東方被常識 あべこべなこの世界で俺は   作:自律他律

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 目を通していて『これは読み方パッと分からんやろなー』というような漢字にはルビを振っております

 何とこれで作者の大体の国語力が測れちまうんだ



第三章 竹藪焼けた 誰そ彼に
巫女と星の魔法使いとの非日常的な日常


 

 

 空前の永遠亭の薬ブームが一旦の落ち着きを見せ、しかし着実に信用を得られるようになり、置き薬の定番として人間の里に定着してきた今日この頃。

 

 相も変わらず俺は博麗神社に通い詰めて、なんとか大結界の穴から外の世界に戻れないものかと頻繁に試行を繰り返していた。

 

 

 

 

 

 ここは、鳥居を潜った先の不思議空間。

 

 そこをしばらく歩いていると、いつもの如く『常識と非常識の境界』に身体を引っ張られて、抵抗虚しく幻想郷へと引き摺られ戻っていってしまう。

 最早お馴染みといった感触だった。「あ〜れ〜」と叫んでその残響の余韻を楽しむ程度には、俺はすっかりこの現象に慣れてしまっていた。

 

 

 

 

 

 目を開けると、『知ってた』という顔で俺を迎える紅白巫女の姿があった。

 

「お帰りなさい、藤宮さん」

 

「おう、ただいま戻りましたよっと」

 

 いつの間にかお決まりとなっていたこのやりとりも、一体何度目のことだろうか。

 通算何回目の挑戦か十回目までは数えていたのだが、それ以上は面倒になって計上するのをやめてしまっていた。

 もはや博麗大結界を越えられなかったことに関しては、全くと言っていいほどにショックを受けていない。

 一度たりとも、八雲紫から『貴方は完璧に幻想側に寄りましたよ』とお知らせが来ていないのだから当然のことなのかもしれないが、それでも故郷に帰りたくて試してみたくなるのが人心というものであろう。

 

 ちなみに、霊夢に頼み込んで度々博麗大結界に穴をブチ開けてもらっているのは、完全なる俺の我儘からである。

 ワンチャン何かの拍子で外に帰れないかなーという運試し感覚でやっているのだが、現状、巫女さんからもスキマ妖怪からも苦情が来ていないので多分問題はないのだろう。

 霊夢に限れば、お土産とお賽銭で黙殺させているだけなのでは? と客観的な自分の指摘する声が聞こえてこない事も無いが、当の本人はさして気にしていなさそうだからこれもまた問題ない筈だ。

 

 

 

 今日の博麗神社には、俺と霊夢以外にも人の姿があった。

 

 

 

 そもそも、普段から博麗神社に居るのは霊夢一人だけという訳ではない。

 偶にお椀を被った小人がやって来る事もあるし、博麗神社の頼もしい(又は可愛らしい)門番である狛犬の少女は今も入り口で外を見張っている筈だ。

 床下に居住スペースを作った妖精がいると聞いたこともある。

 

 人も妖も関係無い。『参拝客の来ないうらびれた神社で一人寂しく貧乏生活を送っているのだ』という初めて会った時に抱いていた勝手なイメージとは対照的に、この巫女さんは、意外と他者との縁というものに随分と恵まれているようだった。

 

 

 

 縁側に腰をかけながら、俺と霊夢のやりとりを『面白いものを見た』という表情で眺めている白黒の魔法使いも、その内の一人。

 

「またダメだったなー。藤宮、ドンマイだぜ」

 

 そんな男勝りな口調で声をかけてくる少女の名前は、“霧雨(きりさめ) 魔理沙(まりさ)”という。

 

 多分、霊夢と殆ど同じ年齢だろう。

 ウェーブのかかった金髪に、活発そうな印象を受ける表情豊かな振る舞い。

 白いリボンの付いた黒地のつばの広いとんがり帽を被っていて、黒い服に白いエプロン姿という如何にも魔女らしい服装。

 ここにやって来たときに跨っていた箒を柱に丁寧に立てかけているあたり、ちょっとした育ちの良さが見え隠れしている。

 

 そして俺は彼女が付き合い易い、気の良い奴だという事を知っていた。

 

 

 

 

 

『誰だお前。──いや、言わなくていい。この妖怪神社にお賽銭を投げている時点で、お前の正体は丸っとお見通しだぜ』

 

『…ええっと、どちら様でしょうか?』

 

『ふっふっふ、私は霧雨魔理沙。巷では天才魔法少女とも呼ばれている(大嘘)。この名をその胸にしかと刻んでくれてもいいんだぜ? 異変の黒幕さんよぉ!』

 

『ん? 霧雨って確か、てか何を持って──』

 

『恋符! マスタースパーク!』

 

『え、ちょ待、ぬわーーーーっっ!!』

 

 大雑把であるが、彼女との初邂逅は大体こんな感じだった。

 博麗神社を参拝していると、突然空から流れ星のように降って来て、その数秒後には何を思ったのか突如として攻撃してきたのである。

 咄嗟に横へひとっ飛びして何とか奇跡的に直撃は免れたのだが、その際に背中に括り付けていた風呂敷包みが犠牲になってしまった。

 

『あ、霊夢へのお土産が』

 

 そう口に出すとほぼ同時に、視界の端にふらっと立ち上がる巫女の姿を確認する。

 彼女はそのまま天才魔法少女?へとゆっくりと歩みを進めながら、一言だけ発した。

 

『私のもん(折角の貢物)に、何してくれてんのよ!』

 

 わお、俺のことを指して『私のもん』だなんて随分と懐かれてしまったなぁ──などと盛大に勘違いしながら、片手にお祓い棒、もう片手には退魔の御札という臨戦態勢を取って魔理沙に襲いかかる巫女の姿を戦慄しながら眺めていた。

 

 その時の霊夢の浮かべる形相は、途轍も無く恐ろしいものであった。鬼巫女、なんて単語が思い浮かぶほどである。

 

 ある程度その荒ぶりようが沈静化してから白黒の少女に事情を聞いてみると、最近のやたらと羽振りの良い霊夢の様子から、何かしらの異変が起きているのではないか──と、彼女は以前から推理していたらしい。

 この神社に一般人の参拝客が来るなどまずあり得ないのだから、参拝する俺を見て『間違いない、アイツが黒幕だ!』と決めてかかったのだという。

 

 他人から見たこの神社の評価ってやっぱりそんなものなのか、とちょっぴり悲しみを覚えた。

 

……何というか、猪突猛進と言うべきか。

 

 きっと本質を突いている訳ではないと何処か悟りつつも。

 彼女に対して、俺はそういう理解を示した。

 

 その後、お互い酷い目に遭ったけどこれからは仲良くしようなという奇妙な口約束を交わし、現在では気軽に軽口を叩き合える仲までになっていた。

 一回りも年上な男性と相対しては多少なりとも物怖じしてもおかしくないと思うのだが、彼女にはまったくそういった様子は見受けられない。

 慣れているのか何なのか(これは霊夢にも言える事か)──ともあれ出会い方こそ最悪に近かったがそれでも現在良好な関係を築けているのは、ひとえに彼女の持つその明朗快活な性格のお陰なのだろう。

 

 

 

 

 

 

「というかなんだよ、今の熟年夫婦みたいなやり取りは。かなり親しいみたいだなー、ちょいと勘繰りたくなるなー」

 

 いつものように元気そうな様子で話しかけてきた少女に視線を向ける。

 その揶揄(からか)い成分たっぷりな言葉をどう受け流そうか思案して、結局別の話題を口にすることにした。

 少し看過できないものが目に入ってきたからだ。

 

「魔理沙、その手に持ってる煎餅は俺が霊夢に差し入れたやつだよな? いつ開封したの?」

 

 よくよく見ると、彼女の手には霊夢にあげた筈のお土産が握られていた。

 

 

 

 最近は藤見屋としてのお仕事や八意先生の治験協力のお陰で懐がとっても暖まっているので、少しだけお高めのものを持参品としてチョイスしていた。

 この煎餅は、『妖怪の山』にある『玄武の沢』で採れた海苔を使用しているらしい。

 前に依頼で『霧の湖』まで飛んで行ったことがあったが、確かその湖の水は玄武の沢から流れているのだとか。

 

 幻想郷の地理についての本を読むことで得られた知識だ。

 

 そういえば玄武の沢も、妖怪の山も、未だに足を運んだ事がない。もし俺のような戦闘力がゴミなやつでも身の安全が確保できるなら、いつかは行ってみたいものだ。

 結局、人間の里中心の活動に留まっているのが現状だ。まぁこればっかりは自分が非力な人間である事を恨むしかない。

 リスクを考慮しての妥当な結果だった。身の安全の確保に固執して、里に引き篭もっていないだけまだマシだと思っておこう。

 

 

 

 魔理沙はバリバリと煎餅を一枚食べ終えてから、やっとこちらの質問に答えた。

 

「いつ開封したかって、そりゃお前が鳥居入って戻るまでの間に決まってるだろ? ……ああ、私を責めるのならお門違いだぜ。なんせ開けようって言い出したのは霊夢なんだからな」

 

 そうなの? と霊夢に視線を向ける。

 

──その手には魔理沙と同じく一枚の煎餅があった。既に二口ぶんくらい欠けている。

 

 え、さっきからずっと持ってたの?

 全然気付かなかったんだけど。

 

 彼女はむっとした表情をして魔理沙の意見に反論する。

 

「何しれっと嘘ついてるのよ。最初に『もう待てないから食べちゃおう』って言い始めたのはあんたじゃない」

 

 それを受け、全くの心外だと憤慨した様子の魔理沙はその反論を真っ向から否定してみせる。

 

「いーや、違うね。確かに霊夢から言い出したんだ」

 

「いいえ、提案してきたのは魔理沙、あんたからよ」

 

「いやいや、絶対に言い始めたのは──」

 

 どちらが先にお土産に手を出したのかを巡って言い争いだした少女二人。

 俺としてはもう開封しちゃってるし食べられちゃっているしで、ぶっちゃけどっちでもいいんだけど。

 

 冷ややかな目で、ああだこうだ言い合う少女達を見つめる。生憎、彼女たちの間に割って入って仲裁しようと思ってはいない。

 薄情な奴だと思われそうではあるのだが、これには特に深くもない理由がある。

 

 下手打つと二人から集中砲火されてしまう可能性があるから、というのもあるのだが──

 

「判った、そこまで言うのなら“アレ”で白黒つけようじゃないか」

 

「上等よ。奥歯ガタガタ言わせてあげる」

 

 そこそこヒートアップしていた水掛け論争を不毛に感じてきたのか、少女二人はそう言って上空へと飛んで行った。

 

──ああやって、放っておいても勝手に決着がつくと分かっていたからである。

 

 てか霊夢のやつ、ちょっと口が悪くない?

 あれが素なのかな……女の子って怖い。

 

 

 

 

 

 博麗神社の縁側に座りながら、空を見上げて感嘆の声を漏らす。

 

 紅白巫女からは御札や針、陰陽玉。白黒の魔法使いからはレーザーやミサイルなど。その他にも色彩豊かな光弾や光線の数々が飛び交っていて、その激しさは青空を埋め尽くしそうなほどだ。

 

 

 弾幕ごっこ。または弾幕勝負。

 

 

 それが、ここでの揉め事に対するポピュラーな解決法なのだという。

 異変、というものを解決する際にもしばしば用いられているらしい。生憎とそれに立ち会ったことがないので、これは又聞きして得た情報である。

 

 うわー綺麗だなー、とポップコーンならぬ煎餅をつまみながら、弾幕ごっこの鑑賞と洒落込む。

 ふむ、結構美味いな、これ。

 

 勝利を収めるのはどちらなのか、その予想でも立てようかなと思って観戦していても、どっちが優勢なのか判断が難しい。というのも、弾幕に隠れて二人の様子がはっきりと見えないからである。

 仕方なく、次に姿を視認できた方を応援するかと考えていると、丁度弾幕のカーテンからひょいと抜け出した人影が一つあった。

 

──よし、彼女をこっそりと応援するとしよう。

 

 俺の視線の先には、箒に跨ってレーザーやら光弾やらをばら撒く白黒の魔法使いの姿があった。

 偶にミニ八卦炉という魔法道具から極太ビームが出るので、大変見栄えがよろしい。

 俺もあんなド派手な技を出せたらなー、とちょっとだけ嫉妬しながらも影ながら応援する。

 

 

 

 

 

 ••••••

 

 

 

 

 

 彼女、霧雨魔理沙は普段、『魔法の森』に霧雨魔法店という名の拠点を構えているらしい。蒐集癖が強く、そこらで拾ったマジックアイテムなんかをよく溜め込んでいるのだとか。

 

 魔法の森とは、多様なキノコが植生しているのが特徴の未開の森のことである。森の中の環境は劣悪であるらしい。何故なら、そこのキノコから噴出する胞子が蔓延していて大変危険であるからだ。そのせいで妖怪すらも立ち寄らないらしい。

 当然、俺も行ったことは一度もない。不用意に近づいてその胞子とやらを吸い込んで昏倒でもしたら洒落にならないからな、どう考えても。

 

 そんな危険地帯に住んでいるというだけで、彼女という存在は自分のような凡人とは一線を画しているのだと理解できる。

 

 以前『店といっても場所が場所なだけに来客など一切来ないんじゃないか』と言うと、本人によってムッとした様子で反論されてしまっていた。

 曰く、『魔法の森でお店を構えているのは私だけじゃないから』とのこと。

 

 結局客が来ていないこと自体は否定しないのか、と呆れつつ、人気のない場所で商いをするのはやはり幻想郷では珍しいことではないのだろうと認識を新たにした。

 

 妹紅とよく一緒に飲みに行く八目鰻の屋台とかも、その典型だろう。

 

 採算などを全く考慮せず、ただ『やりたいと思ったから』と気楽にお店を開くことができるというのは、外の世界の常識を未だに引き摺る俺からすると少しばかり羨ましい事のように思えた。

 

 

 

 初めて彼女の名を知った時から、個人的に質問してみたい事柄があった。

 彼女の姓があの“霧雨”であるからだ。

 

 そう、人間の里で経営している“霧雨”道具店と彼女の関係性がとても気になる。

 しかし、藤見屋として活動するうちに『勘当された娘』だとか『絶縁状態』だとかいう噂を耳にしてしまった事があるので、本人に聞いてみる勇気がなかなか出てこない。

 

 永遠亭での一件で噂や悪評は当てにならないのだと教訓を得ていながら、非常に情けない話だ。

 

 家族問題というデリケートなものに、外部の人間が単なる好奇心で無闇に突っ込んではいけないだろう。

 そんな折り合いをつける事で、魔理沙とは友好的な関係を築けている。

 

 『己の存在を幻想側に寄せる』という、謂わば『非常識な人間になる』という目標を掲げている身であっても、流石にそんな非常識さなど求めてはいないのだ。

 

──取り分け『家族』についてのあれこれだなんて、到底他人事のようには思えないのだから。

 

 

 

 

 

 ••••••

 

 

 

 

 

 しばらくすると、快晴のもと繰り広げられた弾幕ごっこは遂に決着がついた。

 二人が仲良く揃って降りてくるのを確認して、用意しておいた湯呑み三つにお茶を注いでいく。

 運動をした直後で喉が特に乾いているだろうから、量はたっぷりかつ飲みやすいよう湯加減はぬるめにしておいた。

 

 気遣いのできる男、ここにあり。

 

 以前、霊夢から『あんたの為だけに護身用の御札作ってあげてるんだから、そのくらいやってくれてもいいんじゃないかしら?』と強制されたのが始まりとなって、この様な給仕係の真似事をするようになった。

 近頃は言われずとも自主的にやってあげるまでに、俺の奉公意識は上達している。……悪く言えば、霊夢に飼い慣らされてしまったと呼べなくもない。

 

 なぁに、この緑茶を淹れるのに使用した茶葉は俺が前回差し入れしたばかりのもの。家主に無断で使ってしまっても責められはしまい。

 

「くっそ〜、負けた!」

 

「ふふん、いい気味だわ」

 

 軽く運動して気が晴れた、というような様子で居間に(くつろい)いでお茶を啜る少女たち。

 そもそも何が発端で弾幕ごっこをすることになったのか、それすら忘れていそうなほどの見事なリラックスぶりである。

 

──それを見て、しめしめとほくそ笑む。

 

 無論、それをうっかり表情に出さないように努める。何故そんな顔をするのかと問われたら一巻の終わりであるからだ。

 

 気付くなよ……気付くなよ……

 

 しかしそんな祈りも虚しく、魔理沙がはっとした様子で声を上げた。

 

「藤宮、そういえばあのお煎餅はどこにやったんだ? まだ結構残っていた筈だぜ」

 

 そういえば確かに、と相槌を打つ霊夢もそれに追従する。

 

「私はまだ二、三枚しか食べてなかったし、物足りないわ。藤宮さん、もう今日で全部食べても構わないから出してよ」

 

 二人とも待ち遠しいといった調子で、早く早くと催促してくる。お茶のあてにするのにぴったりだと思っているに違いない。

 

……確かに、あの程良い塩っけの効いた海苔もあったからか、お値段以上に美味しい煎餅であった。

 

 そう、『やめられない止められない』というフレーズをうっかり体現しちゃうくらい。

 

 

 

 

 

「あれは────もう無いよ?」

 

「「は? なんで?」」

 

 全く同じ問いを発する少女たち。

 違和感を覚えられては誤魔化しようがないので、大人しく白状することにする。

 二人の怒りを買ってしまわないように、正確に回答すると共に『もう、仕方ないなー』という空気感を演出できるよう精一杯、言の葉に工夫を凝らしてみる。

 

 

 

「二人が弾幕ごっこしてる間に、俺が全部食べちゃいました。テヘペロ♪」

 

 

 

 沈黙。

 俺渾身の返しは、それでもって完膚なきまでに叩き落とされた。

 

……あ、もしかして『テヘペロ』って幻想郷だとどういう意味なのか伝わらないのかな?

 

 意味が通じようと通じなかろうと、二十歳前後の男性のやるテヘペロなんぞ地獄絵図にしかならないという普遍的事実に気付かず、そんな的外れなことを考えていた。

 

 少しの間が空いてから、紅白の巫女と白黒の魔法使いはゆらりと立ち上がると、俺の元まで歩み寄ってきた。

 

 おおっと。美少女がやっていい表情じゃないよ、それは。

 

 

「「ふーじーみーやー?」さん?」

 

 

 美少女二人に詰め寄られるだなんてご褒美だなー、などと呑気に考えている場合ではない。

 普通に怒っているし、忘れがちだが俺以外の人目線だとまず美少女に見えないという問題もある。全然ご褒美になっていない。

 

 えー、もとは俺が買ったやつなんだしそんなに怒らなくてもいい筈なんだけどなー。

 

 どう言い訳したものか、少し悩む。

 

 

 

──その時、脳が妙な電波を受信した。

 

 何やら天啓じみたタイミングなので、もしかするとこのピンチを脱するヒントがこれに隠されているのかもしれない。

 えーと、なになに?

 

 

 

 

 

 

 うお……急にすげぇ殺気……! 今日が俺の命日かな? 審判の日 シュワルツェネッガー

 

 

 

 

 

 

──なあに、これは。

 

 どうやら受信設定を間違えていたようだ。そこにあったのは意味不明な語録の調べであった。

 全く役に立たねえ。

 

 

 

「ま、待て、話せば分かるって」

 

「藤宮さん、『食べ物の恨みは恐ろしい』という言葉を知っているかしら? あんたが犯した罪は、つまりそういう事なのよ」

 

 『暴力反対』『弱い者いじめ良くない』と言葉を返したとしても、耳を貸してくれる空気では全然なかった。

 

 

 

──このような絶対的劣勢な状況に追い込まれた時、人は火事場の馬鹿力というものを発揮するらしい。

 それは単純に筋力であったり、思考力であったりするのだとか。少年漫画かなんかでよく見る秘められたパワーに目覚めて逆境を一発逆転、というようなシチュエーションが一番分かりやすい例か。

 

 俺の場合それは、『より上手く霊力を扱える』という面で現れる。

 と言っても、霊力の弾丸が気持ち大きくなったり、飛行速度が何となく早くなった気がする程度のものだ。

 無意識にセーブしてたのをなりふり構わなくなっただけ、とも言う。

 

 

 兎も角、現在俺は窮地に陥っていて、その馬鹿力に目覚めようとしていた。

 

 

 ではその後どうするべきか。

 少女二人に弾幕勝負を挑む? 冗談ではない。

 

 人里の外での仕事で妖怪に襲われそうになった時もそうであるが、こういう不味い状況になった時に取る俺の行動は、大体“コレ”と相場は決まっている。

 

 即ち、

 

「二人とも本当ごめん! 後日またいい土産仕入れて持ってくるから許してくれ!」

 

 その場からの逃走である。

 

 居間から脱出して空へと飛び上がる。障子が開けっ放しで助かった。

 そのまま、人間の里へと進路を向ける。

 

 

 

 ちらりと博麗神社を振り返ると、呆れたような顔で見送る二人の姿を確認できた。

 一人の人間として、そして年上の男性として非常に情けない醜聞を晒してしまっている気がするが、背に腹はかえられない。

 仮に、一対一で弾幕ごっこだと言われても、俺は弾幕というほどの霊力を出力できない上、空中での回避行動などは殆ど経験を積んでない為にお話にならない。

 一方的に処刑されるのがオチだ。

 

 少女から痛めつけられて喜ぶ趣味など、持ち合わせていないのである。

 

 

 

 

 

 追っ手がいない事を確認して、空を飛ぶスピードを緩める。地表と比較して太陽に近いせいなのか、陽光がいつもよりも眩しい。

 

 そういえば、今日はマヨヒガ教室が開講される日なのだった。

 藍さんと橙ちゃんにいつものお土産をあげる為、豆腐屋とマタタビを取り扱う屋台に行かねばならない。

 

 十分に資金はあるのか、と財布を懐から取り出して中身を確認する。

 

 稼いだらその分だけ高価なものを買ってしまうので、俺の貯蓄の嵩の増え方は本当に微々たるものだ。

 とは言え、今更差し入れしませんよというのも気が引ける。

 渡して嬉しそうにしてくれると、やっぱりこちらも嬉しくなってしまうものだから。

 

 

 

 今日も今日とて良いお天気だ。

 背中に燦々(さんさん)と輝く日の光を浴びて、考え事をしながら空を飛んで行く。

 

 あの少女二人の許しを乞うのに相応しい持参品を探さなきゃ、と考えながらフラフラと宙を彷徨うこの様は、傍目から見ればやはり何とも情けないものなのであろうと思いつつ。

 




 

 映画ターミ○ーターを見たことない人には通じないネタを盛り込んでいくスタイル

 渾身のネタが駄々滑りするというリスクを一々恐れていては、二次創作者をおちおち名乗ってはいられません 今後とも隙あらばキレッキレ()なギャグをねじ込んでいく所存であります
 実際面白いものを捻り出せるかどうかは、まあうん、そん時のコンディション次第かね?

 『人生で一度は公衆の面前でchinc○in亭の語録を使ってみたい』と考えてしまうのは私ひとりだけで十分です

 この語録で……みんなを笑顔に……




 まあここまで露骨なネタを差し込むのはこれが最初で最後だと思います 多分ね
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