碇シンジは夢を見る   作:ゼガちゃん

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大変お待たせして申し訳無いです。

年末年始の仕事や自分周りの事でバタバタしていたもので。

展開は決めていたのでちょっとずつ書いていたので、何とか完成まで漕ぎ付けました。

久々の更新で何てふざけたサブタイだと思うでしょう。

この意味を知る為にも本編をどうぞ。


天丼!! カツ丼!! 親子丼!!!!

「うそ、でしょ?」

 

モニターの向こう側、その様子に呆気に取られた。

シンジとアスカが分裂したイスラフェルを相手に「倒してみせる!!」と豪語した。

しかも、2人なら出来ると息巻いて。

 

無理だ――――ミサトの忠告を無視して2人はあろうことかケーブルをパージする。

そして、分裂したイスラフェルへ無謀にも突撃した。

 

まだ出会ったばかりだろう2人が訓練も無しにチームによる行動が行えるわけが無い。

息が合わず、無様に敗北する様相が脳裏に過る――――のだが、

 

「まさか、ここまで“息ピッタリとは驚きよ”」

 

隣でリツコがミサトの、ひいてはこの場の面々の心情を代弁する。

そう、彼女の言うように“2人は抜群のコンビネーションを見せている。”

 

出会ってそんなに経ってないとは聞いている。

転校してきた本日を含めても3回程だと。

それがどうして、こんなにも息ピッタリのコンビネーションを披露できる?

 

「恐らく、シンジ君ね」

 

この状況に同様に驚くのはリツコもだ。

しかしながら、ミサトとは異なって既に論理的な結果に辿り着いているようだ。

 

「どういう意味?

 まさか、シンジ君がアスカに合わせてるとでも?」

 

「その逆よ。

 アスカがシンジ君に合わせているの」

 

ミサトの問いにリツコはズバリこうだと返答する。

その内容を耳にしたミサトは思わず「え?」と聞き返した。

 

それだけの奇妙な事態だ。

よもや、あの我の強いアスカがシンジに合わせていると?

 

「アスカなら『アタシに合わせなさい!!』位は言いそうなのに」

 

「それは同感するけれど、紛れもない事実よ」

 

ミサトの想像はリツコとしても頷ける点が多過ぎた。

けれど、現実はアスカの方が合わせている形となっている。

 

「私達には分からない“何か”があの2人の間にはあるのね」

 

「何か、か」

 

確かに通信を聞く限りでは2人にしか分からないやり取りをしている。

言っている意味が分からないのだ。

あの頭脳明晰なリツコにしても意味の分からない単語が飛び交う。

 

知らない言語等ではない。

話しているのは間違い無く日本語だ。

その中身で固有名詞や造語らしきものが飛び交っている。

 

「あ〜、何だか聞き覚えのあるものもあるわね」

 

「そうなの? 一体何なの?」

 

そんな中でミサトの方が両者の間に交わされる言葉の応酬を分かっているようだ。

シンジとの共同生活があるからこそ知り得ている情報もあろう。

答えを知っているのならリツコも気になる。

一体全体、何をしているのだ?

 

「あれ、多分アニメとか漫画とか、ゲームとかの話よ。

 ほら、ちょくちょく有名な題名も言ってる」

 

聞いてみれば、確かにリツコでさえも聞き覚えのある単語が飛び出しているではないか。

あの黄色い電気ネズミやら帽子を被った配管工、青いハリネズミ、ピンクのまんまる――――等々といったリツコも知るゲームの単語も飛び出る。

 

その中の、一部の状況をトレースしている。

より具体的なイメージ及び超級の操作技術――――それらが組み合わさる事により、シンジとアスカは共に組んで戦える。

また、事前に情報の受け渡しがあるおかげで意思疎通を短く出来る。

 

ただしそれは、互いの情報を共通認識している事が前提となる。

 

いやはや、こんな前提だと言いたくもない。

だが、その方が説明としてもしっくりくる。

 

両者の趣味嗜好が反映された結果だ。

イスラフェルには悪いが、このまま人類側に押し切ってもらう。

 

ここNERVの最重要地点は、同時に最後の砦となっている。

ここを破られるのは大きな意味でのゲームオーバー。

リスタートやロードが出来ない一発勝負。

 

そんなアニメやゲームの知識のみで悠々と倒せる相手ではないと声を大にしたい。

しかしながら、イスラフェルと互角に戦えている現状を見ると何も言えなくなる。

 

「この戦い、鍵を握るのはアスカね」

 

「アスカが?」

 

アスカこそがキーパーソンだと語るリツコ。

どうしてかとミサトが訊ねると、モニターを注視しながらリツコは口を開く。

 

「さっきの、アスカがシンジ君に動きを合わせているのが理由よ」

 

「確かにそうは言ってたけど、どうして?」

 

「単純よ、エヴァの操縦における練度の差が勝敗を分けるわ」

 

ぽっと出のシンジよりも、これまで訓練を積んできたアスカの方に一日の長があるのは事実。

エヴァとのシンクロ率は大事な要素ではあるが、かといって通常の操縦を疎かにして良い理由にはならない。

 

これまでのシンジの操縦技術はシンクロ率によって補われてきた。

初号機の動きが良かったのは、そういう絡繰りがある。

もしも、そこに操縦技術が上乗せされればエヴァは更に“強くなれる。”

その領域へ到れるかは時間が掛かるし、何よりもシンジの努力次第だ。

 

何故「シンクロ率」と「操作技術」を別にしているのか?

車で例えるなら前者は「融通が利かない自動運転」で、後者は「融通が利く人の運転」だ。

 

目的地までの道のりを設定した以上は動かない。

もし、道が混雑していても他のルートを使って要領良くやろうとはしない。

しかし、目的をきちんと遂行する。

 

一方、人が運転するのであれば要領良くやろうと脇道に逸れて辿り着こうとする。

しかし、確実性があるとは言えない。

何せ途中で止めて帰る可能性だってあるし、脇道から行くのが失敗かもしれないのだから。

 

「アスカが鍵になるのは良く分かったわ。

 けれど、アスカがシンジ君に合わせている以上は“これ以上のパフォーマンスは望めない”」

 

アスカがシンジに合わせる事にミサトは構わなかった。

それ以上に危惧すべき部分は他ならないイスラフェルとの戦闘にある。

 

確かにコンビネーションは抜群だし、言うことはない。

確かに使徒を圧倒するのもさすがだ、言うことはない。

 

けれども明らかに決定打が不足している、これでは勝てない。

 

「それは百も承知している筈よ。

 だからこそ、アスカはシンジ君に託したの」

 

「シンジ君に託す?」

 

冒頭、2人の動きの良さにリツコが「恐らくシンジ君ね」と告げた事に関係していそうだ。

 

「ミサト、今回の一件で何かサポート出来ると思う?」

 

「…………ちょっち、難しいかも」

 

リツコに聞かれ、ミサトはしばしの思案の後に「NO」と返した。

2人からはイスラフェルに対する見解を聞かれていたので自分ならどうするのが良いのか考えた。

今回の使徒の特徴から、これならいけるのではないかという考えだけは伝えている。

しかし、これには結局は"2人の問題もあるのだから。"

先程も言っていた操縦に関するもの。

 

他のサポート態勢としては戦自に頼む等の選択肢は確かにある。

協力要請を断る事はない確信もあった。

 

ただ、事ここに至っては足手まといになり得る。

 

イスラフェルの攻略には同時に殲滅するという方法を必要とする。

使徒の特徴から戦自とエヴァとで連携を取るのは難しい。

 

密に計画を練ればとも考えられなくもないが、そもそもエヴァと戦自の兵器とでは性能が根本的に異なる。

前回のガギエル、それ以前だとラミエルやシャムシエルでは戦自等のエヴァとは異なる兵器を利用させて貰った。

 

確かにこれらのおかげで何とか使徒を殲滅してきた。

いずれもエヴァをサポートする形態を取った。

 

今回、必要となるのは連携である部分は間違い無い。

ただし、これまでとの違いは“互いの能力を理解し合う程の同レベルの強さを必要とする。”

 

「戦自の兵器ではエヴァの助けにはならない」

 

使徒との戦いを想定された兵器であるエヴァであるからイスラフェルとも、他の使徒とも渡り合えている。

戦自の兵器とではそもそもの土台が違う。

 

仮にサポートに回ったとして、イスラフェルの足止めが任務となる。

陽電子砲(ポジトロン・スナイパー・ライフル)以外で使徒に致命傷を与えられるものはない。

それはエヴァ用にチューンナップして初めて使えるようになる。

切り札たりえるN2兵器はどうだろうか?

言うまでもなく、エヴァを巻き込む以上は論外だ。

 

となると、陽動するにしても戦闘機となるのだが――――言っては悪いが、それで使徒を止められるとは残念ながら思えない。

結論、足手まとい以外の何物でもなくなる。

 

「だから、エヴァに頼るしかない。

 零号機は脚部を修理中よ。

 となると、初号機と弐号機以外にエヴァの機体はない」

 

「アスカは操縦技術に問題はない。

 シンジ君は逆。

 操縦技術の方に問題がある」

 

「アスカレベルにまで追い付くのは不可能なのは承知しているわ。

 一時的でも良いから、最低限はイスラフェルを“圧倒できるだけの操縦技術を身に付ける必要があるわ”」

 

「そう都合良くいくの?」

 

「まあ、無理でしょうね」

 

言っておいてなんだがと、リツコはバッサリと切って捨てた。

これでは前提から覆ってしまう。

ミサトも同意見だが、ならば如何様にするのか?

リツコは「けれども」とすかさずに続けた。

 

「イスラフェル相手に2人が上手く立ち回れてるわ。

 これは、先程からある掛け合いが理由ね」

 

アスカとでは操縦技術に劣るシンジ。

しかし、イスラフェル相手に上手く戦えている。

その理由が先程からの掛け合いにあるのだとしたら――――

 

「今この瞬間だけでもイスラフェルを“圧倒できれば良い。”

 それが、例え操縦レベルが“低かったとしても”」

 

イスラフェルに特化した動き。

それを確立出来たとしたら、問題はない筈だ。

 

「シンジ君の方から自分が出来そうな動きを伝えているのは、アスカが“合わせられる限界レベルを探る為ね”」

 

ミサトもようやく気付いた。

いきなりアスカのレベルは無理だ。

ならばシンジに合わせる形で、アスカが最大限にパフォーマンスを発揮できる形を取りたい。

 

足の速い人と足の遅い人の二人三脚みたいなものだ。

1人が突っ走っても、互いに足を取られて転ぶだけ。

息を合わせる事こそが、速く走る秘訣となる。

 

「シンジ君の操縦技術の限界にアスカが“どのレベルまで合わせれば良いのか”」

 

「だから、アスカが鍵を握るのね」

 

シンジをサポートする面も増えてくる。

負担は必然的にアスカへ寄る。

それだけではイスラフェルには勝てない。

 

故に、シンジが探り探りでアスカに何処まで合わせられるか。

 

「今回は見守るしかない、か」

 

シンジとアスカが共にどこまで動けるのかは2人で決める事だ。

下手に作戦を組み込もうとして、2人の決めた事の足を引っ張る可能性は大いに高い。

 

「歯痒いけれど、信じましょう」

 

ミサトの発言はリツコも痛い程に理解している。

歯痒さは確かにある。

それを噛み締め、モニターの2人から目を離さない。

 

最後に加えた一言はミサトを落ち着かせる一面を含むと同時、自分自身に言い聞かせる一面もあった。

 

「ええ、その通りね」

 

彼女の発言の意図をミサトも呑み込む。

画面の向こうで必死に戦う2人を信じるより他にない。

 

「2人を信じましょう」

 

イスラフェルの殲滅を祈る。

無論、命懸けで二人三脚をする2人の無事を第一として――――だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「全速前進!!」

 

『OK。悪くない反応よ!!』

 

シンジの指示にアスカは頷くと同時に前へ踊り出た。

その真正面にはイスラフェルが2体立っている。

 

イスラフェルは既にこちらへ攻撃の体勢を整えていた。

目が赤く光る。

恐らくはこちらへ光線を放つつもりなのだろう。

本当にギリギリのタイミングに離れるのではなくて急接近する選択肢を取る。

 

自殺行為にも思えるが、向こうの照準を合わせて解き放つタイミングもこれまでのやり取りで掴んだ。

アスカのアシストとオペレーターの解析のおかげなのは言うまでもない。

 

身体の中でリズムを刻み、シンジは前へ出る事で照準を外す。

光線を放った直後に硬直が生まれる事も解析済みだ。

この状況で一番のセーフティポイントは間違いなくイスラフェルの懐となる。

 

問題はそのタイミングだが、シンジの指示はアスカにとってもバッチリであった。

そして、大きな収穫はこういった動きを"シンジが可能とした事だ。"

 

でも、これだけでは終わらない。

これで終わってはイスラフェルに勝つのも、"これから先の使徒に勝利をするのだって難しい。"

 

「エヴァ連弾!!」

 

『付いて来なさいよ!!』

 

シンジが次の行動を飛ばす。

それにアスカがいの一番に動く。

やはり、操縦に関しては彼女が一番だ。

 

弐号機を両手を地面に付けて低姿勢からイスラフェルの片方を上空へ向けて蹴り上げる。

遅れてシンジが初号機を同様に動かした。

弐号機と同様の動きを片方のイスラフェルへ行う。

 

2体のイスラフェルが宙へ蹴飛ばされる。

それだけで終われるものかと、シンジとアスカはイスラフェルを追い掛けるように真上へ跳躍した。

 

「うおおおおおおおおおおおっ!!」

 

『はあああああああああああっ!!』

 

イスラフェルの真下へ。

身体を捻りながらの脇腹へ蹴り込む。

その一発だけでは終わらない。

捻らせた勢いのままに更に身体を回転させ、もう片方の足での蹴りをぶち込む。

これを両機共に同時に行っていた。

 

その蹴りはさしものイスラフェルにも予想外のものだっただろう。

コアが無事なので殲滅とまではいかない事は分かっている。

だが、こちらが攻撃のリズムを掴む事には成功した。

 

「アスカ!! ぶつけるよ!!」

 

『了解!!』

 

二度目の蹴りで動きを鈍らせたイスラフェルの腕を掴む。

弐号機も同様にしている。

反撃が行われる前に初号機と弐号機はお互いの位置を確認し合って――――イスラフェルを同時に投げ合った。

 

2体のイスラフェルがぶつかり合うようにお互いにぶつけ合う。

向こうにとっても予想の範疇を超えた行動。

イスラフェルは空中で身動きが取れない状態が続く。

 

それはエヴァも同じ筈であった。

 

「アスカ!! 足場!!」

 

『全く、ガギエルとの戦いが活かされるなんてね』

 

エヴァは2機とも"空中を闊歩し、イスラフェルの上を取っていた。"

これには予想外であろう。

 

前回、ガギエルとの戦いでアスカはシンジのアドバイスでATフィールドを足場として発動させた。

その時の経験が活きてくるとは。

確かにこの戦法は今後の戦闘でも大きな助けになる筈だ。

 

『行くわよ!!』

 

「うん!!」

 

今度はアスカが指示を飛ばす番だ。

攻撃を確実に当てるべく、彼女が先頭に立ってイスラフェルめがけて落下していく。

ATフィールドを足場としての落下、そこを蹴っているのだから勢いは当然のようにある。

 

このままなら押し切れる。

イスラフェルのATフィールドは解析の結果、これまでの使徒と比較しても弱いものである事が判明している。

こちらの単純な蹴りがATフィールドで防がれなかったのは、単純に防ぐ事が困難であるからと推察が可能だ。

 

恐らくはその辺りのリソースもこの分裂に割かれているのだろう。

厄介な事この上ないが、こういったデメリットはやはり各使徒にあるものだと察せられる。

 

この一撃で終わりにする。

 

 

 

 

 

直後、イスラフェルは1体に戻った。

 

 

 

 

 

わざわざ分裂を止めてまでこちらの攻撃に備えるメリットが分からない。

何をするつもりなのかと思えば、目から赤い光が見えた。

光線を放つつもりなのだろうが、既にこちらはタイミングを掴んでいる――――

 

『避けて!!』

 

エントリープラグ内にオペーターのマヤの声が反響した。

その叫びにシンジもアスカも即座に動いた。

 

「アスカ!! 足!!」

 

『なるほど!!』

 

互いに身体を横へ向けて両足を互いに向け、同時に真横へ跳躍する。

その一瞬のタイムラグの後にイスラフェルの光線が先程までエヴァが居た位置を通過した。

 

「危なかった」

 

『シンジの機転で助かったわ。あとマヤさんもありがとう』

 

『いえいえ』

 

両機共に無事に地面へ、より正確には浅い海面に着地した。

シンジの機転にアスカが礼を述べる。

 

「いや、アスカが僕の意図を汲み取ってくれたからだよ」

 

『何だかんだ、アンタの思考が分かってきたみたいね。

 それより、イスラフェルの光線のテンポが速くなってたの?』

 

『エネルギーの収束具合が早かったから、そうではないかと推測したの』

 

アスカは先程のイスラフェルの光線のテンポが速くなった事の疑問を持つ。

それを見抜いたマヤ及びオペレーターの観察眼は凄まじいものがある。

 

『分裂しなければ技の威力が上がって、出も速くなるな』

 

『分裂のメリットは手数が増えるのと、殲滅するのも難しいとかかな』

 

青葉と日向がイスラフェルの状態における特徴を口頭で伝える。

どちらにもメリットデメリットはある。

けれども、こちらが倒そうとすると分裂するのだから結果的に分裂する事は免れない。

なので、分裂を前提で考えるのは良さそうだ。

 

「あのさ、イスラフェルが降りてこないんだけど?」

 

『これは、飛行能力!!』

 

シンジがそういえばと真上を見る。

通信機の向こうで日向が驚きの声を上げている。

確かにイスラフェルは上空で待機しているではないか。

 

「あれはふゆうを持ってるね」

 

『元ネタは聞かないでおくわ』

 

そんな呑気な事を言っている場合ではない。

イスラフェルはこちらへ照準を合わせていた。

 

『来るわよ!!』

 

アスカの言葉と共に初号機を後ろへ跳ばせる。

そこまで高い位置に居る訳では無い。

しかし、こちらからの反撃は難しい。

それに遠距離の利は向こうにある。

なので、今回自分は囮として役割を果たせば良い。

 

『悪いけど、また分裂して貰うわ!!』

 

弐号機を走らせ、海面へ手を伸ばす。

腕を上げるとそこには最初に使ったプラグナイフを拾い上げた。

それをイスラフェルめがけて投擲する。

 

投擲されたプラグナイフは一切のブレも見せずにイスラフェルへ突っ込んでいく。

初号機に気を取られ、イスラフェルは無防備に背中を晒していた。

なので、投擲したナイフは吸い込まれるように突き刺さる。

 

位置的にもコアは近い筈だ。

あとは押し込めば良いのだが――――アスカが発した言葉通りの事が起こる。

 

イスラフェルは分裂したのだ。

その際にプラグナイフは落下する。

 

『ととっ!!』

 

プラグナイフを弐号機は反射的にキャッチし、上空で分裂したイスラフェルを見やる。

こちらも油断は見せない。

向こうも浮遊しているが、恐らくは長くは保てない。

 

『来る!!』

 

シンジの予想も的中した。

観測していた青葉が即座に発した。

イスラフェルが初号機のみを標的にして飛んでいく。

 

『やはり、長くは浮遊出来なさそうね』

 

これはガギエルの時も同様であった。

あの巨体で浮遊と海中を行ったり来たりしていれば、こちらも翻弄されていただろう。

だが、移動も海中を用いていた事から浮遊し続けるには限界があるのではと推測。

 

シャムシエルやラミエルも浮遊を続けていたが、基本的には地面スレスレの低空飛行だ。

その上で様々な特徴を持っていた。

となると、浮遊を続けるのだとしたら“予めそういう特徴を持っていないといけない可能性は高い。”

 

まだサンプルも少なく、確定させるには難しい。

検討の余地はある――――

 

「そんな考察は後回し!!」

 

こういうのはリツコの専門分野。

今は自分の事に集中すべきだ。

イスラフェルは2体とも、初号機を狙いに来ているのだから。

 

だが、忘れて貰っては困る。

 

『アタシも居るのよ!!』

 

片方のイスラフェルを背中から思いっきり蹴り付ける。

プラグナイフによる斬撃で分身が更に増えないとも限らない。

それ故に打撃系を選択する。

 

シンジの視点からは見えていた事柄なので、アスカが蹴り飛ばす瞬間に初号機を屈ませる。

次の瞬間には初号機の真上をイスラフェルが通過する。

残った片方のイスラフェルが一瞬だが、弐号機に意識が向いたように見えた。

 

「うおおおおおおっ!!」

 

雄叫びと共に初号機を無理な体勢から疾駆させる。

全力で駆けつつの、頭突きをお見舞いしてやる。

 

初号機には額部に鋭い角がある。

これはあくまで装甲であるので、金属製である。

しかも使徒と戦う為に造られた特別製ともなれば、その硬度が如何程のものかが不明なままだ。

最低でもダイヤモンド、恐らくはそれ以上の硬度の鉄柱を突かれるようなものだ。

 

イスラフェルも初号機の頭突きを諸に喰らうのを拒むつもりだ。

証拠にイスラフェルは自身と初号機との間にATフィールドを展開する。

一瞬、ほんの一瞬だけ初号機の勢いは止められる。

 

「けど!!」

 

押し切れない訳では無い。

イスラフェルのATフィールドはこれまでの使徒よりも脆い。

ATフィールドはより強い力で押し切る事が可能だ。

初号機の自力は分裂したイスラフェルよりも強い。

なので、無理な体勢からでも押し切る事が出来た。

 

更に、その上でATフィールドによる中和を行う。

シンジも慣れたもので、あっさりと壁を突破する。

 

しかし、イスラフェル相手に一瞬の時間で十分だったらしい。

初号機の頭突きがイスラフェルに当たると同時に後ろへ跳ぶ。

直撃は免れ、ダメージを最小限に抑える。

 

「くそっ」

 

『一筋縄でいかないのは分かってたでしょ』

 

千載一遇の好機を逃したシンジは知らずに内心で舌打ちをしていた。

それを口に出す彼をアスカは窘める。

元より、容易く勝てる相手ではないのだから。

 

『それより、シンジも意外とエヴァの操縦が出来てるじゃないの』

 

「まだまだアスカには及ばないどね」

 

ここまでもアスカのサポートありきでの動きもある。

彼女から教わったもの、彼女の指示、そしてアスカを超えるシンクロ率があるからこそ成し得ている。

事実、今の突撃がアスカであればシンクロ率が劣っていたとしてももっとスマートに、より確実に接近してダメージを与えられたに違いなかった。

 

『当然。年季が違うもの。

 けど、ATフィールドの使い方の発想にはシンジに負けるわ。

 おかげでアタシも使徒と真正面から戦えてる』

 

操縦技術はアスカの方が圧倒的に上だろう。

しかし、実戦経験はシンジの方が上だ。

互いが互いの不足を補い合っている。

それでも足りない部分は、NERVの面々がカバーしてくれている。

 

『これで勝てないっていう方が難しいわよね』

 

「それは同意見」

 

皆の協力があるからこそ、戦えている。

決して二人三脚ではない。

単語としては正しくないだろうが、あえて言うならば「二人多脚」といったところか。

 

『それより、ごめんねシンジ。イスラフェルを分裂させるしか思いつかなかったの』

 

「謝らないで。助けられたんだから、お礼を言わせて」

 

感覚で分かる。

あのままだとイスラフェルに捕まって、自分は倒されていた可能性は十二分にある。

分裂されてでも初号機を助ける事を選択した。

結果的にイスラフェルの有利を生んでしまったが、シンジは助けられた。

シンジからしてみればアスカのおかげで助けられたのだ。

礼を述べる以外に何を口にすれば良いのか?

 

それにだ。

イスラフェルが分裂した事によって"殲滅する為の下準備が出来たと言える。"

 

『さて、そろそろエヴァの稼働時間も限界が近いけれど……いけそうかしら?』

 

「うん。いけるよ」

 

アスカの問いにシンジは肯定の意を以て返した。

それを受けたアスカは「OKよ」と満足そうにしている。

 

『ミサト。決着を付けるわ』

 

『いけるの?』

 

『シンジがいけるって言ってるのよ。

 "できるに決まってるじゃない"』

 

随分とプレッシャーの掛かる事で。

けれど、シンジは気負ってはいない。

画面越しの頷く。

 

『なら、こっちから言う事は無いわ。やっちゃいなさい!!』

 

「了解!!」

 

『もちろんよ!!』

 

シンジもアスカも答え方は違ったが、意気込みの大きさは同じだ。

瞬間、シンジとアスカは先程の意趣返しとばかりに1体のイスラフェルへと向かっていく。

 

イスラフェルもこちらの動きに反応を示す。

光線を放とうとする。

だが、何度も見せられたが故にパターンは読めている。

 

『ワンパターンなのよ!!』

 

アスカが跳躍と同時にイスラフェルの手前で着地する。

光線が放たれる直前のものであり、海面が大きく水飛沫を上げる。

視界を一時的ながら封じられる。

 

それはエヴァも同じなのだが、残念な事にこちらに不都合は生じなかった。

何せ、この手法は最初から予想されていたことだからだ。

 

既に初号機は水飛沫から大きく迂回する形で走らせている。

イスラフェルの背後をきっちり取る事に成功した。

 

「取った!!」

 

イスラフェルを後ろから羽交い絞めにする。

人型をしているので取れる戦法である。

 

「もう1体のイスラフェルの位置を!!」

 

『シンジ君、少し上へ持ち上げて』

 

「了解!!」

 

これはアスカではなくて日向からの指示だ。

シンジの発言から意図を察し、どうするべきなのかを的確に指示を出す。

イスラフェルの光線の発射は止める事が出来ない。

だから、そのまま同士討ちも同然の攻撃をしてしまえば良い。

コアによる損傷を同時に行わなければ、イスラフェルは不死身みたいなものだが、コアの損傷を受けた側の復活には多少の時間を要するだろう。

 

結論から言おう。

見事にイスラフェルの光線はもう片方へ命中。

そして、復活するのに多少なりとも隙を作っている。

 

『これで条件は整ったわね』

 

「うん」

 

アスカの言葉を受け、シンジはエヴァの筋力に物を言わせてイスラフェルをスイングする。

投げ飛ばした先はもう片方のイスラフェルのところ。

これで1体に戻ろうと構わないが、片方のコアの修復が済んでいないからか分裂したままだ。

 

これこそ、ミサトが2人に聞かれて思い付いた今回のイスラフェルを討つ為の戦法。

"あえて分裂させて、その特徴を利用させて貰う。"

 

どちらもスペックは同じ個体だ。

できる事も同様と見て良い。

その中でも光線は使えると考えていた。

どちらかを一時的にでも引き離し、2体で攻める。

その際、一塊になって光線を撃つ選択肢を作らせる速度で詰める。

殆ど賭けの要素もあり、この状態を引き出すのも時間を要した。

何度か同様のシチュエーションを呼んだものの、光線を毎回放つ事は無かった。

今回、ようやく引き当てた。

 

威力もエヴァを葬るつもりなら申し分ない事はサキエルの頃から実証済み。

コアを損傷させられずとも、身動きさえ封じられれば良かったが一番の結果を引けたのも運が良い。

これは粘り勝ちもあるだろう。

次にコアの損傷で身動きが取れない個体へ無事な方を送り付ける。

 

そこへこちらが猛スピードで挟み込むように詰め寄り、逃げ場を封じ込める。

少し斜めに位置取り、後方への退避しか選択肢を与えない。

必然、イスラフェルはその場へ釘付けにされる。

 

「いくよ、アスカ!!」

 

『分かってるわ』

 

そこへ、必殺の一撃を叩き込む。

その名も――――

 

「『エヴァダブルキック!!』」

 

要は同時に蹴りを打ち込む技。

口で言うのは易し。

けれども実行するにはコンマの猶予も無い。

だから、この事態の為に予め合言葉をいくつか決めていた。

某有名漫画の原作には無かったアニメオリジナルシーンのもの。

それらは――――

 

 

 

「『天丼!!』」

 

 

 

互いに走り、イスラフェルへ迫る。

 

まだ相方は行動できずにおり、どちらを攻めるべきか迷っている。

 

 

 

「『カツ丼!!』」

 

 

 

直前で跳び上がり、一回転。

 

ATフィールドを張って守る選択を取ろうとする。

 

 

 

「『親子……』」

 

 

ATフィールドを足へと集中させる。

 

両側へATフィールドを張って――――

 

 

 

「『ドン!!!!』」

 

 

 

イスラフェルのATフィールドを中和させて、攻撃を貫通させる。

寸分の狂い無く、見事にコアに渾身のキックを決めた。

 

 

 

エヴァの渾身の一撃を受けた2体のイスラフェルはそのまま海面を滑っていく。

その過程、イスラフェルは1体へ戻る。

時すでに遅し、コアは完全に損傷していた。

 

 

 

直後、使徒は光の柱となって爆破する。

 

既に見慣れた光景となったその光は使徒が完全に消滅した証明であった。

つまり…………

 

『殲滅、成功ね』

 

「うん。そうだね」

 

初号機も弐号機も充電を使い切り、物言わぬ状態となって座っていた。

あとは救助されるのを待つだけだ。

 

『あ~あ。せっかくカッコよく決めたかったのに、締まらないんだから』

 

「まあ、仕方ないよ」

 

アスカは不満げだが、シンジはいつもの事なので気にした様子はない。

しかし、アスカのは言葉だけなのが分かる。

モニター越しに映る彼女の顔は晴れやかだったからだ。

 

何だかんだと日本でのデビュー戦は殲滅からスタートを切れたのだから良い方だろう。

 

『む? 何を笑ってるのよ?』

 

「え? 笑ってた?」

 

『そうよ!! アタシを見て笑ってたでしょ?』

 

「いや、そんな事は無いよ。ただ、何だかんだでイスラフェルを倒せたから嬉しそうだなと思って」

 

『こんなもので満足できる訳が無いわ。

 今度はもっと余裕で倒してやるんだから。

 その為にもシンジは操縦が上手く出来ないとね。

 みっちりしごいてあげるわ』

 

「藪蛇だった!?」

 

アスカのスパルタ教室が開校されるらしい。

それに恐怖を覚えるシンジ。

このやり取りを見守る面々は微笑ましく眺めている。

 

その中で1人、アスカの発言の内容を別角度から見る者が居た。

 

『1人でやるとは言わなくなったな』

 

彼女の事を知る加持が実は陰でこの状況を管制室で見ていた。

それはアスカの成長と言って良いものだろう。

嬉しく思いながらその場を離れる。

彼が溢した言葉は実は機械が拾っていたのだが、誰も気付けなかった。




如何でしたでしょうか?

サブタイはトドメの為の合言葉でした。

一体、元ネタは何ゴンボールなんだ?

色々とサブタイを付けられそうな単語があったのに、シリアスがぶち壊しだよ。


イスラフェルの殲滅も、原作展開も考えました。
ですが、せっかくなら分裂をしている状態で倒したかったのもあったので。
そこで分裂状態を逆手に取るという手法を取ってみました。
上手くいっていると思って頂けると幸いです。


さて、今回は少しばかり駆け足気味の展開になってすいません。
加持さんは後方彼氏面みたいに隅っこで腕組んでました(笑)
出すタイミングが思いつかなかったので、このような形にすまん。

今回は雑なものも少し多かったと思いますが平にご容赦を。

次回も時間が空くと思います。
その時は申し訳ないです。

では次回に。
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