東方被常識 あべこべなこの世界で俺は   作:自律他律

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 今回シーンのぶつ切り感半端無いかも 誰か上手いシーンの繋げ方を教えてくだせえ



新しい仮の住まいと予期せぬ来訪者達

 

 

 すっかり夜も更けてきた居酒屋『鯢呑亭』にて。

 

 腕利き大工集団としがない何でも屋の手によって催された宴会は、年季の入った店主謹製の品々と愛嬌振り撒く看板娘の働きにより、非常に満足のいくものとなった。

 その際に酔いどれ達が織りなした異様な賑やかさは、店の奥で独酌をしていたマミゾウさんが「一人で静かに呑みたい気分じゃったのにこれでは叶いそうに無いのう」と苦笑いしながら立ち去って行った程。

 

 場がお開きとなって鯢呑亭から出た後も、野郎共による酒気混じりの騒々しさは留まるところを知らなかった。

 

「おぉい、まだ酔い潰れてるヤツは居ないよな? ツイてる事に明日は仕事が入ってねえんだ。次だ次! 夜はまだまだ長いぞぅ野郎ども!」

 

「「「応!!」」」

 

 

「……え、まだ呑むんですか?」

 

 

 これは別段詳しく統計を取った訳ではない完全なる私見だが、どうにも幻想郷出身の人間は、皆一様にしてお酒に強い体質持ちであるようだ。

 

 こちとら大分呑んで千鳥足の一歩手前であると言うのに、それよりも大量のアルコールを摂取していた筈の彼らが二次会に積極的な姿勢を見せていて、俺は酒気に赤らめていた顔がすっかり青褪めしていくのを感じた。

 一刻後には裏通りの隅っこで胃の内容物をリバースしている自分の姿が、容易く想像出来てしまった。

 もうお酒は無理、これ以上は付き合い切れない。

 

 なんせ酔いが酷いと、呑んでる時の記憶が翌朝にはすっぽり抜け落ちてしまう……なんて事態も十分にあり得る話なのである。

 

 明日早くから予定している事もあった。

 

 なので大工の親父さん達がいざ次の居酒屋へと意気込んでいる所、気後れしながらも水を差す。俺が「これ以上の飲酒は身体が保たないから」と言うと、

 

「これしきで限界とは、これだから最近の若いモンは根性が足りておらんのじゃ。それに比べてワシが若い頃はまだ──オロロロロ」

 

「ぎゃあ、こっち向くな!」

 

「わっははは! 離脱者一名追加だぁ! 誰かこの酔っ払いを家まで送ってやってくれ!」

 

「あぁなんだぁ藤見屋はここで離脱か? こっからが本番って時に勿体無い。……ほんとはまだまだ余裕あるんじゃないの? 正体見たり! って感じだな」

 

「オジサン分かっちゃうよ、二日酔いが怖いから深酒は出来るだけ避けたいんでしょ? ──オラッ! そんな我儘通用する訳無いだろ! まんじりともせず吐き気や頭痛、胸焼け等の症例を受け入れろ…!」

 

「人付き合いの悪さにも限度あり、しかしその健康志向誉れ高い」

 

「……兄ちゃんよ。さっきの美味い居酒屋の事、教えてくれて助かったぜ。いやぁ、店主一人で切り盛り出来るだけあって酒も飯も上出来だったなぁ。当分の間は通い詰める事になりそうだ」

 

 程度の差はあれ彼らも酔っている事に違いは無い。

 各々が口にする返事は本当に思い思いのもので、割とカオスだった。

 

 最後の人なんて真っ当そうな口調で話せてはいるが、鯢呑亭を指して『店主一人で切り盛りしてる』って……酔いが回り過ぎてあの可愛い(俺視点)看板娘の存在をサッパリ失念してしまっているではないか。

 

 まっことお酒の飲み過ぎは宜しくない、危険だ。

 

 騒いでいる当人は随分と楽しそうではあるのだが……正直、あのような残念飲兵衛達への仲間入りはご容赦願いたい。

 なんなら、さっきまで自分があの人騒がせな集団に馴染んでいた事実自体を葬り去りたいくらいまであった。

 

「ま、なんだ。もしかすると今後そっちに建材運びの依頼を出す事もあるかもしれんから、そん時は気が向いたら頼みますわってことで。ああ、それからもしあの家屋を改築するような事があったらウチに相談しなよ。幾らかお安くするから」

 

「……ええ、その時になったら世話になりますね」

 

 まだ正気を保てている大工さんからやっと真っ当な言葉が聞けたので、愛想笑いをしながらそれに返す。

 

……現状、一軒家という非常に大きな出費をした分だけ、俺の財政事情は切迫しているとまではいかないもののそれなりに寂しい事となっている。

 

 それを埋める為にもこうして人との縁を保っていくのは、幻想郷生まれ幻想郷育ちの彼らと比較するとやはり根無し草のきらいがある俺にとって、中々に悪くない事なのかもしれない。

 

 必須級、と言い表しても過不足は無い。

 

 向こうから依頼が舞い込んで来ない事には、客商売という性質上、藤見屋は干上がるばかりなのだ。

 幻想郷に住み始めたあの頃に逆戻り、だなんてのは二度と御免だった。

 

 

 

 

 

 夜風に当たりながら気分良く帰路に着くと、相も変わらず建て付けの悪いうらびれた長屋が俺を出迎えてくれた。

 

 随分と物が減って視覚的に寂しくなったその一室で、未だ残る酔いを少しでも和らげようと、土間に置かれた水瓶に柄杓を突っ込んで喉を潤す。

 ヒンヤリとした清涼の喉越しに人心地つくや否や、俺の頭の中で唐突に思い起こされる物事があった。

 

「そういえば何か、宴会中にちょっと気になる事を耳にしたような…?」

 

 薄ぼんやりと脳裏で想起するのは、先程の鯢呑亭で大工の親父さん達とどんちゃん騒ぎをしていたときの光景。

 あれは確か、マミゾウさんから新聞の件で呼び付けられた時よりも少しだけ前の事。

 空きっ腹に酒を二杯ほど空かした直後に行われた会話だった。

 

 

『にしても藤見屋の兄ちゃん、中々イイ土地に目を付けたじゃあないか。工事中、アンタのお陰で随分と縁起の良さそうなモンを間近に拝めたよ。いやぁ、今思い出しても身震いするくらい立派なモンだったなぁ、アレは』

 

『はあ、“随分と縁起が良さそうな立派なモン”? 何ですかそれ? ……あぁもしかして、水晶玉に方行屋根が乗ってるヤツじゃないですよね? なんかこう、片手で天に掲げると輝いてビームが出てきそうな感じの』

 

『……いんや、そんな珍妙なのは知らんけど。てかむしろ兄ちゃんの言うヤツのが気になるんだが』

 

『あーいえ別に気にしないで下さい。あそこは命蓮寺が割と近くなので、もしかしてと思っただけで』

 

『命蓮寺…? ああ、あの“妖怪寺”の事か? 正直、縁日か何かで催しがある時以外だと宗教施設ってのはどうにも縁遠くてな。宝船が飛来してきたって話で持ちきりだった頃もあったんだが……すっかり名前を忘れてたなぁ』

 

『なら、これを機に是が非でも名を覚えておいて下さい。妖怪寺では無く“命蓮寺”と。……おやっさん、もしやまさか、博麗神社の事も妖怪神社と呼ぶ口ではないですよねぇ? 困るんですよ、そう無慈悲にポンポンと事実を陳列されちゃあ!』

 

『お、おう。なんかこう、急に圧が凄くないか兄ちゃん……酔いが回るの早過ぎじゃない?』

 

『いいえ、俺ァ全然酔ってなんかいませんですともよ? 博麗神社についてはうんまぁひとまず置いておくとして、命蓮寺に関して言えばあそこほぼ里の内部に位置すると言っても過言無い筈でしょ? 立地良し、人柄良し、なのにどうして彼女達の活動がイマイチ報われないのか──』

 

 

 結局、あの場では話を別の方向にシフトさせてしまった所為で、大工さんの言っていた“随分と縁起の良い立派なモン”が何を指していたのかが分からず仕舞いであった。

 

 曰く、ソレは丁度建設予定地の直下に埋まっていたのだとか。

 曰く、ソレは見るからに御利益がありそうだったのだとか。

 曰く、ソレを入念に観察した棟梁が「この地は護られているから基礎工事は最低限でヨシ!」と判断し、その為に工期が短めに済んだのだとか。

 

 ソレに関わる外周部分の情報はぼちぼち思い出せはするものの、肝要である中心部、ソレが何と呼称される物だったのかが全く思い出せない。

 

 或いは、初っ端から聞き出せてなんかいなかったのかも?

 

……いんやぁ? こうして頭を捻っているとソレの名称も、鯢呑亭のカウンター席で棟梁の口から直に聞いていたような覚えがある。

 なんでも『家主なら当然知る権利があるだろう』との事で。

 

 えーと、なんだっけ?

 

 確か、“カ”……“カナ”…………うーん、そう長い名ではなかった筈なのだが。加えて外の世界でも橋の構造がどうとかでちょっと聞き覚えがあるような、そんな気はするんだけどなぁ……

 

 答えが喉元にまで来ているというのに中々口に出て来ない。

 

 『夜中一人でウンウン唸っていても仕方が無い、そんな事よりも忙しくなる明日に備えよう』とそのうち思い出すのを諦めて、寝床に着くまでのその間、俺は何とも言えないもやっとした感覚を一入に味わったのだった。

 

 

 

 

 

 

 翌日の朝は早かった。

 裏戸から少し歩いて起き抜けの顔に井戸水を叩きつけてやって、寝惚けていた頭の中に以前から組み立てていた段取りに関して少しずつ思い出していく。

 

──ご近所さんにはもう挨拶は済ませてあるし、個人で出来る範囲ではあるが()()()()お知らせも既に吹聴し終わっているし、必要となる荷物は一括りにまとめて裏手に回した大八車に載せてあるし。

 

 事前準備は昨日の昼頃には全て完了していた。

 なので部屋に戻り朝食をある程度こなした後、『済ますべき事はなるべく早く済ませるのが吉』と直ぐ様行動を起こす事にする。

 

 手早く諸々の支度を終わらせて『いざ出発』という段になると、何処からともなく感慨深くなって、今一度俺が住んでいた部屋の内装を見回してみる。

 総評して、家賃が格安だった分壁は薄いわ床が軋むわ水源である井戸まで遠いわで、曲がりなりにも文明的な生活をしてきた現代っ子からするとなんとも散々な物件であった。

 

 稀に来るお隣さんの大いびきに寝れない夜を過ごす事もあった。

 扉に鍵が付いてなくて、田舎特有の防犯意識の低さに戦慄した事もあった。(つっかえ棒が備え付けてあったが不在時に戸締り出来ないんじゃ意味が無い)

 

 こんな劣悪な長屋とは本日限りでおさらばだと考えると、気分は晴れ晴れとした蒼天模様だった。

 

……しかしながらまぁ、短所がいくら目立とうとも、自分が此処に長らく世話になったのも少々業腹であるがまた事実。

 最後に目につく所だけでも掃除してやって、それをせめてもの餞別としようではないか。

 

 

 

 

 

 

 えっちらほっちらガタゴトと、荷車を引きながら人間の里の最東端を目指して進む。

 すると先程まで乱立していた平屋は次第にその密度を疎らにしていき、徐々に小ぢんまりとした田畑や水田が目立つようになっていく。

 その道中ですれ違った人の姿もその数を減らしてしまって、最後に見かけたのは朝早くから熱心に土作りに励む農家のお婆さん一人くらいなものだった。

 

 人の気が限りなく無くなってゆく畦道に沿いながら、うっかり荷車を脱輪させないように留意しながら進み行くと、やがては小規模に群生する雑木林に突き当たる。

 更にそこから、作業場までの行き来がスムーズになるよう大工達の手によって整えられた、森の奥へと続く道をなぞって少々の時間を歩いた。

 そうして進んで行く内に視界の通りを妨げていた緑の葉は薄くなっていって、最終的には開けた場所に辿り着く事となる。

 

 

 その空間にはたった一つだけの人工物、真新しい二階建ての木造建築がぽつねんと建っていた。

 一人で暮らす分には少々手広そうな、それでいて何処か見る者に懐かしさを感じさせるような、温かみのあるその家屋。

 

──あれこそが、俺が求めていた安住の地。

 

 外の世界に戻るまでの仮の住まいとしては、中々上等に過ぎる物件である。

 辺鄙な立地柄且つ『妖怪が出没する』との噂によって、かなり格安で済んだとは言え、一軒家は流石に安い買い物ではなかった。

 藤見屋として仕事に精を出し、コツコツと貯蓄を蓄え始めたあの頃がまるで遠い日のよう。実際には、まだそれほど月日は経っていないというのに。

 

 実は諸々捻出した費用の内、その六割以上が八意先生から頂いた治験代だったりするので、純粋に己の才覚一つで稼いだ訳では無いのだが。そこはほら、永遠亭の()医とコネクションを持ってる俺スゲー、という事で。

 一周回ってギャグみたいな効能を発揮する新薬と対面し、その上ふんだんに襲い来る副作用にもみくちゃにされていた分の対価は、しっかりと正当に受け取っていたという事だ。

 

 そういえばここ最近は、紅魔館に出向くばかりで迷いの竹林方面に向かう頻度がめっきり減ってしまっている。明日にでも早速出向いてみるとしますかね。

 そんな事を思考の片隅に入れて置いて、俺は前方に建つ日本家屋まで近づいて行った。

 

 

 

 

 

 自分一人だけで引っ越しをするというのは何分初めての事なので、計算の上ではもっとこう、その作業には時間がたっぷりかかるもんだと決め付けていた。

 しかし結局のところ具体的にやる事と言えば、事前にまとめておいた一人分の荷物を中に持って行って、衣服や食糧などの直近で要する事となる物を選別し、そうでない残りの本や寝具などは適当に収納スペースに突っ込んでおくだけである。

 

 その間の事を特筆するとすれば、引っ越し祝いとして魔理沙から貰っていた片手サイズの虫除け用マジックアイテム(害虫に対して効果抜群!)を玄関口の脇に設置して、同じくお祝いとして霊夢から貰っていた『博麗神社の巫女 お立ち寄り所』と記されたただの紙(妖怪に対して効果抜群!…なのだろうか?)を表に貼り付けた事くらい。

 

 締めに慧音さん作の“藤見屋”と書かれた看板を玄関脇に立て掛けてやれば、然程の時間も要せずして引っ越し作業は粗方完了となっていた。

 

 残りは後日少しずつやっていくとしようと思い手を止める。

 そうして改めて新居の内部をしげしげと観察してみると、欄間の一つ一つに丁寧な装飾が施されたりしていて『何ともまあ己には過ぎた住まいだな』という感じがひしひしとした。

 遂にはその余りの一丁前さを前にして、変な笑いが込み上げて来そうになる。

 

「……はぁ〜、なんかもう色々と場違い感がすごい。本当にこの家、俺の物なんだよな…? まるで夢でも見てるみたいだ」

 

 そんな独り言が漏れてしまったのは仕方の無い事なのだろう。現在の自分を形容するとしたら、馬子にも衣装の家バージョンと言い表すべきか。

 

 なんにせよ、期待以上の仕上がりを披露してくれた大工さん達には感謝の言葉しか思い付かない。

 

……ともすれば昨晩の、二次会への誘いを断ったのは失敗だったのかもしれないなあ。

 

 

 

 

 

 体感的な判断をすれば、今はお昼から夕方頃に差し掛かるかどうかといった時間帯。

 

 ひと段落ついて今日の所は特にすべき事も無い。

 何となく床に大の字になって新鮮な木材の香りを楽しんでいると、不意に己の空腹状態を自覚する。

 

 丁度、荷車の容量にまだ余裕があるからと判断して、米、根菜、川魚などの食物を大量に買い込んでいた。大体目算して、一人で消費し切れるかちょっと不安になる位の分量であった。

 腐る前に少しでも減らさないと不味いよなぁ、と頭を掻きながら起き上がるとほぼ同時に。

 トントン、と玄関口から来客を告げる音が鳴った。

 

……はて、一体誰なのだろう?

 

 引っ越して早々に現れし便利屋の助力を求める依頼人か、それとも慧音さんが俺の様子を見に来てくれたのだろうか。いやいやそれかもっと他の──

 

 色々と候補は思い浮かぶのだが、とにかく来訪者の姿を確認しない事には話は進まない。

 「はーい」と声を掛けるだけ掛けて、玄関の戸を開けて見やると、屋外には三名──いや四名? の知り合いの姿があった。

 

 

「よ、久し振り……って程でも無いか。何日か前に引っ越しの件で寺まで挨拶に来てたもんね」

 

 

 中央にはそう言って気さくに片手を上げる、セーラー服を着た舟幽霊。

 いつも彼女が持ち歩いている錨は寺の方に置いてきたようで、空手にて随分と身軽そうである。その快活そうな笑顔は非常に眩しい。

 

 

「……」

 

「昨晩マミゾウからちょいと気になる事を聞いてね? それについて追求するついでに、ちょうど良いから“有志”を募って一杯引っ掛けちゃおうと思ったわけ。ここなら監視の目も無い事だし、安心して呑めるわー」

 

 

 向かって右側には何処か憐れむような視線を無言で寄越してくる入道雲と、ふっふっふと余り宜しくない色の笑みを浮かべている尼さんのペア。

 片や雲はその内側に何本もの酒瓶を滞留させていて、片や少女の手にはつい昨日見たばかりの新聞が何故か握られていた。

 

 

「あははは……藤宮さん、居を移されたばかりでお忙しいとは思いますが、そういう訳なのです。そのぅ、本日は此方にお世話になって宜しいでしょうか」

 

 

 左側には「こんな事やって本当に大丈夫かな」と若干心配そうな面持ちをしながらも、結局は尼さんの言う“有志”と成り果てたらしい虎柄の毘沙門天代理。

 その手にはちょっとした紙袋を携えていて、中身は恐らく彼女の好物なのだろう、美味しそうな赤身がチラッとだけ窺えた。

 

 

 

 

「……なるほど、大方の事情は察した」

 

 どうやら彼女達はささやかな宴会を開くつもりでいるらしい──家主が越してきたばかりのこの家で。マジかよ。

 確かにいくらご近所と言えども、ここまではあの人の耳目は及ぶまい。ならば心置きなく宴を楽しめる事だろうが、いやしかし、

 

 この妖怪達、本当に仏教徒なんだよね? 不飲酒戒(ふおんじゅかい)はどうしたよ……

 

 呆れた視線を向けてみると、やり返すようにして各々が待望の眼差しで、此方を見つめ返してくる。

 

 美少女からまじまじと見つめられてしまうと、なんだか据わりが悪くなってしまうのが俺の悲しい性。

 彼女達に自覚は無いが、男性である俺にとってそれらの目線は相応の破壊力を秘めていた。

……ある意味では、“普通”の人からして見てもこの光景にはそれなりの破壊力があるのだろうが。

 

 「ああ、全然構わないよー上がっていってー」と赤べこみたく首を縦に振りそうになって──すんでのところで思い直す。

 

 いかん。

 このまま流されるようにそれを承諾してしまっては、かつて自分の面倒を見てくれた住職さんに対して申し開きが立たない。

 ここは心を鬼にして、彼女達の要求を拒否するべきだ。

 

 そう理性的に判断して、非協力的な態度を表に出そうとしたのだが──

 

 

 

 ぐぅ、と決して小さくない音量の腹の虫が、玄関口で鳴り響いた。

 その音源は、間違い無く自分の腹だった。そういやお昼抜かしてたんだったなぁ。

 

 

 

 なんというか、えらく間が悪いというか……むしろ良かったのか?

 今この場で宴会を開くとすれば、無駄に買い込んでしまった食材を腐らせる事も無くなる訳だし……

 そう半ば上の空になりながら心中でボヤいていると、眼前には「どうやら()は決まったみたいね」と揶揄うようにして微笑む少女。うっせぇわ。

 

「……はぁ、分かったよ。歓迎するよ。なんならウチに置いてある食糧、全部使ってもいいからさ」

 

 やったー、とテンション上げながら、無遠慮に家主の横を通り過ぎて行く破戒者達。

 戸締りをしながらそれに苦笑し、俺は真新しい床の間ではしゃぐ来客を台所まで案内するのだった。

 

 

 

 

 

 ••••••

 

 

 

 

 

 未だ残留する材木の香ばしい匂いを酒気で打ち消すようにして、彼の新たな住まいにて小さな宴が催された。

 

 命蓮寺からやって来た約三名の妖怪達は『住職』という絶対の抑止力が届かないのをいい事に、日頃抑圧されていた分だけ、飲めや騒げやの大盛り上がり。

 

 一方で、青年は昨夜と引き続いての宴会であったが為に、肝臓の調子を気にしてお酒の進み具合は余り芳しく無い。

 盃に伸ばす手は、次第に少女達と共同で作った大量のつまみの方へとシフトしていった。

 

 赤ら顔となった尼さんからの無茶振りで、入道雲が空中で踊り念仏を器用に披露するその傍ら。

 ほろ酔い状態の青年は、菜箸で山菜の素揚げを取り皿に確保しながら、彼女達と出会った時の頃を回想する。

 

 即ち、幻想の地に迷い込んでまだ十日と経たない、右も左も分からず生活費の工面にすら難航していた、苦々しくも忘れ難いあの頃の事を。

 






 ほわんほわんほわんほわ〜ん ←回想に入る時のテンプレ効果音

 という事で今章は回想シーンが本題となります 時系列的に言えば序章終わってから直後となりますでしょうか
 幻想入りして間も無い根無し草の外来人が、如何にして里で糊口を凌いてきたのか この先は君自身の目で確かめてくれ!(クソ雑魚攻略本並感)




 欲を言えば、命蓮寺メンバーの設定がより深掘りされる(であろう)剛欲異聞の発売を待ってから次回以降は執筆していきたい所 いやほら、どうせやるんなら最新の情報をなるべく拾って反映させたいじゃない?(尚、必ず反映出来るとは言っていない 作者にとって都合の悪い設定とか有ると正直扱いに困るし)

今月中にちゃんと頒布されるよね?
 
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