Fate/Accelerate night:間桐慎二のサーヴァント   作:倉之助

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DENGER

 現在、僕は空をとんでいる。

 正確には、リツカに姫抱きされてフリーフォールしている。

 あのあと、リツカが連れてきていたサーヴァントと合流した僕らは、校舎に侵入した魔獣・ウリディンムを殲滅した。

 リツカは意外と戦える。緑槍と機関銃、そして九字兼定という銘の日本刀と。獲物を切り替えながら状況に応じて戦い方を変える不思議な戦闘スタイルはきっと、敵に勝つことより生き残ることを重点に置いているからだろう。

 投擲したかと思うと荒々しく乱れ突き、かと思えば水面のように静かな防御を重視した動きに変える。恐らくリツカは槍捌きが違う流派を会得してる。

 剣術もそうだ。速さに重きを置く点はどれも同じように見えるが、攻撃の質というのだろうか、戦い方が万華鏡のようにコロコロ変わるのだ。

 一つを極めるのではなく、多くを覚えるということを目的としたような戦闘は、必要だから覚えたというようで。

 

  「(いや、実際そうなんだろうね)」

 

 覚えたから使うという魔術師のあり方とは異なると、再確認した。

 リツカに倣って、屋上から校庭を見下ろす。轟々と燃える一角がやたらと目に入った。

 

 「二階は終わったぜ、マスター」

 「ありがとう、燕青」

 

 しゅたりと、フェンスを飛び越えて入ってきたアサシンにリツカは笑顔で礼を言うと、礼装を全て端末に仕舞う。

 

 「敵対生命体(エネミー)、減ったね。」

 「校内の魔獣はセイバー陣営が討伐してくれてるっぽいぜ。衛宮士郎だっけか、あのマスターが令呪使ってセイバーの姐さん呼んでな」

 

 僕は再度外に視線を向けた。リツカは減ったと言うが、僕にはその違いがわからない。

 未だに魔獣が溢れかえる校庭。もう校外からの侵入はないから増援はない筈なのに、気付けばそこに魔獣がいる。

 じっと、敵を俯瞰して気付く。

 

 「(死体の数が少なくないか?)」

 

 もう一度、見る。やっぱり少ない。ランスロットが作った身動きが取れなくなるほどの死体の山がどこにもない。

 

 「校舎内はもう敵はいないんだよね?」

 「いないよぉ、エルキドゥにも確認させるかい?」

 「ううん、燕青が見落とすわけないだろうし。(あと、エルキドゥいないし)」

 「照れるネェ」

 

 リツカの意味深な空白を含む言葉に、アサシンは軽く答える。

 リツカは最後にそっか、と呟き…

 ____窓の向こうで、地震のような唸り声が響いた。

 

 「なんだ!?」

 

 身を乗り出して外を見る。驚愕に目を見開く。

 

 「(なんだよ、あれ…!)」

 

  ……影だ、影、大量の、触手のような影が地面から吹き出している。ずるりと伸びた黒い触手は、地面を這いずりまわる。

 倒した魔獣の死骸が、ずるずると黒い影に絡めとられて、中に引きずり込まれるように溶けていく。

 そして、きっと校庭にいる彼らは気づいていないのだろう。屋上にあるからこそわかる、黒い影が『紋様』として溢れていることを。

 

 「(あれは、魔法陣…!)」

 

 まただ、また、地面の底から唸り声が聞こえる。影がまるで何事もなかったようにきえて、かわりにバキバキに割れた地面だけが残った。

 干上がった大地のようなヒビ。それがどんどん増えてゆき、ぱき、と。

 たまごの殻を破るように巨大な獣の爪が出現した。

 地面から現れたのは、今までの魔獣の比ではないほど巨大な獅子

 

 「太陽の獅子、ウガル…!」

 

 立香が厳しい目でそれを睨む。続きの言葉にならずに、唇が小さく動いた。

 

 「おい、リツカ、まさか…!」

 「私たちも加勢しよう。」

 

 言葉としては短く、完結だ。慎二の頬がひくりと引きつる。

 リツカはしゃがみ込むと、僕の膝裏に手を回す。

 

 「は……うわぁ!」

 

 視界が急に上昇。「よっ」なんて言って軽々しく僕を抱き上げたリツカが、フェンスに足をかけた。

 

 「……はぁ!? 

 おい待てバカ! ここ、屋上だぞ!?」

 「慎二黙って。舌噛むよ!」

 

 とん、と軽く蹴って、浮遊感。青空が近くに見える。

 

 「アサシン、着地任せた!」

 「いいよぉ」

 

 そのまま、リツカは飛び降りた。僕は咄嗟にフェンスに手を伸ばしたが届かず、かわりにリツカの髪を引っ張る。

 

 「ぎゃあぁぁぁあ!!!」

 「痛い痛い痛い!」

 

 風が硬い。殴られているかのように感じるほどの衝撃に僕は反射で悲鳴をあげた。迫りくる地面が恐ろしい。

 髪を握る手を解いて、両手をリツカの首に腕を回した。縋るように、ぎちぎちに抱きつく。地面が、近い。

 ズドン!

 アサシンがしっかりと両足を地につけて、踏み締める。舞い上がった土埃の向こうには、魔獣の影が見えた。グラウンドだ。

 ふわりと姫のように下された僕だが、足が震えてうまく立てない。リツカの右腕に己の腕を絡ませて、なんとか立っている状態だ。

 

 「おま、おまえぇぇえ!!」

 

 がちがちと震えで歯が鳴る。土埃でけほけほと咳をするリツカが、「あー、はいはい」なんて言って子供を甘やかすように頭を撫でる。違う、そうじゃない!

 

 「さぁて、マスター。

 第二回戦と洒落込むかぁ?」

 

 アサシンが、にまりと笑う。彼の虎のように鋭い金色の瞳には、無数の獣が写っている。

 ぎぎぎ、と首を回せばそこにあるのは先ほどの比ではないウリンディムの大群。

 そして、それらに襲われる金髪の女と、衛宮がいた。

 

 「加勢よろしく、私の燕青」

 「いいよぉ〜!」

 

  リツカはキャスター・クー・フーリンの杖にそっくりな、木の杖を構えて微笑んで、ポップコーンがはじけたように、アサシンが飛び出した。

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