碇シンジは夢を見る   作:ゼガちゃん

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お待たせしました。
何とか1カ月で書けた。

今回は冒頭は前回の続き。
後は番外編第二弾となります。

今回はLASとなります。
では続きをどうぞ。



碇シンジの現実⑤/碇シンジの夢⑦ 太陽

「惣流・アスカ・ラングレーです」

 

ガギエルとの戦いを終えた翌日の事だ。

シンジは自分のクラスの教壇で自己紹介をしている転校生を眺めていた。

 

シンジも転校してきて然程時間は経たずに転校生が同クラスに来るとは思わなかった。

同学年のクラス数は多くないものの、まさか続けて転校したばかりのシンジが居るクラスに来るとは思わなかった。

何か事情があるのだろう。

どんな子が来るのだろうかとクラスの全員が転校生に注目するのは必然だ。

 

担任が転校生に入室するように促す。

すると、男子も女子も色めきだった。

いや、男子の方が一番大きな衝撃を受けていたに違いなかった。

転校生は同性から見ても「綺麗」と「可愛い」を掛け合わせた美少女。

しかも、赤み掛かった金髪が前に入れば日本人ではなく外人である事も一目瞭然だ。

それが彼女を注目する理由となろう。

 

「「え?」」

 

色めき立つクラスの面々と相反する反応をしたのはトウジとケンスケだ。

それは転校生が2人も知っている人物だったのもある。

 

何と、シンジも知った顔と名前の少女であった。

昨日会ったばかりの、冒頭で自己紹介を行った少女。

弐号機パイロット――――惣流・アスカ・ラングレーが自己紹介をしていた。

 

「そうしたら惣流さんの席は……」

 

「先生。可能でしたら彼、碇シンジの隣の席でお願いしたいのですけれど」

 

担任がアスカの席を伝えるよりも先にアスカがそう切り出した。

当然、美少女からしかも名指しされたシンジに注目が集まる。

 

「碇君と知り合いなんですか?」

 

「はい。父の仕事の関係で」

 

NERVに所属している事はクラスメイトも薄々は気付いている。

けれど、こちらの件に深く関わらせるのは申し訳ないので濁した言い方をする。

 

「それなら知った人が居ると心強いわ。洞木さんも間に居るしね」

 

シンジと委員長ことヒカリの間に席がある。

そこを譲って貰えれば知人と委員長の隣り合わせとなるので、担任としても悪くない選択肢と言えた。

ヒカリは面倒見が良い事は既に知った事なので、安心できる程に教師陣からも信頼は厚い。

 

「悪いんだけど、惣流さんに席を譲ってくれないかしら?」

 

「分かりました」

 

シンジの隣の男子生徒が返事をする。

アスカは席を譲ってくれた彼に笑みを作って「ありがとう」と礼を述べる。

容姿の優れたアスカの笑みとお礼の言葉に「い、いえ」と言葉短く言うとアスカが座る予定だった席へ移動する。

どうやらアスカの笑顔に当てられた口だろう。

これは学校内で彼女のファン第一号が誕生した事だろう。

 

「よろしくね惣流さん。私は洞木ヒカリ。このクラスの委員長をしているわ。分からない事があったら遠慮なく聞いてね」

 

「よろしく。アタシの事はアスカで良いわ。こっちもヒカリって呼ばせて貰うから」

 

「うん。よろしくアスカ」

 

アスカとヒカリはすぐに打ち解けたようでホッとする。

続けてアスカはシンジの方を見る。

 

「シンジもよろしくね。分からない事は聞くから」

 

「僕も転校してきたばかりだから委員長の方が詳しいよ」

 

「え? シンジも転校してきたばかりだったの?」

 

アスカもそこまでは知らなかったようで、シンジの転校から1カ月程だとヒカリが隣で補足する。

 

「委員長と仲良いから僕の出番は無いよ」

 

「ヒカリとはこれから友好を深めていくんだから『仲良い』って表現するのは気が早いわ」

 

「…………そうだね」

 

アスカはヒカリの事を(いた)く気に入ったようだ。

シンジもそれ以上は言わず、言葉を区切った。

 

思わず口を滑らせてしまった。

『平行世界』での出来事が脳裏にすぐ出てきてしまった。

特別に何も思っていないようなので、これ以上は口に出してしまうと墓穴を掘りそうなのでお口にチャックで。

 

『アスカ』も『ヒカリ』も以前からの付き合いのある友人同士の印象が強い。

それは『碇シンジ』自身にとっても同じ事だ。

『アスカ』と『碇シンジ』は『平行世界』では幼馴染みである。

故に、これまで顔を合せない機会が多かった事の方が珍しい。

 

少なくとも今のようにアスカが転校してくる展開等は今まで一度も無かったのだから新鮮である。

それはヒカリとの仲の良さを何度も見ているので「仲が良い」のはシンジの中では当たり前であった。

 

しかし、隣でアスカとヒカリは既に昔からの友人のように談笑していた。

シンジの指摘が間違っていないではないかと言いたくなる程の仲の良さを転校初日から披露している。

横目で見ていると、『平行世界』ながら見慣れた光景に安堵する。

 

―――やっぱり、こうでないとね。

 

シンジがトウジやケンスケといった一生モノの友人と出会えた事も同じだと言えよう。

『平行世界』から良い意味で繋がる運命とも呼べる素敵な出会いをシンジはもちろん、アスカもしていた。

 

―――そういえば、アスカとも。

 

『碇シンジ』と『惣流・アスカ・ラングレー』との間柄が変化した出来事もあった。

その時の『平行世界』での出来事は碇シンジと『碇シンジ』に『惣流・アスカ・ラングレー』への見方を変えるきっかけを与えた。

この太陽のような少女との関係を大きく変化させた一幕の記憶を掘り起こす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあ、碇。本当に惣流さんと付き合ってないのか?」

 

昼休み。

大学2年に進学し、2度目の春を迎える。

高校とは異なって私服も可となり、買ったばかりの半袖の白いTシャツの上に水色の上着を着て、それとジーパンを履いている。

 

そんなシンジは食堂にて自作の弁当を食べていた。

このタイミングでたまに話す大学の同級生から訊ねられた内容がこれだ。

 

「付き合ってないよ」

 

「本当に? あんなに仲良さそうにしてるのに?」

 

「幼馴染みの(よし)みで仲良くしてくれてるんだよ」

 

アスカの容姿は幼馴染みのシンジから見ても「綺麗」と言える。

大人の色気とも呼べる雰囲気を彼女も纏いつつある。

しかし悲しいかな。シンジとアスカはそのような関係ではない。

 

「それなら告白しても構わないよな?」

 

「それは僕が止める事じゃないけど――――当たって砕けろの精神ならアスカは絶対に靡かないよ」

 

「え? それはまた何で?」

 

「だって、アスカが君の事を知ってるならまだしも少ししか話した事無いなら『アンタ、誰よ? 知らない奴と付き合う訳ないでしょう』って言われるのがオチだよ」

 

散々見てきたんだから間違い無い――――最後にそう付け加える。

その様子が浮かんだのか、同級生も「うっ」と言葉を詰まらせる。

 

「そ、それでも!! やるだけやってくる!!」

 

玉砕覚悟でアスカへの告白を決行するらしい。

そこまでの気迫を見せられてはシンジも「健闘を祈るよ」としか言えなかった。

それを受けた同級生は何処かへ行ってしまった。

 

やるだけやって後悔した同級生をシンジは何人も見てきた。

この手のパターンは毎度お馴染みだ。

しかも律儀にシンジに報告してくるまでがセットである。

その度にこれまでの恋に手を振って明日に待つ新しい恋を見付ける旅の為へ出ろ告げている。

 

「あーあ、良いのか碇。また玉砕して面倒が行くんだぞ」

 

シンジが男子生徒を見送った後に同じ大学に進学したケンスケがそう声を掛けてくる。

トレードマークとも言える眼鏡はそのまま、それと愛用のカメラを入れた肩掛けの鞄に入れている。

服装はといえば軍人もかくやという迷彩服を纏っている。

これは彼の所属するミリタリー好きが集まったサークルの正装(ケンスケ談)だとか。

この服装にも慣れたのでツッコミをする事はしない。

 

「仕方無いよ。本人が勇気を出して向かってるんだから」

 

彼の勇気まで否定してはいけない。

それに言えない理由も勿論ある。

 

「僕はアスカとは――――」

 

「付き合ってる訳じゃないから…………って、言いたいのかな〜? シンジ君」

 

シンジが言い終えるよりも前に言葉が被せられる。

加えて彼の背中に重みが掛かり、お弁当のおかずの唐揚げを摘み上げられてしまう。

 

「ん〜。相変わらずシンジ君の料理は美味しいですな」

 

「またですか。マリさん」

 

「ありゃ。良く私だって分かったね。コングラッチュレーション!! 脳内で色彩豊かに紙吹雪を舞わせてるにゃ〜」

 

シンジの背中にあった重みが消えると同時、目の前の席に真希波・マリ・イラストリアスが座る。

白いシャツに桃色のブレザー、黄色のスカートという恰好だ。

髪を二つ結びにしている点、赤縁眼鏡は出会った時から変わらない。

彼女は1つ上の先輩に当たる。

 

中学時代の後半からの付き合い、その後に高校も同じで、今も付き合いがある。

同じ大学へ進学する事になったのは本当に偶然だ。

掴めない所もあるが、気の良い人物である。

シンジの料理を甚く気に入ったようで、こうして許可も取らずに摘み食いするのが玉に瑕である。

 

「いい加減に勝手に摘み食いするのは止めて下さい。でないと怒りますよ」

 

「怒られる覚悟は出来ていなかったら、今すぐ立ち去ってあてどない流浪の旅へ出ています」

 

「分かりづらい表現をしてますけど、とりあえず食い逃げするつもりがない事だけは伝わりました。ですが、今後はこんな事をしないように」

 

「寛容な処分に感謝致しますお代官様ぁ~」

 

このやり取りも何度目になる事やら。

時代劇にあるような平伏するポーズを真似る。

それも文字通りのポーズにしか見えない。

シンジの言葉も右から左へ流している事だろう。

きっと、また懲りずに同じ事をする情景が目に浮かぶ。

 

結局、シンジとしても自作の料理を褒められる事はモチベーションの維持に繋がるので口だけでしかない事を見抜かれてもいるのだろう。

けれども、可能なら第一に食べさせたいな――――そう想う相手が居るのも確かだったりする。

 

「今日も姫の分は用意してあるのかい?」

 

「はい」

 

そんな事を考えていたらマリからそのような質問をされ、条件反射に頷いていた。

マリの呼ぶ「姫」はアスカの事である。

 

「じゃあ、姫が来る前にこの私が食べてしんぜよう」

 

「またアタシの分のお弁当を狙ってる訳なの?」

 

シンジが用意したお弁当を付け狙っている泥棒に背後から脳天からチョップが降る。

あっ痛っ!?――マリは脳天を摩りながら、この罰を与えた張本人へと振り返る。

 

「ひ~~~め~~~!! 酷いにゃ~~~」

 

「酷いはどっちよ。アタシの分のお弁当を食べようとした癖に。次やったら風船並みに空っぽな脳を割るわよ」

 

至極当然の罰だと言いながら怖い脅し文句を加えて、惣流・アスカ・ラングレーが登場する。

薄い黄色のワンピース、そして今は茶色掛かった長い金髪を"下ろしている。"

以前は髪留めにしていた赤い髪飾りはたまに使う位だ。

 

「そういえばシンジ。あの男に何を吹き込んだのよ?」

 

「吹き込んだ?」

 

話からそのお相手は先程にシンジにアスカとの関係を訊ねてきた同級生君の事だろう。

 

「アタシが告白を断った時の台詞を聞いたらシンジに聞いた内容と一語一句違わないって言ってたわよ」

 

「ちなみに姫が言った台詞はどういうものかにゃ?」

 

「アンタ、誰よ? 知らない奴と付き合う訳ないでしょう――――よ」

 

マリに問われ、アスカは促されるままに答える。

その答えを聞いたマリとケンスケは「ほ〜」と何処か感心した様子でもあった。

 

「本当だ。碇が言ってたのと一語一句違わない。以心伝心ってやつだな」

 

「これが愛の成せる技というやつですかね〜」

 

「なっ!? ちょっと待ちなさいよ!! 何を言ってんのよ!!」

 

完全にアスカを玩具にしている。

これを受けたアスカは顔を赤面させている。

 

「シンジも鼻の下を伸ばしてるんじゃない!!」

 

「伸ばしてないと思うんだけど。そもそも何に対して鼻を伸ばすのさ」

 

「アタシと以心伝心だとか、愛の成せる技だとか言われて内心で喜んでるんじゃないの?

 

「いや、そんな事はないけれど」

 

「何? アタシとアンタの付き合いはその程度のものだったとでも言いたい訳?」

 

「それはさすがに理不尽では!?」

 

怒りの矛先は最終的にシンジへ集約される。

しかも適当な言い掛かりまで付けてくる始末だ。

 

「聞きましたか真希波さん? 惣流さんってば碇との絆の深さをこれでもかと語っておられますよ?」

 

「いや~、これで付き合ってないんだから本当に信じられませんにゃ~」

 

「がぁぁぁぁぁーーーーっ!! 好き勝手言ってんじゃないわよ!!」

 

ケンスケとマリの息の合ったコンビネーションによるからかいが炸裂する。

それを受けたアスカの心はさながら荒れた大海原のように激しかった。

 

「シンジも何か言いなさいよ!!」

 

「ん~。違うって主張しても説得力が無いとか言われそうで……それにこの2人は知ってる訳だからムキになるのはどうかなと」

 

「でも、言わなきゃ勘違いされたままじゃないの」

 

「そうやってムキになってると、餌食にされちゃうよ」

 

シンジの方もこの事態は慣れたものだ。

現にシンジとアスカは周囲から注目の的になっている。

マリとケンスケも2人の仲の良さに「ニヤニヤ」とわざと口に出して様子を見て楽しんでいる。

 

「~~~~~っ!! ああっ!! もうっ!! さっさとお昼食べて次の講義の教室へ行くわよシンジ」

 

「よく噛んで食べなきゃダメだよアスカ」

 

シンジのお弁当を広げ、食べ始めるアスカ。

掻き込むように食べるので良く噛んで食べるように促すシンジ。

 

このやり取りを見て本当に付き合っていないのかと疑問を持たれるのも仕方ないのではとケンスケとマリは2人を眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時間は過ぎ、放課後になる。

2人の通う大学は自宅からも近い。

故に2人も自宅から通っている。

 

この日、両方の両親が不在であった。

なので、シンジの家で夕飯を取る事になった。

 

「シンジ〜、ご飯はまだ〜?」

 

「もう少しだよ。お風呂掃除と洗濯は終わったの?」

 

「お風呂はあとは沸かすだけだし、洗濯機も回り終わるのを待つだけよ」

 

中学生頃ならシンジだけに家事全般を押し付けていただろう。

けれど、やはりそれでは女子としてもどうなのかと言う事で最低限の事はしている。

 

「たまにはアスカが料理しても良いんだよ? アスカも料理は上手なんだから」

 

「アタシはシンジの料理が食べたいの」

 

アスカも料理を覚えつつはあるが、やはり一日の長なのかシンジの方が美味しく感じる。

故に料理当番は常にシンジが担当している。

 

このやり取りは毎回の事でもある。

アスカにそこまで言われてしまうと、シンジも何も言えない。

純粋に嬉しさの方が勝ってしまうから。

 

褒められるから嬉しい――――いや、それだけではない。

理由は自分でも分かっている。

今まで気付かないフリをしていただけで――――。

 

「ねえ、シンジ」

 

「どうしたの? アスカ」

 

「その、えっと……」

 

背後から声を掛けられるが、未だに料理をしているのでその手は止めない。

アスカからの言葉を受けて即座に応えるも、アスカはまたも言い淀む。

 

「レイから連絡が来てたの」

 

「綾波から? 向こうの大学も忙しいだろうに」

 

綾波の通う大学はこちらからも電車を使えば会いに行ける距離ではある。

しかし、彼女は碇ゲンドウ等の設立した『人工進化研究所』の手伝いをする為にも特に理系の分野には力を入れている。

その為にレポート関係等で大学に泊まり込みが多くなっているとか。

 

「レイが近い内に遊びに来れるみたいだから日程を合わせて会わないかって」

 

「なら、トウジと委員長も呼ぶ?」

 

トウジと委員長ことヒカリを呼ばないかシンジは提案する。

もう既にヒカリは委員長ではないのだが、どうにもシンジの中ではヒカリは「委員長」という役職で呼んでしまう。

本人もある程度は理解しているのか、その呼び方に文句は出さないのであだ名として定着してしまっている。

 

「止めておきましょう。せっかく付き合い出したんだからあの2人」

 

アスカの言うように2人は最近になってようやく付き合い始めた。

中学生の頃から想い合っているのは丸分かりであったし、ようやくかとの声が多かった。

 

その反動というべきか、あの2人は暇さえあればイチャつき幸せオーラに当ててきて精神的にすり減らしてくる。

特にアスカはヒカリと頻繁に連絡を取り合っているが故にのろけ話に付き合っているのは間違いない。

 

「でも、一応連絡しておこうよ」

 

「それは良いけど……あの2人の事だからアタシ達にも同じような話題を振ってくるわよ」

 

「ああ、そうかもね」

 

シンジとアスカはどうなのか?――――その問い掛けを投げられる事は想像するに難しくない。

それだけシンジとアスカへの期待をあの2人はしている。

 

何の期待なのか、散々っぱら言われてきたのだからシンジとアスカも分かる。

 

「僕とアスカはいつ付き合うのか? だよね?」

 

「言われそうな事よね」

 

ケンスケやマリにからかわれただけではない。

他の面々も何度も言ってきた事だ。

付き合っていないのが不思議な位だと言われる。

大学の同級生に言われたのも然り、高校の時にも言われてきた。

 

「全く、面白がっちゃってね」

 

「言われている側からすると、色々と困るよね」

 

ハハハ――2人は乾いた笑いをすると同時に黙ってしまう。

部屋に響くのはシンジが料理をする音だけ。

ただ、それも殆ど完成に近かった事もあってすぐに終わった。

 

「…………できたよ。運ぶのを手伝って」

 

「…………うん」

 

シンジが完成を告げると、アスカも言葉に間を空けながら頷いた。

今日の献立は唐揚げとサラダ。

シンプルな内容であるが、アスカは文句の一つも出ない。

それだけシンジの作る料理は彼女にとって必要不可欠なものとなっていて――――

 

「って、何を考えさせるのよ!!」

 

「ええっ!? 僕何かした!?」

 

「したわよ!! シンジの料理がないとアタシはもう――――」

 

そこまで言い欠けて「はっ!!」と状況を思い出した。

勢いに任せて自分はいったい何を口走ろうとしていたのか?

 

「ごめん、今のは忘れて――」

 

「アスカ」

 

アスカが先程の発言を取り消そうとするも、シンジは訂正を阻む。

静かに、彼女の名前を呼ぶ事で。

 

「僕はさ、トウジやケンスケ、他の人なんかにも『鈍い、鈍い』って言われ続けたんだ」

 

シンジは箸を置いて言葉を続ける。

アスカもそれに倣って彼の話を聞く態勢へ移る。

 

「う、うん。それで?」

 

「正直さ、今ならその通りだって言えるんだ。本当に気付いてなかったのが分かると、昔の僕は何でその事に怒ったんだろうって逆に疑問が沸いたよ」

 

あれだけ同級生に問われ、否定を続けてきた。

けれど、それは本当の気持を隠す為の建前だったのかもしれない。

気付いていたのに、意固地になって見ていなかった、近過ぎて気付けなかった、自分自身の本心を。

 

でも、気付くきっかけをくれたのは皆の声だ。

そして、この気持ちを大きくしたのは紛れもなく自分自身だ。

気付いていたからこそ、意固地だったからこそ、近過ぎて気付けなかったからこそ、自分自身の本心が強く輝いたに違いない。

 

「アスカはきっと、僕にとって『太陽』なんだ」

 

「『太陽』?」

 

突然の例えにアスカは首を傾げる。

しかし、シンジは彼女の疑問に「そうだよ」と短く答えるだけ。

 

「『太陽』って近付くと熱いし、焼けるってイメージがあるでしょ?」

 

「何よ? 近付きたくないとでも言いたいの?」

 

「違うよ。僕が臆病だったから"自分の本心に近付けなかっただけ"」

 

『太陽』のイメージを渡され、その印象を告げるシンジ。

受けたアスカは当然ながら悪いものを受け取ったが実態はそうではない。

 

「アスカってさ、一緒に居るととても明るく僕を照らしてくれるんだ。それと一緒に色んな悩みにも親身に寄り添ってくれた。悪い事なんかも焼き尽くしてくれる。常に傍に居てくれる」

 

「だから、アタシを太陽だって言い出したのね」

 

シンジの言いたい事は伝わってきた。

けれど、話はまだ見えてこない。

 

「それでも? 何を、言いたいの?」

 

アスカはシンジへ問い返す。

シンジの頬は赤く染まっている。

緊張しているのか、表情も硬くなっている。

 

吊られる形でアスカも緊張する。

いや、きっと彼女も本能で分かっているのだ。

彼が何を言おうとしているのかを。

 

シンジは唾を飲み込み、意を決し――――――

 

 

 

 

 

「僕は、アスカが好きなんだ」

 

 

 

 

 

言った。

自分の紛れもない本心を言葉に変える事が出来た。

 

「なっ!? あっ!!」

 

まさか、こんなにもド直球に愛の告白をされるとは思ってもみなかった。

友達としてとか、そんなものではない事は彼の雰囲気から見て取れる。

ましてや、自分の気持に気付いてくれてなかったと思っていただけに尚の事だ。

身体全体が熱くなっている感覚がある。

自分の顔を見なくても今真っ赤なのが分かる。

 

「アスカは、僕の事を、どう思ってる?」

 

「そ、そんなの……」

 

咄嗟に否定の言葉を出そうとする口を何とか飲み込んだ。

条件反射でそのような事を言ってしまうのは良くないとアスカも理解したから。

 

きっとシンジは勇気を振り絞って告白をしてくれた。

自分の気持ちに嘘を吐かず、ありのままを言ってくれた。

 

ここでアスカは自分の気持を否定するのは簡単だ。

"それが本心であれば。"

違うからこそ、アスカは否定の言葉を出さなかった。

自分の方はずっと昔、それこそ中学時代から気付いている。

今更、そんな事で自らを偽る意味が何処にある?

 

「そんなの、昔から決まってる」

 

なら、自分も彼の勇気に、想いに応えなくてどうする?

一つ深呼吸。

そして――――

 

 

 

 

 

「アタシも、シンジが好き」

 

 

 

 

 

 

言った。

己のこれまで10年近く燻っていた想いの丈を短い言葉に乗せて伝える事が出来た。

 

「これで、晴れて恋人同士……で、良いのよね?」

 

「あまり実感はないけれど」

 

「まあ、今更変えられる程に短い付き合いじゃないしね」

 

10年――否、もうすぐ20年は経とうとしているシンジとアスカの関係。

すぐに何か特別な変化が訪れるものでもない。

 

「それじゃあ、これからもよろしくアスカ」

 

「ええ、シンジ。恋人になって早速だけど、良いかしら?」

 

アスカは手元の料理を指差す。

 

「ご飯、冷めちゃってるわよ」

 

「はは、そしたらレンジで温め直そうよ」

 

恋人になって初めての会話がこれかとも思うが、自分達らしいとも思える。

 

「ねえ、シンジ。アタシの事を太陽だって言ったけど、アタシからすればシンジも『太陽』よ」

 

「そう、なの?」

 

「ええ。一緒に居るのがずっと当たり前だったんだから」

 

「そうだね。僕もアスカと離れるなんて今更考えられないよ」

 

アスカの独白にシンジも頷く。

両者共に互いの事をそういう風に捉えていた。

 

居るのは当たり前、どんな時も自分達を照らしてくれる太陽のような存在。

 

「ふふ、明日にこの話をしたら驚かれるかしら?」

 

「いや、案外『やっとか』って言われるよ」

 

「違いないわ」

 

一足先に恋人同士になったトウジとヒカリからは特にいじられるのが目に浮かぶ。

しかし、そんな事も悪くはないなと思えていた。

 

「これからもよろしくね、アスカ」

 

「こちらこそ。よろしくシンジ」

 

互いに大切な存在だと気付いた事で変化もしていくだろう。

けれど、共に居る事が当たり前である事実はこの先も不変である事に違いはあるまい。

 

そう、何と言っても互いが『太陽』のように傍に"居て欲しい"存在だと気付けたのだから――。




如何でしたでしょうか?

ガギエル戦の後、アスカは転校してきました。

そして、今回のメインのLASです。
上手くできていたでしょうか?

個人的には前回の綾波とは真逆でアスカは太陽のイメージです。
こちらも前回のものと同様で某有名TCGの第二シリーズにあったEDの「太陽」をイメージして作りました。
まあ、その部分の印象があるのは後半部分だけなんですがね。

これまた綾波の時とは変わって他のキャラも登場します。
というのも、勝手な印象なのですが綾波との関係は誰に言われなくてもゆっくりと進展していく印象があり、逆にアスカとは他人の後押しがあって初めて進展していくという印象があったが故です。
最後の一押しはやはりアスカの人気にシンジが焦ったから告白をしたという形になります。
幼馴染みなのでそう簡単には変わらないでしょう。
告白後があっさり目なのもその点を意識してみました。
そう簡単には変わらないでしょうけれど、確かに2人の関係性は変化しました。

あとこちらではトウジとヒカリが付き合っています。
綾波は大学が違います。
ケンスケとマリは同じ大学です。
実はマリを出したかった気持ちもありました。
本編でまだ絡みが無いので、今回無理矢理に出した感もあります。
でも非常に扱い易く、楽しく出させる事が出来ました。



自分としてもLASは特別な立ち位置にあるCPでもあります。
このLAS、別作品のCPですがワンピのルナミ、ハルヒのハルキョン、うえきの植森(これ分かる人は居るのか?)の4つが昔にあった小説サイトで最初に観たCPだったので思い入れが特に強くて張り切って書いてました。

面白かった、良かったと思って頂ければ幸いです。

それではこの辺りで。
また次回に。

もしかすると次回も時間が掛かると思います。
そろそろ原作の内容が危うくきてますので、今しばらくお待ちを。
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