碇シンジは夢を見る   作:ゼガちゃん

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大変お待たせしました。

急用でこちらの事情で用意出来ずに申し訳無いです。
更新も普段とは時間が少しズレてます。

さて、サブタイの通りのキャラの登場です。

では続きをどうぞ。


親方ァッ!! 空から胸の大きい良い女が!!

イスラフェル殲滅から数日が経った。

現状、シンジもアスカも大きな怪我はない。

使徒も出現しない平和な日々が続いた。

 

しかしながら、変化はあった。

まずアスカがシンジと同様に葛城家に居候する事となった。

パイロット同士の親睦を深める事かつ、メンタルケアをミサトに押し付け――もとい、一任した。

 

更にこれが一番と言って良い変化。

アスカがシンジの特訓をし始めた事だ。

 

きっと、アスカを知る面々からしたら鳩が豆鉄砲を食ったような顔をする話だろう。

言葉を飾らないなら彼女には自己中な部分がある。

 

特にエヴァに対しての執着は並々ならない。

そんな彼女がどうしてシンジの指南役を買って出たのか?

 

アスカを知る面々からは様々な妄想話を繰り広げる。

とは言え、その面子も限られてくる。

以前までのアスカを良く知る面子と言えばミサト、リツコ、加持位なものだ。

 

その面々の中でミサトは共に暮らしている事もあり、相談を兼ねてリツコへ良く話題を振る。

加持は――――恐らく居ても現状のミサトでは話もしないだろう。

結果、ミサトの話し相手はリツコのみに絞られる。

 

「きっと、恋してるのよ」

 

「根拠はあるのかしら?」

 

今日も今日とて、ミサトは「アスカの変化」を話題とする。

NERVにある休憩スペース。

丸テーブルを挟んでミサトとリツコは各々飲み物片手に座っていた。

両者共にコーヒーを嗜む。

 

休憩の間にも業務とあまり変わらない話題が出ていた。

前回の使徒の特異性について議題にしていた――――筈であった。

なのに気付けばシンジとアスカを中心とした話となり、やがて話題はアスカのみとなった。

 

「ええ、アスカは何だかんだ言ってシンジ君を信頼しているわ」

 

「それは見ていれば分かるわ。でも、意外だと思うのは頷ける事ね」

 

言葉にすれば何てことない内容だろう。

ただし、他人を信じて使徒と戦う等という事は今まであっただろうか?

正直、アスカの"尋常ならざる人生を知っている。"

 

言葉を飾らずに言わせて貰えば、自己承認欲求の塊みたいなものだ。

あの年頃ならば何も不思議に思わない。

ましてやアスカはドイツ支部のNERV内でもエヴァのパイロットの資質を大きく買われている。

アスカの存在意義を証明する手っ取り早い方法がエヴァだっただけだ。

 

同じパイロットであるシンジの事をライバル視しているのなら話は早い。

実際、リツコが裏で彼と彼女を引き合わせた際にはライバル視していた。

ただ、エレベーターの事故で閉じ込められた時に随分と仲良くなっていた。

その時に心境の変化でもあったのだろう。

詳細まではさすがに覗き見するつもりはない。

2人にはプライベートがあるのだから。

 

この話は誰にもしない。

ドイツに密かに連れて行った事が明るみに出るのも避けたい。

何より、ミサトに教えでもすれば「見ましょ!!」と酒の肴にしかねない。

2人の為にも黙っておこう。

 

「む? リツコ、何か知ってる?」

 

「ちょっとね。何かあったらしい事は聞いたわ」

 

「何で同居人の私が知らないのに、リツコが知ってるのよ」

 

「パイロットのメンタルケアの一貫で教えて貰ったのよ」

 

こういう時、勘の鋭すぎる友人を持つ事にゾッとする。

嘘とまではいかない、真実を織り交ぜて伝える。

とはいえ、ミサトは未だに「本当かしら?」と呟いてリツコを見つめる。

 

「一緒に住んでるからこそ言えない事はあるわ。

 母親だからと言って、何でも言える訳じゃないのだからね」

 

「結婚もまだなのに既に母親みたいな扱い……」

 

シンジとアスカの中学生2人。

年齢としては若いかもしれないが、いつの間にか二児の母のようなポジションに着いてしまった。

 

「まあ、シンジ君には家事をして貰ってるし、アスカも手伝ってるみたいだから何も言えないのよね」

 

「中学生に家事で負けちゃ駄目でしょ」

 

とっくに成人している1人暮らしの女性の発言とは思えない。

しかし、シンジの主夫っぷりを見たら任せたくなってしまう。

料理も下手をするとNERV内でも指折り数える程の実力を持ってしまっている。

戦自からもお菓子の催促が遠回しにある位だ。

 

父親のゲンドウが突き放している間にとんでもないスキルを身に着けてしまっていた。

一体彼に何が起きたのだろうか?

 

「ほら、NERVは激務だから家事なんてしてる暇が無いのよ」

 

「分かってるから明後日の方向を見るのは止めなさい」

 

おまけに乾いた笑いまでする。

ミサトの言葉は正しく、しかも彼女は最近昇進した身だ。

それは仕事は増える訳だし、何よりもシンジとアスカを守る為にも必死になる。

そういう考えは彼女が否定したいだろう母親役が板に付いているとも言える。

 

「それで話は戻るけど、アスカはシンジ君を少なくとも意識してると思うの」

 

「色々な意味ででしょうね」

 

ライバル視しているのは間違い無い。

しかし、今までとは恐らく塩梅が異なる。

 

自分が一番でなくてはならないと思う心はそのままだ。

他人に教える事をしてこなかった彼女がシンジに教えを説いている。

 

蹴落とす事も視野に入れそうなものを、アスカは逆にシンジに手を差し伸べる。

同じレベルまで引き上げ、それでも自分が上だと証明する。

言うなればスポーツマンシップに則って正々堂々と戦う姿勢を見せる。

 

「同い年でアスカと張り合ってくれる相手も居なかったしね」

 

彼女がパイロット訓練の片手間に学校へ通っていた時期もあった。

当初は学業で劣っていたが、たゆまぬ努力の末に学年一位となった。

しかし、誰もその後にアスカと張り合おうとする猛者は現れなかった。

 

彼女の秀でた才覚が故と判断し、誰も彼女の努力を見てこなかった。

そこで諦め、アスカにとっても張り合いのない日々が続く。

そこへ一石を投じたのは他でもないシンジだった。

 

「加持君の事を好きと言ってるけれど?」

 

「そんなの近しい男があいつしか居なかったからよ。

 どちらかというと、褒めて欲しいって言うのがあるのかもね」

 

言いたくはないが、加持はパイロットの精神を安定させる言葉を選ぶ。

パイロットが居なくてはエヴァは動かないし、使徒とは戦えない。

悪い言い方をするならビジネスでアスカの近くに居る。

 

「けど、シンジ君は“求めなくても欲しいものを与えてる”」

 

シンジはアスカを認めている。

恐らくは素で彼女を褒めちぎる。

自身の弱味を隠す素振りも見せやしない。

 

だからこそだと思う。

アスカがシンジの事を特別視しているのは。

 

「話だけ聞くと天然たらしね」

 

「人をたらすのが得意技なのよ」

 

この場に居ないからと好き勝手言う。

嫌悪からの言葉ではなく、彼を称賛する意味で使わっているので複雑な気持ちになりそうだ。

 

「多分だけど、アスカも本能的に理解していると思うわ。

 その内にシンジ君に積極的にアプローチを――――」

 

「全く、何を話してるのかと思えば」

 

ミサトとリツコの会談に割り込むのは件の人物だった。

アスカは呆れながら姿を見せたのだ。

 

「あらアスカ。お疲れ様」

 

「お疲れ。というより何で良い大人が修学旅行の学生みたいなノリでコイバナしてるの?

 しかもアタシの話だし」

 

「この歳になると中高生のコイバナの方が盛り上がるものなのよ」

 

「本当かしらね。アタシの事を話の肴にでもしてたんじゃない?」

 

ジト目で見てくるアスカを無視してコーヒーの入ったコップを啜る。

確信犯なのは何となく分かったが、問い詰めるのもバカバカしい。

 

「言っとくけど、アタシはシンジに恋愛感情は無いわ。

 確かに話は合うかもだけど、アタシの好み加持さんみたいな頼れる大人なの」

 

「そういう事にしておいてあげる。

 人間いつ心変わりするのか分からないからね。恋愛の先輩からの助言よ」

 

「心に留めておくわ」

 

ミサトの言葉に普段までならもっと突っかかるところだっただろう。

だが、こうした対応をするようになったのは目を見張る。

シンジと邂逅してからというもの、彼女の精神的成長は凄まじい。

 

「ところでアスカ、ここへは何しに来たの?」

 

「ええ、シンジが帰りは遅くなるからミサトと買い物だけして先に帰ってて欲しいって」

 

言伝はシンジからのもの。

買い物というのは夕飯の材料、日用品だ。

手で持って帰るには量が多いのでミサトをタクシー代わりに使う必要があるので声掛けに来たのだ。

 

「わざわざ来なくても連絡してくれれば」

 

「入れといたわよ。だけど返信が無かったから直接来たの。

 仕事が立て込んでスマホも確認できないと思ったから」

 

言われてスマホを見ると、確かにメッセージが届いていた。

開いていないものに既読の文字も付かないので多忙なのは把握できていたのだろう。

 

「シンジ君が遅くなるって話だけど、何処に居るの?」

 

「学校よ。この前学力テストがあったけど、シンジだけ受けてないから今受けてるの」

 

「あ~、そういえばそんなのあったわね」

 

ここ最近の使徒ラッシュとエヴァの訓練に忙殺されて本業を疎かになっていた。

本来、NERVの預かりなので学業などで必須のテスト関連は免除されているのだが、シンジは馬鹿正直に受けている。

彼なりに将来を見据えての行動だろう。

 

ちなみにアスカも、綾波も既に受けて終わらせている。

 

「シンジ君、成績は悪くないんだけど、どうしても歴史は苦手みたいなのよね」

 

「時々訳の分からない事まで言い出すしね」

 

「人には得意不得意はあるもの。シンジ君にも苦手なものがあるのは少年らしくて良い事よ」

 

ボロを出さないか不安になるリツコが話題を無理矢理に断ち切る。

シンジが歴史を苦手とするのは『平行世界』の知識が邪魔している事が発端だ。

あちらとの歴史の内容は異なる部分が多い。

 

どうしてリツコの方が気を回す事となるのか?

いっそのこと本当の事を話すべきだと思う。

 

(そうもいかないのがもどかしいわね)

 

こういう事は知る人が少なければ少ないだけ良い。

シンジもリツコだからこそ腹を割って話した。

理由は人体実験などのろくでもない理由から身を守る為だ。

 

これでもミサトやアスカは口が堅い方だと思っている。

ただ、信頼しているからと話すのは違う。

下手をすると面倒に巻き込む危険性があるか。

もう少し、シンジとこの辺りを煮詰める必要があるだろう。

 

「帰ってシンジ君を待つのが良いんじゃないかしら?」

 

「それもそうね」

 

話題を思いっきりぶった斬って告げる。

シンジの話題を続けてリツコがボロを出すのも悪い。

後でシンジにも念押ししておこうと決めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「終わった〜」

 

シンジもテストを終わらせ、大きく伸びをして身体のコリをほぐす。

ポキポキと身体が鳴り、どれだけ集中していたのかを物語る。

 

「さて、あとは提出して帰るだけ」

 

筆記用具を鞄へしまっていく。

教師が手を離せないので直に持ってくるように言われていた。

 

「…………あれ? 無い」

 

筆記用具を片付けている最中に荷物が足りない事に気付く。

無かったのは昼食時に使用した箸の入ったケースだ。

 

「屋上に置いてきちゃったかな」

 

昼食の場所は屋上だった。

そこでトウジ達と食べていた。

確かテストを受ける関係で遅くなる話をし、テスト内容で出る可能性のあるところを予測して予習していた。

そのせいで次の予鈴ギリギリになったので慌てて片付けて教室に戻った。

 

「その時に落としちゃったのか」

 

さすがに一度口を付けたのだから衛生上、置いていくのは問題がある。

取りに行かなくては。

幸いにも屋上の出入りは自由なので、鍵当番の人が来るまでは余裕がある筈だ。

 

「テストを渡したら行こう」

 

職員室へ赴き、テスト用紙を渡すと同時に忘れ物を取りに行く旨を伝える。

その足で屋上へ来ると、ポツンと置かれていた箸がある。

 

「あったあった」

 

それを回収し、さて帰ろうか――――そう思った時だった。

 

「――――ど――――てぇっ!!」

 

「え? 何?」

 

ふと、声が聞こえた。

見回しても誰も居ない。

まさか、超常現象かと疑う。

実際、使徒やエヴァなどという超常の塊を見ているので受け入れるのはすんなり出来る。

 

「どいてぇっ!!」

 

思考に耽っていると、今度こそ聞こえた。

耳に届いた際、それは頭上から発生しているのだと発覚する。

状況を把握しようと、顔を上げた瞬間であった。

 

「どいてぇっ!! どいてぇっ!! どいてぇっ!!」

 

「うそおおおぉぉぉぉぉっ!?」

 

パラシュートを広げ、こちらへ落下してくる人が。

シンジには逃げる余裕は既に無かった。

相手方のヒップドロップがシンジのお腹にのしかかる。

減速はしていたので、衝撃はやんわりではあるが意識の外からのものでたまらず尻餅をつく。

 

「あたた……」

 

「ごめんごめん、大丈夫かい?」

 

「は、はい……何とか」

 

言葉を紡いでいて、目の前の人物を見て思考が止まる。

赤いフレームの眼鏡を掛けた茶髪ツインテールの少女。

服装は表現をするならば、ミッションスクール風の制服といったところか。

彼女の事もシンジはきちんと覚えている。

 

真希波・マリ・イラストリアス。

 

「マ…………えっと、あなたも無事ですか?」

 

「こっちの心配を真っ先にしてくれるとは――――なかなか出来る事じゃないね」

 

危うく名を呼びそうになったのを抑える。

その間にシンジの上から退いたマリが手を差し伸べる。

 

「私は真希波・マリ・イラストリアス。マリって呼んで」

 

「僕は碇シンジです」

 

「なるほど、わかったよ。わんこ君」

 

「名前に原型がないんですが…………」

 

「気にしない気にしない」

 

まさか原型がないあだ名を付けられるとは思わなかった。

そこを指摘すると、明らかに彼女の台詞ではない事を吐く。

まあ、構わないが――――

 

「それで、マリさんはどうして空から落っこちてきたんですか?」

 

「ちょっと、スカイダイビングを嗜んでいたら着陸に失敗しちゃってね」

 

差し伸べられた手を掴んで立ち上がり、シンジは質問を飛ばす。

それに対してマリはそのような返答をする。

 

「着陸に失敗って…………下手したら大怪我、それ以上の最悪の展開になってましたよ?」

 

「そこは御心配には及びませんぜ。そういう時の為の装備はこのリュックに入っているからね」

 

パラシュートを外しながら、そこに仕込まれているものが他にもあると言う。

それは良いのだが、そんな危ない事はしないで欲しい。

 

こちらの彼女とは今関わったばかりだが、『真希波マリ』との関係性があるが故に見知った顔の人が危険な事をするのは心臓に悪い。

実際、綾波やアスカが危険に身を投じる戦いをしているのを歓迎していないのだから。

 

「はあ、分かりましたよ。とりあえず、帰りはどうするんですか?」

 

「そこもぬかりありません事よ。知り合いに迎えに来てもらう事になっているにゃ」

 

「ぬかりないなら、着陸に関しても計画的に行えるように進言っしていおいて欲しいかな」

 

「向こうには『空から女の子が!!』ってスクープになるところだったって釘を刺しておくしかないね」

 

「そこだけ聞いたらラ〇ュタごっこかと勘違いされそうだね」

 

「でもあながち間違った事ではないからね」

 

「ありのままを話しただけでもややこしい事態なのは否定できないですね」

 

「これは何とも手厳しいですにゃ!!」

 

このやり取りも『平行世界』の彼女と変わらないものがある。

その事を嬉しく思う。

 

「おっと、迎えが来てくれてるみたいだから行くね」

 

「気を付けて」

 

「ありがとう。それと、私と会った事は他言無用でお願いね。NERVのわんこ君」

 

「え…………それって」

 

「じゃね」

 

シンジが訊ねるよりも先にこの場を後にする。

パラシュートを無雑作にリュックへ詰め込んで走り去る。

行ってしまった――――現状のこちらの事情を知っている。

NERVの機密情報が外部に漏れている?

はたまた、それだけの情報収集能力を持つのか?

いずれにしても、答えを知りたいならまた会うしかない。

いつ会えるのか、それは定かではないが。

 

ふと、彼女を迎えに来たという人物が居る事を思い出した。

場所を考えるなら校庭だろう。

ここから校門が見えるので、居るのではないかと見てみる。

 

遠目からなので顔までは見えないが見慣れない、明らかに怪しい人物が居た。

青い短パン、赤茶色のフード付きの上着を着ている。

顔はフードを深く被っていて分からない。

 

「スマホの写真機能でも使えば見れるかな?」

 

ふと、思い立ったのでシンジは悪いと思いながら行動する。

こちらでのマリの現在位置を知らないままでは会おうと思って会えるものではない。

 

その当人も校門まで到着してしまい、このままでは帰宅するのは間違いない。

何か情報を持てないかと、スマホの写真機能を用いてズームする。

 

距離がある事と、フェンスが邪魔をした事、更には画質の悪さが足を引っ張ったので顔も分からなかった。

ただ、髪が長いのかフードの隙間から微かに色が見えた。

赤み掛かった金髪であった。

そして、口が微かに動いているのも確認できた。

 

シンジへ向けて何かしらを言ったのかもしれないが、残念ながら分からない。

首を傾げるが、疑問に答えてくれる人は居ない。

ここに居ても仕方無いと、屋上を去るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせ〜」

 

「遅いわよ」

 

マリが元気良く手を上げながら迎えに来た人物へ声を掛ける。

受けた人物はぶっきらぼうにそう返す。

声からして少女である事は分かる。

 

「さっさと行くわよ。ただでさえ目立ってるんだから、見つからないようにしないと」

 

「大丈夫大丈夫」

 

「その自信は何処から来るのやら。誰にも会ってないわよね?」

 

「とりあえず、さっき屋上で人にあったからお近づきの印に名前だけ教えてきたにゃ〜」

 

「そう。会って名前を…………は?」

 

マリの発言は少女にとっても意味不明だった。

名前を明かした事を聞くと、固まってしまう。

 

「いや、何で教えたのよ?」

 

「いやぁ〜。ちょっとね〜」

 

「変な事をして、こっちの事を勘付かれたらどうするのよ」

 

マリの行動は軽率だと言うのが少女の見解だ。

つまり、証拠を残すような真似をする事は許されないと言いたいのだろう。

 

「それなんだけど、私の名前を知ってたみたいだからバラしちゃった」

 

「はあっ!?」

 

今度は驚きのあまり出てきた声だ。

マリの素性を、最低でも顔と名前が一致する人物が居たのだ。

 

「それって、まさか屋上に見えるあいつ?」

 

「そそ。大正解。花丸をプレゼントするにゃ〜」

 

パチパチと大きな拍手をするマリ。

そんなものは不要だと、少女は拍手を止めさせる。

 

「なら、変な噂を立てられる前に退きましょう。

 ただでさえ、怪しまれそうな恰好で来たんだから」

 

「フードを被らなければ問題無いんじゃ?」

 

「アンタ、バカ? コネメガネと違ってアタシは顔バレNGなの分かってるでしょ?」

 

少女がフードを被るのにはそれ相応の理由がある。

それを知らないマリではない。

その事を指摘しつつ、フードの下でジト目で睨みつける。

 

「にゃはは。冗談冗談。怒らないで欲しいにゃ。せっかくの美人が台無しだぞ〜」

 

「なら、怒らせないようにしなさいよ」

 

学校に背中を向け、この場を早く退散したい気持ちを行動で表現する。

マリも少女の意見に賛同のようで、後を付いていく。

 

「ところで、名前を話したって言ったけど誰なの?」

 

「男の子だよ〜」

 

「男の子って、どんな相手だったのかって意味で言ってるのは理解してる?」

 

「にゃはは〜。ごめんごめん」

 

マリも悪ふざけが過ぎたと謝罪する。

少女は「はあ」と呆れている。

どうやらいつもの事らしく、慣れた対応をしている。

 

「まあ、ここへ来るのにスカイダイビングを選択する位に思考がぶっ飛んでる訳だし、今更か」

 

「いやぁ〜。空を見てたら『青いな〜』と考えてたら急にスカイダイビングしたくなりましてな〜」

 

「思考がぶっ飛んでるって事を肯定してくれてありがとう。

 それで? 結局どんな奴だったの?」

 

マリよりも先を歩く少女の表情は分からない。

元より、フードを被っているので見る事は難しい。

分かるのは「さっさと話せ!!」と圧を掛けている事だけだ。

 

「むふふ〜。どんな男の子か気になるなんて、やっぱり姫も女の子だね〜」

 

「良いから、話す!! 人によっては対応する必要があるんだから!!」

 

「私がこうしてのんびりしてるって事は慌てる相手じゃ無かったからさ」

 

「そこは信頼してるわ。ただ、何かのきっかけで存在を察知されるのは避けたいだけ」

 

神経質とも取れるが、それだけ心配しているのも分かる。

だから、マリも「肩の力を抜いて欲しい」という意味合いで使っている。

 

「っで? 何処のどいつ?」

 

「碇シンジ君」

 

「そう、碇シンジ………………待って」

 

シンジの名前が飛び出した瞬間、少女の足が止まる。

勢い良く振り返ると、マリへ詰め寄る。

 

「碇シンジって、まさかサードチルドレンの?」

 

「そそ。NERVのわんこ君だよ〜」

 

「よりによって警戒すべき相手じゃない!!」

 

「ああ、大丈夫大丈夫。彼は何も知らないから」

 

「それはそうかもだけど……いや、頭痛くなってきた」

 

フード越しに頭を抑える。

一気に押し寄せてきた様々な案件に押し潰されそうだ。

 

「頭痛の事ならDr.マリにお任せにゃ。頭痛薬も常備してるから」

 

「比喩表現だって分かってて言ってるわよね?」

 

「何とか場を和ませようと必死なんです」

 

「それなら、悩みの種を育てる真似は止めて頂戴」

 

「でもでも〜。彼なら平気だと思うんですにゃ〜」

 

「さっきも聞いたけど、根拠はあるの?」

 

「胸の大きい良い女の勘!!」

 

「…………とりあえず戻ってしょっ引くのが早いかしら」

 

「わぁっ!! 待った待った!! ごめんって!!」

 

今回は悪ふざけが過ぎたと反省の色を示す。

でも、根拠はある。

少女の背中を前へと押しながらマリは歩き出す。

 

「どういう方法かは分からないけれど、私の名前を知ってたのが理由かな」

 

「方法、ね。確かにアンタの名前を知る人物なんて限られるし」

 

「そうそう。ゲンドウ君や冬月先生も私の名前を出すとは思えないしね〜」

 

忘れられてるとは思えないけど――――そう付け加える。

それにシンジがゲンドウと会っているのは聞かない。

冬月とは度々会っているようだが、それも世間話程度。

たまに勉強を教えてもらっている。

“彼女等”の組織はそれ位の情報収集は朝飯前だ。

 

ならば、シンジがマリの名前を知っていた理由は何なのか?

そこは気になる点であるが――――

 

「まさか、“あのぶっ飛んだ見解”を言い出すつもり?」

 

「いやはや、そのぶっ飛んだ見解の“証人”が何をおっしゃいますやら」

 

「でも、アタシは“中途半端”よ」

 

「私は中途半端でも十分。それだけ稀有な存在なのさ」

 

「その稀有な存在を迎えに来させる位に人手不足なのは何とかならない?」

 

「人件費削減って事で。人は先立つ物がないと動かないし。何より、今は色々と手一杯だからにゃ〜」

 

「多分、それだけが理由じゃないでしょうけど」

 

マリの独特な雰囲気に付き合える稀有な存在が少女である事も関係していよう。

もう一度、大きな溜め息が漏れる。

背中を押されるのはもういいと話し、自らの足で歩く。

 

「っで? 碇シンジは放っといて平気なの?」

 

「見た感じは平気かな。使徒の殲滅に燃えてる少年漫画的な展開が見えるにゃ」

 

「他の事にかまけてる暇はないと?」

 

「そそ。それに仮に私の名前を出されてもNERVの動きにも変化が見える事になる。

 言わないなら彼は“信用に足る存在”だと言えるしね」

 

「本当、喰えないわね」

 

「お褒めに預かり光栄です」

 

「はいはい」

 

素っ気無い態度を取りつつも、少女はマリの行動を信頼している。

今回の一件、見た目だけならこちらに分の悪い内容だ。

ただ、先を見据えるならこれ以上無い一手になる。

 

「アンタの撒いた種が吉と出る事を祈っておくわ。さっさと戻りましょう」

 

「はいは〜い!!」

 

少女の提案に手を上げて賛同するマリ。

そうして、この場を後にする事に。

 

「何処かでアイス買ってこう。食べたくなっちゃった」

 

「最近無駄遣いが多いから我慢しなさい」

 

他愛のない話をしていると、1人の少女とすれ違う。

シンジの通う生徒の一員であるが、NERVとは関係のない人物だ。

なので、気にも留めない。

 

「あれ? 今のって…………」

 

すれ違った少女は立ち止まり、後ろを振り返る。

片方は知らないが、もう片方の人物が知り合いと似ていた。

ただ、フードを目深に被っていたので確信は持てない。

共通点は髪の色、そして少しだけ聞こえた声質だ。

 

「まさか、ね」

 

思い浮かべたのは最近転校してきたばかりの太陽のような少女だ。

彼女なら声を掛けてくれるだろうから他人の空似だろう。

 

そう考え直し、洞木ヒカリは忘れ物を取りに学校へ戻るのだった。




如何でしたでしょうか?

そろそろこの作品の根幹にも触れていこうという回でございます。

アスカの変化について話す大人の女性二組。
彼女は精神面で本編よりも大きく成長しています。
子どもの成長は早いですね。

ここでマリの登場です。
彼女が居ると言葉のキャッチボールとかしやすくて、ついつい要らない事まで会話させていました。
アスカに負けず劣らずの明るいキャラで良いですね~
さすがは胸の大きい良い女。

シンジとのファーストコンタクトは新劇破と同じものです。
会わせる為にかなり無理矢理な理由で学校に残らせました。

ただ、自己紹介の降りなど、原作とは異なる部分もあります。
果たして、その真意とは?

あとはフードの少女は一体何者なんでしょうか…………って、答えはバレバレな気もしますが、そこのところはまた後程に明かします。
まだ先の事になりますが。

本来はここでマグマダイバー回をしようとしていたのですが、書き直している際に手が勝手に動きました。
次回マグマダイバー回です。
調べるまで使徒の名前を忘れてたのは内緒です。

ではまた次回に。
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