続きです。
シンジはエヴァ――エヴァンゲリオンの略称――のコックピットに座っていた。
『平行世界』で見たものと同様の操縦席――エントリープラグに搭乗している。
異なるのは『平行世界』で自分が着ていた服装とは異なる位か。
あの時は白を基調としたピッチリとしたダイビングスーツのようなものを着用していた。
今は着の身着のまま、半袖のワイシャツに学生服のズボンのままだ。
ボストンバッグやスマホにS-DATも預けてある。
『シンジ君、大丈夫?』
「はい。さっきのLCLと言うのには驚かされましたけど」
通信室から様々な用語が飛び出していた。
発進する為の下準備、起動の際に不備が無いのかをチェックする声が向こうで飛び交っていた。
専門用語は分からないので、向こうのオペレーターの方々に身を任せる。
その際に「LCL注水」なる言葉が耳に届いた。
足元から赤茶色の液体が溢れてきた。
リツコから飲むように指示を貰ったので飲んでみた。
エントリープラグ内がLCLという水に浸されているが、シンジは呼吸が出来ている。
これは胃に送り込むのではなく、肺に直接空気を送り込んでいる――――との旨をリツコから教わった。
「けど、このLCLは血生臭いですね。星は1つも付けられませんね」
『そんな料理人みたいな評価はしなくて良いから』
緊張感の欠片もないシンジの発言パートⅡ。
しかし、これが切っ掛けでオペレーター室に笑いが起こった。
シンジの言葉に突っ込むミサトも笑いを堪えて返していたりする。
『随分とリラックスしてるわね』
「そんな事はありませんよ。さっきから僕の中の『ビビり』が疼いてるんですよ。逃げろって」
随分と厨ニ病チックな表現だ。
正直なところ、シンジだって怖くて怖くて仕方無いのだ。
けれど、勇気をかき集めて立ち上がってくれた。
「でも逃げちゃったら、きっと『地獄』が待っています。毎夜毎夜「悪夢」に
『シンジ君……』
この中で言葉を一番多く交わしたのはミサトだ。
短時間ながら、彼の事は多少は理解しているつもりだ。
その最たるもので、彼は出会ったばかりの自分達を「助けたい」と答えてくれた。
何も考えず、突っ走った答えを出している訳ではない事は最初の問答で分かっていた。
はっきり言って中学生らしからぬ考え方も見られるが、それでも彼の決意は本物だと言えた。
それならば、ミサト達大人は子どものシンジを助けるように動くべきだ。
何せ、碇シンジは愚直にも信じてくれているのだから。
『終わったら、美味しいものでも食べましょう!!』
『良いですね。祝勝会を開きましょう』
『いやいや、その前に来てくれた彼の歓迎会をしなくては』
『どうせなら両方とも開いちゃえば良いんですよ』
『あなた達ね…………』
ミサトの言葉を皮切りに、他の面々が明るい未来を見据えた話をする。
リツコも嗜める声を掛けるが、それでも内心はそうは思ってはおるまい。
「賛成です。僕もご都合主義でも皆が笑顔になれる幸せなエンディングの方が好きですから」
シンジもまた彼等の想いに答える。
さあ、これでますます生き残らなくてはならなくなった。
『準備は良い? シンジ君』
「はい」
『発進!!』
シンジの心の準備を問うた後、ミサトは力強く命じた。
初号機を立たせたリフトがみるみる上昇していく。
上からGが掛かり、押し潰されそうになる。
しかし、それも長くは続かなかった。
しばらくの後、外へと出たからだ。
外は夜、そして街中。
しかし、ミサトが言うには住人はシェルターに避難しているらしい。
手際が良くて助かる。
使徒――――奴の名称はサキエルとNERV側が決めたので、それに
サキエルは初号機からかなり離れた位置にいる。
これは、ミサトの采配でもある。
乗る直前にリツコから簡単なレクチャーは受けた。
エヴァの動かし方と使徒の弱点であるコアについて。
弱点はサキエルの中心部にでかでかとある赤い球――それがコアだ。
そしてエヴァの操縦の方が問題だ。
戦闘では素人も同然のシンジではエヴァを動かせるかどうかも分からない。
仮に動かせたとして、まともに歩く事すら困難であろう。
これは、動かせた場合の保険も兼ねてサキエルと距離を取ってある。
エヴァは背中にケーブルを繋いでおり、それが外れると内部電源に切り替わって5分しか動けなくなるとの事だ。
いきなり出鼻を挫かれない意味も込められていよう。
『シンクロ率…………41,3%。安定しています』
3人いるオペレーターで唯一の女性――――
はて? シンクロ率とな?――――その言葉を受けたシンジは首を傾げる。
そんなものは先程の簡易講義の中には無かった。
『凄いわね。プラグスーツの補助無しでここまでだなんて』
『アスカだって、いきなりこれだけのシンクロ率は出せなかったのに』
「ちょっと待って下さい。今、パイロットスーツみたいなものがあるとか言いませんでした? それにアスカって…………」
今のはスルーしづらい反応になる。
プラグスーツなるものがあるらしく、それは『平行世界』で見たものと同じだろう。
そして、今出てきた「アスカ」という固有名詞も気になるところ。
綾波レイと来れば、間違いなく「惣流・アスカ・ラングレー」が真っ先に頭に浮かぶ。
『そこは追々話すから。今は歩く事を考えて』
「了解」
聞きたい事はあるが、今は黙っておくのが吉か。
リツコから事前に受けたレクチャー通りなら自分の思考パターンを読み取り、エヴァは動くと言う。
「歩く、歩く……」
エヴァが歩くイメージをしてみる。
足が前に出て、一歩を踏み出した。
オペレーター室から「おお」と短いながらも関心の声が届く。
どうやら、彼等にとっても驚きの出来事なのであろう。
初号機は動く事は無かったのだから、そういう反応になるのは当然と言えば当然だ。
しかしながら、感動はすぐに続かなかった。
初号機が次の一歩を踏み出そうとして、先に出していた足に引っ掻けてしまったのだ。
「うわぁっ!?」
その結末は転倒と言う形でもたらされた。
初めての操縦、慣れないのは仕方無いにしても歩行で倒れてしまうとはな情けない。
「あっ、つつ……って、痛い?」
鼻を軽くつまれたような感覚があった。
「これがシンクロ率って事ですか?」
『そうよ。痛みがフィードバックしてしまうの。実際よりも何倍も痛みは弱いけれど』
「痛いのは、勘弁願いたいですね」
軽く倒れただけでこういう事になるのは困る。
さっさと立ち上がり、サキエルの方へ向かおうとした時だ。
モニターの隅に何やら人影らしきものが映り込んだ。
シンジよりも年下、小学生位の少女だ。
それがビルの前に居た。
「えっ!?」
シンジはその少女に見覚えがあった。
長野に居た時には会わなかったから分からなかった。
だが、今はっきりと目の前に『平行世界』の存在と同じ人物がまたも現れた。
「サクラちゃんっ!?」
鈴原サクラ――――親友の鈴原トウジの妹だ。
シェルターに避難していると言う話なのに何故居る?
『シンジ君!! 前!! サキエルが来てるわ!!』
「なっ!?」
サキエルの接近。
このままではサクラが下敷きとなるのは火を見るより明らか。
―――そんな事はさせない!! 体当たりでも何でも構わない。意地でも突き放す!!
シンジが決意すると同時、初号機が立ち上がると同時にサキエルにタックルをする。
それだけに終わらない。
この場から突き放すように前へ前へと初号機は突き進む。
「うっ、おおおおおおおおおおーーーーーーっ!!」
雄叫びと共に押し退け、最後にだめ押しで力業でサキエルを無理矢理に押し出す。
様々なビルを巻き込み、サキエルは地面の上に倒れ込む。
それをただ見ているだけではいけない。
「ミサトさん!! さっきのところに女の子が居ました!! 大至急保護をお願いします!!」
『何ですって!? 了解よ!! こっちの事は任せて!!』
向こうでミサトがてきぱきと指示を飛ばす。
そして、シンジは今ので“確証を得た。”
エヴァ全体をイメージした動きを頭の中で思い描いていたが、そうでは無かった。
『平行世界』で『綾波レイ』が自爆しようとした時に「手を伸ばす」とイメージした。
その際、この初号機もそんな漠然としたイメージに付いてきてくれた。
それは今のタックルも同じ事なのだ。
漠然でも構わない。
今、自分がエヴァの脳になったと考えれば良いだけ。
身体に「こう動け」と伝達するだけで構わないのだ。
『OKよ。保護したわ。そっちは大丈夫?』
「何とかコツは掴みました。後は、やるだけやってみます」
そして、エヴァの身体能力と言うのが凄まじいの一言だ。
さすがは人類の切り札と称されるだけの事はある。
しかし、敵もそれだけタフだ。
あれだけの事をされても初号機へ攻撃を仕掛ける意志が折れないのだから。
痛みが無いのか?
その疑問に「Yes」と返事するかのようにサキエルは手のひらをこちらへ向けて光で出来た槍を打ち出した。
「っ!?」
その攻撃手段は戦闘機相手に繰り出していたので予想は出来ていた。
身体を横へ放り投げるように跳ぶ。
『そのまま横へ転がって!! 連続で槍を射出してくるつもりよ!!』
ミサトの指示に従い、側転をする事を止めない。
視界がぐるぐると目まぐるしく変わっていき、車酔いならぬエヴァ酔いを起こしそうになる。
幸いにして、そんな事にはならなかった。
ミサトの言葉通り、初号機の居た所へ光の槍が打ち込まれていた。
地面に突き刺さり、こんなものを喰らってはならないと暗に警告されているようにも感じられる。
『こうなったら接近戦に持ち込むしかないわ。あそこに見える赤い球……コアを狙うの』
「了解。と言いたいところ何ですけど……」
そもそも接近する事すらままならない。
エヴァの力ならサキエルをどうにか出来そうな事は先程のタックルで実証済み。
問題は接近する事そのもの。
どう見ても遠距離手段としか思えない攻撃を掻い潜り、懐に飛び込む必要がある。
「どうにかして隙を突くしかありませ――――えっ!?」
言葉は続かなかった。
サキエルの両目が光ったかとおもえば目映い光が飛び出していた。
言ってしまえばレーザー。
それが一直線に初号機めがけて飛んできたのだ。
『しゃがんで!!』
「っ!?」
一瞬早く、ミサトの指示が飛ぶ。
それを受けたシンジは反射的にしゃがみこむ。
後頭部に チリッ!! とした痛みがした。
けれども、どうやら最悪の事態は免れたらしい。
『今よ!! サキエルは攻撃の直後でその場に留まっているわ!!』
「了解!!」
ミサトの言葉を受けて、シンジは一目散に駆けた。
初号機の一歩で距離を詰める事に成功した。
サキエルは目と鼻の先だ。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぁぁぁぁぁーーーーーーっ!!」
シンジに武術の心得こそないが、『平行世界』での訓練で自衛程度には
その時に教わった事と漫画等で表現されるシーンを思い描きながら動作を真似る。
腰を捻り、拳を固く握って打ち込む。
サキエルの顔面へクリーンヒットする――――筈だった。
ギィィィィィンッ!! と、甲高い音と共に“見えない壁に阻まれた。”
「えっ!? これは?」
『ATフィールド!? いけない!!』
オペレーター室でも慌てた声が届く。
ATフィールドなる存在が初号機の攻撃を防いだ事は分かる。
そして、これにより攻勢が一転してしまう事も。
サキエルが初号機の顔を掴んだのだ。
そのまま、光の槍を出し入れする形で何度か打ち込んでくる。
「がぁっ!?」
痛みが走る。
これは本来の痛みではない。
しかし、殴られた感触がある。
『落ち着いてシンジ君!! 何で、こんなに痛がってるの!? シンクロ率はそこまで高くは無いでしょう!?』
『それが、先程のタックル以降に彼のシンクロ率がドンドン上昇していって…………今は70代まで到達しています』
通信の向こうから淡々とした声が聞こえる。
しかし、シンジにはその全てを聞き届けられる余裕が無い。
分かるのは、シンクロ率が高ければ痛みがフィードバックしやすいこと。
そして…………エヴァの動きが格段に良くなる事だ。
「こんな、もの、『アスカ』の扱きに比べれば、何てことあるか!!」
『平行世界』の『惣流・アスカ・ラングレー』から時折受ける無慈悲な折檻を思い出す。
比較対象の内容がどうかとも思うが、シンジにとって身近なものがそれであっただけの事。
掴むサキエルの腕を両腕で掴むと、無理矢理に捻りあげる。
可動域は決まっており、これ以上は回せないところまで持っていけば自然と掴む力が弱まると考えた。
無論、これは人相手の原理であるので使徒相手に通じるかは賭けだった。
その賭けにシンジは見事に打ち勝った。
サキエルのアイアンクローを外す。
「はっ、あああああっ!!」
そのまま腕を捻り、ジャイアントスイングの要領でぐるぐると回す。
遠心力に逆らえず、エヴァのパワーの前にサキエルは成す術はなく、されるがままだ。
「どぉ、りゃあっ!!」
柔道よろしく、背負い投げの格好でサキエルを地面へ叩き付けてやる。
周囲のビル群をも巻き込み、サキエルは地面にクレーターを作って仰向けに倒れる。
「このまま――――」
『待ってシンジ君!! 離れて!!』
シンジはトドメを刺すべきだと判断し、更に拳を構えようとする。
真逆な事に「待った」を掛けたのはミサトだった。
それもその筈。
シンジは見落としていたのだ。
サキエルはまだ攻撃手段を残している。
それは先程、ミサトの指示で上手く回避できたものだ。
閃光が放たれ、初号機の脇を貫いた。
「――――――ぁぁっ!?」
声にならない悲鳴が上がる。
しかも、それだけではない。
『アンビリカルケーブル、切断され掛かっています!! このままでは切れるのも時間の問題です!!』
『シンジ君!!』
ケーブル――――言ってしまえばエヴァの生命線が失われ掛かっている。
まだ電源が供給出来ているのが奇跡だ。
完全に切れる前に予備のコードに辿り着き、再接続をするのが望ましい。
ただ、そこまで辿り着くのをサキエルが邪魔しない訳がない。
既に初号機を「敵」と認識しているのだから。
そして何より、先程のダメージでパイロットであるシンジが満足に動けないでいる。
初号機も膝立ちの状態で静止してしまっている。
そして、痛みによってシンジの意識も沈んでいき――――
今の閃光で回線も一時的にやられてしまったのか、先程の顔面への光の槍が今になって尾を引いたのか。
両方が理由だろう。
シンジのモニターが映らなくなって様子が分からない。
初号機が動かない。
それは相対するサキエルに動く暇を与えると言う事。
至近距離で両の手のひらを向けてくる。
光の槍を2発同時に発射するつもりだ。
それだけではない。
両目が光始め、先程のレーザーをも叩き込む気でいる。
完全に仕留めに来ている。
「シンジ君!! 応答して!! シンジ君!!」
必死に呼び掛けるも応答は無い。
このままでは初号機を、碇シンジを失ってしまう。
しかし、ミサト達にはどうする事も出来ない。
指を加えて見ているしか出来ず――――
『ウォォォォォォォォンッ!!』
悲鳴にも似た雄叫びが上がったのは直後だった。
咆哮の出所はエヴァ初号機。
「まさか、暴走!?」
リツコはこの現象に理解を示し、驚いていた。
横で驚く友人を他所にミサトは画面を食い付くように見ていた。
変化が訪れたからだ。
初号機が立ち上がり様にサキエルの両腕を取り上げて真上に持ち上げる。
その勢いでサキエルをボールに見立て、思いっきり蹴り上げた。
蹴り上げたタイミングで手を放し、サキエルは上空に向いた状態で光の槍とレーザーは空へ打ち上げられた。
『ウォォォォォォォォンッ!!』
叫びを上げながら初号機は跳び上がる。
そして、右拳をサキエルにぶち込む。
しかし、見えない壁――ATフィールドに遮られる。
だが、そんなものなど知るかと言わんばかりに全体重を乗せて力業で押し込む。
重量もさることながら重力の助けもあり、地面へ叩き付ける。
『ウォォォォォォォォンッ!!』
いくら雄叫びを上げようと、ATフィールドを破らない限りはダメージを与える事は出来ない。
どうするべきか――――援護をすべく、戦自に大至急連絡をすべきなのか、思考をしていた。
しかし、その思考は無駄に終わりそうになった。
初号機の拳が徐々にではあるものの、ATフィールドを突き破って侵攻していた。
「初号機からATフィールドの発生を確認!!」
「サキエルのATフィールドを中和しています」
ロンゲのオペレーターの
メガネが特徴的なオペレーターの
両名が状況を伝えてくれる。
「やはりエヴァもATフィールドを使えるのね」
リツコがボソリと呟く。
彼女の呟きに気付いた者は居なかった。
それだけ目まぐるしく変わる戦場に意識が割かれていたからだ。
ややあり、サキエルのATフィールドを初号機は突破した。
コアに突き刺さる――――サキエルの目が光ったのはその直前であった。
「いけない!! レーザーが来るわ!!」
ミサトが叫ぶもそれは無意味となる。
初号機の拳が振り抜かれる。
サキエルのレーザーの方が一手早かった。
腹部へ直撃。
その勢いに押され、初号機は真後ろのビルまで吹き飛ばされる。
レーザーを受けて拳の軌道はズレてサキエルの頬を捉える結果となった。
弱点は突けなかったが、サキエルは動きを鈍らせた。
未だ敵の殲滅は行えていないが、凄まじい戦闘力を見せ付けている。
このまま行けば勝てる――全員が希望を見出だした時だった。
ブチィッ!! と、何かが切れる音がしたのだ。
「アンビリカルケーブルが断線しました。内部電源に切り替わります」
何が起きたのかをマヤが簡潔に説明してくれた。
あと5分――――その間に敵を倒す必要が出てきた。
『ウォォォォォォォォンッ!!』
四度目の咆哮。
自らのタイムリミットに気が付いているかのように初号機は疾駆した。
サキエルとの距離を詰めるのは数秒と掛からない。
それだけの近い距離感であるのと同時、エヴァの身体能力の高さを改めて裏付ける。
しかし、だ――。
「また、来る!!」
初号機を近付かせまいと、サキエルがレーザーを連続で照射してくる。
しかも、それだけではない光の槍のおまけ付きだ。
それらが疾駆する初号機の脇に、肩に、腕に、足に、直撃こそ免れるも命中する。
初号機は近付けず、その場で横転してしまう。
「ちょっちまずい、かな?」
「でしょうね」
ミサトとリツコは最悪の想定をしていた。
暴走するエヴァはかなり野性的な動きをしている。
実にワイルドだ。
だが、限られた時間内で「敵を殲滅出来るのか?」と問われると「分からない」としか返せない。
こうなるとゴリ押ししか手段が無くなってしまう。
もし、それが通用しなかったら?――――そのパターンこそが最悪のシナリオだ。
現在進行形でそのシナリオが完成しつつある。
今の初号機は「早く敵を倒さなくては」と焦っているようにも見受けられる。
しかし、そのせいで逆に足下を掬われる形になっている。
「作戦はある。せめてシンジ君と連絡が取れれば……」
それさえ伝えられれば――――確実な勝機がある。
「シンジ君!! 応答してシンジ君!!」
この声が彼に届いていると信じ、叫ぶ。
彼を、あの少年を「守る」とミサトは誓った。
だから、彼を「守る」為にも声を飛ばす。
有らん限りの力を以て。
『お願いだから落ち着いて!!』
そんな声と共に「ガンッ!!」と音がした。
同時、エヴァの咆哮が止み、これまでの暴れ馬っぷりが嘘のように収まった。
何が起きたのか分からず、全員が呆けてしまう。
『すいません。気絶しちゃってて』
「シンジ君!! 無事なのね?」
『何とか』
紛れもなく碇シンジの声だ。
未だ映像は回復しないが、無事なのは分かる。
『初号機が勝手に動いてたんで止めちゃったんですけど、問題は無いですか?』
「ええ、問題は無いけれど……それよりシンジ君、どうやって初号機を止めたの?」
それは気になるところだ。
あれだけ暴れていた初号機が急に大人しくなったのだから。
『とりあえず「お願いだから落ち着いて下さい」って思いながら
「そ、そんな昔のテレビを直す感覚で止まるなんて……」
常識はずれも良いところだ。
エヴァンゲリオン自体が非常識の塊なので言えた義理でもないか。
『ところでミサトさん。策はありますか?』
「あるわ。シンジ君、いける?」
『はい。やります。さっきの状態の時の記憶も朧気にあるんで、あの見えない壁……ATフィールドを発動させる感覚も残ってます』
先程の暴走も無駄では無かった。
更にはシンジに最高のお土産まで用意してくれた。
「勝つわよ」
『勝ちましょう』
映像は未だに映らない。
だが2人の、全員の目指す先は「勝利」の二文字なのは共通していた。
如何でしたでしょうか?
サキエルなんて序盤の敵は1話で終わ――あれ? 終わりませんでしたね~
おかしいです。
これはきっと妖怪の仕業ですね。
試しに続きを書いたら、結構な文字数なのでスクロールするのが大変(主に私が見返す時に)だし、丁度良い感じで終わったので区切りました。
シンジ君も初号機の操縦は初めて。
いくら『平行世界』で精神的な成長をしても戦闘は素人です。
苦戦は当然でしょう。
そして、エヴァの暴走に対して「右斜め45度からのチョップ」をする描写を入れたかっただけでした(笑)
これで暴走が本当に止まるのかは分かりません。
間違ってたらすいません。
でもやりたかったので許して下さい。
さて、いよいよサキエル戦後半です。
正直、2話も使うとは思ってませんでした。
いや、さすがに次でサキエル戦は終わるとは思います。
ではまた次回に。
ところでサキエルでこんなに使ってたら他の使徒戦は大変な事になりそうな……