていると感じるのは、果たして錯覚なのだろうか。
喋り方も歳が見たまんまなのならば、少しばかり呂律が回っていなくてもおかしくないのに、しっかりとしたものだった。
観察しているのは向こうも同じらしく、興味深そうにこちらを観察している。ほんの少しだけ、竹林が風で奏でる音ばかりが辺りを支配した。
いや、こんな所で互いを見合っている場合ではない。
ここへは、薄紫の薬売りさんに会う為にやってきたのだ。
キリがなさそうなので、俺から話しかける事にする。相手が背の小さな子供という事で、反射的に屈んで目の高さを揃えようとしたが、これをグッと堪える。
見た目ではその者の年齢を断定出来ない。幻想郷で学んだ事柄を生かす時だ。
「えーと、どうも初めまして。私は藤宮慎人という、人間の里で運送屋を営んでいる者です。あー、現在、人里では永遠亭の事が評判となっていまして、その薬を持ってきて欲しいと依頼を受けたのです。宜しければ、ここの薬師さんと交渉出来ませんでしょうか?」
つっかえながら、彼女に俺がどういう用件でここに来たのかを明確に伝える。
それを聞いて、ウサギ耳の少女は納得したような表情を浮かべた。
「ここにわざわざ人が来て薬を求めるって事は、鈴仙の自慢話はホントだったウサか」
──本当にその語尾なんだな、ウサって。
話が上手く伝わった安心感よりも、ついそっちの方に意識が向いてしまう。
「わかったウサ。ここの薬師の元まで案内してやるウサ」
妙な語尾を連発しながら、ウサギを解放してガラガラと玄関の扉を開け、俺を招く手の仕草をした。
どうやら、うまく依頼達成の第一歩を踏み出せたようだ。
安堵しながら、とてとてと歩く彼女の後についていく。
少し歩いたところで少女は
「ああ、あとその変な敬語はやめた方が良いよー。慣れてないのがバレバレで、聞いてるこっちが恥ずかしくなっちゃうから」
俺の言葉遣いの拙さを指摘してきた。
「そ、そうですか。んん、──いや、そっか。あんまりこういうのに慣れてないってバレてたか。こっちも、その方がやりやすいから助かる」
口調から、完全に仕事経験の浅さを見抜かれてしまっているようだ。ほんの少しだけ恥じ入ってしまう。
そして、ウササとほくそ笑む彼女を追いながら確信する。
間違い無い。このウサギ耳の少女は絶対に俺よりも年上だ。しかも、多分、一筋縄にはいかない厄介な性格をしている。
“
因幡、そしてウサギときたら、真っ先に『因幡の白兎』という昔話を連想してしまう。まさか、彼女がその白兎本人だという訳ではあるまい。
確か、その話って日本神話とかの物凄く古〜い時代の出来事だった筈だ。何百年も前から活動していたという知り合いが俺にも居ない事も無いが、それにしたって流石にスケールが違いすぎる。
きっと、その昔話にあやかって名乗っているだけなのだろう。
彼女と一緒にだだっ広い廊下を歩きながら、永遠亭の奥へと進んでいく。
妹紅の警告通りに、玄関先で用事を済ませてさっさと帰りたかったのだが、そうは問屋が卸さないという事か。
……噂の“化け物”とエンカウントしなければ良いのだが。
そう思いながら、只々廊下を歩いていく。左右の障子や屏風には、和風な外観と違わない見事な装飾がなされている。一番多く見て取れるのは、“竹”だった。
迷いの竹林の中にあって、さらに内装まで竹づくしだとは、永遠亭の主人は随分と竹がお好きらしい。
そういえば、最近読んだ日本昔話の中に竹に関するお話があったんだよな。
題名は──
数ある日本昔話の中でも指折りの知名度を誇るそのタイトルをはっきり想起すると同時に、俺の側面の屏風がすうっと開いた。
物音に気付いてそちらに目を向けると、一人の女性が丁度その部屋から出てきたところのようだ。
軽く会釈をして通り過ぎようとして、その女性の顔を視界のど真ん中に収める。
──絶世の美少女が、そこに佇んでいた。
••••••
『永遠亭に関する悪評を払拭させる手立ては、本当に存在しないのかしら?』
長く、永く、生きてきた年の功の為か、“彼女”からそんな相談を受けていた。その時は、『私より長生きしてるアンタがお手上げなら、私に分かるものさね』と、煙に巻いた記憶がある。
火の無い所に煙は立たぬ。姫様の存在を天狗に嗅ぎ付けられた時点で“詰み”だった。
天狗の面白おかしく脚色された記事をもとに広がった噂は、私や永遠亭の面子で弁明したとしても、逆にその悪評を加速させる結果にしかならない。
幻想郷の御多分に洩れず、永遠亭には
何やら鈴仙が色々試している様子だけど、上手く行っていない事は彼女の暗い表情から明らかだし。
しかし、最近はいつの間にか鈴仙の表情は一転して明るいものとなっている様子だった。
落とし穴に嵌ってもニヤニヤするのをやめなかったのを見たその時は、自身の能力に当てられでもしたかねえ、と本気で心配した。
私の不思議そうな顔を見て、鈴仙は頼みもしていないのに語り始めた。
曰く、人間の里では私とお師匠様の薬が大人気になっている、とか。これはお師匠様の薬の素晴らしさと私の弛まぬ努力の成果なんだ、とか何とか。
そんな事を調子付いたようにベラベラと自慢していた。──私謹製の落とし穴に嵌ったままの状態で。
その時は、「遂に気が狂ってしまったウサか?」と聞き返してやった。
──人間が、
部下の兎からそう知らされた時、初めは迷いの竹林の入り口辺りに居を構える白髪の蓬莱人の事なのだと思っていた。
いんや、あの蓬莱人は今朝までうちの姫様と久しぶりに殺し合いをしていた筈。
思えば、一時期は数日おきにやり合っていたというのに、最近ではその頻度がめっきり少なくなっている。
向こう側に、憂さ晴らしになる
そう考えると、その日のうちにまた殺り合うなんて事は流石に考えにくかった。
となれば、何時ぞやの時と同じく異変を解決しに来た奴らが、また何か喧嘩をふっかけてきたのかな?
聞いた限りだと恐らくこれも違うか。玄関先で呼びかけて大人しく待ち続けるなどという常識的な行動を、あの
とすれば、本当に見知らぬ何者かがやって来たという事になる。
永遠亭には姫様という幻想郷屈指……いやぶっちぎりで一番の(明後日の方向に)容姿が飛び抜けた者が居るというのに、命知らずな奴も居るものねー。
少〜しだけ興味がそそられた。
せっせと鈴仙の為に罠を拵えるのを中断して、その正体不明の来訪者の姿を拝んでもいいかもしれない。
「──確認しに行ってみるかー」
逡巡したのはほんの少しだけ。僅かばかりの好奇心に駆られ、報告してきた部下を抱えながら永遠亭の方へと向かう。
そこに居たのは、なんて事ない平凡な青年だった。
確か、普段は来客をお出迎えする鈴仙は人里へ薬を売りに行っていて今は不在の筈。昨日仕掛けた地対空トラップが発動した形跡があったから間違いない。
待ち惚けを食らっている青年の後ろ姿を見て、少々気の毒に思う。
『永遠亭に関する悪評を、払拭させる手立ては無いのかしら?』
いつかの相談事が思い出された。
このまま彼が帰ってしまえば、永遠亭の悪評はずっとそのまま。
私が対応した所で嫌な顔をされるのは明白なんだけど……せめて、せめて誠心誠意対応すれば、少しは悪評を撤回出来るのかな?
近い将来人里と永遠亭の関係性が悪化して、部下の兎達が害されてしまうようになる──という可能性を完全には排除し切れないこの現状。
長期的な視座からしても、今ここで目の前の人間に対して親身に接するのは決して悪くない選択の筈。
お師匠のあの表情も、見ていて気持ち良いものじゃないしね。
ここは身体を張る時かも。と、少し気負って男との対話を試みた。
青年は私の容姿を直視しても、ただ好奇心に突き動かされるように観察してくるのみで、堪えきれず表情を歪めるといったような正常な反応は一切しない。
それに気付き、警戒心が刺激される。
札付きの永遠亭に単身乗り込んで来るだけあって、どうやら相当な場数を踏んでいるらしい。
でも、伊達に此方も長年にわたって生きていない。目の前の男が一体どれほどの海千山千の人物なのか、観察して見抜いてやる。
そう考えて、永年培ってきた洞察力でその男を値踏みする。
けれど、
……あれ? 本当に変わった所が無いわね?
下等な妖怪避け目的か、呪符を幾つか携帯しているみたいだけど、それ以外はホントに普通な人間という雰囲気がする。
そしてその予感は、男が喋り始めた時点で確信に至った。
彼の纏う雰囲気や仕草、表情など、見れば見るほど平々凡々という印象を受ける。
引き上げていた警戒心を緩めて、内心ほっと息をつく。良い意味で拍子抜けしていた。
いやはや極々平凡な一般男性が、どうやってここまで辿り着く事が出来たのやら。
まぁいっか、そんな事は。
永遠亭に来客の姿あり。異変の時に乗り込んできた連中や、月の都のやつらを除いたら、もしかすると初めての事例なのかもしれない。
男を永遠亭に招き入れる。
鈴仙に会いに来たようだけど、今は不在。なので、代わりにお師匠の部屋へと案内する。彼女はもう物好きな客の来訪に気が付いている筈だしね。
彼、藤宮という運び屋が薬を手に入れて、それを人里でばら撒いたら、永遠亭の悪評は少なからず抑えることが可能な筈。
鈴仙や藤宮の話では、すでにその兆候が見られるみたいだし。
悪戯好きな性分の持ち主としては、鈴仙の個室にでも案内して困らせたい所だけど、ここは素直に彼を手伝ってあげよう。我慢、我慢。
全て順風満帆に事が進んでいる。その筈だったのだが──
げげっ、なんでこんな所に居るのよ!?
男を引き連れて長い廊下を歩いていると、丁度部屋から出てきた姫さまとバッタリと出食わしてしまった。
いつもは永遠亭の最も奥にある寝室に篭って滅多に動かないというのに、一体どういう風の吹き回しなのか判らない。
さらに不幸な事に、『目を逸らして!』と彼に咄嗟の注意をする前に、しっかりと二人は顔を見合わせてしまっている。
これは、非常に不味いことになったわ…!
いくら私の顔を見て平気そうにしていたあの男でも、姫様の顔はその酷さの度合いが桁違いなのだ。今度こそ耐えられまい。
この私ですら気合を入れないと直視出来ないあの容姿を、ああも近くで見つめてしまったら──
最悪の場合、誇張でも何でも無く本当に死んでしまう──
姫様の事も気がかりだけど、今は人命優先。急ぎお師匠の部屋まですっ飛んで、事情を説明してここまで呼んでこなくては!
その場に二人を残したまま、因幡てゐは慌てて救援を呼びに行く。
──そう、二人をその場に残したまま。
永遠亭の薬を目当てにやって来た青年が一人。
永遠亭の主である少女が一人。
ばったりと出会ってしまったその二人は、未だその両の眼を逸らさずにお互いを見つめ続けていた。
彼、彼女らのその心中や如何に。
他の要因が絡んでいたのもかもしれませんが、実際に視覚的なショックが原因で人がお亡くなりになってしまったという実例は皆無ではないようです
原因はとあるホラー映画だったらしいのですが、私、劇場で件の映画をリアルタイムで観てたんですよね 確かに恐ろしいなぁとビビりながら鑑賞していましたが、あくまでエンタメとしての範疇に留まる程度でした
同じモノを見たとしても、人によってその反応は天と地の差があるという事が身にしみて分かる事柄でした
もしかすると自分もそうなっていたかもと想像すると恐ろしいですよね