テイオー「大人の魅力ってなぁに?」マックイーン「ためらわないことですわ」   作:タク@DMP

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エアグルーヴ「お暇を頂きます」

「あっ、会長……」

 

 

 

 ──とある休日の昼下がり。

 花壇の世話をしていたエアグルーヴは、ふと花壇に水を撒いている会長、もといシンボリルドルフを見かけた。

 花の世話は半分ほどはエアグルーヴの趣味なので、それを手伝ってくれる会長には頭が上がらない。

 いや、そもそも。日々仕事に追われるばかりか、うっかり他の人に引き継ぐような仕事もやってしまうようなルドルフが働きすぎであることは誰の目にも明らかであった。

 

「会長っ、そこは私がやりますから休日くらい休──ッ!?」

 

 そこまで言いかけ、エアグルーヴは口を噤む。

 ルドルフは──水撒きのホースを握り、何かを訴えかけるかのようにエアグルーヴを見つめている。

 

(ど、どうされたのですか、会長!? しきりにこっちを……!? 私は何か粗相を……!? いや、身に覚えがない! で、では、何故!? 何故何も言ってくれないのです!? 私に何か気付いてほしいことが!?)

 

 ルドルフの視線は女帝を射抜いていた。

 

(お願いします会長、何か言って下さい! ホースを握り締めているだけでは何も分からないし、この空気はいたたまれませ──ホース?)

 

 ふと、エアグルーヴの視線はルドルフの握るホースに移る。

 そして徐々に気付いていくエアグルーヴ。

 

(ホース……ホース……hoos()ではなく、まさか……いや、しかし、幾ら会長と言えど、そんなしょうもないギャグを……!?)

 

 蒼褪めた表情のエアグルーヴにルドルフは無言で──微笑みかけた。

 

(やめろ私!! 目の前に立っているのは誉ある生徒会長で七冠バ!! 私は自分の手で会長を卑しく貶める気か!! し、しかし……!)

 

 自責の念に駆られるエアグルーヴ。

 なまじ賢い彼女は気付いてしまった。

 もう長い事ルドルフに付き合っているのだ。その悪癖にも気付いている。

 

 

 

(こ、これは、間違いない──hoos()を持つ、horse(ウマ娘)というギャグ──ッッッ!!)

 

「ウ、ウワーッッッ!!」

 

 

 

 全てに気付いてしまい、エアグルーヴは叫びながらその場を駆けだす。脱兎の勢いで。

 

「エ、エアグルーヴ……何故逃げるんだ……!? 私は何かしてしまっただろうか」

 

 ……最も、ギャグ云々は全部エアグルーヴの思い込みだったのであるが、大体会長の日ごろの行いの所為である。

 これが後にトレセン学園で語り継がれることとなる「ホースの暗黒面事変」である。

 

「……最近、花壇付近でハチをよく見るから報告したかったのだが……」

 

 

 

▼エアグルーヴのやる気が下がった!

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「エーッ!? それって、あのエアグルーヴが寝込んじゃった……ってコト!?」

「そう、なるな……ったく、世話を焼かせる」

(ブライアンにだけは言われたくないんじゃないかな……)

「何か言ったかコラ」

「何にも!」

 

 先日から夏風邪+知恵熱で床に伏せ、生徒会室に姿を現さないエアグルーヴ。

 それにより、生徒会はてんやわんやであった。

 副会長の一人、ナリタブライアンはこの件を伝えるため、珍しくテイオーの前に姿を現したのである。

 

「今思えば、兆候はあった」

「兆候?」

「ああ。此処最近のエアグルーヴは数々の仕事に追われていたからな……」

 

(副会長ーッ!! スイープトウショウがコースにバカでかい魔方陣を書いてまーすッ!!)

(何やってるんだ、あのたわけはーッ!?)

 

 この後、しこたま怒った。残念ではないし当然の帰結だった。

 

(エアグルーヴ聞いて。貴女にしか頼めないの。朝の外出時間をもっと早くしてほしいのだけど……じゃないと私、体が疼いて……んぅっ……私、走らなきゃ!! すぐ戻ってくるからーッ!!)

(オマエは一日何時間走ったら気が済むんだスズカーッ!?)

 

 この後、請願は却下された。尚、先頭民族のサイレンススズカが会話の途中に突如ターフへ飛び出すのは珍しいことではない。

 

(ゴールドシップがトレセンに反省を促すダンスを広めて、次のウイニングライブの楽曲にしようとしていますッ!!)

(そこーッ!! 鳴らない言葉をもう一度描くなーッ!!)

 

 この後、学園中に広がった。反省すべきはどう考えてもゴールドシップである。

 

(副会長!! 寝ているブライアン先輩を見つけましたッ!!)

(よし、今日という今日は教育的指導を……うっ、胃が……胃に穴が……!?)

(副会長ーッ!?)

 

 この次の日、ホースの暗黒面事変が起こり、今に至る。

 

「……とまあ、こんな具合だな」

「最後はブライアンの所為じゃんッ!!」

「心労とギャグが重なり、そこに夏風邪のトリプルパンチ。流石のエアグルーヴも参ってしまった。必然的に私に仕事が集まってくることになる……チッ」

「うん、ちょっとは反省してよねブライアンも」

「問題はエアグルーヴが倒れたと聞いたルドルフだ。あれからずっと、あんな調子でな」

 

 百聞は一見に如かず。

 ブライアンはテイオーを連れて生徒会室へ向かう。

 何時も通り執務に取り掛かっているルドルフの姿がそこにはあった。

 生徒会室の扉を少しだけ開け、覗き込むテイオーとブライアン。

 

「アレを見てみろ」

「うわ……」

 

 テイオーはいたたまれなかった。今のルドルフの状態を一言で説明するならば、

 

 

 

・トレセン学園公認マスコット ションボリ穴ぐらタヌキ

 

 

 

 悲しいかな、この有様である。

 

「う、うわぁ……」

「見ていられん。人前ならさておき、少し目を離すとこうだ。さながら番を亡くしたボス狼だろう」

「タヌキじゃん」

「……しかも、最後の一押しが自分のギャグとは思っていないようだ。目敏いやら鈍いやら……」

「気付いたらカイチョー二度とギャグ言えなくなっちゃうよ!!」

「それならそうだと伝えて来るか。二度とあいつのギャグを聞かずに済む」

「やめて! カイチョーのライフはもうゼロだーッ!」

 

 生徒会室に押し入ろうとするブライアンを引っ張って止めるテイオー。

 何であれ、エアグルーヴの体調不良がルドルフにも影響していることは間違いない。

 しかし、このままでは学園全体のピンチ。皇帝・シンボリルドルフの不調は、学園全体の士気の低下に繋がりかねない。

 

「そこで姉貴は考えた。どうすればこの窮地を脱することが出来るか」

「ブライアンじゃないんだ」

「うるさい話を腰を折るんじゃない、()を使うのは私じゃなくて姉貴の領分だ」

「いだだだだ、ぐりぐりはやめてよーっ!?」

 

 ブライアンは枝を咥え直すと──テイオーに向けて言い放つ。

 

「エアグルーヴの代わり……つまり、生徒会副会長の代理を立てるということだ」

「ふーん、大変だね、いたたた」

「何他人毎ツラしてんだ。どうして今日、オマエを此処まで連れてきたと思ってやがる」

「……ぴぇ?」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「……誰の頭がデカいって!?」

 

 誰も言ってない。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「おっはよー、カイチョーッ!!」

「……ああ、おはよう、テイオー。今日も元気だ──な!?」

 

 

 

生徒会副会長代理・トウカイテイオー

 

 

 

 

 現れたテイオーの胸には──デカデカとそう書かれたタスキが掛けられていた。

 

「……待て、テイオー。それは何のマネだ?」

「今日からエアグルーヴが復活するまで、ボクが生徒会副会長の代理をすることになったんだよっ!」

「ふっ、すまんがテイオー。生徒会副会長はどちらかに何かがあった時のために、二人居るんだ。業務はブライアンに任せれば良い」

「ツレないことを言うなルドルフ。私からの提案だ。正直今のあんたは見ていられん」

「ブライアン……!?」

「だから、ボクに何でも任せてね! カイチョー!」

「ははは、引継ぎもしていない仕事を任せるわけにはいかないし、仕事を教える暇なんてないぞ?」

 

 それにエアグルーヴの代わりなんて居ない、とルドルフは内心で呟く。

 幾ら可愛い妹分と言えど、代理なんて──と躊躇う気持ちがどうしても拭えなかった。

 

「ルドルフ。何もそんな事をさせる必要はないだろう」

「え?」

 

 

 

 バターンッ!!

 

 生徒会室の扉が開く。 

 現れたのは──慌てた様子の生徒であった。

 

 

 

「大変ですッ!! コースの使用時間を巡って、チーム同士でイザコザがッ!!」

 

 

 

 にやり、とブライアンは笑みを浮かべる。

 

「なーに簡単な事だろ。学園内で起こった荒事の処理……エアグルーヴがやっていた事をそのまま行えば良い」

「……ま、待て、テイオーにそんなことはさせられない。此処は私が──」

「知ってるぞルドルフ。あんたこの間から寝つけてないんだろう」

「うっ、何故それを」

「目の下にデカい隈が出来てんだ。余程エアグルーヴの事が心配と見えるがな」

「フッ……無礼るなよ、元々生徒同士の諍いは私が収めていたんだ、此処は私が出向く」

「あんたにまで斃れられたら、この学園はどうなる?」

「ぐっ……」

「安心しろ、こんな時くらい真面目に仕事はしてやる。行って来い、テイオー」

「うんっ、まっかせてよ!」

「テイオー……くれぐれも気を付けてくれ……」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「じゃーんっ!! 副会長登場なりーっ!! 争いごとを早急にやめるぞよーっ!!」

 

 

 

 やっぱり人選ミスだったのではなかろうか。

 ルドルフが見たらそう言いだしそうな滑り出しであったが、注目を集めるのは悪くなかった。

 クラシッククラスの後輩たちはテイオーを見るなり言い争いを止め、目を丸くした。

 

「なっ、トウカイテイオー先輩!?」

「どうして先輩が副会長に!?」

「それは、エアグルーヴが復活するまでの代理だからなのだーっ! どんな事件もサクッと解決してあげるぞよーっ!」

 

 話を聞くと、どうやらコースの使用時間登録の手違いで2つのチームの取り合いになってしまったのだという。

 両方共既に練習する気満々だったらしく、互いに譲るつもりはないらしい。

 血の気が多いのはウマ娘のサガであることはテイオーもよく知っている。故に──

 

「じゃあ、勝負で決めれば良いんじゃない?」

「え?」

「勝負、ですか?」

「うんっ」

 

 彼女は笑みを浮かべてみせる。

 

「此処に丁度、カードゲームがあるんだけど……チームで代表を決めて勝った方がコースの使用権を手に入れるってことで!」

 

 そんな彼女の手には──今トレセンでも流行りのカードゲームの束が握られていた。

 大体カイチョーに遊んでもらうために持っているものである。

 

「なっ! そんなのレースの実力関係ないじゃないですか! 運の要素が強すぎます!」

「ふっふっふっ、甘いね後輩ちゃん達。クラシック三冠……皐月賞は最も速いウマ娘が勝つ。菊花賞は最も強いウマ娘が勝つ。じゃあ日本ダービーは?」

「最も運が強いウマ娘が勝つ……!?」

「そのとーり!! それに、カードゲームを運だけとか言っている時点で甘いんだよね~」

 

 ブイッ、とテイオーは指を広げてみせる。

 

 

 

「とゆーわけで、誰か一人でもボクに勝てたチームがコースを使うってことで……」

「えっ」

「えっ」

「だってボクも遊びたいしー、ねー、ダメー?」

 

 

 

 可愛くゴネるテイオー。

 それを見て両チームは最早、争っていたことも忘れてひそひそと、

 

(テイオーさんってこんなに子供っぽい人だったの……?)

(まあいいや、テイオーさん相手だったらすぐ勝てそうだし……)

 

 取らぬ狸の皮算用を始めていたのであった。

 ……相手が狸ではなく、テイオーだということを大きく失念して。

 

 

 ※※※

 

 

 

「まーたボクの勝ちーっ!」

 

 

 

 ──死屍累々。

 両チームの面々は斃れ伏せていた。

 既に日は傾いており、もう練習どころではない。

 そう、彼女達も予期していなかった事態。

 それもそのはず、テイオーにゲームで勝てるのは、日頃から彼女に付き合わされているテイオーのトレーナーか、正真正銘天才のマヤノくらいなもんである。

 つまるところ完敗であった。

 

「あー楽しかったー! あれ? ボク何しに来たんだっけ? まあいっか! 忘れるってことは大したことじゃないよね! かーえろっと!」

 

 はちみーはちみーはっちみー……。

 機嫌の良いテイオーの歌が夕焼けのトレセン学園に響いていく。

 

「もうカードゲームは嫌だ……」

「……今日何もしてない……ト、トレーナーに何と説明したら……!?」

「か、賢さトレーニング……?」

「……ねえ」

「……何?」

「……今度からはコース、仲良く使おうっか」

「うん……」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 

 ──そんな訳で。

 とある昼下がりのカフェテリア。

 漸く減量も明けたマックイーンの頬は、心なしか綺麗なエレガンスラインを描いているように見えた。断じて太ったわけではない。きっと。

 それはさておき、エアグルーヴの代理にテイオーを立てるという対応にはかなり驚きを通り越して呆れかえっているようであったが……。

 

「ええ? 貴女が副会長代理ですの……?」

「エッヘン! エアグルーヴが戻ってくるまでの、ね! このままだとカイチョーは元気がなくなって、学園の危機だもん!」

 

(貴女が副会長でもトレセン学園の危機には変わりないですわ)

 

 マックイーンは言いたいことをすんでのところで飲み込んだ。偉い。

 

「それに、生徒会室ではカイチョーが可愛がってくれるしぃ、皆はボクの事を一目置いてくれるしぃ、良いことしかないんじゃなーい?」

「元々そうでしょうに……別に副会長代理だからって何にも変わってませんわ」

「そーう? それに、副会長ってことはエアグルーヴやブライアンと同じってことだよね! つまり、ちょっとは皆に大人っぽく見られてるってことだよね!?」

「ああ、そういう設定ありましたわね」

「設定って言わないで!?」

 

 

 

 

「──副会長代理ーッ! 花壇の方で助けを求めている生徒が……」

 

 

 

「ほらぁ、見てよマックイーン! 今日もボクに助けを求めに迷える子羊チャンがやってきたじゃなーい? これは、ゆくゆくは大人の女として、トレーナーに見て貰うための第一歩!」

「すっかり調子に乗ってますわね……」

「はいはーい! 副会長代理に任せるのだーっ!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「……何コレ」

「いやぁーあ、すまないねぇテイオー。実は、私特製の殺虫剤をスズメバチに吹っ掛けたら、凶暴化してしまってねぇ。どうやら、殺虫剤の成分とハチが未知の科学反応を起こしたようだ、アッハハハハハ!」

「そんなもの使わないでええええええ!?」

 

 

 

 ──此処はエアグルーヴの花畑。

 そこには、ハチの大群が発光しながら飛んでいる。

 塊になって飛ぶ様は──さながら巨大なハチのバケモノが飛んでいるかの如く、であった。

 そして元凶は悪びれもせずに状況を説明するアグネスタキオンである。

 

「いやぁー、ちょっとした戯れのつもりだったんだがねえ……失敗失敗」

「戯れでバケモノを生み出さないでーッッッ!? ワケワカンナイヨーッ!!」

 

※ハチは専門業者に頼んで駆除しましょう。

 

「だからちゃんと防護服も着て来てもらったんじゃあないか。さあ、後は頼んだよ」

「待って!! 無理!! 無理だから!! アレを倒すのは流石に無理!! 呼ぼうよ、専門業者!!」

「あんなものを外部の者に見られたら研究中止待ったなしに決まってるじゃないか。光ってる時点で私が関与したのはバレバレだしねえ」

「うん、中止すれば良いと思うよ研究!! 学園の平和、ひいては世界の平和の為に!!」

 

 そうこうしている間に。

 ハチは団子になって、テイオーとタキオン目掛けて突っ込んで来る──

 

「ウワーッ!! 追いかけてきたーッ!?」

「あっははははは!! 凄い!! 実験は失敗したが、記録は残しておこう!! この薬を今の研究に応用すれば──」

「言ってる場合じゃないよねーっ!? 下手したら命の危機なんだけどーっ!?」

「はっはははは、下手したらじゃないよ、今まさに私達は命の危機真っ只中さ!! でもねえ、レースと研究は命を賭してナンボ、そうだろう?」

「同意するわけないでしょ、そんなムチャクチャーッッッって、ぴゃあああっ!?」

 

 転んで地面に投げ出されるテイオーとタキオン。

 怒り狂うハチの群れが彼女を襲う。

 万事休す、と思われたその時──

 

 

 

 

「例えこの身が滅びたとしても……花壇の平和を乱す者は誰であっても許さん……ッ!!」

 

 

 

 

 ──いきなり、ハチの群れがぴたり、と止まる。

 

 

 

 

「さっさと去ねッ!! さもなくば、このエアグルーヴ、女帝の名に懸けて……ッ!!」

 

 

 

 

 大量の殺虫スプレーを掲げるエアグルーヴの姿がそこにはあった。

 あまりの気迫に──テイオーは言葉を失う。

 苦手な虫の手前、肌にはぶつぶつが出来ているのが遠目からも分かった。

 しかし女帝の風格は、失われることがなかった。

 ハチたちも──自らの命の危険を感じ取ったのか、一目散に逃げていく。

 その光景を目の当たりにしながら、テイオーはぽつり、と呟いた。

 

(き、気迫だけでハチを追い払った……でも……)

 

 

 

「──ワ、ワケワカンナイヨォ……」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「大丈夫か? テイオー」

「……うう、やっぱり副会長はエアグルーヴじゃなきゃ務まらないよ……」

「当然だ。まだまだこの座を他の誰かに譲るつもりはないからな」

 

 未だに、肌のブツブツは止まっていない。

 しかしそれでも、エアグルーヴは花壇の平和を守ってみせたのである。

 女帝、完全復活。

 腕を組む彼女の顔に、もう翳りは無い。

 

「……そっか。やっぱり、エアグルーヴはカッコいいね……」

「何だ。褒めても何も出ないぞ」

「ボクの次くらいに!」

「貴様……一言余計だ!」

 

 既に駆除業者を手配しており、ハチ騒動が収まるのも時間の問題である。

 ついでにタキオンの殺虫剤は全て処分され、研究施設の一定期間の凍結という処分が下されることになったが残念でもないし当然である。

 この一連の対応をスムーズに行うさまは、最早板についている。

 テイオーは、到底エアグルーヴの代わりなど務まらないな、と実感するのだった。

 そう思っていた矢先──

 

 

 

「エアグルーヴ!! 大丈夫だったか!?」

 

 

 

 現れたのは、シンボリルドルフだった。

 目の下は隈が出来ており、とても見ていられないものであったが、それでも走って此処まで来たようである。

 

「ああ会長──ご心配をおかけしました。ですが、これからあの虹色のハチが現れることは金輪際──っ」

 

 エアグルーヴの言葉は遮られた。

 

「……騒ぎを聞きつけて寮で寝ていたのに飛び出してきたんだろう? あまり心配をかけないでくれ……君が大事なんだ」

 

 ルドルフは、エアグルーヴを抱きしめていた。

 余程、心配だったのだろう。

 しかも彼女は不調を押して、花壇までやってきたのだ。

 

「ッ……会長……」

「君に負担を掛けないように、スケジュールを見直すことにしたんだ。いや……それ以前に、これからも、私の傍に立ってくれるだろうか?」

「……何を今更。前にも言ったはずです。女帝を侮らないで貰いたい。この身がどうなろうと……私の為すべき事は変わりませんから」

 

 エアグルーヴは当然のように微笑みかける。

 

「ずーるーいーっ!!」

「っテイオー!?」

 

 ぎゅむっ、と二人の間に挟まるテイオー。

 

「ボクも入れてくれなきゃーっ! カイチョーを独り占めはダメなんだからねっ!」

「あのなぁ、会長は貴様のものでは……」

「まあ、いいじゃないか。これで元通りだ」

「……そうですね」

 

 照れて頬を染めるエアグルーヴ。

 遠巻きから「付き合ってられん」とばかりにそっぽを向くナリタブライアン。

 色々あったが、こうして生徒会幹部は再び揃ったのである──

 

 

 

「エアグルーヴが復帰(フッキ)して……()()()分が良いからな……今日は()()な副会長を()()に祝おう!」

 

 

 

「……」

「……」

 

 

 

 

 ※※※

 

 

 

『お暇を頂きます。 エアグルーヴ』

 

 

 

 ……次の日の生徒会室。

 置手紙の中身は定型文の三行半(みくだりはん)であった。

 

 

「……」

「ごめんカイチョー……今回のは……擁護出来ないや……」

「クッソ……頭が痛くなってきた……」

 

 

 

▼エアグルーヴのやる気が下がった!

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「……誰の頭がデカいって!?」

 

 だから誰も言ってない。

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