テイオー「大人の魅力ってなぁに?」マックイーン「ためらわないことですわ」   作:タク@DMP

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モブウマ娘の名前が出てきますが、実馬とは一切関係ありません


テイオー「ボク、オバケ怖くないし……」(前編)

 ──ドリームトロフィーに進出したウマ娘たちは、秋の予選会やトレーナー対抗のチームレースを控えた夏合宿となる。無論、それはトゥインクルシリーズに向けて走るウマ娘たちにとっては、見本となるものになるだろう。

 負けられないレースを前にして、過酷極まるトレーニングを積むテイオー。

 そして、その傍で優雅に詰め将棋をするゴールドシップ。

 ライバルには決して負けたくないという思いが募り、例年よりも更に激しく競い合うマックイーンとライスシャワー。

 そして、合宿の視察に来ていたシンボリルドルフとエアグルーヴに「ウマンゲリヲンⅢ号機」を破壊され、海へと敢え無く沈むゴールドシップ。スケキヨの如く海に浮かぶのは、さながら浮沈船。

 その様を見ながら「やっぱり、先輩たちはすごい……ッ! あれが皇帝と女帝の力……ッ!」と感心するキタちゃんとダイヤちゃん。

 

「ッ……マックイーン!! 負けないよッ!!」

「ふっ、貴女こそッ……!! 出遅れないようにッ!!」

「ついてく……突き放すッ!!」

「エミール・シオランの『絶望のきわみで』を読んでさ……何でトマトはナスじゃなかったんだろう、って……ヘッ、これじゃあマンホールに落ちていったマックイーンに申し訳が立たないぜ」

「お前は真面目に走れですわッ!!」

「ゴルシッ!!」

 

 炸裂するマックイーンのドロップキック。

 哀れ、砂の上にゴルシは叩き伏せられたのだった。

 

「貴女は秋天控えてるのだから、真面目に頑張りなさいなッ!!」

「えー」

「えーじゃありませんッ!! ヘンなロボを使うわ、詰め将棋するわ、人前でカブトボーグとベイブレードの異種競技を始めるわ……そんなんじゃあ、いつかキタサンブラックさんやサトノダイヤモンドさんに追い抜かれますわよ! 私達と同じ場所に来れませんわよッ!!」

「あたしはいつも通り賢さトレーニングやってるだけだぜ」

「賢さトレーニングというのは、ああいうのを言うんですわよッ!!」

 

 マックイーンが指差す先には、ビワハヤヒデ作・京都レース場モデル。

 盤上で駒を動かし、レースの動きを振り返るというものだ。

 そこには、ドリームトロフィーを控えるダイワスカーレットと、夏休みに彼女のトレーニングに付き合うため、ヨーロッパから一時帰国していたウオッカの姿があった。

 

「なー、スカーレット、こんな駒動かしてたって、何にもわかりゃしねーよ、頭でっかちになっちまうぜ」

「後輩たちのレース姿からも学べることはあるはずよ。特に今年のクラシック戦線は荒れるの間違いなし……白毛のソーダシップには期待大よ」

「ふーん……それならオレは、日本ダービーに出たサイレンスレジーナを推すぜ、桜花賞ではすんでのところでソーダシップに敗れたが、見どころがある。ダービーでの活躍も文句無しだった」

「ティアラ路線からダービー路線に変えたウマ娘……まるでアンタみたいね」

「だろ? 桜花賞でも接戦だったし、この二人……まるでオレ達みたいじゃね?」

「……そうね。何だか懐かしいわ」

 

 幾度となくぶつかり合ったスカーレットとウオッカ。

 ドリームトロフィーに進出した今でも──しのぎを削り合う良きライバルだ。

 

「それで、スカーレットとウオッカは、どっちが秋華賞で勝つと思うんだ? ゴルシちゃんに教えてよう」

「……」

「……」

 

 ……ゴルシの余計な一言が、二人を良きライバルからバチバチの宿敵同士に再び戻してしまった。

 スカーレットの優等生メッキは一瞬で剥がれ落ち、ウオッカはそれを挑発するかのように腕を組んだ。

 こうなってしまうと、もう誰にも止められるわけがなかった。

 

「そりゃレジーナに決まってんだろ、スカーレット。お嬢様然としているように見えて、根性はある」

「バカね、ソーダに決まってんじゃない。ちょっとワガママなところはあるけど、走りは本物よ」

「レジーナ!!」

「ソーダ!!」

「かつての自分に後輩を重ねてんじゃねえよ!!」

「それを言うならあんたもでしょーが!! ティアラからダービーに路線変える奇特なウマ娘なんて、早々居ないと思ってたのに!! あんた何か吹き込んだでしょ!!」

「何が奇特だ、ダービーはカッコ良いんだよッ! こうなったら砂浜レースで勝負だッ!! 直接捻じ伏せてやる!!」

「望むところよ!!」

 

 賢さトレーニングとは何だったのか。

 レース場のモデルを差し置いて、二人は水着姿のまま砂浜で併走、もとい並走を始めてしまう。

 それを見てゴールドシップはハンカチを取り出し、涙を拭う。

 

「うっうっ、友情はかくも簡単にブッ壊れちまうんだな……」

「オメーの所為ですわよッ!!」

「ゴルシッ!!」

 

 決まるマックイーンのトルネードスロー。

 スカーレットとウオッカは、日が暮れるまで帰って来なかったんだとか何とか。

 

「……ふぃーッ、トレーニング疲れたァ~!」

 

 すっげー腹立つ顔でゴルシが言った。

 

「貴女が一番不真面目でしたのに……ッ!」

「トレーナーっ! ボクのこと見てた~?」

「あ、ああ……」

 

 テイオーのトレーナーは口ごもった。

 ウマンゲリヲンに全て持っていかれたことなど、口が裂けても言えない。

 日は暮れ、スカーレットとウオッカが大の字で砂浜に倒れ伏せたところで、今日のトレーニングはお開きとなった。

 

「クックック……さぁて、特訓が終わったら……後は待ちに待った肝試しの時間だな」

「え?」

 

 言い出したのは、ゴールドシップだった。

 

「えっじゃねーよ、寮の企画で肝試しってのをやんだよ。組み合わせは自由だぜ、ウマ娘とトレーナーでも良いし、ウマ娘同士でも良い」

「ハッ、子供っぽい催しですわね。そんなものに出たいという奇特な精神の持ち主はゴールドシップしか居ませんわ」

「ボ、ボクもだよ! こんな子供みたいな企画、誰が考えたってのさ!」

「生徒会長」

 

 ゴルシが指を差した先には──視察に来ていたシンボリルドルフが心なしか悲しそうな顔をしていた。

 

「……ボク、出よっかなー! カイチョーの考えた企画を悪く言うヤツなんて許せないよね!」

 

 シンボリルドルフの顔が心なしか、晴れやかになったのが遠目でも明かだった。

 しかしトウカイテイオーは、怖いものが極めて苦手という弱点を持つ。

 

(哀れですわねテイオー……こうなった貴女はもう、肝試しに参加せざるを得ない。せいぜい、明日はおねしょしないよう祈ることですわ!)

 

「肝試し、ですか……なかなか面白そうな企画ですね」

「トレーナーさん!?」

 

 立ち上がったのは──マックイーンのトレーナーであった。

 

「マックイーン。ステイヤーに必要なものは何か分かりますか?」

「それはもう、根性とスタミナ……ハッ!!」

「お理解いただけたでしょうか? 肝試しで根性を鍛える。これもまたトレーニングです」

「ですが、こんな催しに参加してはメジロの名折れ……ッ!」

 

 とか言ってるが、ナイターを夜通し見たいだけであることを長年の付き合いである彼女のトレーナーはよく知っている。

 だが、マックイーンが夜通し野球放送を見て夜ふかし気味になるのは彼にとっても頭痛の種であった。

 そのため、ここ等で彼女の根性を叩き直さねばならないと考えていた。

 

「キタサンブラックさんとサトノダイヤモンドさんは出るようですよ?」

「えっ」

 

 指差した先には──見知った後輩たちの姿があった。

 

「や、やめようよ、キタちゃん……」

「こんなお祭り事、参加しない理由が無いよダイヤちゃん! テイオーさんに、成長したあたしの姿、見て貰うんだ!」

「レースで頑張ろうよぉ~……」

 

 といった具合である。

 

「後輩に後れを取るのはメジロの名折れでは? マックイーン」

「仕方ないですわね……テイオー。肝試しでも私は貴女に勝利してみせますわ! メジロの名に懸けて!」

「あ、あっれー、そんなにホイホイ息を吐くようにメジロの名前掛けちゃってもいいの~? ボクが勝っちゃうしー?」

「ハッ、足が震えてますわよ」

「む、武者震いだい! ね、トレーナー!」

「俺も出なきゃダメ?」

「だーめっ!!」

 

 こうして。

 マックイーンとテイオーは、それぞれのトレーナーと肝試しに出ることになったのだった。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ──合宿所の周囲にある林でペアの肝試しが始まった。

 

 1番人気はトウカイテイオーとトレーナーのペア。大好きなトレーナーと一緒だが、顔色が悪い。ユニークなリアクションに期待。

 2番人気はメジロマックイーンとトレーナーのペア。澄ましたお嬢様然とした顔がいつ破顔するか、皆が心待ちにしている模様。

 そして、この順位は不満か? 3番人気はキタサンブラックとサトノダイヤモンドのペア。幼馴染コンビの絆が試される。

 

「尚、実況はこの私、ゴールドシップでお送りします。皆見てるー? ピースピース!」

「解説はこの私、アグネスタキオンで、お送りするよ」

「……ところで聞きたかったんだけど、何でタキオンが解説? オマエ、バリバリの理系じゃね?」

「何、それは後のお楽しみだよ」

「へーえ、面白そうじゃねえか。マックちゃんが破顔するところみられりゃあたしはそれでいいや。因みに、撮影はメジロ家の特製ドローン3機で行うぜ」

 

 ドローンはメジロ家の所有物のはずだが、どうやってゴールドシップが用意したのかは──また別の話である。

 

「ルールは、3つの別々のコースを、それぞれのペアが進むというもの……途中に何があるかは分からねえ地獄への一本道! いやあ、今から考えるだけで身の毛がダンスしちゃうぜえ~!!」

「クックック、ウマ娘が恐怖したときにどのような身体作用に現れるのか、これは肝試しという名の実験だよ!!」

「第一レースはこの3ペア……早速豪華なメンツで、ゴルシちゃん今からワクワクすっぞ!」

 

 この二人を実況と解説役にしたのは何処のどいつなのだろうか。

 

 

 

「最後まで脱落せずにコースを進み切れたチームの勝利だ! さあ、GⅢ肝試し賞第一レース……此処にゲートオープン!!」

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