一応コレでおしまいです。あと書くとしたら主人公が作中屈指のヒロイン(武闘派)とイチャイチャ(物理)する話ですかね。誰とイチャつくかはアンケートにしようかな〜。
試合が終わったというのに歓声はいまだ止まず。それは彼らの健闘を讃えてのことか、それとも興奮が冷めず、声を上げてないと収まらないのか・・・・・・ともかくその声は既に
「おつかれさん、オーガ」
そこは何の変哲もない控え室だった。どこにでもある長机にパイプ椅子、そして飲料水が入ってるであろう冷蔵庫。どこにでもありそうな普通の控え室だ。
そんな部屋にいるのは、男二人だけ。だが、その男達はどう見ても普通ではなかった。
一人はボディビルダーですら素足で逃げ出す程の筋肉を搭載したアメリカ人。もう一人は強さにおいて右に出る者はいない伝説の男だ。
「・・・・・・何の用だ、アンチェイン」
アンチェインと呼ばれた男、ビスケット・オリバはイタズラっ子な笑みを浮かべながらオーガと呼んだ男、範馬勇次郎へと歩んでいく。
「用も何もさっきまであんな殺し合いをしてたんだ。労うのは当たり前じゃないか」
「フン、
オリバはOh〜とやや大袈裟なリアクションを取りながら、しかし興味深く勇次郎の次の言葉を待っている。
勇次郎は、不敵に笑みを浮かべながら手に持ったコーラをあおる。
「急所を一切狙わない・・・そんな殺し合いがあってたまるか」
二人の言っている殺し合いとは、先程の岩技と勇次郎の一戦だ。ボクサーである岩技と格闘家、いや格闘生物である勇次郎ではそもそも闘いに関する認識が違った。
ボクサーは急所を殴らない、否、殴ることを知らない。倒す方法は数知れど競技ゆえに殺傷法など知る由もなかった。
「だが───あれはいい闘いだった」
そう言う勇次郎の顔はまるで子どもが大好物を名残惜しく口に含み続けているような、噛み締めているようなそんな幸福感が現れていた。
「その顔を見るに・・・・・・とてもデリシャスだったんだな」
「あぁ、アンチェイン。貴様も奴の味を知るといい」
「ハッハッハッ!!!オーガにそこまで言わせるのかあの少年は!」
オーガの言葉に大笑いするオリバ。しかしそこにからかいの意図は含まれていなかった。単純に、かの最強にここまで言わせたという尊敬・・・それだけだった。
「・・・あのオーガをも唸らせる武術か。しかし、最後はそれもオーガの一撃に砕けてしまったが」
「本当にそう思うか?」
「・・・・・・・・・・・・ナニ?」
誰もが見たあの決着、誰もが認める勝敗、物言いの余地など残されてないほどに完璧な終わり方だった・・・少なくともオリバには勇次郎と岩技の試合はそう見えていた。
だが、あの瞬間、闘いの当事者だった勇次郎だったからこそ気づいたことがあったのだ。
「流したぞ、岩技は」
「Really・・・?」
思わず日本語も忘れ、英語になるオリバ。しかし彼にとってはそれほどの驚きだったのだ。地上最強の、それもあの一撃に技をかける余地などオリバには到底掴めなかった。
「俺が最後に放ったあの一撃、アンチェイン、お前が受けたらどうなっていた」
オーガの質問にオリバは顎に手を当て思考する。果たしてあの一撃が自分に向かっていたらどうなっていたか。
真っ先にオリバの脳裏に浮かんだ光景は、手榴弾のように爆発する己の頭蓋、飛び散る肉片、鍛え抜いた筋肉が、溜め込んだ知識が、風に煽られた羽毛のように軽く、儚く吹き飛ばされていく様が鮮明に思い浮かんだ。
その想像を否定するように、何か出来たはずとあらゆる手段を想定するがいずれもオーガの一撃を止めることは叶わないと直感で理解した。
「・・・・・・あぁ、そうだな〜なんというか・・・・・・」
はたしてなんと言えばいいのか。一言、死んだと言えばいいのにそれを言うのは何故かオリバは躊躇った。
「フン、虚勢を張るな。少なくとも五体満足では帰れなかっただろ」
「・・・・・・」
いやそんなことはないッッッ!!!と異を唱えることがオリバには出来なかった。できることはただ薄い笑みを浮かべるだけ。
「にわかには信じ難い・・・。あれに技をする余地が・・・」
「俺のあの一撃、もらえば確実に絶命していただろう。だが奴は生きている・・・それが証拠だ」
自分の攻撃で死んでいないのだから何かしらの
「本能的に顔面の骨で流した・・・か。ククク、
パリンとガラスが砕ける音がする。
勇次郎の手にはさっきまで飲んでいたコーラの瓶だった破片が握りしめられていた。
既に獣は飢え始めていた。
───────────────────
「知らない天井だ・・・・・・」
一度は言ってみたいけど、なかなかその機会が無い言葉ランキング一位であろうフレーズを口にする。
視界に映るのはとても白く、清潔な天井。割とキレイな俺の部屋でもここまで白くはない。
「岩技!」
「あ、コーチ」
俺が寝ているベッドの横にコーチが心配そうな顔でこちらを見ていた。首を横に向けようにも、包帯やギプスが巻かれているのか動かせない。
「起きましたか、ちょうどいいタイミングでした」
聞きおぼえのない男の声がしたのでそちらに目線を向ける。パッと見、医者の男であることは分かった。男性にしては珍しいロングヘアに女性と見間違う程の中性的な顔立ち、ボディビルダーのマッスルボディというよりは彫刻のような芸術的肉体という明らかに一般人ではない男がそこにいた。
「はじめまして。私は君の主治医である
「あ、お医者さんでしたか。ありがとうございます」
そう言うと紅葉さんは紙の束を一枚一枚めくりながら、興味深そうに紙と俺を交互に見ている。
「ええと、どうかなさいましたか?」
流石にそんなことをされると患者である俺は不安になる。あの闘いで後遺症がないはずがないが、やっぱり幸運にも無傷・・・なんてことはないのだろう。
「いや、不思議に思ってな」
「はい?」
「このカルテを何度見ても、君が
「えぇ・・・・・・」
お医者さんから出てきた言葉に思わず絶句してしまう。生きていることが不思議ってそんなこと・・・・・・あぁ、なんか納得してしまった。
「骨折、脱臼、陥没、打撲、内出血・・・・・・色々とあるが一番酷かったのは内臓の損傷だ。ここに運び込まれてきた時、普通の医者なら匙を投げても仕方がないレベルだった」
「・・・本当ですか」
どうやら本当に死にかけだったらしい。身動きができない程に全身に巻かれた包帯、ギプス、そして紅葉さんの手に握られた大量のカルテが俺の怪我具合を物語っていた。
「あぁ、もっともこちらとしても君を死なすわけにはいかなかったのでな。私の腕にかけて君を生き長らえさせた」
「???」
イマイチ真意が掴めない紅葉さんの言い方に疑問符を浮かべていると病室のドアが開き、俺もよく知る人物が入ってきた。
「岩技、起きたか」
「徳川さん・・・・・」
もはや諸悪の根源と化した徳川さんだった。試合の時とは正反対の落ち着いた顔で徳川さんは俺の隣に腰を下ろす。
「えらい闘いだったの・・・・・・」
一言だけ、でもその言葉には様々な意味が、思いが込められていることがよく伝わってきた。
尊敬、励まし、労い、興奮、幸福・・・・・・
「えぇ、まぁ・・・」
そんな言葉に対して、不思議と『ふざけるな!!!』なんて思いは浮かんでこなかった。たしかにこんな闘いになるとは思ってなかった。少なくとも元のボクサーに戻ることも難しい程の怪我を負うほどだとは想像もしてなかった。
でもその責任を徳川さんに求めるのは少し違った気がした。それに俺も最後は楽しんでたしな。
ともかく・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「生き残った〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
正直、あの試合は最初から最後まで生きた心地がしなかった。てかいつ死んでもおかしくない・・・試合にはない、常に喉元にナイフを突きつけられているようなそんな緊張感があった。
「生き残った・・・か」
俺のそんな言葉を聞いた徳川さんはどこか嬉しそうだった。多分俺がどんな言葉を口にしてもあの表情をしたんだろうな。
「随分嬉しそうですね」
「そりゃあ、お主がどう言おうとあの闘いはワシには如何なる黄金にも勝るものだったからの。そんな戦士が目の前におる、スーパースターを目の前にして笑顔にならんやつがおるか」
「はは、スーパースターですか」
世界でもトップクラスの超大富豪のスーパースター、どこにでもいるボクサーに付けられる称号じゃないな。
「岩技、ワシらからしたらお主がしたことはそれだけのことじゃ。範馬勇次郎から五体満足で生き残る・・・ボクサーの中ではたしてそれが出来る者がいるかどうか」
徳川さんからの熱い賞賛の声。思わず頬が熱くなるのを感じる。
「岩技、お主にはあの闘技場はどう映る?」
「・・・はい?」
徳川さんが突然、俺に意味深な質問をしてくる。闘技場、あの場所がどんな所か・・・か。
法外、狂気、暴力、殺生、本能・・・・・・・・・うーん?
「どう映る・・・というよりあの闘技場は
「ほぅ・・・?」
割と真剣に考えてみた。あの場所は東京ドームの地下に建てられていて、砂の中に歯も混じっていて、法外の暴力がまかり通る・・・まぁ確かに異常だ。
でもそれだけなんだよな。
「俺も勇次郎さんも・・・・・・あそこで拳を交えたけど、でも闘争自体はどこでも起こせます。ただ、俺と勇次郎さんが出会ったのがあの場所ってだけ・・・っていうか」
ん?でも結局それをしたのは徳川さんだからただの場所というわけでは・・・ないのか?
「場所・・・・・・か」
「あ、ごめんなさい!変なこと言っちゃって!」
俺の言葉に考え込むように俯く徳川さん。ヤバい、そういえばあの場所は徳川さんの所有物だった!
「いや、その言葉を貰えただけでもあの場所を作った甲斐があったわい」
「・・・・・・・・・・・・え?」
俺の言葉に一人納得した様子の徳川さん。本当にこの人が考えていることは分からん・・・。
「そうじゃ、ここに来たのは報酬の話じゃ」
「「ッッッ!!!」」
徳川さんのその言葉に俺とコーチの間に緊張が走る。いやなんでアンタもやねん。
「ふむ、手渡そうにもここじゃ
「あ、ありがとうございます?」
狭い?なんでお金の貸し借りの話で狭いなんて言葉が出てくるんだ?
「あ、あの〜徳川さん?俺が貰う報酬ってどれくらいでしたっけ?」
「ん?あぁ100億じゃろ?」
「で、ですよね」
冷静に考えてみると100億なんて大金直渡しされても持って帰れないか。
「───にワシからの個人的な報酬も含めて500億、お主に渡すことにした」
「・・・・・・・・・・・・」
「む、心拍数が上がっているな」
「岩技ぃ!?」
500億って、そんなすぐに用意できちゃうもんなの?怖い、金持ち怖いよ〜。
「言ったじゃろ、あの闘いは如何なる黄金よりも価値があると。さしおり
新手の脅迫かな?まだ上げれるよでじゃあ上げましょうって言えない値段なんだけど。
「おい岩技、値上げしないのか?」
うるさいぞコーチ。自分の事じゃないからと言って好き放題言うんじゃない。
「ええと、値上げは大丈夫です」
「なんじゃ謙虚じゃのう」
「あは、あはは・・・・・・」
まだいけるでしょとか言う度胸俺には無いから。てかもう充分過ぎるほど貰ってるから言うことは無い。
「おぉ、そういえば勇次郎から伝言を預かっとるんじゃった!」
「・・・え?」
勇次郎さんからの伝言?こんな姿にしたんだから気遣いの一言くらいは欲しいんだけど・・・来ないんだろうな〜。
「『次を楽しみにしてる』・・・お主本当に好かれたのう!」
「心拍数200オーバー・・・凄いな君の体は・・・・・・」
「岩技ぃ!?岩技いいいいいい!!!!」
────────────────────
さて、あれから一年ほどが経った。俺、流野岩技はというと変わらずボクサーとしての人生を謳歌している。
死にかけの傷もすっかり癒え、最近はアメリカ進出の話も出ており、コーチも俺もちょっとだけ浮かれ気味だ。
そんな俺が新しく始めたことがある。
『岩技ぃ、次の相手が決まったぞぉ!』
「あ、徳川さんお疲れ様です」
『またあの闘技場でお主の活躍を見れると思うとワクワクするぞ!』
「あはは・・・頑張ります」
ボクシング・・・ではなく『流水岩砕拳』流野岩技として地下闘技場で闘うことだ。
「よし、今日も強くなろうか!」
とりあえず終わりです。ここからの展開が思いつかなかったのもあるんですけどね。
最近ケンガンアシュラにハマりまして呉雷庵(憑依)の妄想に取り憑かれちゃってるので次書くのはこれかもしれません。
誰とイチャつく?(物理的に)
-
元祖ハーレム(ピクル)
-
かませ犬なわけないだろ!(オリバ)
-
噛道!(`・ω・´)キリッ(ジャック)
-
その他(鎬兄弟とか相撲とか)