Fate/Accelerate night:間桐慎二のサーヴァント 作:倉之助
今後の方針が決まった。私達はサーヴァントを一騎も脱落させず、冬木市のどこかにある大聖杯を探し出し破壊しなくてはいけないようだ。
どんな無理ゲーだ、と思うが、やるやらないの話ではなく、やらなくてはいけない。ならば、精一杯がんばって説得するしかない。
閑話休題。
さて、流れに流れていたアルバイトの話をしようではないか。日給のバイトは少なく、さらに手渡しとなると数も限られていた。(なぜ手渡し?と思うかもしれないが、即日開設できる銀行がないからと言うだけである。」だが、時給もそれなりで、日給手渡しという、とてもいいバイトがあったのだ。
一つは穂群原学園近くのちょっとおしゃれな喫茶店。もう一つは…ホスト。
「と言うわけで、ランスロットはホスト一本、ロビンは情報収集をしながら時間がある時はホスト業もやってほしいな。
燕青は他陣営の調査、清姫は私と一緒にカフェでのバイト、マーリンは工房の維持、エルキドゥはその護衛ね。」
「妥当なところだね。」
「私に異論はありませんわ。」
「じゃあ、そういうことでいいっすかね。」
色々決まりかけていたその時、待ったがかかる。
「ま、待ってくださいマスター!なぜ私がホ、ホストなど…!」
「ヒトヅマニアには天職ってヤツじゃないすか?」
「とぅわ!?」
ロビンの殺意しかない言葉に、ランスロットは吐血した。未だに
哀れな姿のランスロットを華麗にスルーして、私はマスターの目をしっかりと見つめた。
「マスターは、魔術礼装を使いこなせるように訓練をしてほしい。」
「魔術礼装の訓練?」
慎二の疑問に答える事なく、私は礼装、カルデア制服の予備を取り出す。礼装が壊れると死活問題なので、必ず2着ずつ持ち歩いているのが今回役に立った。ん?どこから取り出したのかって?実はこれ、支給されている時計型通信機の予備機能だったりする。この通信機は他にも概念礼装を収納したり、
「魔術礼装はおとぎ話の魔法使いの杖みたいなやつ。マスターなら知ってるかな?」
「それぐらい、知ってる。」
「そっか。」
私は慎二に礼装を差し出して、「これ着て」と言う。女物の服装に、あからさまに慎二の顔がひきつる。
「僕に女装しろって?」
「まあまあ、いいからいいから。」
「よくない!」
駄々をこねる慎二の胸に、無理やり礼装を押し付けた。必然的に、慎二は礼装に触れる。その瞬間、私サイズの女物だったカルデア制服はたちまちサイズアップし、形まで女物から男物へ変化した。
「その礼装の効果は応急手当、瞬間強化、緊急回避。使い勝手がいい礼装だから、使いこなせればマスターを守る武器になる。
魔力バックアップはカルデアからきてるから、魔力切れの心配も基本的にはないよ。
一度使うと次使えるまで時間かかるけど、使い所さえ間違えなければ多分大丈夫。」
礼装の説明をすると、慎二はじいっとカルデアの白い制服を見つめる。何秒だっただろう、急に立ち上がった慎二は、出来たばかりの自分の部屋に引っ込むと、礼装を着用して戻ってきた。白い礼装は慎二によく似合っている。もともと綺麗な顔をしているのだから、何をきても似合うのだろう。
「…それで?」
慎二が、みたことがないほど真剣な顔で私に聞いた。
「どうやってつかえばいい?」
彼の瞳は、プレゼントを待つ子どものような光が宿っていた。なんというか、うん、可愛いと言えるのではないか?
「始めるなら早いほうがいいだろ?
まぁ、僕は天才だから、すぐにマスターするだろうけど。」
言い訳をする子どものように早口でそう言う彼の耳は、うっすら紅色に染まっていた。
幼稚園児を見ているような微笑ましさがある。見れば、サーヴァントのみんな子どもを見る目で慎二を見ていた。ちなみに、彼らは早々に私たちを作戦会議のメンバーから外し、今後の戦略を練っている。私は早々に戦力外通告を叩きつけられた。
まあ、聞いても兵法とかいまいちわからないけどさ!
「そうだね、早いほうがいいね。なら、今すぐ私と一緒に、練習しよっか。」
故意ではないにしても、騙している後ろめたさ。誤解という言葉に隠した真実を隠すことに後ろめたさを感じる。
今、この瞬間を、壊したくないと、他ならぬ私が強く思ってしまったから。
まだ、この少年を騙し続けるしかないのだろう。
……でも、たった一度の説明で礼装の魔術が使えたのには少しだけ納得がいかない。
「なんでできるの…」
「逆に、なんでできないのか僕にはわからないね!」
上機嫌で的に向かってガンドを撃ちまくる慎二を見てちょっとしょっぱい気持ちになった。