テイオー「大人の魅力ってなぁに?」マックイーン「ためらわないことですわ」   作:タク@DMP

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テイオー「ライン、超えちゃったね…」

 ──春なのに、もう蒸し暑いある日のことだった。

 トレーナーの部屋にナチュラルに入り浸っているテイオーは、シャツ姿で冷房をガンガンに効かせて部屋に寝転がっているのだった。

 そして、デスクワークをしているトレーナーに構って貰えない彼女はすっかり拗ねて好き放題するのであった。

 

「……あー、やっぱり我が家は実家のような安心感だよねー!」

 

(頭痛が痛いみたいなこと言ってるし、此処はオマエの家ではないが?)

 

「そしてクーラーの利いた部屋で食べるアイスクリームは最高ーっ! こんな日に外に出てトレーニングなんてやってられないよ! ね? トレーナー!」

「後で走り込み10周な」

「何でさあ!! 今日はお休みだったよねえ!?」

「俺は休みじゃねーんだよ!! 言いたいことは幾つでもあるが、そんな薄着でこんな冷房ガンガンかけてしかもアイスまで食うとか、今すっごく健康に悪いことをしているって自覚は無いのかオマエは!?」

「ブーブー!! 別に良いじゃんさー!! 無敵のテイオー様が、こんなところでお腹を壊すなんて有り得ないのだー!!」

「冷房緩めんぞ」

「あああああ、やめてよおおお!! トレーナーの部屋は現代に残されたオアシスなんだよう!!」

 

 いい加減冷え切ってきた上に電気代が怖いので、トレーナーは容赦なく冷房を切った。

 数分後。

 トウカイテイオーだったものが、床上で伸びきっていた。

 トレーナーもトレーナーで暑さに耐えながらパソコンを前にカタカタ。

 

「超えちゃあいけないラインを超えちゃったねトレーナー……ボクは徹底抗戦も辞さないぞ……うう、ジメジメシットリするぅ……」

 

(よーし今のうちに仕事全部終わらせちまおう……パソコンが持てば、だけど)

 

 しかし、そろそろ限界である。よりによってハード本体が熱されて調子が悪くなってきたのだ。

 だが、決してテイオーに屈するわけにはいかない。

 そう思っていた束の間。

 振り向くと、彼女は冷蔵庫の中のアイスを全て食いつくしていた。

 

「……ぴえ。アイス無くなったけど、買いに行くのもダルいよ……」

 

(や、やりやがったコイツ……冷蔵庫の中パンパンだったのに……)

 

「くっくく、どうするトレーナー? ボクがくたばるか、それともクーラーをもう1回付けるか……」

「謝って俺の分のアイスを買いに行くなら許してやろう、ガキンチョテイオー」

「ぴっ……! このボクをあろうことかガキンチョ呼ばわり……!?」

「事実じゃんマックイーンもそう言ってんぞ」

「トレーナーも大概に強情だね……この無敵の帝王と我慢勝負がしたいだなんて良い度胸じゃない? 誰に喧嘩を売ったのか……思い知らせてやるもんね!」

 

 ──我慢比べは更なる領域へ突入する。

 啖呵を切ったものの、このままではジリ貧。プライドがやたらと高いテイオーは、どうにかしてトレーナーに土下座してもらった後にアイスを買ってもらえるまで退くつもりはなかった。

 ぐでー、と寝っ転がった彼女は、どうすれば再びクーラーを手に入れることが出来るかを巡らせる。

 そう言えばこんな寓話を聞いたことがある、と彼女はふと思い出した。

 

 

 

(おーいおーい知ってるか? テイオー!! ──白目を剥いたまま寝ると、目が痛ェ)

 

 

 

 こっちではなく。

 

 

 

(北風と太陽──旅人の服を脱がせるかで勝負をした二人。北風がどんなに吹雪いても旅人は服を手放さなかったが、太陽が照り付けると暑くなって服を脱いだ)

 

 

 

 ──ワガハイ、天啓得たりッ!!

 

 テイオーの頭に走ってはいけない電撃走る。

 押してダメならば引いてみせよ。引いてダメなら違う方向から押してみよ。

 それが恋愛の基本である、とか何とかマヤノも言っていた。

 

(テイオーちゃんは最後の一押しがいっつも足りないんじゃなーい? テイオーのトレーナーちゃん、真面目そーだしー? そんなんじゃいつまで経ってもトレーナーちゃん落とせないよ?)

 

 ──ボクだって、トレーナーを落とすくらい簡単に出来るやい!

 

 トレーナーにエアコンを付けさせるなら、このままジリ貧になるまで粘るよりもトレーナーがエアコンを付けざるを得ない状況に持っていく方が確実かつ即効性が高い。

 クソガキテイオーは、にひひと笑みを浮かべてみせる。

 

「……あー、あっついなー、服も汗でびちょびちょで気持ち悪いなー」

「……」

「仕方ないなー、脱いじゃおっかなー、どうしようかなー」

「……ッ!?」

「でもトレーナーも酷いよねえ、こんな暑い場所に可愛い女の子を閉じ込めて、服を脱ぐまで粘るなんてさー……でもボクも茹でタコにはなりたくないし、ぬいじゃおっと」

 

 パソコンの前から振り返れないトレーナー。

 しかし、その間にもパサッ、パサッ、と何かを脱ぐ音が聞こえてくる。 

 この帝王──脱いでいる。

 よりによって、成人男性の真後ろで。

 

(あ、あれ……? よ、よくよく考えたら、ボクすっごく恥ずかしいことしてない……!? で、でも、悪いのはトレーナーだもん……!)

 

 どう考えても人の家のアイスを全部食いつくした挙句、一日中入り浸っているテイオーの方が悪いのであるが、それはさておき。

 

「さーてと! ちょっとだけ涼しくなったぞーっと!」

「おいテイオー……やめろよ!? 万が一こんな所、誰かに見られたら……」

「あれれー? ボクの事、散々子供っぽいって言ったくせにさ、ボクの体を見るのは恥ずかしいんだー?」

「ぐぅっ……!!」

 

(恥ずかしいけど、もう引っ込みつかないし……! ええい、ままよ! 帝王は退かない!)

 

「もしクーラーを付けてくれるならー、もう1回服を着てあげてもいいけど? どーするー?」

 

 きゅっ、とテイオーの細い腕がトレーナーの首に回された。

 

「やめろテイオー、大人をからかうもんじゃないぞ……!? 他の奴にもこんなことしてるのか!?」

「ムカッ……トレーナーのことが好きなのは本当だもん。こんな事、他の人にはしないもん」

「だとしてもだなあ!?」

「……えへへっ、どうする? クーラーを付ける? それとも……振り向いちゃう? ボクの完璧に仕上がったカラダ……トレーナーにだったら見られても良いよ?」

 

 尚、理性は暑さで蒸発した。

 

「ボクのカラダは……トレーナーが作ったようなもんだよね……だから、振り向いちゃっても良いんだよ?」

 

 

 

「トレーナーさん! テイオー! 欲しがってたはちみつアイス、余ったから分けてさしあげますわよー!」

「……」

「……」

 

 

 

 聞き覚えしかない声が玄関から響いてくる。

 そして、かちゃり、と扉が開く音。

 

 

 

「──全く、二人共! 鍵が開けっぱなんて不用心です──」

 

 

 

「……」

「……ぴえ」

「……なっ」

 

 その場に現れたメジロマックイーンは硬直した。

 シャツを脱ぎ捨て、インナー姿でトレーナーに後ろから抱き着いているテイオーの姿が真っ先に目に入ってしまったからだ。

 そして、思わず振り向いたテイオーは──自分が何をやっていたのかを思い出し、顔が真っ赤になってしまう。

 

「ぴ、ぴえっ、マ、マ、マ、マックイーン……!?」

「う、うまぴょいですわ……まごうことなきうまだっちですわ!! 破廉恥ですわーッッッッッ!?」

「あっ逃げた!!」

「マズいテイオー、マックイーンを捕まえろ!!」

「うんッッッ!!」

 

 

 

▼トウカイテイオーのスピードが10上がった!

 

▼スキル「逃げ焦り」を獲得した!

 

 

 

 ※※※

 

 

 

(良かった……流石に全裸じゃなかったのか……)

 

(うええ……作戦失敗だよう……)

 

 

 

 数十秒後。

 テイオーは、トレーナーとマックイーンの前で正座させられていた。

 残当であった。自分が悪いということも自覚していた。

 

「……テイオー?」

「違うんだよう、トレーナーがエアコンを付けてくれないからあ」

「テイオー」

「はいごめんなさいすいませんでした」

「トレーナーも……テイオーを入り浸らせるから、こういうことになるんですわよ?」

「悪い悪い……折角の休みの日までコイツが一緒に居たいって言って聞かなくってな……オマケに、あまりにも狼藉が酷いし」

「テイオーが狼藉?」

「家のアイス全部食いやがった」

「重罪ですわね。メジロ家の名の下に命じますわ、切腹なさいテイオー」

「ちょっとボクが悪いの!? ボクを家に入れるトレーナーも同罪じゃんかさー!!」

「そもそもテイオーは無防備すぎですわ! 彼も立派な成人男性ですのよ!? 万が一のことがあったらどうするんですの!?」

「ごめんなさい……」

 

(まあ逆に組み伏せられるの俺の方なんだろうけどな……)

 

 

 ──説教は続くのだった。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ──マックイーンが差し入れのアイスを渡して帰っていったあと。

 項垂れた様子でテイオーはベッドに寝転がっていた。

 

「もーう! トレーナーの所為で酷い目に遭ったじゃんかさー!」

「入ってくる時、鍵閉めなかったからだろーが……」

「何だよう何だよう、皆してボクのことを悪者扱いしてさー……もう良いもん、ふて寝してやるもん」

「……」

 

 ぎゅーっ、と布団を抱きしめてそっぽを向いてしまうテイオー。

 とっくに陽は傾いており、部屋の中は涼しくなっていた。

 仕事も終わったところで、トレーナーはテイオーに呼びかける。

 

「テイオー、好い加減に機嫌直せよ……」

「……」

「……無敵のテイオー」

「……」

「……サイキョーに可愛くて無敵のテイオー様」

「……もう一声」

「……サイキョーに可愛くて無敵の、俺のテイオー様」

「……しっかたないなぁ~、トレーナーはぁ~!」

 

 ぽすん、とテイオーはトレーナーに身体を預けた。

 

「……ったく、女の子が安易に肌を見せ過ぎるなよ」

「ごめん……ボクもちょっと掛かり気味だったかも……あと、アイスは買って返すよ」

「アイスは貰った分があるから良いよ。取り合えず分かればよろしい」

「えっへへ……トレーナー……♪」

 

 ぎゅーっ、と彼女はトレーナーに抱き着く。

 URAファイナルを勝ち抜いてからというものの──テイオーはこうして甘える頻度が多くなっていった。

 優駿の一角として、レースに出る機会が多くなったこと。

 学園でも代表の生徒としてメディアに露出することが増えた事。

 それらも合わさってストレスが増えているのかと思っていたが──

 

(他でも無い、理由は俺なんだろうな……こんなに好かれるなんて。最近、俺を振り向かせようと、色々背伸びしてるみたいだけど)

 

 ──もどかしい。

 トレーナーと生徒という関係でなければ、早く気持ちに応えてやれるのに。

 

 

 

 

(……俺の心はとっくにお前のモノなんだよなあ……テイオー)

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ──その頃、生徒会室にて。

 

「──次の学園祭では、バンドフェスをやろうと思う」

「……バンドフェス、ですか」

「ああ。新しい催しをすることで、マンネリ感も解消できるのではないかと考えてね。まさに青天霹靂、ウマ娘たちの新たな刺激になるやもしれないというわけだ」

「成程……流石です、会長」

「そして我らが生徒会も、率先して参加する──無論、出場者側で」

 

 シンボリルドルフの手には──何処で何時の間に買ったのやらギターが握られていた。

 ウマ娘にはアーティストとしての才覚も求められる。

 それを改めて確認させる意図もあるのだろう、とエアグルーヴは勝手に読み取った。

 

「既にブライアンも誘っている。エアグルーヴ、君も一緒に出ないか?」

「会長の頼みとあらば断る理由など毛頭ありません」

「良かった。ちなみにチーム名に少し悩んでいてね」

 

 生徒会は文化祭においても生徒の模範となるべき存在。名前に悩むのは至極当然なのだろう、とエアグルーヴは好意的に受け止めていた。

 ……肝心のチーム名を聞くまでは。

 

 

 

「──バンドリルドルフ生徒会ーズ……どちらが良いと思う? ブライアンに聞いたら逃げられてしまって……」

 

(うわああああああ会長オオオオオオオオーッ!!)

 

 

 

▼エアグルーヴのやる気が下がった!




次回、波乱の学園祭編開幕……!?
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