疲れました頑張るぞ…
明るみが、果てしない遠方からにじむように広がってくる早朝。
未だ日に照らされていない公園で、ジャージ姿のメジロマックイーンとジェシーがストレッチを行っていた。
「……」
「……」
二人の間には会話という物が全く発生しておらず、まるで関係性が友人から知人に格下げになったかのような、そんな雰囲気だ。
それも無理はないかもしれない。なにせ例のグラウンドでの一幕があってからまだ二日も経っていないのだ。それに、
(……この方、なんで性
事の原因を作った張本人が例の謎生物の被り物をして現れていたからである。
つい先日に被り物をして挑むような真似はするな、と
片手間程度の支援をするとは約束した。確かにした! だがその支援に対する態度がコレと言うのは、少し腹立たしく思えて仕方がなかった。
「……念を押させて頂きますが。適切なトレーニングが教えられるとは思っておりません。我々が教える事が出来るのはあくまでウマ娘向けのトレーニングだからです」
「……」
「これらはウマ娘の負荷限界を見越した内容であって、人間の負荷限界は考慮していませんわ」
「……」
「ひょっとしたら練習だけで貴方が潰れてしまうかもしれません、それでも――」
「構わない」
脅しめいた説明はジェシーの熱のこもった発言にかき消され、
「それなら……まずはついていらっしゃいまし」
小鳥のさえずり目覚ましい朝焼け時に、ジェシーとマックイーンの足音が静かに響き渡る。
二人分のスニーカーの音は一定のリズムを刻み続けていく――
§ § §
ジェシー支援プロジェクト『
名誉会長はゴールドシップが就任した。
額に鉢巻、上着に横断幕、両手にサイリウムを装備した彼女は気合十分である。
『
副会長はメジロマックイーンが押し付けられた。
ゴルシの後押しと、一番ジェシーと仲が良いから、という理由からである。
『待ってくださいまし! 何で私が!?』
幹事はトウカイテイオーに白羽の矢が突き立てられた。
トレセン学園や現トレーナー、その他人物との
『地味に重要で嫌だなぁ!? ボクの役割重すぎない!?』
そして保健委員としてアグネスタキオンが混じりこんだ。
ジェシーに前々から接触していたと言う彼女はしれっと輪に入り込んでいた。
『人間がウマ娘に挑むというテーマ……非常に好奇心を
「「なんでタキオン先輩がいるの!?」んですの」!?
「何でって……お前らジェシーが光ってる理由考えなかったのか?」
「普通に考えて体を光らす方法なんて限られるだろうに。君達、考えを止めるのは悪徳だよ」
校舎裏に集まった後援会メンバーらが初めての顔合わせを行えば、ぬるりと現れたのはアグネスタキオンであった。
特徴的な袖余りの白衣をパタパタさせた彼女は、さも当然だと言わんばかりにゴルシに同調していた。
「だ、だって前スズカ先輩やスペ先輩はタキオン先輩は関係ないって……」
「彼女達はそう解釈したのかい? だとすれば見当違いだったね。私は関係していると明言こそしてはいないが、精一杯のヒントは出したつもりだったがね」
「……ようするに見事にはぐらかされた訳ですわね」
「明言は避けて欲しいと念を押されたんだ、仕方のない話だと思わないかい?」
「……」
タキオンは素知らぬ顔で
「それで、プランとしてはどうするんですの? ウマ娘に並ぶ速度を手に入れると言うのは分かっていますが」
「とりあえずは足りない所を補うのが王道だよね。ジェシーさんの足りない所って言うと……?」
「まずはスピードだろ? スタミナだろ? パワーだろ? 知識だろ? 根性は……足りてそうだな」
「要するにほぼ全部……ですわね」
「分かりきっていた事さ。基礎能力の底上げは一朝一夕では行かない。長期スパンで臨むしかないだろうねぇ」
「と言っても、どうするつもり? ボク達のトレーニングってジェシーさんが耐えれる物なのかな?」
「練習場所の問題もありますわ。ランニング程度なら外で
「あとは練習時間だなー。流石に私らも自分の練習時間が必要だし、付きっ切りは出来ねーしな~」
考えてみれば出るわ出るわ、大量の問題点。
目標を目指すのは良いが練習内容、場所、時間、どれもまともに望めそうにない中で底上げをするのだ。無理難題だと言っても差し支えはなかった。
「……差し出がましいが、自分から案を出させて頂きたい」
「他ならぬキミの問題なんだ、是非聞いてみたいものだね」
居心地悪そうにしていたジェシーが小さく手を挙げると、その場全員からの視線が集まった。
制服姿の美少女4人組に囲まれた用務員という光景は、まるでカツアゲの現場のようにも見えて仕方がない。
「前提として、君達に可能な限り負荷をかけさせるような真似はしたくないと考えている。まずは自分のスケジュールは優先してもらいたい。これは最低限通したい筋だと考えている」
「でもそれじゃあ」
「……勿論、夢を中途半端にするような志など持ち合わせていない。君達を最大限に利用させて貰うつもりだ」
「いい度胸じゃねーか! で、どういう案なんだ?」
「常識的に考えて平日昼間~夕方は練習は難しい、君達は学業にトレーニング、そして私は仕事だ」
「うん」「そうですわね」
「夜は君達も寮生活だ。抜け出す事そのものがリスクになり得る、そうなると中々夜にトレーニングをすることは難しいだろう」
「なら残す選択肢は……早朝かい?」
タキオンの言葉にジェシーは力強く
「考えるにそれ以外はないだろう。走るだけなら場所は選ばなくていい、公園も、神社もある。そして全員が早朝に集まる必要はないと思っている」
「一度に教えられる内容なんてたかが知れてるだろうしな」
「つまり、交代で見るって感じ?」
「その通りだ。そして、それは平日以外でも同様だと考える」
「おいおい。休日なら付きっ切りでもいーんだぜ?」
「非常に魅力的な提案だが……そこは君達にお任せする、休日なら練習場所は人間向けの陸上競技場が使用できるだろう。トラックは短いが、学園コースに近い練習は出来る筈だ」
ジェシーの提案に文句のつけようはなかった。これで練習場所、時間については問題なさそうだ。だが肝心
これについてはジェシーは教えを
「まずはジェシーさんの得意分野とかを知らない事には始まらないんだよねー」
「そういう事もあろうかと、少しばかりのデータなら此処にあるんだ」
「いつの間に!?」「へーどれどれ?」
タキオンが懐から取り出した資料を目に通せば、体重、筋量、スピードの推移や所感などが、難しい単語や数式、グラフを交えて書かれており、好奇心で
「……タキオン先輩、大変申し訳ないんですが、この内容を説明して頂きますか?」
「ええー? 一応分かりやすく書いたつもりなんだけどねぇ……」
仕方ないなぁ、の一言と共に用意されていたホワイトボード。
そこに自然な様子でタキオンが何事かを書き連ねていく。
「これはジェシーの投薬実け……んんっ! 健康サプリメントのサンプリングとしてデータ収集をさせて貰った内容だ。適正距離や脚質の変化、筋肉量などをデータ化している」
「ふぅん……これは距離適性*1についてですわよね。それは、勿論短距離ですわよね?」
「そう。当然ながら短ければ短い程向いている、スタミナ勝負はやめた方が良いだろうね」
「それなら1400よりかは1000mが良さそう。新潟競馬場*2を想定にするとか? あそこって直線だけだもん」
「ダートか芝だって言うと?*3」
「芝の方が良いだろうね、ダートはパワーがないとスピードが出辛い、人間の足ではどうしても限界がある」
「脚質*4は?」
「馬群に揉まれるのはよした方が良さそうだ。逃げ切りか追込でやるしかないと思うがね」
「逃げはちょっと望めねーから追い込みだな……」
「幸いにもジェシーには長い手足がある、食いつく事が出来れば目はあるかもしれないね」
「でも食いつく程度じゃ……あれ、そっか。一位を取る事が目的じゃないんだっけ」
「そう。頭から抜けがちだが今回の目的はレースで一位を取る事ではない。誰か一人でも抜ければ目的は達成なんだ」
「考えもしないような観点ですわね……」
わいわいひひん、ぶるるるん、と全員で盛り上がっていけば、あっという間にホワイトボードが埋めつくされていく。
そして全員が知りたい情報が下記のようにまとまった。
【UMA(ジェシー・応援)】
◆ステータス
・スピード:[G][6] ・スタミナ:[G][5]
・パワー:[G][11] ・根性 :[B+][835]
・賢さ :[G][20]
◆バ場適正
・[芝] :[F]
・[ダート]:[G]
◆距離適性
・[短距離]:[E] ・[マイル]:[G]
・[中距離]:[G] ・[長距離]:[G]
◆脚質適正
・[逃げ]:[G] ・[先行]:[G]
・[差し]:[G] ・[追込]:[C]
◆最高速度:
41.1km
「oh...」「うわ……」
「まあその……そうですわね」
「こんな感じだろうねぇ」
一同が思わず口をつぐんだ。
分かっていたが可視化してみるとかなり酷いステータスである。
このステータスを専属トレーナーなしでメイクデビューレベルまで持ち上げるのは至難の業のように思えて仕方がない。全員がその気持ちを胸に抱くと、ジェシーが皆に大きく頭を下げ始めた。
「……君達に要らぬ負担をかけさせる事を申し訳なく思う。それと同時に深く感謝する」
「私の身勝手な夢を叶えるのは容易な道ではない事は十二分に承知している」
「だが、どうしても私はこの夢を諦めたくない。ウマ娘よりも速く走るという、夢を」
「欲しい物があれば何でも渡す。金銭でも、食事でも、どんな手伝いもする」
「そしてどんな練習でも、どんな指示でも全力で応える。たとえ失敗で終わったとしても責めるつもりはない、だから」
「だから、頼む――私を強くしてくれ」
それこそ土下座しかねない勢いのジェシーに、顔を見合わせた全員。
しばらくするとマックイーンが全員の気持ちを代弁するかのように告げた。
「……乗りかかった船ですわ、貴方の行く末、最後まで見届けさせて頂きますわよ。ジェシーさん」
こうして『応援を応援する会』は静かなスタートを切り出したのだった。
§ § §
応援会の活動方針に沿って、ジェシー(被り物装備)の訓練が始まった。
平日の今朝はマックイーンが担当だった。
まだ民家に明かりすら灯らない朝の4時に集まった二人は、黙々と走り込みを行っていた。
本当はその被り物をしている理由も根堀り葉堀り聞きたい所であったが、やめておいた。意地でも突っ込んでやるかという気持ちの方が強かった。
「私達のランニングは基本的に10㎞程度を想定していますの。長いと20㎞かそれくらいかしら」
「……やはりと言うか、長いな」
「10kmでも片手間程度のウォームアップですわ。今日は抑えて走りますから、ついてきて下さいます?」
「……! あぁ」
軽快な足取りで走り出すマックイーン。
ついていくジェシー。
閑静な住宅街を超え、街路を通り越し、川べりを変わらぬペースで進んで行く。
スピードはマックイーンからすれば決して速くはない時速30㎞程度。
ジェシーもその程度のスピードは出せる事には出せるが、それを何十分間も維持できるかと言えば――難しかった。
「――はぁっ、はぁっ……はぁっ!」
「無駄な呼吸が多いからすぐにバテてしまうんですの! ペースを落としますから整えなさいな!」
完走こそやり遂げたジェシーだったが、完走時には見事にバッテバテ。電信柱に手をついて、しばらくは身動きも出来ないのだった。
§ § §
「ふわぁーぁ……おはよ……ってうわっ、なんでそんな被り物してるの!?」
同じく天気の良い早朝である。
あくびを隠そうともしないテイオーは、それでもきっちり時間通りに現れてジェシー(被り物装備)へと指導を行い始めた。
「ジェシーさんって走り込み以外にも筋トレはしてるよね?」
「あぁ。とは言え最近は走り込みがメインなので必要最低限だが……」
「ん。それじゃあこれからはもっと筋トレをしてもらいます! 体を支えているのは筋肉だからね、速く走るためには筋肉をもっともっと鍛えないと!」
ま、当然の話だよね、と笑うテイオーは、カバンに入っていたモノをジェシーに投げ渡す。
「ウマ娘用のリストバンドだよ、人間用は持ってないけど、ウマ娘に挑むなら頑張らないとだよね」
「……これは何キロあるんだ?」
「大丈夫だよ! 軽い奴持ってきたから……えーっと、5㎏だね!」
「……!?」
「今日はこれを両手足につけて筋トレしてみよっか、じゃあまずスクワット! いってみよー!」
何だかんだでノリの良いテイオー。だがそんな彼女の熱血指導はかなり激しく。
スクワット30回×3セット、腹筋30回×3セット、腕立て30回×3セットを終わらせた途端にジェシーはその場で轟沈した。
もー情けないなー、などと言いながら同じ条件で同じ回数を軽くこなしていたテイオーに、ジェシーは改めて畏敬の念を抱いた。
§ § §
「おっ、その被り物! ガムテープの艶が美しいじゃねーか、やる気満々だな!」
平日深夜。
ジェシー(被り物装備)とゴールドシップは以前のようにトレセン学園に忍び込んでいた。
たまにやる分にはいいだろ! とノリノリで提案した彼女は、深夜のコース場でひたすらゴルシと鬼ごっこを続けていた。
「……っ! ……っ! ……ぐっ!?」
「おっせーぞジェシー! それじゃ生まれたてのカマキリ以下だ!」
3分間という時間制限を設け、鬼を交代しながら広いグラウンドを駆け抜ける二人。
加えて鬼役に捕まるたびに強制的に肉のマークを顔面に書き込まれる謎ルールであり、今の所ゴルシが常勝無敗。既に数えきれない試行の後がジェシーの顔に克明に刻まれていた。
「いいか、追い込みっつーのはこうするんだ! まずは相手を見る! 穴があくまで見るんだ! こいつを抜かすぞ~~、ぜってぇ抜かしてやるぞコラ~~~って気迫を持て!
「あ、アリクイよりも……!」
「それで相手にその気迫を分からせてやったら、後ろからぐん、ぐん、ぐん! と近付いて、だん! だん! だん! で抜き去るんだ! 陸に打ち上げられたカツオのようにな!」
「か、カツオのように……!」
ゴルシもまた非常に情熱的なトレーニングをしているのが見受けられる。
だがいかんせんゴルシの説明は感覚的だ。
的を得ているようでそうではない内容を必死に紐解こうとするジェシーであったが……
「ちがーう! それじゃ冷凍パックのカツオだ!」
「お前アリクイ舐めてんの? アリクイに旦那を殺された妻の気持ちになって考えてみろよ!」
まだ彼女の教えを理解するには長い時間を要するようだった。
結局練習が終わるまで一度もゴルシを捕まえることが叶わなかったジェシーの顔は、『肉』で埋めつくされていたのだった。
§ § §
「成程。マックイーンが走力、テイオーが筋力、ゴールドシップがスタミナトレーニング、という感じかな?」
「……あぁ」
朝早くからタキオンの研究室に入り込んだジェシー(被り物装備)は互いに椅子に座って検査を受けていた。
タキオンの余り袖の中から出てくるあれよあれよと出てくる器具で、口腔検査や視力検査、そして体液採取などが行われると、続けて始まるのは問診である。
彼女は走行中の挙動、筋負担、そして心拍数の上限や発汗の度合いといった様々な内容を聞いてはメモに取る作業を繰り返している。
「ふむ……やはりキミは恵まれた体を持っているようだ。人間にはハードなトレーニングに思えたが、筋肉や骨に今の所強い負担はないようだね」
「……そうだな。特に違和感らしいものもない」
「羨ましい限りだね……ふむ。しかしそうだな、それなら次はこのサプリメントを飲んで貰おうか」
「分かった。……飲んだぞ」
「……キミね。私が言うのもあれだがもう少し疑う事を知ったらどうだい」
「約束を反故にするような相手ではないと思っているからな」
「はぁ……信用を預けてくれてどうも。お陰様でくすぐったい気分だよ」
タキオンの役割はトレーニング、というより体調管理がメインである。
人間よりも遥かにキツいトレーニングを課すのだ、何かあってからでは遅いため定期的に足の検診を行う事になっている。
ただジェシーの鍛えられた筋肉は今の所怪我もなく、すくすくと成長を続けているようだ。
「さて、言うまでもないだろうがレースを行う上で一番恐ろしいのは足の怪我だ。そして一番重視すべきなのは関節である。柔軟は今以上に念入りに。練習後のクーリングは忘れないようにだ」
「心得ておく」
「本来なら練習もニューポリトラック*5を使った場所で臨むのが適しているが……こればかりは難しい、学園が認めてくれるなら私も本腰を入れるんだけどねぇ」
非常に残念そうにしながらも、ジェシーの筋肉に手を這わすタキオン。
時に写真を撮り、時に異常がないか念入りにチェックする様は、まるで医者そのものである。
ジェシーは柔らかな指先で下
「……全く、ウマ娘と言うのはつくづく謎な存在だね」
「……?」
「そう思わないかい? キミは体重95kgで非常に健康的な成人だ。対する我々の体重は、平均的な女性とほぼ同等。40~60kgだ。約30~50㎏も体重差がある」
「……」
「大雑把に言えば運動量は筋量に比例する。キミは我々より遥かに多い筋量を持っている、だと言うのに運動量は我々の方が圧倒的に上なんだ」
「……そうだな」
「ウマムスコンドリア*6という物を知っているかい? それが原因である……と私は
髪のぼさぼさっぷりからして徹夜明けらしい彼女は、すっかり冷めきった紅茶をぐいっと飲み干すと、ぷは、と一息ついた。
ジェシーもウマ娘の研究は古来から行われていたのは知っていたが、そのような話は全く聞いたことがなかった。
耳に入る話は
「ともかくだ、ウマ娘はキミよりも軽い上に、筋肉の質はキミを凌駕している。軽い車体に強いエンジンなんだ、速いのは当たり前だよねぇ」
「私は重い車体に弱いエンジンを持つ車のようなものだろうか……」
「そう卑下をする必要はないさ。人類の最速を塗り替えているキミだし、まだ伸びしろはあるんだ、やってみるは価値はあると思うよ」
ただね、と区切られた言葉の後は、中々彼女の口から続かなかった。
不審に思ったジェシーが顔を上げると、タキオンは被り物ごしにこちらをじっと見つめているに気が付いた。
「覚悟はした方がいい。キミの目的は果たせない確率が非常に高く、そして一生走れなくなる可能性が常について回るだろう」
「……」
「目的は聞いている。その被り物に込めた思いも。キミの覚悟に水を差すようで悪いが、この行いが非常に分の悪い賭けだという事は自覚すべきだ」
「……言いたいことは分かる。だが、助力はしてくれるんだろう?」
「当然だとも。こちらとしても実験に協力してくれるのはありがたい。可能な限り手伝わせてもらうよ……でも、止め時はこちらで決めるから」
「……いや、それは」
「おいおい。仮にも私が手掛けるんだ、怪我で終わるような真似はさせたくない。言う事を聞かないと協力してあげないよ」
こつん、とダンボールの顔が叩かれたかと思えば、ジェシーの視界からタキオンは消えていた。
どこに行ったと探せば、彼部屋に併設されているベッドに横たわり始めていた彼女の姿見えた。
「私はこのまま寝るから、モルモット君に出くわさないように朝練なりなんなりに出かけたまえ。……ではお休み
もそもそと布団を被ったタキオンに、ジェシーはハリボテ越しに頭を