今回は短めです。
では続きをどうぞ。
「ん…………朝?」
シンジが目を覚ますと、そこはいつもと変わらぬ離れの一室であった。
六畳程の狭い部屋だが独り暮らしかつ物が少ないからこそ問題無い。
エアコンも設置されているし、床は畳で、布団も折り畳み式ながらテーブルもある。
窓から差し込む太陽の光でようやく自分の置かれた状況を思い出す。
「さっきのは、夢?」
そう言っている時点で夢であっても覚えている出来事である。
「そう、しっかりと覚えている」
『平行世界』の存在の是非を確かめる手段こそ無いが、シンジは父と母の教えを覚えている。
「父さん、母さん」
夢であれ、あのような形でも家族の在り方を感じられたのは嬉しかった。
例え夢であろうと、異なる世界であろうと。
「あっ」
そして、思い出す。
自分は叔父夫婦の家で“何をすべきかを。”
「やるしか、無いよね」
両親との約束だ。
それをシンジは果たす。
「料理で胃袋を鷲掴みにする」
それが母との約束。
父も応援してくれた。
それに今のが夢だったのかを確かめたい気持ちもあった。
碇シンジは立ち上がる。
「何だと?」
珍しい光景が目の前にあった。
あの内罰的な性格から内向的な面のあるシンジが頭を下げて懇願していた。
その内容が「料理を作るから食べて欲しい」と言ってきたのだ。
しかも、作るものは叔父の好物でもある「唐揚げ」である。
叔父からすると偶然にも自分の好物をぶら下げられた気分になっているだろう。
しかし、真実のところはシンジが先程の夢を検証したい気持ちがあった。
『平行世界』の父母から聞かされた叔父の好物。
調理の仕方、そして好物をちらつかせてストレートに切り出せば即座に蹴り飛ばす事はしないという親類からの御墨付き。
事実、シンジが言った事は抜きにしても叔父は考える素振りを見せている。
考えていると言う事は蹴り飛ばすつもりもない。
それにシンジは「物が欲しい」と言うのではなく、むしろ逆に「作ってあげたい」と申し出た。
デメリットが発生するとしたら材料費位なものだ。
つまり、状況的には断りづらい。
「まあ、良かろう。キッチンを貸してやる。食べるかはその後に決める」
「はい!!」
この叔父も父よりはマシであるが、素直ではない部分を垣間見た。
端的に言ってしまおう。
碇ユイ直伝の唐揚げは叔父の胃袋を一瞬で鷲掴みにした。
舌を唸らせる結果となり、次には叔母が――――といったように次々とシンジの料理の虜となった。
シンジの踏み出した一歩は小さいかもしれない。
しかしながら、それは彼にとって大きな一歩であった。
この前進を期に、少年は変わっていく。
余談であるが、この日以降に碇シンジは料理当番に組み込まれる事になり、食卓を一緒に囲む仲になった。
如何でしたでしょうか?
叔父夫婦のところに預けられた設定となっております。
シンジは手料理を覚え、叔父夫婦の胃袋を見事に鷲掴みにしました。
はてさて、今後の彼の成長や如何に?
ではまた次回に。