今回から本編へと入っていきます。
正直本編の展開で忘れてる部分が多いので間違ってる部分は平に御容赦を。
では、続きをどうぞ。
「参った…………電話が繋がらないよ」
シンジは『平行世界』では見掛けなくなった電話ボックスの前で座り込んでいた。
手紙に書かれた葛城ミサトのものと思わしき番号へと電話を掛けたのだが、結果は繋がらず。
それも仕方の無い事ではあった。
まさか乗っていた電車が停止する等とは考えもしなかった。
そして、こちらでもスマホは普及を始めていた。
シンジも連絡手段として、叔父夫婦から買い与えて貰ったものがある。
しかし、電波が一本も立っていないので物言わぬ箱と化している。
なので公衆電話を使おうと思い至った訳なのだが…………駅員に確認したら「結構距離がある」と言われた。
しかしながら、今日中の復旧の目処が立たないと言われてしまった。
そうなると、立ち往生しているよりか遥かにマシだと思って歩き出した。
この選択を今は後悔する。
「結構」の感覚があまりにも違いすぎた。
だって30分以上も歩く結果になるなどとは思わなかったのだ。
セカンドインパクトによる影響でオールシーズン夏となっている「こちらの世界」では、現在も炎天下の真っ只中。
照り付ける日差しを受けながらシンジはひたすらに歩いた。
ここで、シンジの体力が“ありすぎたのが問題だった。”
愚直に鍛えた結果、体力も相応に上がっていたのだ。
もし、以前までのもやしっこならば最初からこんな事をしなかっただろう。
出来てしまったのだからそれはそれで仕方の無い話だ。
しかしながら、最大の問題はその次に起こった。
公衆電話を見付けたのは良い。
だが、肝心の相手と繋がらなかった。
「だけど、電話口で言ってた『緊急事態宣言』が原因なのかな?」
そのせいで回線が繋がらないと言っていた。
スマホは単純に電波が届かないから使えないので、本当に連絡手段が無くなってしまった事を悟る。
時間は日中。
南風が吹き始め、気温はぐんぐん上がっていく。
更には日差しを遮るものはない。
車が2台通れる位の広さのアスファルトがあるのみ。
このアスファルトも曲者だ。
照り返しにより、体感の気温は更に伸びていく。
いくら体力が向上していようと、この猛暑では座っているだけでも徐々に削られていく。
体力に限界が訪れるのも時間の問題だと言えた。
「いや、本当に参ったよ」
無鉄砲に行動を起こした末路である。
それでも帰り道は覚えているし、飲み物もまだある。
少し休憩した後、駅まで戻る事にする。
駅員に事情を説明し、何とかして貰うより他にない。
「と言うか、最初からその選択をすれば良かったな」
人生にはゲームのようにセーブ&ロードのシステムは存在しない。
ここから状況をケアしていこう。
そう決意した矢先だった。
ズドォォォッ!! という鈍い音がしたのは。
「な、何が…………?」
原因は何かと視線をさ迷わせる。
だが、捜索の結果はすぐに出る。
顔を上げると、遠目に“巨大な化け物が見えた。”
人の形に似ているが、手足の形状が細く長い。
しかし、首にあたる部分はなく、頭部は仮面のような無機質な形状をしている。
「あれは…………『平行世界』で見たのと違うよね?」
つい先程に見た『平行世界』の化け物とは異なる。
だが、あんな存在がこちらに来れば一堪りもない。
あんな巨体に踏まれるだけでシンジの14年の生命は終わりを告げてしまう。
尚、『平行世界』を換算すると年数が増えてしまうので考えないものとする。
「ま、まず――――っ!?」
言葉が区切られる。
遥か上空を戦闘機が通過した。
直後、あの化け物めがけて攻撃が仕掛けられる。
遠目からで分かりづらいが、爆発が起きている事からミサイルのような爆撃を行っているのは容易に想像できる。
アニメ知識で、戦闘機にはマシンガンやミサイルが備え付けられているイメージがある。
爆炎が起こるが、あの〝化け物〟に通用しているようには見受けられなかった。
その見解は正しく、戦闘機めがけて槍の形をした光が放たれる。
発信源は言うまでもなく、〝化け物〟から。
それを諸に受けた戦闘機は黒煙を上げ、徐々に高度を落としていく。
「まさ、かっ!?」
シンジの驚愕は戦闘機がやられた事にではなく、その結果によって“こちらめがけて墜落をしてきている事だ。”
「っ!!」
逃げる事は叶わない。
せめてもの防衛手段として、頭を手で覆い隠してボストンバッグを前に置いて身を伏せる。
直後、彼から少し離れた所で戦闘機が墜落…………爆風が発生したのは直後の事だ。
「つぅっ!?」
爆風により、小石が多少強く投げ付けられて当たる程度で済んだのは幸運と言うより他に無い。
けれども、こんな幸運がそう何度も続くと思わない。
少なくともこの場を離れなければ自身の身が危ない。
―――けど、その前にやらなきゃならない事がある。
“その為にも”碇シンジは立ち上がる。
もう暑さの事など考えている余裕は無くなった。
一刻も早く、行かなければならない。
「ごめーん!! お待たせ!!」
声が掛かったのはそんな時だった。
「あっ…………」
その人物の登場に碇シンジは言葉を失う。
写真で“彼女が居る事は知っていた。”
だが、こうして現実にまた出会うと言い知れない不可思議さを持つ。
黒いタイトのワンピースに赤いジャケットを羽織っており、首から十字架のペンダントが掛けられている。
だから、確認の意味も込めて問い掛けたくなる気持ちが優先したのを許して欲しい。
「葛城、ミサトさん?」
「そうよ~。あたしは葛城ミサト。あなたが碇シンジ君ね? 話は車に乗ってから」
「はい!!」
ボストンバッグを引っ付かみ、ミサトの車に乗り込んだ。
助手席に乗り込む事となり、荷物を後部座席へ放り投げる。
「シートベルトはしたわね。じゃあ、飛ばすわよ!!」
「わっ、わっ!?」
制限速度を守って下さい――――そう言いたかったが、こんな非常時に言ってられる話ではない。
こうしてる間にも〝化け物〟はこちらへ近付いてきているのだから。
それに、行って貰わなければならない所もある。
「あの!! ミ…………葛城さん!! この近くの駅へ向かって下さい!!」
「? どうして?」
「あそこには人が居ます。助けないと!!」
思わず『平行世界』の癖で名前呼びになりそうになったのを神回避しながら懇願する。
碇シンジは駅へ戻り、駅員にこの事を知らせて逃げる算段で居た。
逃走方法は考え付かずとも、駅員を放って逃げ出せなかった。
「大丈夫よ。そっちにもお迎えが行ってるから」
「そう、ですか。良かった」
それを聞いて一安心する。
「見ず知らずの人達の心配をするなんて、正義感があるわね」
「さっき夢見が悪かったので、見ず知らずの人達でも助かって欲しいと思っただけです」
真っ先に他人の心配をするシンジの発言にミサトは「良い男じゃない」と心の中で思っていたりもした。
知人等ならまだしも、駅員ともなれば赤の他人でしかない。
そんな人達を心配しようとするシンジの「心」をミサトは再評価する。
(けど、これだと“報告と違うような”)
心の中で呟く。
彼は『内向的、内罰的な部分がある』との報告を受けていた。
これでは印象はガラリと変わる。
“まるで意図的に悪いイメージをミサト達に与えているかのような印象を受ける。”
そんなミサトの心情をシンジは知るよしも無く、先程から気になる事がある。
「あの、さっき『迎えが行ってる』と言いましたけど、あまりにも用意周到ですよね? あの〝化け物〟の事を知っていたんですか?」
さらりと「迎え」と言うがシンジには出来すぎた話に思える。
何せ〝化け物〟が現れてから数分しか経っていない。
見て、そして用意する――――とてもではないがそれでは間に合わない。
“予め用意していたのでもなければ。”
「ええ。そうよ」
ミサトから肯定の言葉が返ってくる。
「あの〝化け物〟は何なんですか? 戦闘機が出ているのなら自衛隊も出向いているんですか?」
「正確には戦略自衛隊だけどね。略して戦自よ」
「戦自…………ですか」
陸海空自衛隊とは異なるようだが、日本政府の国防省や内務省が直轄で保有する実力組織だと補足してくれる。
「率直に聞きたいんですけど、戦闘機だけであの〝化け物〟に勝てると思います?」
「良い勘してるじゃない。断言するけど、“無理だと思うわ”」
「そうなんですね」
ミサトの断言は、ある意味でも“お約束だ。”
「と言う事は、光の巨人みたいな存在でもないと倒せそうにないですね」
「そうね。だけど、現実にそんなヒーローは突然現れたりしてくれない。奇跡を頼りたいところだけど、そう都合良くはいかないのが現実なのよね~」
それはそうだ。
ヒーロー物のお約束踏襲で、ピンチに駆け付けてくれるヒーローが存在するのなら今すぐ出て来て欲しい。
現実問題、あの〝化け物〟に戦闘機の攻撃が通用していない以上はその「奇跡」に頼らざるを得ない状況なのが皮肉なものだ。
「けど、あんまり焦ってないですよね?」
「ん~。まあね~」
状況は最悪。
だが、隣で運転するミサトの表情は言い方は悪いかもしれないが楽観的に見える。
まるで、この状況を打破できる存在に心当たりがあるような。
それを聞こうとした所で、違和感を覚える。
先程から〝化け物〟に勇ましく攻撃を行っていた戦闘機が尻尾を巻くように離れていったからだ。
「ところで話は変わるんですけど、あの戦闘機が〝化け物〟から離れてる理由は分かりますか?」
「えっ!? まさか、N2地雷を使うつもり!?」
シンジの何気無い質問は予想以上にミサトを狼狽させていた。
武器――――いや、兵器と呼称するべきだろうか。
名称は分からないが「地雷=爆弾」のイメージは定着している。
そして、ミサトがこれだけ狼狽すると言う事は威力はそれなりだろう。
ちなみに「N2兵器」と呼ばれており、国連軍や戦略自衛隊が所持する兵器の中で最大級の威力を誇る兵器の事である。
その威力は地図を書き換えなければいけないほど。地雷以外にも爆弾や航空爆雷がある。
専門知識を有するミサトが驚くのも無理ない話なのだ。
だからこそ、彼女の次の行動は身を守る事。
車を咄嗟に止めてシンジを抱き寄せ伏せようとし――――
「伏せて下さい!!」
先に動いたのは誰あろうシンジだった。
車を止めた瞬間、何かが起きるのだと直感した。
ミサトの狼狽ぶりもシンジの悪寒を走らせるのに一役買った。
後ろで〝化け物〟が更に一歩を踏み出した――――直後、足元から爆発と火柱が発生する。
威力はミサトが危惧していた理由が分かる程だ。
凄まじい爆風が車を浮かせ、車が上下反対となる。
それだけで済んだ事、シートベルトをしていた事、それらの要因が重なった幸運――――もはや奇跡と呼んで良い展開。
シンジもミサトも大して怪我は無かった。
「だ、大丈夫?」
「な、何とか…………」
ドアを力付くで開け、車から這い出る事は出来た。
しかし、肝心の車は横転してしまっている。
「参ったわね。歩くには距離があるし…………」
「まだ〝化け物〟も近くに居ます。ただ、こっちの方へ来てないですけど」
シンジの視線の先に居る〝化け物〟は先程の兵器の直撃を受けて尚、健在である。
今頃、戦自の面々は自慢の戦力が通じなかった事に驚愕している事であろう。
ただ、幸いな事に〝化け物〟の進行方向はシンジとミサトの位置から外れてくれている。
先程までの緊迫感は去ったと考えて良いのは救いである。
「車は動きそうですか?」
「何とか、ね」
見た目の状況に反して車はオシャカにまではなってないようで安心した。
しかし、ミサトの口から「でも修理は必須よね」と溢していた事から無傷ではない事だけは窺えた。
保険料が上がるとか、経費で何とかならないかとか聞こえてくる。
今だけは難しい大人の世界を知らない中学生で居よう。
「じゃあ、車を戻しましょう」
「そうね。埒があかないものね」
片や男とは言え子ども、片や大人とは言え女性だ。
そんな2人でひっくり返った車を起き上がらせられるのか?
「「せー、のぉっ!!」」
その結果は成功であった。
シンジはもやしっこ卒業の為に鍛えていた事、そして意外にもミサトも身体能力は高かった。
『平行世界』でも運動神経は良いのを目の当たりにしてきた。
こちらでも彼女はスポーツか何かで身体を鍛えていたのだろう。
「さて、車も戻ったところで…………聞きたい事があります」
「はい? 何か?」
「何故、さっきは“あたしを爆発から守ってくれたの?”」
「え? 何かおかしかったですか?」
ミサトの質問の意図が理解できず、シンジは言葉のバットで打ち返した。
しかもフルスイングで。
打ち返されたミサトはと言えば頭を抱えた。
シンジは本気で言っているのだ。
「危ないのは教えて貰ってましたから、だから『守らないと』って思って……」
「その気持ちは嬉しいけれど、あたしは大人であなたは子ども。大人のあたしには子どものあなたを守る義務があるの」
純粋にシンジが咄嗟に庇ってくれたのは嬉しい気持ちが大きい。
だが、それで彼が怪我をされるのは困る。
彼は未来ある子どもで、自分にはそれを守る義務がある――――葛城ミサトはそう思っているから。
「今のは運が良かっただけ。もし当たりが悪ければあなたは大怪我をしていた可能性がずっと高いのよ?」
ただ横転だけで済んだから良いが、ガラスの破片等が刺さっていたら大変な事になるのは中学生の彼なら分かるだろう。
「だから、こういう無茶は今後はしないで。守ろうとしてくれた事には感謝して――――」
「確かに葛城さんが言うように僕は子どもです」
感情に任せて言葉を紡いでしまった。
だが、ミサトを名字で呼ぶ位には冷静ではあった。
「でも!! 誰かを救いたい気持ちに子どもも大人も関係ありません!!」
『平行世界』で見せられた「悪夢」のダイジェストは未だに碇シンジの中から拭えない。
けれど、その「悪夢」が碇シンジの「救う決意」を強くした。
「そっか、あなたは子どもだけど『男』なのね」
シンジの決意はきっと嘘ではない。
子どもの戯れ言だと一笑に出来ない気迫がそこにはあった。
その瞬間、ミサトは碇シンジの中に「男」の部分を見せられた。
「すいません、生意気を言って。だけど、自分を犠牲にしてまでとは考えてたつもりは無かったんです。これからは気を付けます」
ミサトは自分の為を思って言ってくれていた。
なのに、それを感情に任せて口だけになってしまっていた。
その事だけは素直に謝罪しなければ。
碇シンジも『平行世界』で色々な事を経験した。
その中で彼は助けられてきた。
目の前の葛城ミサトと向こうの世界の『葛城ミサト』は違うのかもしれない。
言っても信じて貰えるのかは分からない。
碇シンジにとって、そして『碇シンジ』にとっても、『葛城ミサト』は様々な「特別」を持つ存在なのだ。
そして今、目の前の葛城ミサトの言葉を受けて分かった。
いや、本当のところは全部が全部分かった訳ではない。
シンジが都合良く考えているだけなのかもしれない。
でも、どの世界でも葛城ミサトと『葛城ミサト』は碇シンジや『碇シンジ』にとって姉のような、母のような……「特別」な存在なのだと思えてしまう。
こちらの世界の葛城ミサトの事は分からない。
だが、碇シンジは『碇シンジ』と根本は同じだと皆からも言って貰えている。
だから、きっと、多少の違いがあっても葛城ミサトの根本は『葛城ミサト』と変わりはない筈なのだ。
「あーっ!! もう!! 互いに謝罪合戦は終わり終わり!! 辛気臭いわ!!」
急に声を張り上げながらミサトは告げる。
「ねえ、あたしの事はミサトで構わないわ。あたしもシンジ君って呼ぶから。良いでしょ? さっきは守ってくれてありがとう。次はあたしが守ってみせるから」
随分と強引な提案に展開だろうか。
手を差し出され、握手も強要されている。
しかし、これぞ葛城ミサトだ。
「は、はい。よろしくお願いしますミサトさん。こちらこそ、心配してくれてありがとうございます」
そんな様子を嬉しく思い、差し出された手を握り返す。
「それじゃあ、今度こそ行きましょう」
「はい」
ミサトに促され、シンジは目的地へと向かう。
そう言えば、一体何処へ向かうつもりなのか、あの〝化け物〟は何なのかを聞きそびれたなと今更ながらに思うのだった。
場所は変わる。
国際連直属の超法規的武装組織――――特務機関「
その第1発令所の巨大主モニターを国連の幹部の面々は見ていた。
モニターには例の〝化け物〟が映っており、先程までシンジが見ていた戦闘機と〝化け物〟の戦闘シーンも映し出されていたのである。
その結果は、言葉を濁さずに言ってしまえば「成果無し」の一言だ。
否、全くの「成果無し」は虚偽が過ぎた。
あの〝化け物〟相手に戦自の切り札とも呼べる「N2兵器」を始めとした武器が“無意味である事が判明した。”
つまり、あの〝化け物〟を相手にするには「戦自では力不足」というと言うべき結果をもたらしただけだ。
ついに国連軍は指揮権を「
「今から本作戦の指揮権はそちらに移る。お手並み拝見といこう」
「了解です」
「我々の所有兵器が通用しないのは理解した。だが、君の所ならあの〝化け物〟に勝てると断言出来るのかね?」
向こうから嫌味を交えた質問を受けたのは眼鏡を掛けた中年の男性だ。
名を碇ゲンドウ――――碇シンジの実父である。
彼が何故こんな場に居るのか?
理由は単純にして明快だ。
「その為の「
碇ゲンドウ――――彼こそが特務機関「
如何でしたでしょうか?
おかしいですね。
ミサトさんと会うだけで終わってしまいました。
仕方無いですね。
ミサトさんみたいな綺麗な人の事を考えてたら(彼女の普段の生活からは目を背けながら)
本編ですが、スマホ普及してます。
ある前提にしておかないとミスがありそうなのでいっそのことと思って取り入れました。
シンジ君も『平行世界』で成長しています。
そして、その影響はミサトさんへも現れます。
ミサトさんもシンジ君を「子ども」であると同時に「男」だと認め、彼に「名前呼び」を許可する展開にしてみました。
正直上手くやれてるかは不安です。
これには少なからずミサトさんの心情的変化が起きている筈です。多分、恐らく、メイビー。
さて、次にはリツコさんとか父さんとか綾波と初号機とか、イベントが盛り沢山です。
さて、どうなる事やら。
では、また次回に。
次回、初号機の出撃が可能か不安になってきました。