後悔はしていません
条件がある
どのようなものにせよ、条件があるのだ
『刻は満月』
『場所は森。竹林でも構わない。出来れば火を焚かないこと』
『腐った肉と、腐った果実を食べる。この時、腐った水でも構わない』
「なんていうかさァ、それ、ものすごくクレイジーな条件だよな?バカになんてしてないぜ?アタオカだとは思うが」
「いいから黙って従って。私が『雇い主』だから。私が上。あなたは下。別にいいのよ?あなたの助けなんてなくっても、時間はあるから、解明なんて容易いこと。鈴仙、そこの檻に近づかないこと!」
舐めたやがってと腹が立ったがそれ以上に好奇心がそれを殺した
大きな檻である
愛玩動物なんかを動物病院へ連れて行くときに使うようなケージではない
もっと大きな、熊?
「この檻、その『条件』に関わるのか?」
「条件とは別の理由で必要なの。あなたは死にたくないでしょ?私は別になくても構わないんだけど...」
「(やっぱりコイツ頭おかしいよなァ〜〜しかもコイツ
人のことを言える立場か?
というツッコミはさておき、檻の設置が着々と進んでいく
「今日が満月なのは都合が良かったな?」
「そうね?八雲が満月の日に訪ねろって言ってたんでしょ?」
そうこう答える前にさっさと行ってしまった
「八意様、これで最後です。第五次実験開始準備完了しました」
「よーし、あくびはすんだかしら?今日こそ突き止めてもう終わりにしましょう」
竹林に設置された檻に当該患者が連れてこられた
土方の兄さんである
腐った肉と水を食わされている
「うぇっ!う、う、」
しばらくして吐きそうになりながら堪えている
飲み込んだのか?アレを?
「吐き気がありますか?」
苦しみながら小刻みに首を振っている
それをどこか他人事のようにメモを取っている
「身体が火照りますか?」
首を横に振っている
「失敗ね。もう吐き出させて。お疲れ様。出していいわ」
ウジの涌いた腐肉と唾液とが混ざった腐った水が吐き出されなんとも言えない悪臭を放つ
「オイオイ...これじゃあまるで拷問じゃあないか。それはそうといい顔をしている。スケッチさせてもらっても?」
「スケッチは構わないけど...」
「アンタら狂ってる!こんなの食わせようなんて考えてるし、大体オメーはなんなんだよーッ!フザケてんのか!?顔を描くだ!?イケメンの俺っちじゃなくて体調悪い『今』をか!?舐めたマネしやがってよォォ〜!殺すぞ!?」
「おいこれッ!『失敗』じゃない!反応が出てるッ!『成功』してるぞ!?檻の外へ出た途端に反応してる!
意識を失って倒れ込んだ
「この攻撃性は?本人由来か、それとも全く別のモノか...」
「本来はもっと危険なんです。前回は私、五回も死にましたからね」
「そういう大事なことをなんでもっと早く言わないんだよ。早くいえば僕もなにか持ってくるくらいしたのに...ヘルメットとかな。まあいい。もう危険性はない。少なくとも僕は襲えないように書き込んだからな」
仕事が早いのである
「さて。ご開帳だな。『仁井橋仁三郎』次男なのに『三郎』。気に入らない。クソ親父」
「いやあの。そういうことを聞きたいんじゃないんです。開示可能な範囲でカルテ見せたでしょ?」
ちょっと怒っているような態度だが、妙に楽しそうであった
謎が解ける喜びか、はたまた全くの別のことか...
「『戌年戌の刻戌の方にて生まれる』これ生まれた時の記録じゃあないか?カルテと照合してみるか」
その後もカルテと同じ情報がゾロゾロと読み解かれてきた
病歴や怪我の程度と箇所...抜いた奥歯が真横倒しで酷い目にあったこと...
「信用してなかったんです。本音はね?胡散臭い八雲がいうことだから、眉唾ってわけです」
生まれ・生い立ち・家族構成・好き・嫌い含めて赤裸々にしたが、八意の思う望んだものはないように思える
イライラが募っているのが、聞くまでもない
調べているうちに時間だけが過ぎて、日が上りつつあった
「...ナァ。この際だからな?いっそ気にしないってのはどうかな?」
「はぁ?」
「君が欲しい情報はどこにもなかったんだ。
「...貴方になにか頼もうなんて考えた私がバカでした。やっぱり自力でやるべきことでしたね。報酬は鈴仙から。お疲れ様」
プイとして帰って行った
『怒らせたかも』
などと考えながら、当てつけがましいものだとして落とし込む努力をした
⭐︎⭐︎⭐︎
アレから数週間経って、朝刊を読んでいた所に射命丸が飛んできた
「露伴先生!新聞読みました!?」
「今まさに読んでいるが?」
「それ南部日報じゃないですか。北部日報は取ってないんですか?」
「ないね。取る気もない」
「そっかぁ...じゃなくて!今日の北部日報読んでくださいよ!」
そう言って手渡してきたのは東部日報である
「君さァ、『北』を読んで欲しいのか『東』を読んで欲しいのかはっきりしろよ。結局どっちを読んで欲しいんだよ?」
「どっちもです。昨日北東の地区でたくさんの動物が暴れ回る事故があったの知ってますか?」
「それは知ってるよ。それでそれがどうした?」
「で、ここから先なんですけど。逃げ出した動物は全部八意医師が面倒見てるって話なんですよ」
「で?」
八意の名前を聞いた時から不機嫌である
「行きませんか取材?」
「動物なら見に行きたいな」
⭐︎⭐︎⭐︎
永遠亭からは家畜小屋のような、動物特有のあの香りがしてきた
一体どれほどの動物を収容したのだろう?
「すみませェ〜ん!取材なんですけど!」
「すみませんお断り中なんです。写メもペケです」
鈴仙である
「露伴先生はこちらへ。射命丸さんはどうぞお引き取りを」
「露伴先生!あとで教えてくださいね!約束ですよ!」
引く時は引く強かさがあるのだ
露伴は治療室へ案内された
実験の際に使われた大きな檻に三十匹ほどの動物が閉じ込められている
見えただけで馬・犬・豚・猫・インコ・猿・ビーバー・カワウソまで確認でき、種は違えど仲睦まじげであり、落ち着いているように見える
「お連れしました」
「ナァここって動物病院だったのか?」
「動物。そう。動物ね?」
ニタニタ顔でケラケラと不愉快に笑う声が嫌に耳に障るが、どこか興奮しているようにも見えるのが一層不気味であった
「なにがおかしいんだ?」
「これがアレルギーですって言ったらどう思われますか?アハハ?」
オーバーワークが祟ってどこかが壊れてしまったのかもしれない
不老不死は心は治せないのだろうか?
「せめて面白い冗談言えよ」
「ものは試しにそこの黒と白のマダラの犬を
これまた妙に甘ったるい声である
「
『仁井橋仁三郎』次男なのに『三郎』。気に入らない。クソ親父」
「
「犬に変化してしまったのよ。全部。骨も肉も毛も。血液を調べたら抗原抗体反応がパーッって出てるの。信じられる?人が犬になってるあり得ないわアハハ」
どうしようもない事態に直面した時、まともなメンタルでは太刀打ちできないから意図的に心を壊すのだろうか?
「僕らが見ていたのは、人としての部分だ。そりゃそうだ。人間は、もとを辿れば動物だよな?だから人としての部分を見てばかりいたんだ...」
「『アレルギー』は『生理現象』!だから踏み込めなかったんだ!動物として本能的に拒絶する腐肉を喰った時!『動物側のアレルギー反応』が出たんだ!そしてそれがククク、より近い『戌年戌の刻戌の方』なら尚更犬に近いんだキャハハ」
「自然な形...もっといえばはるか昔。人間の祖先がネズミと大差ない姿をしていた頃か。野生を思い出したんだ。危機的状況により対処するために...!?」
⭐︎⭐︎⭐︎
八意医師はオーバーワークにより倒れ、数日の休養を取ってその後職務に復帰した
動物になった青年を含めた動物らは危機的状況を脱したのか、元の人の姿に戻ったようで、元気に仕事をしていた
日常は戻ったのである
「それで結局、どうだったんですか?八意先生がお休みしてるって聞いてあ、なんかコレは記事にできないなって思ってたんですけど、個人的興味で気になって」
「『山月記』だ」
「はい?」
「『人間は誰でも猛獣であり、その猛獣に当るのが、各人の性情だという。己の場合、この尊大な差恥心が猛獣だった。虎だったのだ。これが己を損い、妻子を苦しめ、友人を傷つけ、果ては、己の外形をかくの如く、内心にふさわしいものに変えて了ったのだ』だ。わかるだろ?強いストレスとか、危機的状況では内心や本性を露呈してしまうことがある。その一線を超えてしまった時。それが今回の騒ぎの原因だよ」
「よくわかりませんが...」
「人間ってのはそういうものだとだけでいいよ。そういう惨めなものなんだろ。きっと」
「(気になるのは、なぜ多くの住民が超えてはいけない一線を超えたのか...だ。誰かが、境目でウロチョロしてたのかもな?)」
超えてはいけない一線。その見極めは大切だろう
次回も楽しみに
次回更新はゴールデンウィークごろを目処に考えていますが、前後する可能性があります
また、花粉症にはお気をつけてください
前書き部分にあらすじを書いてほしいか
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書いてほしい
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いらない
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今のままくだらない雑談でいい
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何も書かなくていい