碇シンジは夢を見る   作:ゼガちゃん

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どうも。

続きの前に1つ。

前回の話で『平行世界』関連の話での矛盾点のご指摘があり、加筆しました。
私の説明不足で申し訳ありませんでした。
前話のまえがきに説明文を加えておいたので、読んで下さい。
読んでくれると助かります。
『平行世界』関連の部分に触れてますので。

それでもややこしいかもしれませんが。


あと今回はサブタイトルの通りです。

ええ、サブタイトルの通りです。
大事な事なので2回言いました。

先に付け加えておきますが、今回もオリジナルの部分の描写多数です。

長くなりましたが、続きをどうぞ。


碇シンジの悪夢

シンジは揺れる電車の中で「S-DAT」から流れる音楽をイヤホンを通じて聞いていた。

 

「ちょっと、冷房の効きが悪いかな」

 

今は夏――――と言うより、今の日本は年中常夏状態だ。

この世界は『平行世界』とは異なる歴史を紡いでいる。

 

セカンドインパクト――――そう呼ばれる大災害が今から15年前に起きた。

南極にて謎の爆発が発生し、それに伴って地殻変動や地軸の変動などの環境激変、洪水や噴火といった自然災害が全地球規模で引き起こされ、初期に南半球で約20億人の死者を出した。

 

結果、各地で紛争等も起こり、更には日本に限って言えば一年中夏の状態となってしまった。

四季と言うものが完全に失われたのだ。

それ以外にも様々な生物が絶滅している。

 

セカンドインパクトは大質量の隕石の落下が原因らしい。

人類にとって――――否、地球全体にとっても悪影響しか及ぼさなかった負の出来事の塊である。

 

「まだ、時間は掛かりそうだ」

 

終点まで行く必要があり、目的地までにはまだ時間が掛かる。

電車の揺れは定期的で、身体を背凭れに預けていたのもあった。

 

しばらくすると瞼が重くなり、シンジを夢の世界へと誘うのであった。

 

 

 

 

 

『世界が変わる』

 

気付けば、シンジはどこぞの操縦席に座っていた。

アニメで見るようなロボットの操縦席を連想する。

 

そして、目の前には見たこともない怪物が居る。

その怪物へ何やら物騒なものを持って突撃するロボットの姿があった。

 

「さようなら、碇君」

 

突如、綾波レイの声がした。

モニターがあり、そこにはこちらと同様の操縦席に座る綾波の姿が映されていた。

 

分からない。分からないが、嫌な予感しかしなかった。

 

「綾波!!」

 

手を伸ばす動作をする。

乗っているロボットのものだろうか、紫のカラーリングの腕が前へと伸びる。

 

直後、碇シンジの予想は悪い意味で的中した。

 

ロボットの持っていたのは爆弾のようで、光が弾けると同時に爆音が世界を支配し――――

 

 

 

『世界が変わる』

 

目の前には病院のベッドで横たわる惣流・アスカ・ラングレーの姿があった。

病院服を着ているが、所々乱れている。

 

扇情的な様相に年頃のシンジには刺激が強かった。

だが、それ以上にアスカの様子はおかしかった。

 

「アスカ?」

 

胸に付けられた心電図の吸盤。

名を呼ばれた少女にこれまでの光輝く太陽のような明るさは微塵も無かった。

 

その姿は痛々しい。

あるのは生きているのかさえ定かではない儚さと、虚ろとなっている瞳だけで――――

 

 

 

『世界が変わる』

 

またも操縦席にシンジは座っていた。

目の前には粉々になったのだろうロボットがあった。

 

モニターには鈴原トウジが映っていた。

否――――正確には“かつて鈴原トウジだったもの。”

 

ロボットの破片か、建物の瓦礫か、彼の半身はそれに押し潰されていて――――

 

 

 

『世界が変わる』

 

葛城ミサトと口付けを交わしていた。

 

「大人のキスよ、帰ってきたら続きをしましょう」

 

口付けを終え、告げられると同時に押された。

エレベーターに押し込められたようで、扉がミサトの手によって閉められる。

 

手に何かを持っていた。

それは彼女が所持していたペンダントと、(おびただ)しい鮮血にまみれた自らの手と――――

 

 

 

『世界が変わる』

 

「ごめん、な。碇、こんな、大変だ、なんて、知らないのに、俺、俺……」

 

相田ケンスケが目の前で涙を流して血塗れで倒れていた。

見慣れない服を着ており、自分もまた見知らぬ白いピッチリとしたスーツを着ていた。

 

脇にはこれまでシンジが何度か乗っていただろう紫色の機体があった。

だが、そんなものは目にも入らない。

 

今、目の前で涙を流す友人の(まぶた)がゆっくりと閉じられて――――

 

 

 

『世界が変わる』

 

「ごめん、ね」

 

真希波・マリ・イラストリアスが息を切らしながら告げる。

彼女もピンク色のスーツを着ているが、既に汚れてボロボロ。

眼鏡のレンズもビビ割れ、額と腹部から出血していた。

 

傍らには見た事の無いロボットが見るも無惨に破壊されていた。

 

「ここまで、みたい。あとは、頼んだ、よ。ワンコ君――――」

 

そして、彼女の命の灯火が消えていき――――

 

 

 

『世界が変わる』

 

またも操縦席に座っていた。

ただ、今度は2人乗りらしく、隣には渚カヲルが居た。

 

「また、会えるよ。シンジ君」

 

隣でそう言った直後、彼の身体が()ぜて――――

 

 

 

『世界が変わる』

 

目の前には大きめのポッドがあった。

 

「式波大尉!!」

 

大勢の人々が駆け寄り、その中に居るだろう人物の名を叫んでいた。

 

「アスカ!!」

 

その中には葛城ミサトの姿もあり、彼女が呼んだ名を聞いてシンジはようやく理解した。

 

ストレッチャーに運ばれる赤いスーツを着ているのに血に塗れているのが分かるアスカで――――

 

 

 

『世界が変わる』『世界が変わる』『世界が変わる』『世界が変わる』『世界が変わる』『世界が変わる』『世界が変わる』『世界が変わる』『世界が変わる』『世界が変わる』『世界が変わる』『世界が変わる』

 

 

 

『世界が変わる』

 

 

 

「はっ、あぁっ!!」

 

シンジは荒い呼吸と同時に目を覚ました。

反射的に「S-DAT」も止める。

 

「今の、は?」

 

恐らく、いや、間違いない――――『平行世界』の出来事だ。

イヤホンを外し、先程の出来事を思い出す。

 

「うっ、ぷっ!!」

 

吐きそうになったが、寸でのところで踏み留まれた。

公共の施設で吐くだなんてしたら、今後は電車もバスも使えなくなってしまう。

 

今の、率直に言ってしまえば「悪夢」の直後なのだからこうもなる。

 

最初は普通の夢なのかもと思った。

 

『平行世界』と繋がって以降、何も毎回そういう訳ではない。

 

なのだが……この手に残る感触や、その時の『碇シンジ』の負の感情が流れ込んできた。

それが『平行世界』の存在を碇シンジに強く刻み付けた。

 

何よりも、これまで『碇シンジ』の感情など流れて来る事は無かったのに、今回だけはより鮮明に突き付けられた。

 

これまでの『平行世界』とは少し様相が異なる。

 

「知らない、名前とか、格好とか、ロボットとか」

 

指折り数える。

第一に皆が『平行世界』のシンジを知っている筈なのにその様子がない事。

次には多少の異なりもあるが、基本的には平和な世界での出来事で、間違っても巨大ロボットなんて代物は出てこない事。

知らない格好や名前の変わっていたものも一部だけあった。

 

確かに、これまでも碇シンジが体験した『碇シンジ』には“様々な種類の『平行世界』が存在した。”

 

具体的に言ってしまおう。

綾波レイ、惣流・アスカ・ラングレー、真希波・マリ・イラストリアス、鈴原サクラ、霧島マナ――――彼女等とそれぞれ恋仲になった“それぞれの『平行世界』があったのだ。”

 

最低でも5つの異なる『平行世界』があった。

その詳細はいずれ語るとしよう。

 

何が言いたいのかと言えば、何かのキッカケで世界と言うのは変わってしまうものでもある。

今の具体例だけで述べるなら何処のギャルゲーの主人公かと羨ましいのでツッコミを叩き込みたくなる。

 

「け、ど、こんなマ○ラヴの主人公みたいな展開、聞いてないよ」

 

R指定のあるゲームではなく、無論ながら全年齢版しかプレイしてない……ではなくて。

 

平穏無事な世界ではなく、血みどろな、化物と戦う『平行世界』を見せられるなんて初めてだ。

 

「バッドエンドのダイジェストは、さすがに御免被るかな」

 

脂汗が止まらない。

電車に誰も乗っていなくて助かった。

 

「こんなに、目まぐるしく『平行世界』が何度も変わったのは、初めてだ」

 

普段なら1つの『平行世界』しか見られず、こう何度もアニメのように場転する展開は今まで無かった。

 

「それに、誰かが『世界が変わる』って何度も言ってたよね」

 

男なのか女なのか、子供か大人か、はたまた老人か、変声機で作られたものか、それは覚えていない。

 

頭の中に響いた声と、見せ付けられた数々の「悪夢」だ。

思い出したくもない。

 

―――だけど、これが、何かの警告だったら?

 

分からない。

そもそも『平行世界』に繋がった理由さえ判明していないのだ。

 

けれど、この『平行世界』で助けられた事がある。

もしも、向こうが助けを求めているなら――――

 

「今度は、僕が助ける番かな」

 

きっと、『平行世界』で皆と触れ合えなければそんな考えに到れなかっただろう。

 

もしも、「悪夢」が仮に真実だったとして、きっと膝を丸めて(うずくま)っていただろう。

肝心な事から逃げていたに違いない。

 

けど、知ってしまったから。

皆がくれた優しさ、明るさ、楽しさ、愛しさ――――向こうの世界の『碇ゲンドウ』から言われた言葉を思い出す。

 

―――助け、助けられだよね。『平行世界』の父さん。

 

この「悪夢」が来ると言うのなら乗り越えたい。

碇シンジはそう思えるだけの強い心を持ち始めていた。

 

「僕はバッドエンドより、ご都合主義上等でも皆が笑い合えるハッピーエンドの方が好きだからさ」

 

先程までの「悪夢」が来ると言うのなら跳ね返す。

 

そして、碇シンジは無謀でも構わないと目指すものをこの時に決めたのだった。




如何でしたでしょうか?

いつから、暖かい話ばかりだと錯覚していた?

今回は「碇シンジ視点でのバッドエンドダイジェスト」になります。

ケンスケやマリなんかはオリジナルです(ここ大事なポイント)

他の面々は少しばかりアレンジがありましたが、殆んど覚えてなかったって事でここは1つ許して下さい。

そして、この悪夢を通じて碇シンジは1つの信念が生まれました。
信念があれば、それを貫こうとするのが碇シンジ君。

『平行世界』に助けられ、精神的にいつの間にか、文字通りに勝手に成長していた彼が今度は向こうで助けられた人の為に立ち上がる。

私の知る碇シンジは「ヘタレ」でもありますが、同時に「主人公」の要素をきちんと兼ね備えているなと感じたのでこのようになりました、なっていました。


ここからどうなるのか。
やっぱり本編にはいけませんでしたが、次こそはミサトさんやリツコさんは出したいかな。

では次回に。

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