何でも検索できるパソコンを手に入れました。ーBPCー   作:木岡(もくおか)

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word53 「告白したら付き合ってくれる人 人数」①

 そう、落ち着いた日常を取り戻した僕は今、恋の悩みを抱えていた。

 

 いつからか好きになって、時間が経てば経つほどより好きになっている。学校生活で見かける度に鼓動が高鳴るし、軽音部の活動中に目が合ったりなんてしたときには脳のCPU使用率100%、完全に思考が停止してしまう。

 

 初めは予想もしてない検索結果の中での出会いだった。それまでは何でもない同級生の1人だったのになぜだろう。今こうして自室にいるときも、ずっとあの無邪気な笑顔が忘れられない。

 

 校内の同学年の中で最も歌が上手い人を検索して、その人物だった彼女のカラオケの様子を検索して、彼女が歌い終わっときに見せたあの笑顔。すごく良い意味で、高校生とは思えないほど無邪気で純粋に感じた。

 

 真剣な面持ちでセクシーな曲を歌った後のギャップ、僕にとって価値観を変えるほどの魅力があったんだと思う。

 

 僕は清純で明るい子がタイプだった。折原はぴったりそういうタイプという訳ではない。けれど、1つの笑顔が僕を変えた。

 

 目を閉じれば瞼の裏に浮かべられるあの笑顔。あれを2人きりで、僕だけに見せてくれたら……そんなことがあれば……僕は……。

 

 立ち上がった僕は、床に落ちていたクッションを蹴っ飛ばした。反発性が高いクッションは壁に跳ね返って、また足元まで戻ってくる。

 

 こんなに頭を悩ませているのに、僕は未だに折原の連絡先すら知らなかった。

 

 軽音部に入ったことで確実に距離は縮まった。しかし、そこから先は全く足を踏み入れられていない。

 

 にもかかわらず何も行動には起こさず、気を紛らわせるために黒いパソコンでしょーもないことを検索しては、また何やってんだろってなる生活。いい加減やめないといけないとは思ってる。

 

 でも……でもだ、これ以上こちらから距離を縮めるってそれはもう告白みたいなものだと僕は考えるのだ。

 

 たとえば僕は、クラスメイトの女子にいきなり連絡先を聞かれて、何の用もないのにメッセージが送られてくるようになったら、この子気があるんじゃねと舞い上がる自信がある。

 

 だってそれはそうじゃん。好きでもない男にそんなことしないじゃん。

 

 他人が異性に連絡先を聞いてるのを見たって、同じことを思う。あいつはあいつに気があんのかと。

 

 別に直接聞かなくなったって、友達に聞くという手もあるし、今どきそんなことすらしなくたってその気になればグループトークから折原のアカウントを見つけられる。同学年全員が参加しているグループもあるし、軽音部のグループにも入れてもらえた。

 

 しかし、どちらにせよいきなりメッセージが送られてきたとて、相手が気があると思うのは同じことだ。

 

 友達以上恋人未満とかよく言うが、そこへ向かうために踏み込むこのラインも結構超え辛い気がするのだが、その辺既に付き合っているクソカップル共はどう上手くやったのだろうか……。

 

「はあ……」

 

 また溜め息をつくと、先ほど蹴飛ばしたクッションを抱いてベッドに寝転んだ。

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