碇シンジは夢を見る   作:ゼガちゃん

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お待たせしました。

タイトル通りにシンジ君が学校行きます。

遂に学園の面々の登場です。


ドッキドキ☆学園生活

シンジがミサト宅に住むようになってから2日経過した。

あの後にエヴァに乗る為の訓練をNERV内で受けていた。

走り込みからゲームのようにシミュレーションを行うものまで。

射撃訓練なんてテレビの向こうでしか見ないような訓練まで行うとは思わなかった。

 

他に驚いた事と言えば、ミサトの家でペンギンを飼っていた事だ。

名前はペンペンと言うらしい。

種類は「温泉ペンギン」と言うもので、無論ながら『平行世界』では存在していなかったのでセカンドインパクト以降の新種だろう。

最初に訪れた時はリビングしか行かなかったので、帰宅後に風呂場にて遭遇した。

 

あとはアスカだ。

彼女はミサト宅――より正確には第三東京市にさえ来ていなかった。

リツコから聞いた話では、今はNERVドイツ支部に居るとの事だ。

彼女と会えるのはもう少し先らしい。

 

はてさて、シンジもNERVとミサト宅の往復、しかもいつ来るのかも分からない使徒を相手にピリピリしていては精神的に参ってしまう。

毎日訓練に明け暮れていては、勉学が疎かになってしまう。

『平行世界』へも、この間に行く事は無かった。

元より自由意思で行けるものでもなく、そこのところはシンジとしても不思議に思わなかった。

まあ、『平行世界』で勉強できますなんて言おうものなら病院へ連行されるのは目に見えていた。

故に彼には他に重大なミッションが与えられる事に。

 

「学校に通う事になるとは、ね」

 

それが「学校へ通う」というごくごくシンプルなもの。

名前は「第壱中学校」である。

『平行世界』では中学生の『碇シンジ』が通っていた学校と同じ名称であった。

こういうところまで同じ箇所があるとは。

 

何故、学校に来ているのかと問われれば中学生である以上、学校に通うのは義務であるから。

碇シンジは中学2年だ。

義務教育の真っ最中であるのだから、国の方針に従って勉学にも励むべきだ。

 

これはシンジ自身にも大事な事である。

聞けば使徒は15年ぶりに現れたとか。

次の襲来もそれだけの長い期間現れない可能性だってあるのだ。

そうした場合、シンジが仮にNERVを辞める事になれば「小卒」という肩書きになってしまう。

 

将来が安泰の公務員であるNERVに所属し続けるのが理想だが、何らかの理由で辞めざるを得なかったり、逆に全ての使徒を倒してエヴァンゲリオンが必要で無くなった場合の事を考えれば義務教育期間は当然ながら高校は最低でも卒業しておきたい。

 

『碇シンジ』は既に将来の夢を持っている。

シンジにはまだ将来に就きたい職業やなりたい自分のビジョンが見えずにいる。

こういった事に触れて、将来の夢を見付けた時に最低限の事をしておかないで後悔する事だけはしたくない。

 

―――それに、こういう平和な時間は結構大事だと思う。

 

これは完全に戦闘ものの作品のお約束でもある。

常にある日常が知らず戦いの支えになっているかもしれないパターンだ。

 

そうでなくても、こちらで気心知れる友人の1人でも出来ればシンジとしても息抜きがしやすくなる。

息の詰まる生活をして、倒れてしまっては元も子もない。

それにもしかしたら『平行世界』での友人と会えるかもしれない……そんな期待も持っていた。

 

「では、転校生を紹介する」

 

「はい」

 

担任教師からのお達しにシンジは返事をしながら教室へと入る。

シンジの一方通行で知った顔も多い。

 

新しい環境の中へ身を置くのは“何度経験しても緊張するものだ。”

そして、こういう時は親しみやすいネタを挟むのが掴みはOKというやつだ。

 

―――今期の旬なアニメはチェックしてる。それに王道な作品は僕の頭の中に全てインプットされている。

 

ネタと言っても適当が過ぎては駄目だ。

下ネタはNGなのは当たり前。

しかし、国民的アニメや特撮というのは多感な年頃では視聴しない可能性が高い。

となると、アニメ化もされている人気漫画、しいては中学生位の子が趣味としている話題がベストだ。

しかし、クラスが何で賑わっているのか不明なのでアニメネタに絞るのが良さそうだ。

 

残念ながら女子ではないので、そっち方面の話は疎い。

まずは男子と良好な関係を築く事が先決だ。

クラスの輪に溶け込む事が碇シンジの現在の最重要ミッションだ。

 

「初めまして、碇シンジです。趣味はラノベ、漫画、アニメ関連と料理です。この前扇風機の前で『あー』ってするやつの大会に出たんですが、予選で敗退してしまいました。よろしくお願いします」

 

「どんな大会や!!」

 

「ほう。恐ろしく速いツッコミ。僕でなきゃ聞き逃しちゃうね」

 

「それは無いやろ!!」

 

シンジの自己紹介に即座にツッコミを入れる声がした。

声の主へと視線を向ければジャージ姿の少年――鈴原トウジの姿があった。

ここへ来て、ようやく『平行世界』でも会えた他の人物との邂逅だ。

 

「ちょっと鈴原。ツッコミは良いから静かにしなさい」

 

「ワシのせいなんか委員長!?」

 

トウジのツッコミを一刀両断したのは洞木ヒカリだ。

どうやらこちらでも彼女は「委員長」の任に就いているらしい。

 

「ごめんね碇君」

 

「ううん。彼みたいにノリの良い人が居てくれるのは僕としても楽しいから問題ないよ」

 

委員長としての任に就くヒカリの苦労は絶えないようだ。

 

「じゃあ、質問のある人は挙手して。それで碇君が指名して答えてあげてくれない?」

 

「それが良さそうだね」

 

シンジのとんでも自己紹介にウズウズし始めている一部のクラスメイト達。

伝わる人にはしっかり伝わっているようだ。

かくして、転校生・碇シンジへの質疑応答が始まった。

 

「何処から来たんですか?」

 

「長野からです」

 

「料理は誰から習いましたか?」

 

「母さんに。今はネットでレシピを拾って色々と試してるかな。食戟ならいつでもドンと来い」

 

「スポーツはしてますか?」

 

「身体を動かす程度には。いつか分身してテニスしたり、存在感を消してバスケしたり出来るようになれたら楽しそうですね」

 

「遊○王で組んでるデッキは何ですか?」

 

「H○ROかな。良く使うカードはエ○ーマンとダーク○ウだね」

 

「他のTCGも知ってますか?」

 

「主だった種類のは知ってるよ。他にも遊んでるものもあります」

 

「三大好きな言葉は?」

 

「『ありがとう』『頑張ったね』『大好き』だよ」

 

「Are you ready?」

 

「出来てるよ」

 

「実は苗○誠って名前だったりしない?」

 

「それは違うよ」

 

「メロンパンで大事なのは?」

 

「カリカリモフモフ」

 

「ランララランララ麗○ちゃーん↑」

 

「世の中時代は○佳ちゃーん↑」

 

後半になるにつれてシンジへの質問の内容が分かる人には分かるといった内容へとなっていく。

それら全てのネタを拾うものだから、その筋の生徒達がこぞって元ネタありきの質問を投げまくる。

 

「ほな。ワシもええか?」

 

「どうぞ」

 

鈴原トウジが挙手をする。

これまで遊び半分で質問していた生徒達とは異なり、真剣な表情を作る。

 

これに教室中が静かになる。

シンジもトウジからの質問には真剣に答えようと決めていた。

 

「まずは自己紹介からや。ワシは鈴原トウジ。トウジって呼んでくれ転校生。こっちもシンジって呼ばせて貰うからな」

 

「うん。よろしくねトウジ」

 

軽いジャブから入ってきた。

これは前置きなのは分かっている。

シンジ自身にも分かっていた事だ。

使徒の襲来のあった“昨日の今日の転校生なのだからあまりにもタイミングが良すぎる。”

 

「昨日は避難が行われる程の騒ぎがあったんや。それとシンジの転校と何か関係があるんか?」

 

そう来るだろう事は予想の範疇であった。

真実を話す――――それは無理な話なのだ。

何よりもエヴァンゲリオンや使徒の存在はトップシークレットだ。

これまで秘匿されていた事を勝手に話す訳にはいかない。

ましてや、シンジは現在はNERVの預かりとなっている身だ。

会社の内部事情を話してしまうのは社会人としても失格になる。

しかし、全てが嘘で形作られた内容ではボロを出してしまう危険性が高い。

その事を『平行世界』にて学んだシンジの答えは決まっていた。

 

「無い…………って言ったら嘘になるかな。父さんがこっちで働いていて、こっちに呼ばれて危険を承知で来たんだ」

 

父が働いているのは事実だし、呼び出しこそ父が発端だったが来たのは自分の意思だ。

危険は承知の上でシンジは残る事を決めた。

いずれにも嘘はない。

ただ真実をボカしているだけだ。

よくある受け答えを利用させて貰った。

 

「父親に呼び出された?」

 

「うん。NERVの臨時職員みたいなものとしてかな。ゲームのデバッグ作業的なものが出来る人が居なくて、僕がたまたま出来て人手が足りないからって理由で呼ばれたんだ。“仕事の詳細までは知らないよ”」

 

これは暗に「これ以上の詮索は止めるべきだ」と告げている。

それでもウズウズしているように見える『平行世界』でのもう1人の友人が居るが――ストレートに言わないとわからないか。

 

人手が足りないのも嘘ではない。

シンジはエヴァンゲリオンのパイロットの適性が“偶然にもあった”事を適当な例えで言っている。

 

これらの内容は予めリツコと共に考えていたものだ。

どうせその内にNERVとの関係性を伝える必要はある。

ただ、機密事項には触らない程度には情報を与えておくべきだ。

 

「華々しい仕事じゃないから、聞かないでくれると助かるかな」

 

「ほな、これ以上は聞かんでおくで」

 

正直、人類の未来が掛かっている。

サキエル戦も四の五の言っていられない泥臭い戦いを繰り広げた。

華々しいものではないのも真実だ。

それをトウジが詮索しなかったので助かる。

 

「そういえば、こっちには来たばかりなんやろ? なら、街を案内せなあかんの。放課後にでも街を案内したる」

 

「助かるよ。まだ来たばかりで何処に何があるのかわからないんだ」

 

そう。これは正直な本音だ。

ミサトが『葛城ミサト』と同様であるとするなら、レトルトカレーさえ不味く作る可能性は十二分にある。

となると、そういった事はシンジが率先してやらねばならない。

 

それにミサトの階級が上がり、給料も上がったとは言えど彼女のそれはお金だ。

なるべくなら節約し、自分の為にも使ってあげて欲しい。

 

トウジの質問が終えると、質問をしようと挙手をする者は出なかった。

 

「では、よろしいかな? 綾波の後ろの席が空いてるから座りなさい」

 

「わかりました」

 

担任に指示された席は窓際の後ろの方の席だ。

そして、前にはシンジにも縁のある人物―――綾波レイが額に包帯を巻いた状態で座っていた。

 

「よろしく綾波さん」

 

「よろしく」

 

いつもの調子で呼び捨てにしないよう注意しながら『こちらの世界』でのファーストコンタクトを行う。

出撃前のあれはまともに会話をしていないので、会話をするのはこれが初だ。

 

「では、授業を始める」

 

これまで黙っていた担任教師からの声が掛かる。

新しい教室での授業が開始した。

 

しかし、それ以上に気掛かりな事があった。

 

―――綾波が寡黙すぎる。

 

それはほんの些細な違和感。

『平行世界』では寡黙よりかはおとなしい性格な『綾波レイ』。

積極的になる時もあるにはあったが、そこは今は置いておくとして。

隣の綾波レイはそうではなくて“必要最低限の事しかしていないように見受けられた。”

 

これは直感でしかない。

故に、シンジだけでは答えを導き出せる筈もなかった。

 

 

 

 

 

授業に関してははっきり言えば退屈なものが多い。

諸事情により、中学生の勉強は済ませてあるシンジには難しいものではない。

高校生の勉強も付いていけるだろう。

 

問題なのはそれよりも歴史関連の方だ。

セカンドインパクト以降の流れは『平行世界』と整合性が取れない。

だからこそ、向こうでの勉強がかえって足を引っ張る。

 

こればかりは『平行世界』でも勉強できる訳もないので、シンジが努力するより他に無い。

歴史は記憶力の授業だとは言ったものだ。

勉強を怠ってはいない。

前の学校でも似たようなシチュエーションはいくらでもあったのだから慌てる事はない。

 

しかしながら、どうしても『平行世界』のものとごちゃ混ぜになる場面は多々ある。

故にボロを出さないよう、歴史の授業では教師の話を聞きながら自分の中で毎回整理すると言う流れを行って、自分で再確認をしていく。

 

今の授業はPCを用いている。

悲しいかな、『平行世界』で扱うPCとは雲泥の差がある。

授業で使用するものであるが故に、スペックが低くても数を用意する必要性があるのだろう。

起動が遅いとか、操作性が悪いとか、言いたい事はあるが『平行世界』で利用するPCのスペックが高いせいで感覚がバグってしまっている。

こればかりは誰が悪いとかはないと諦めるしかなかった。

 

さて、話を戻そう。

シンジがそのように勤勉に励んでいるのに、PCを利用してメールが届く。

内容は『碇君があのロボットのパイロットってホント? Y/N』といったものだ。

 

何と無く、犯人に心当たりがある。

チラリと下手人だろう相田ケンスケの様子を伺う。

2つ隣の席に居る彼を見ると目が合った。

向こうは慌てて目線を前へ向ける。

それだけで今回の一件が誰の仕業なのか見当が付いてしまった。

 

『平行世界』でもサバイバル関連だったり、機械関係には強かったケンスケだ。

シンジのPCへ個人的にメールを送るのは雑作もあるまい。

それにパイロットといったものにも男の子なのだから憧れはあるだろう事は想像するに容易い。

 

また、気になるのは「ロボット」の部分だ。

人造人間と肩書きはあるが、知らない人からすればエヴァンゲリオンはまさしく「ロボット」の名称に恥じない姿をしている。

問題はどうしてケンスケがエヴァンゲリオンという“機密事項を知っているのか?”

 

何らかの手段を用いてハッキングを仕掛けたと考えるのが妥当だろう。

それでエヴァンゲリオン等の機密事項も知っている訳だ。

 

―――気になるところだけど、それは本人に後で聞こう。

 

もしもハッキングを仕掛けているなら罪に問われかねない。

その話は後回しにして、これに対する返答だ。

そんなもの「NO」と言うより他に何がある?

 

仮に「YES」と答えて、怒られるのはシンジなのだ。

肯定すれば詰問は間違いなく飛んでくる。

それだけは回避しなくてはならない。

 

ケンスケには悪いが「N」にカーソルを合わせていき――――

 

「碇。転校初日の授業中に余所見とは感心しないな」

 

カチッ!!

 

「あっ、すいませ――――」

 

そこで言葉が止まる。

今「カチッ!!」と音がしなかったか?

 

シンジは確かカーソルを合わせようとしていた。

つまり、動かしていた訳だ。

 

それは本当に「N」に合わせていたのか?

 

恐る恐る画面を見てみる。

カーソルは「N」ではなくて隣の「Y」に合わせられていて…………

 

「「「「「ええええええーーーーっ!?」」」」」

 

クラスメイトからの驚愕の声が発せられる。

授業そっちのけで、シンジへの質問の嵐が再開された。

 

委員長のヒカリや教師も注意しようにも他の面々の興奮が勝り、聞く耳持たずだ。

隣の綾波に助けを求めようとしたが、彼女はPCの画面を眺めているだけであった。

助け船の出航はまだ先らしい。

 

 

 

 

 

 

 

「ま、参った…………」

 

机に頭を預け、何とか質問の嵐から脱する事が出来た。

先生に注意されて誤って「Y」を押したと説明し、ヒカリと教師の注意もあってようやく解放された。

 

しかし、騒ぎを起こした張本人のケンスケは疑いの眼差しを向けてくる。

はてさてどうしたものか――――シンジは考えていた。

 

「シンジ、ちょっと顔を貸してくれへんか?」

 

「? 良いけど……」

 

「あとは相田ケンスケ…………友達も来るけど、堪忍な」

 

突如、トウジから声が掛かる。

更にはケンスケまで連れてくるとの事だ。

2人に連れられて来たのは屋上であった。

 

「俺の名前は相田ケンスケ。ケンスケで良いよ。よろしく碇」

 

「よろしくケンスケ」

 

まずは互いに自己紹介から。

『平行世界』と変わらない呼び方に少し安心した。

それにカメラを片手にしている所も何も変わらない。

 

長いこと、彼等の事は下の名前で呼んでいたのだ。

うっかり下の名前で呼んだ日には恥ずかしさで身悶えてしまう。

 

「それで? 話って?」

 

「確認させてくれ。ホンマはシンジがロボットを動かしていたんやろ?」

 

「それはさっきも――――」

 

「ロボットの事をワシはもう知っとる。少なくとも存在しとる事は、やけど」

 

トウジは真っ直ぐにシンジを見る。

エヴァの存在を知る理由は恐らく彼の妹のサクラだろう。

その真偽を確かめたい気持ちが彼にはあるに違いない。

それを受けてシンジは話したくなる――――だが、これは“踏み込ませてはならない領域だ。”

 

「悪いけど、トウジが何を言ってるのか分からないよ」

 

結局のところ、シンジはNERVの機密事項を守るしかない。

それは「NERVを」と言うよりも「トウジとケンスケを」となる。

話を聞いて、非日常に身を置いて日常に戻ってこれる保証は何処にもない。

そんなギャンブルをシンジはさせたくない。

 

「………………せやな。シンジは“言えへんもんな”」

 

転校時のやり取り、その後のパイロット云々のやり取りも否定で終わらせた。

中学生のトウジには分からないものがある。

大人にしか分からない都合とやらだろう。

 

「シンジは、ジブンらとは違って大人なんやな」

 

「違うよ。まだまだ僕は他人に迷惑を掛けないと生きていけない子どもだよ。ミサトさん達の方が忙しくて、とてもじゃないけど邪魔をしてはいけない雰囲気だもの」

 

トウジはどうやらシンジの事を買い被ってるように見える。

彼が言うような大人にはなれていない。

 

いくら『平行世界』で様々な経験をしていても、それがイコールで「大人である」とは結び付かない。

単純に大人の忙しさを理解できてしまっているだけなのだ。

 

今回、シンジがNERV関連の事に真実であれば頷くのは簡単だ。

けれども、そうしたら誰に迷惑が掛かるのかなど火を見るよりも明らかだ。

ミサトやリツコ、父親…………下手をすればNERV職員全員に迷惑を掛けてしまう。

 

それだけではない。

もしも悪いイメージを含めた状態でNERVという組織の情報を発信されでもしたらNERVは立て直せない程に企業としての力を失ってしまうかもしれない。

 

修理や武器の用意(この前は無かったが)といった事柄には莫大な資金を必要とする。

仮にNERVが無くなったとして、エヴァンゲリオンを動かせる程の設備や状況を今のように改めて用意できるのか?

答えは「分からない」が適切だ。

 

最悪の事態を想定するなら下手に内部の事を話す訳にはいかないのだ。

 

「そんな事を言わずにさ~。頼むよ~。ちょっとだけでも情報があれば教えてくれよ~」

 

ケンスケは両手を合わせて拝んでくる。

けれど、させられないものはさせられない。

 

「駄目だよケンスケ。もし仮に僕が肯定したとして、ケンスケにその気が無くても外部に漏れでもしたら真っ先に疑われるのは教えた人達だ」

 

「それは…………」

 

「それにケンスケが言うようにNERVがロボットを造っていたとして、それが世間に知られたら不都合な情報だったとしたら――――迷惑が掛かるのは君だけじゃない」

 

何が何でもケンスケに、そしてトウジには教えられない。

あの時の…………「悪夢」の中で見せられた彼等2人の「死」のイメージが拭えないのだ。

 

今なら分かる。

あれがエヴァンゲリオンに搭乗した結果なのだとしたら、シンジはそれを許容出来ない。

 

本当なら綾波にだってして欲しくはない。

そこのところは彼女にも覚悟があるだろうだから。

半年近く訓練をしていたのだから、彼女なりの覚悟があるとシンジは判断している。

そこは後で真偽を確かめる。

 

話を戻して。

トウジとケンスケ――――特にケンスケはミーハーな気持ちが強いだろう。

そんな気持ちで乗せるのは躊躇われる。

いざ、実戦になった時に足がすくむ。

そして、命の危険に自らを放り投げる結果になるのは分かりきっていた。

 

それは予想ではなくて、2人と同様に平凡な中学生でしかなかったシンジが身を以て体験したからこそ断言する。

 

「ごめんよ。ケンスケ、それにトウジも。正直、僕にも分からない事だらけだし、迂闊に話してNERVの存続そのものを危うくさせられない」

 

「こういうのは所謂『大人の都合』ってヤツなんやろな」

 

「俺達には分からない事…………か」

 

トウジもケンスケも詮索は止めてくれた。

しかし、納得が出来るかと聞かれるとそうではないだろう。

 

シンジがこれ以上は口を割らないと直感的に理解しての事だ。

ともなると、2人も諦めるより他に無くなってくる。

 

「NERVも不都合があれば黙ってはいないと思うよ。ハッキングだとかして、情報を無理矢理に引き出そうとか考えない事だよ。そんな事をしたら本人を特定して、更には家族にまで迷惑が掛かるのは間違いないから」

 

これは主にケンスケへ向けた言葉だ。

当の本人も苦い顔をしている。

やはり、彼が不正な手法を用いて情報を引き出した張本人なようだ。

 

キーンコーンカーンコーン――――

 

直後、次の授業を知らせるチャイムが鳴り始める。

 

「ほら、授業が始まるから行こう」

 

「あ、ああ……」

 

「せやな」

 

シンジに言われ、2人も教室へ戻る。

前を行くシンジは気付かなかったが、2人は多少ながら距離を開いて続くのであった。

 




如何でしたでしょうか?

サキエル後からの訓練シーンはカットでございます。

初っぱなのネタまみれ。
特に最後を知ってる人が居たらめちゃくちゃ嬉しい。

話は少しだけ飛んでケンスケのメールに「間違って押してしまった」という展開に。
無理矢理に「違う」と否定して静かにして貰いました。

これはNERVの機密事項は隠すという事を徹底しているから。
ただ、所属している事は先に教えました。

そして、トウジから名前呼びをOKされてます。
これはシンジが予想した通りにサクラを助けたからこそ。

聞き分けが良く見えますが、内心は真実を知りたがっているでしょう。
恩人であれば礼を言いたいと思うでしょう。

ケンスケは変わらず、ミーハーと言うかパイロットに憧れを抱いています。
それは男の子なら仕方無いこと。
けれど、シンジに釘を刺されてしまいます。

屋上でのやり取り、しかしシンジから機密事項もあって話すつもりはありません。
下手をすれば「悪夢」の再来が起きると考えると、話しづらい空気となってしまいます。

その結果、彼等との距離が縮まったのかと問われれば否でしょう。
『平行世界』では予め2人とは友人でしたが、今回は1から構築する必要があります。
果たして、本当に友人となれるのか?
まあ、結果は分かりきっている気もしますが。

では、また次回に。

さて、少し前に言っていた「忘れていること」が出来ませんでした。
次こそ、次こそ……
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